社長が優秀なナンバー2と認めた人物が、会社に入社してきたら、お互いの夢の実現に向けて、ナンバー2に能力を発揮してもらう必要があります。
そのために社長が持つべき心構えがあります。ナンバー2への対応とも言えます。
優秀なナンバー2は、自分で会社を経営できるぐらいの能力を持っているのにも関わらず、社長に魅力を感じ、自分が経営してきた会社を畳んで、もしくは会社を吸収合併されて、社長の事業活動に参画されるわけです。
そういったナンバー2に対して、能力を発揮してもらうために、社長はナンバー2に対して、いくつかの守るべきことがあります。
大きな夢を持ち、その実現に向けて何年も奮闘してきた社長が、優秀なナンバー2に出会い、社長の手助けを誓ってくれた場合の、ナンバー2との付き合い方を考察したいと思います。
社長が「本当に優秀なナンバー2である」と見抜いたとき
社長が夢を抱き、その夢に向かって死に物狂いで経営をしてきたけれども、どうしてもそれが実現できないのは、その事業を支えて成長に導ける人材がいないからです。
そういったときに現れる人材が、優秀なナンバー2です。
優秀なナンバー2は、社長と似た性格をしています。社長の心が純粋なものであれば、純粋な心を持ったナンバー2と出会います。その真逆として、社長の私心が強ければ、私心の強いナンバー2と出会うことになります。
それは、いわゆる「類は友を呼ぶ」というものです。
人生においてさまざまな経験をしてきた社長ですので、ある程度の人物を見抜く力があるはずです。また、心が澄んでいたら、相手の心が澄んでいるものかを見抜く力を持っているはずです。
つまり、私欲のない状態で、世のため人のために純粋な気持ちで、死に物狂いで事業活動に取り組んでいたら、案外身近なところで優秀なナンバー2と出会うことになっています。
では、優秀なナンバー2と出会い、ナンバー2を口説き落として、自社に入社してもらったときに大事な、社長の心構えや付き合い方についてご説明いたします。
ナンバー2の最初に行う仕事
ナンバー2が最初に行う仕事は、社長と将来のすり合わせと、社長が気が付いていない会社の発展を止めているボトルネックの解消です。
事業規模が数億円の会社であれば、次の3つのバランスを取りつつ、属人化している部分を仕組み化していくことと思います。
- 生産
- 販売
- 経理・財務
優秀なナンバー2は、この3つの分野の本質を理解しており、バランスを取ることができます。短期的に資金繰りが悪化している場合は、資金調達を行います。
人によっては、半年から1年ぐらいの間、与えられた目先の仕事をこなし、業務を体系化できる部分を体系化しつつ、会社全体をじっと見ている人もいます。会社全体を俯瞰して、ボトルネックとなっている部分を発見するのです。
その間、しばらくはすぐに成果が出ないので、社長も「この人をナンバー2として雇ってしまったが、大丈夫だろうか?」と思うこともあると思います。ですが、社長の眼力が本物であれば、そのナンバー2は優秀なはずです。ナンバー2は、最初は古参社員との人間関係もあるので、でしゃばったりしないで、じっと見ていることもあるのです。
以下、社長がナンバー2に取るべき心構えや付き合い方を述べたいと思います。
ナンバー2を信じ切る
最初にナンバー2を信じ切ることを述べたいと思います。
長年、会社経営をしてこられた社長は、人から裏切られたり、騙されたりしたことが1度はあるはずです。社員は簡単に会社を辞めていきますし、社長がいないところで仕事をさぼっている社員もいます。
そういった中で、社員に対して、ある程度の警戒心を抱くことは多いと思います。
しかし、本当に優秀なナンバー2は、社会的なルールをわきまえているので、会社を乗っ取るようなことをしませんし、たいていのことでは社長を裏切ることはありません。一度「やるぞ」と決めたことは、よほどのことが無い限り、やる気が無くなることはありません。
石田退三先生然り、藤沢武夫先生然り、社長を裏切ることはありませんし、会社を私物化するようなことをしないのです。
そのような優秀なナンバー2は、社長を信じて会社に入り、社長の夢を叶えようと考えているわけですから、社長はナンバー2を信じてあげるべきです。「私はこの人を信じる。そして、裏切られたとしても、すべては自分の責任だ」と考えるぐらいが、ちょうど良いのです。
過去のナンバー2で輝いた偉人を調べていると、誰しも入社したと同時に巨大企業にまで成長させられる能力を持っていません。そこで即戦力となるような、過度な期待をしてはいけないのです。
