社長の夢実現への道

製造業で改善指標に用いられる人時生産性とは

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人時生産性とは?

製造業で改善活動を行うときには、目標を設定します。その目標となる指標の一つに、人時生産性が用いられることが一般的です。

このコラムでは、人時生産性とは、人事生産性の計算方法、なぜ人時生産性が用いらるべきなのかについてご説明いたします。

人時生産性とは?

1人が1時間当たりに生産する付加価値

人時生産性とは、「1人が1時間当たりに生産する付加価値」です

人時生産性の分子となる付加価値に用いられる数値は、経営者の観点では粗利益などの金額が望ましいですが、製造業では計算しやすくするために、生産された製品の個数で計算されることが多いです。

人時生産性の計算式は、次の通りです。

人時生産性の計算式

付加価値の分子に、金額か個数のどちらを選ぶかは、企業によって異なります。分母には、生産に当たったすべての人の労働時間の合計(総労働時間)を代入します。

人時生産性の単位は、利益で計算したら「円/時間」、個数で計算したら「個/時間」となります。

例えば、パンを製造している工場の人時生産性は、1人の人が1時間で何個のパンを製造することができるかが分かります。

人時生産性の計算例

人時生産性の計算例

人時生産性の計算例を、パン工場で働くパートさんの例でご説明いたします。

パン工場で食パンを生産してる生産ラインでは、5人のパートさんが従事していたとします。

5人全員が同じ時間働くのではなく、ある人は3時間だけ働き、ある人は8時間働くという具合にバラバラだと思います。

5人の労働時間は、各人のタイムカードから計算すると、3時間、3時間、5時間、5時間、8時間だったとします。すると、5人の労働時間の合計は、24時間です。この数字が、人時生産性を計算するときの分母に代入されます。

次に、人時生産性の分子ですが、製造されたパンが5,000個だったとしたら、その数字を代入します。もしくは、5,000個のパンの粗利益でも良いです。

人時生産性は、24時間と5,000個を用いて、次の計算で求められます。

5,000 / 24 ≒ 208 [個/時間]

「このパン工場では、1人で1時間当たり約208個のパンを生産している」という計算になります。

いつどこで人時生産性を使うのか?

人時生産性を使う場所

人時生産性は、生産性の改善と大きくかかわる数値だということは、すでにお気づきのことでしょう。人が作業する工場で、人の生産性を表す指標として、人時生産性が用いられます。

先ほどの計算では、人時生産性が208個/時間でしたが、この数値が250個/時間に増えたら、生産性が約20%高まったことになります。

人時生産性を定期的に調べ、その数値を高めるための努力をすることは、工場の生産性が改善していくことにつながります。

つまり、人時生産性は、工場の生産性を向上させるときに指標として用います。人時生産性が業界内でもっとも高い企業が、もっとも生産性の高い企業であると言えます。

また、利益で人時生産性を計算すると、人件費に対する費用対効果を導き出すことができ、生産ラインが黒字かどうか、また赤字であれば、黒字化するためにどれだけ生産できるようになれば良いのかを把握することができます。

なぜ生産性改善の指標に人時生産性を用いるのか?

生産性の改善の指標に用いられる人時生産性

工場の生産性の改善には、「労働生産性」や「物的生産性」など、さまざまな指標があります。

簡単に、工場全体の生産数量を基準にしても良いかもしれません。また、歩留まり率を高めることも、生産性を高めることにつながるようにも思えます。

工場の生産性を高めるために効果的な方法は、トヨタ生産方式7つのムダを発見し、その部分を改善していくことです。改善活動を行うときは、目標を設定します。その目標として、人時生産性が用いられます。

そのときに、働く人数が日にバラバラ、労働時間も日にバラバラという工場であれば、工場全体の生産数量も日によってバラバラになってしまい、改善の指標としては不向きです。

また、歩留まり率のような細かな指標として使われますが、歩留まり率は、7つのムダの中の主に「不良・手直しのムダ」の改善に使われる指標となり、7つのムダを全体的に改善する指標になり得ません。

人時生産性は、7つのムダを改善していく指標として、すべてに係る数字です。

複数種類のものを生産する場合での計算方法

パン工場での人時生産性の計算例

パン工場では、食パンなどの単一のものを生産するとは限りません。菓子パンも生産していることでしょう。食パンと菓子パンでは、生産工程が異なり、生産に要する時間も異なります。

工場全体で人時生産性を計算する場合には、経営者が全体的な数字を把握するために用いるのであれば、それも良いでしょう。しかし、それでは、個々の製品や生産ラインの生産性を把握することはできません。

