PDCAとは
PDCAとは、計画のプラン(Plan)-実行のドゥー(Do)-評価のチェック(Check)-改善のアクション(Action)の略です。正式には「PDCAサイクル」と呼ばれ、PDCAをそれぞれループ状に実施していくことで、仕事の目標を達成し成果を出すことができます。
PDCAを、それぞれ分かりやすく日本語にすると、
- Pとは「計画の作成」
- Dとは「計画の実行」
- Cとは「進捗の確認と評価」
- Aとは「歯止め/計画の見直し」
PDCAを一言でいえば、「成果をだすための仕事のすすめ方」のことです。
PDCAはなぜ大切か
PDCAと言っても、「そんなことは常識だし、基本スキルといえるほどのものか。」「基本スキルとしてもっと他に基本的で重要なものがあるのではないか」と思う人も多いと思います。
仕事には目標や成果があり、目標に向かって軌道修正しながら着実に仕事を進めていく必要があります。その目標を達成して成果を出すために、もっとも基本的で重要であり、職種や業種を超えて誰にも共通して必要なスキルは、「仕事の目標を達成するためのマネジメントができること」です。
今現在、PDCAサイクルは、仕事の目標を達成するためのマネジメントを行のに最適なスキルだと考えます。PDCAサイクルを正しくしっかり回すことができたら、仕事は確実に目標に向かって進んでいくからです。
PDCA実行の注意点
PDCAを実行するときに、注意点として次の2つがあります。
日々の仕事に追われている場合
1つ目の注意点は、「計画の作成(P)」が、日々の仕事の忙しさで中途半端なものになりやすいことです。
計画をしっかり立てることは大切ですが、日々の仕事に追われて忙しくなると、計画の作成段階でつい貴重な時間を費やしてしまい、日々の仕事に支障をきたしてしまう場合があります。また、計画をおろそかにしていると、詳細なことを忘れていってしまい、PDCAの実施が先延ばしになって、いつまで経っても目標が達成されません。そういった場合、中途半端な計画のまま、見切り発車せざるを得ないことが往々にしてあります。
形式主義になってはいけませんが、とくにリスクの大きい案件や重要案件については、最小限の計画に留めておくことが大切です。例えば、目的や狙い、日程、納期、担当者ぐらいの簡易的な計画を決めておき、関係者で共有しておきます。そして、時間ができたら、じっくりと計画を立て直します。
簡易的な計画を立てることは回り道のようですが、仕事が藪に入り込んだり、おかしな方向へ進んでしまったりすることを避けることができ、結局は、効率よく当初の狙いを達成できることが多いと思います。まさしく、「急がば回れ!」です。
PDCAを知ったつもりになっている場合
もう1つは、「進捗の確認(C)」と「歯止め/計画の見直し(A)」です。「PDCA? ああ、知ってる」と言って、分かったつもりになることが一番危険であるということです。その結果、PDCAサイクルがうまく回っていないことにすら気づいていないことがあります。
今まで、いろいろな職場を見てきましたが、PDCAサイクルの4つのステップのなかで、「計画の作成(P)」と「計画の実行(D)」までは、まずまずできていることが多いですが、「進捗の確認(C)」と「歯止め/計画の見直し(A)」となると途端に弱くなるようです。CとAが弱くなる原因の多くは、「仕事のやりっぱなし」です。これが大きなムダになることがあり、企業競争力を弱めてしまいます。
企業競争力を強化する一環として、この「進捗の確認(C)」と「歯止め/計画の見直し(A)」、特にCを確実にすることが、仕事で着実に成果を出すためには不可欠であると私は確信しております。
チェックは言い換えれば反省です。私自身を含め、反省はなかなか取り組むことが難しいですが、反省によって至らない箇所を知ることができ、改善していくことが可能となります。
私の知人で、このC(チェック)とA(アクション)のことをカルシウム(Ca)と言っている人がいます。まさに言いえて妙の表現で、カルシウムが不足すると骨粗しょう症になり、ひどくなると体を支えることができなくなり、歩けなくなってしまいます。企業として立派に立って歩くことができるためには、このC(チェック)とA(アクション)に力を入れてカルシウムをよく摂取し、骨密度を高めることが大切ということです。