では、優秀なナンバー2の何を信じるのか。それは、ナンバー2の発想と成長です。
ナンバー2を信じたのであれば、ナンバー2からの諫言や提案は、なるべく受け入れるようにしてください。ナンバー2は、会社を客観的に見るので、たいていは、その諫言の方が正しいからです。
ナンバー2からの諫言や提案があったら、すぐさま反論するのではなく、「それはなぜか?」の質問をするようにしてください。
2~3年は密にコミュニケーションを取る
ナンバー2が入社してきたら、ナンバー2とは2~3年ほど、社長の奥様よりも長くいっしょに居るぐらいにした方が良いです。そして、その間は、昼間は正しい仕事の在り方や心構えなどを話し合います。夜は、社長の夢や会社の未来のことを語り合うのです。
そうするとナンバー2は、3年目くらいに次のようなプランを出してくれます。
- 経営理念の草案
- 未来ビジョンマップ
- 経営計画と経営方針
- 市場分析に基づいた利益計画
そして、それ以降もこれらのものを、タイミングを見て社長に提案してきてくれるはずです。社長のGOサインが出たら、社長の名前でプランを発表してくれて、社長の専門分野以外のところは独自に根回しもしてくれると思います。
プライベートに踏み込まない
ナンバー2には、プライベートのことをあまり問いかけないようにしてください。優秀なナンバー2は、社長とのお付き合いは、「ビジネス以上、友達未満」という関係なのです。
社長と二人で飲みに行く場合でも、「ビジネスの場である」と割り切っています。社長がご自身の奥様のことをペラペラと話しても、ナンバー2は、社長の奥様についてあまり質問してこないと思います。
また、お酒が入ってもたいていはビジネスのことしか話さないと思います。社長と趣味のことを語り合うつもりはまったくありません。社長の夢を叶えることや、会社の経営のことを考えるのが好きなので、社長といるときは、それらのことしか考えていないのです。
居酒屋にいても、ナンバー2には、仕事をしている中で気が付いたことを話していると、喜ぶと思います。
ナンバー2に経営を依存し過ぎない
ナンバー2が成長してくると、会社が成長してきます。その会社の成長に合わせて、自分自身も成長することが大事です。
それは言い換えれば、「ナンバー2に経営を依存し過ぎないこと」です。社長とナンバー2は、二人三脚で仕事を進めていくことが大事です。
会社が成長してくると、社長が慢心してしまったら、いくらナンバー2が優秀であったとしても、会社の成長は止まります。そのため、ナンバー2の成長に併せて、自分も成長していかなければいけないのです。
そこで社長は、ナンバー2に「私は、次のステージのために何が必要なのか?」と訊いてみたら良いと思います。
もし、社長が夢をあきらめずに勤勉に働き、日々勉強を続けられているようであれば、ナンバー2は「今の勤勉さと勉強を続けていってください。必要な時期に何をしてもらいたいのかをお伝えしますから」と返事してもらえると思います。
いずれ奥様に引退してもらう
男性社長が経営している中小企業であれば、社長の奥様が経理担当をされていることが多いと思います。
ナンバー2が活躍し始め、会社が成長し、従業員数が100名前後になってくると、よほど能力のある奥様でなければ、経理の仕事が重荷になったり、会社の成長のボトルネックになったりします。そうすると、奥様の存在が、ナンバー2の活躍を止めてしまう場合があります。
銀行からの資金調達の金額の大きさに奥様が耐えられないこともあります。逆に、投資のための資金の流出に耐えられないこともあります。この辺りは、経理担当でインフレファイターをしてきた奥様には、感覚が判らないこともあります。
ナンバー2は経理だけでなく、財務にも長けているので、ナンバー2に会社の通帳と印鑑を託した方が良いのです。
奥様への引退勧告は、もちろん社長の仕事です。
奥様に引退を迫ったときに、奥様が反発することがあります。場合によっては、「あのナンバー2は信用できない」と言い始めることがあります。社長がナンバー2を信じ切ったのであれば、奥様の言い分が自己保身であることを見抜いてください。
奥様が引退した時点で、初めて会社が公器的な組織になります。
奥様が引退された後は、奥様に空虚感が出てしまって、寂しがってしまうことがあります。夜ご飯のときぐらいは自宅に戻ってあげて団らんを取り、食事が終わったら職場に戻るようにしてください。