そこで、生産性の向上のための指標として人時生産性を用いる場合には、個々の製品や生産ラインで計算します。すると、工場内のどの箇所にて、生産性が改善されていないのかが理解できるようになります。

食パンの生産ラインと菓子パンの生産ラインであれば、それらを合算するのではなく、それぞれの生産ラインで人時生産性を計算します。そして、どの生産ラインで人時生産性が、改善の目標値に達していないのかを調べます。

もし、生産性が改善されていない箇所が主要工程であるならば、その部分の改善に集中することが求められます。

なぜ今、人時生産性なのか

なぜ生産性指標に人時生産性が選ばれるのか

今まで、生産性指標として「労働生産性」、「物的生産性」、「付加価値生産性」、「総工数低減指標」などが用いられてきました。なぜ今、生産性の指標に人時生産性を用いるべきなのでしょうか?

それは、働き方が大きく変化したことが理由です。

今まで用いられてきた生産性指標は、高度成長時代に用いられてきたものです。高度成長時代では、同じ製品を、同じ生産ラインで、同じ時間帯で、固定した従業員で働くといった、画一的な条件下で働いていました。そのため、今までの生産性指標の計算式には、分母に作業に携わった人数が入りました。人数が常に一定であれば、とても分かりやすい指標でした。

現在では、働き方が全く異なり、ワークスタイルが大きく変化してきています。しかも、現在のワークスタイルは、どのような職場でも、標準の一定時間帯ではたらくいわゆる正規社員もいれば、自分のライフスタイルに合った時間帯を選んで働くパート社員や、一定の時期だけ働く臨時のアルバイト社員がいるなど、実に多様化しています。

したがって、過去一般的に使用されてきた生産性指標では、経営者にとっても従業員にとっても、直観的に分かりにくく、さらには厳密性正確性に欠けやすいものになりました。

人時生産性は、ワークスタイルが多様化する時代において、まさにもっとも適切な指標と言えます。人時生産性は改善された結果がすぐに数字に現れるため、経営者のみならず従業員にも改善の意識が高まることが多いです。

人時生産性のメリット

人時生産性のメリットをまとめると、次のようになります。

  • ワークスタイルの多様化時代の生産性指標として、厳密性・正確性があり、しかも直感的で分かりやすい。
  • 多種中少量・変量生産でも、製品ごとに目標数値を設定することで、生産性指標に用いることができる。
  • 経営者にとって、より実態に即した正確な指標として活用できる。
  • 従業員にとって、「自分がどの製品を何時間かけて」ということを常に意識するようになる。したがって、工場の製品毎の人時生産性に対して、参画意識や貢献意識がより強く持てるようになる。
  • 自分の身近にある「七つのムダ」を見つけ、改善することで、あらゆるムダ削減の活動がダイレクトに人時生産性に反映できる。したがって、難しいとされていた従業員のモチベーション向上がしやくなる。

人時生産性を導入した最新の改善活動

「5S活動の3段階理論」とリンクさせて人時生産性目標を設定

製造業の改善活動は、「5S活動の3段階理論」とリンクさせて、人時生産性目標を設定し、目標レベルを高めつつ5S活動を継続していきます。

「5S活動の3段階理論」の1段階目は、「職場環境をスッキリさせる」ことです。2段階目が「職場をすっきりさせることで、改善につながる問題点を見える化する」こと、3段階目は「5Mベースの5S」理論を導入することです。この順に行えば、5S活動が効果を発揮し、ムリなく定着化させ、継続的に生産性を向上させることができます。

また、5S活動の活動内容は、「5S活動の3段階理論」に合わせてステップアップしていきます。「チェンジ(変革)」、「チームワーク(協働)」、「チャレンジ(共創)」の3ステップを上がっていくことで、ムリなく「自律・学習・創造」といった価値や遺伝子を含む「自己統治型の文化」が形成されます。

3段階目までくると、改善活動に善循環が展開されるので、「場」や「組織」の持続的成長が約束されることでしょう。

この段階まで改善活動を行っている企業は、大企業でも少ないものと思われます。そのため、経営の視点でいえば、他社に対して最強の差別化になり、顧客や社会にも喜ばれ、会社の未来は極めて明るいものとなることでしょう。

当社の製造業改善コンサルティングでは、人時生産性を3年で30%以上高め、業界No1生産性を出すことを、一つの目標としてご支援しています。時代に即した指標やツールを用いた改善活動なら、チームコンサルティングIngIngにお任せください。

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