PDCAに対する誤解
PDCAサイクルが行われない理由として、PDCAサイクルに対する誤解もあると思います。OODA(ウーダ)ループとの比較で生じる誤解として、「PDCAサイクルよりも、OODAループの方が優れているのではないか」という誤解があります。また、PDCAサイクルの回転スピードに対する誤解として、「PDCAサイクルは、年に1~2回の中長期の速度で回転させるのに用いる」という誤解があります。これらの誤解について解説をいたします。
OODAループとの比較での誤解
PDCAサイクルと聞くと、「今の時代のような変化の激しい時代には、計画などつくってもすぐに作り直しが必要になるし、時間のムダだ。」「PDCAサイクルを行う時間があるくらいなら、現場で少しでも改善するほうがいいし、より成果もでるだろう。」といったことをお考えの方もいることでしょう。
PDCAサイクルをムダだという考えには一理あります。とくにソフトウエア業界では、仕事のサイクルが大変短く、アジャイル開発ということで俊敏さが求められ、そのチーム活動をラグビーからの引用で「スクラム」といい、そこではOODAループといった理論での意思決定や行動が推奨されています。
OODAループの詳細は別の機会にしたいと思いますが、要は、戦場の空中戦で編み出された手法で、いかに相手の飛行機を先に撃墜するかということで、「まず観察し、状況を直観的に判断し、即決断し発射する」というものです。OODAループは、目的に合致する場合は大変有効なものですが、「長期的にわたるリスクの高い仕事」にはOODAループよりもPDCAサイクルが向いていると思います。
PDCAサイクルの回転スピードに対する誤解
一方、PDCAサイクルの回転スピードについてですが、必ずしも1年や2年といった中長期的サイクルだけではありません。現場改善活動でPDCAサイクルを用いる場合はもっと短時間、たとえば1日単位あるいは1時間単位でも十分にサイクルを回すことができます。
自動車関連の製造業では、「組み立てラインで、15分単位でキチンとデータに基づきPDCAサイクルを回している」ということも言われています。もちろん「計画の作成(P)」段階は、頭の中だけの作業もあると思いますし、必ずしも論理的・左脳的判断だけではなく、直観的な判断になる場合もあると思います。そういった意味での応用として、私は、現場でのトラブル対応など即時にアクションが要求される場合に有効な、「高速PDCAサイクル」なるものを25年ほど前に開発し提唱しております。
私が提唱する高速PDCAサイクルにおいては、Pを「観察・直観・判断・決定」と定義しています。また、Dは「実行」、Cは「結果の確認」、Aは「修正/FB(フィードバック)・FF(フィードフォワード)」です。もちろん、通常のPDCAサイクルと併用することは言うまでもありません。高速PDCAサイクルの詳細な説明は長くなりそうなので、別の機会にしたいと思います。
本物のPDCAの導入・定着化はマネジメント研修から
成果を出し着実に成長し、実績をだしている企業は、まず間違いなく本物のPDCAとは何かをつかみ、PDCAを重視し実践しています。中には、PDCAを実践し成果をだすために、本気でマネジメント研修として取り込んでいる企業もあると思います。
一方、あまり成果がでていない企業では、PDCAを用いていない、もしくはPDCAを軽視していて中途半端にしか回し切れていない場合がほとんどではないかと私は確信しております。
本物のPDCAを導入し定着化させるためには、マネージャーが本物のPDCAをしっかり理解し、自身が実施してみせる必要があります。そこで、マネージャーが本物のPCDAサイクルをしっかり学ぶことができるマネジメント研修を受講することが望ましいです。
私が現役時代に勤めていた企業では、幸いとしてPDCAを大変重視し、マネジメント研修としてしっかり取り入れていました。実際に私も研修を受け体験し、またPDCAを教える講師としても取り組んだわけですが、素晴らしい内容の研修なので、以下、研修の概要をご紹介したいと思います。