会社の急成長に臆さない
会社が急成長していくと、自分の責任が負える範囲を超えていってしまうことがあります。そのときに、すべてを把握できていないと気が済まない社長は、急成長に臆してしまうことがあります。
そういったときは、優秀なナンバー2を信じ、ナンバー2と自他一体となって会社を経営していることを思い出してください。
社長とナンバー2は、お互いの見えている部分で、徹底的に考えて経営をしていると思います。社長が見ている範囲が大丈夫であり、優秀なナンバー2が「大丈夫です」と言ったら、大丈夫なのです。
ナンバー2とはいずれ別れることを想定しておく
ナンバー2と共に会社経営を続けていくためには、ナンバー2を信じ切ることが大事です。
しかし、技術系の社長は、会社が大きくなってきたら自分の好きな開発ができなくなることもあります。会社の規模によって、社長の役割が異なってくるからです。そうすると、社長が余計なことをし始めることもあります。
社長が余計なことをし始めると、ナンバー2が諫言してきます。社長がナンバー2の諫言を受け入れられなくなってきたら、ナンバー2が社長の元を離れていくことが近づいています。
優秀なナンバー2が離れていくと、会社が急激に瓦解することもあります。そのときは、社長の引退のときでもあります。
そのことを覚えておいてください。
ナンバー2が辞めていっても功績に感謝する
もし、優秀なナンバー2が会社を辞めていったら、会社にとって脅威となる場合があります。しかし、本当に優秀なナンバー2は、退社理由が何であれ会社に弓を引いてくることはありません。
優秀なナンバー2が去っていったら、いくら仕組みができていたとしても、社内に同様が走り、一時期は社内が混乱する場合が多いです。そのようなことがあっても、会社を去って行ったナンバー2に対して、悪口を言わないようにしてください。
去って行ったナンバー2の悪口を言っているようだと、次のナンバー2が来ないのです。
優秀なナンバー2が入社するまでは、苦労しても会社は大きくならなかったと思います。優秀なナンバー2が力を貸してくれたために、会社が大きくなったのです。そのナンバー2の働きに感謝するぐらいでないといけません。
ナンバー2からの引退勧告を受け入れる
社長と優秀なナンバー2が、二人の引退のときまで共に経営をすることもあります。そのときは、ナンバー2が社長に引退勧告を迫ることもあります。そういったときも、ナンバー2が会社を乗っ取るためではなく、社長の発言による社内の混乱を避けるためです。
いくら熱意のある社長であったとしても、社長の成長はいずれ止まってしまいます。また、社長が経営理念に反してしまうこともあります。
社長の成長が止まったり、経営理念に反するようになったら、社長はいわゆる「老害」というものになります。成長が止まった社長の発言は、社内が混乱することを防ぐためです。
技術系社長の場合は、若い人たちと技術力を競っても意味がなく、社長は社長の仕事に徹してもらった方が良いのです。社長が、いくら技術に長けた天才で経験豊富だったとしても、20~30年も経過したら、大学院を卒業してきた若手の人材の方が、新しい知識を持っているのです。
そして、ナンバー2が社長に引退勧告をしたときは、ナンバー2も引退のときです。
実はナンバー2は、「そろそろ引退のときだな」と感じる前から、引退の時期を探りつつ、準備を進めているのです。そして、2人で引退した後も、会社が隆々と発展していくための構想を練り続け、後釜を育てていっています。そして、後釜が育つ仕組みも構築しているのです。
以上、優秀なナンバー2が会社に入社したときの、社長の心構えや付き合い方について考察いたしました。
世の中には、優秀なナンバー2と言える本物の人材は少ないことや、優秀なナンバー2は自分を隠すのがうまいので、あまり実例はありません。そこで、数少ない優秀なナンバー2の分析に加え、反面教師として、優秀でないナンバー2がいる会社、優秀なナンバー2が辞めていった会社、ナンバー2が来なさそうな会社などを分析した内容も含めております。
この内容は、今後の私自身の経験や調査によって書き換えることと思います。内容が不十分だと感じた方もいらっしゃるかもしれません。気が付いたことがあったら、更新していく予定ですので、ご了承ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。