本物のPDCAをしっかり学べるマネジメント研修方法の概略
PDCAのマネジメント研修の中で、まず座学では、基本的なマネジメント手法として、主に次のことを学びます。
- 最重要課題の抽出
- 戦略策定
- 推進計画の作成
- 推進体制構築
- 人の動かし方
- PDCAサイクルの回し方
更に、座学で学んだことを各自の職場で、実際に担当する仕事に当てはめて応用してみるという実践課題が与えられます。実践課題では、次のことに取り組みます。
- 自分の主担当業務に関する社内外の環境、自分の仕事の状況などの現状分析や把握
- 業務を遂行し、ゴール到達に立ちはだかる障害やリスクなどの課題抽出
- それらの課題の真の課題(最重要課題)の抽出
- 実行計画の作成(ここまでが、PDCAのP;プランです)
- 推進体制を整えて実施(D;ドゥー)
- 定期的、随時に、計画通り進んでいるかの確認(C;チェック)
- 必要に応じ計画を修正(A;アクション)
- 目標を達成するよう知恵を出しながら全力で取り組む
以上の一連の流れや仕事の進め方を体験し、それをプレゼンテーションとしてまとめ上げ、上司や経営層、から厳しい指導を受けます。また、経営層が発表する場合は社外からその道の大御所が参加し、評価や指導を受けます。これを行うと、指導を受ける者のみならず、指導をする側も勉強になります。
座学の後に、実際に自らの職場に当てはめ、PDCAサイクルを回すのですが、やってみると大変難しいものです。真の課題(最重要課題)の抽出は、強烈な思考訓練になり、とくに経営幹部層には必須のスキルです。OJTとして、日常業務を通じて上司から適宜指導を受けますが、プレゼンテーションとしてまとめ上げる際には、さらに、集中的に徹底的に指導を受けることになります。その結果、マネージャーとしての仕事の実力が身に付きます。
仕事の進め方の根本が十分理解納得できていなければ、プレゼンテーションの資料をまとめ上げることはできません。だから、プレゼンのためとはいえ、一切妥協は許されません。企業の風土によりますが、こういった厳しいマネジメント研修は一流企業なら初級管理職から経営幹部層まで行われています。役職が上位等級になればなるほど、担当する仕事の責任範囲が広くなり内容も複雑になるので、より高度で戦略的な仕事の進め方が要求されてくるのです。
私は、こういった「PDCAサイクルを活用した仕事の進め方」をしっかり学び、身に付けることができたおかげで、その後職場が変わっても、会社が変わっても、ビジネスモデルが変わっても、自信をもって仕事を進めることができるようになりました。PDCAサイクルは、普遍的な仕事能力だと実感しています。
現在、製造業改善コンサルタントとして、ここで学んだマネジメント研修をベースに改良された、厳しくも理解しやすく実力が身に付く、経営幹部向け「PDCAマネジメント研修」をご提供しています。ぜひチャレンジしていただければと思っています。
課題設定・形成型リーダーが求められる時代
現在は、企業活動にとって不安定、不確か、複雑で曖昧ではっきりしないことが多い時代です。このような時代は、VUCAと呼ばれていますが、真の課題を洞察しにくい時代になり、課題がちゃんと定義されていないことのほうが多くなってきているようです。
「課題だ」と多くの人が言っているものが、実は現象でしかないことも頻繁に起こりえます。そのような「課題」を吟味することなくそのまま受け入れ、ひたすら解決に突き進む「強力な課題解決型リーダー」では不十分な時代です。
そこで、現代の企業経営では、他に先駆けて、時代を洞察した「課題設定」を自律的にでき、しかも人を説得して巻き込むことのできる能力と魅力をもった、課題設定・形成型リーダー(アジェンダ・シェーピング・リーダー)が求められているのです。
「最重要課題」の抽出を行うことができる実力が身に付くことは、課題設定・形成型リーダーになるためには登竜門です。つまり、本物のPDCAサイクルを行うことができるリーダーが、現代求められるリーダーに成長できます。
本物のPDCAを自社に定着させたい、課題設定・形成型リーダーを養成していきたいとお考えの企業様は、ぜひ経営幹部向け「PDCAマネジメント研修」をご依頼ください。