先日、都心から電車で1時間ほどの場所にある建設会社様から、SEO対策のご相談をいただきました。投資用のマンション建設に強みがあるそうで、「不動産投資」や「マンション建設」というキーワードで上位ヒットをさせて、集客したいとのことでした。
「SEO対策の予算はたくさんある」とのことで、せっかくのご相談だったのですが、お客様にとって費用対効果の合わず、メリットのないご相談だったので、すぐさまお断りしました。当社では、お客様が費用をかけてもアウトプットが100%を超えないと予想されたら、ご支援をお断りすることにしています。
なぜ費用対効果が悪いのか、その理由をお答えしたいと思います。
SEO対策のご相談のあった企業の事情
SEO対策のご相談のあった企業様のご事情は、次の通りです。
- 埼玉県の地方都市の建設会社。
- 本社と営業店が駅前に2~3か所。従業員数は50名程度。
- 土地の活用を求めている人に不動産投資を提案したい。
- 今まで20~30棟ほど立てて、実績がある。
- 想定しているSEOキーワードは「土地活用」や「マンション投資」を含むロングテールキーワード。
- 今までSEO対策はしたことがない。
このご事情を分析すると、ご相談のあった企業様は、地域密着ビジネスをなさっています。扱っている商品のPR方法はたくさんあると思いますが、SEO対策という限定された手法のご相談でした。
原因と結果の法則で考えると?
このご相談を、ジェームズ・アレンが述べるところの「原因と結果の法則」で考えてみたいと思います。
原因と結果の法則とは、「何かの原因があって、今の結果がある」という、当たり前の法則です。顧客のことや競合他社のことなどの客観情勢、検索エンジンの性質などを考慮し、この法則に基づいて、じっくり考えられるようになると、なぜダメなのかが見えてきます。
SEOキーワード「土地活用」で上位ヒットできたら?
最初に、「土地活用」で上位ヒットできたときのことを考えてみましょう。すると、なぜこのご相談が、お客様にとって費用対効果が合わないのかがわかります。
まず、「土地活用」で検索している人は、どのような人でしょうか? すべての人が、業者を探していないことは容易に想像できます。
- 土地活用の方法にはどのようなものがあるのか知りたい人
- 「土地活用」という言葉の意味を知りたい人
- 上位ヒットしている企業を分析したい人
- 実際に土地活用をやりたくて、業者を調べている人
ちなみに、「土地活用」でGoogle検索されている月間回数は、3,600回/月でした。1人当たり、2回検索していて、他の検索エンジンも併せたら、「土地活用」で検索している人の人数は、おおよそ2,500人/月ほどだと計算できます。
これらの中で、業者を探している人は僅かのことでしょう。仮に業者を探している人の割合を5%とすると、月間125人ほどと推定されます。
ただし、業者を探している全ての人がお問い合わせをするわけではなく、その割合を10%とすると、月間12人ほどです。
「土地活用」で検索する人のいる場所は?
仮に、業者を探している人は、どこにある土地を活用したいと思っているのでしょうか?
ご相談のあった企業が根拠地としている、埼玉県の地方都市の人口は、30万人ほどですので、日本全国の1億2,570万人と比べて、たったの0.24%に過ぎません。その周辺都市も商圏に入れたとしても、せいぜい1%ほどでしょう。
がんばって、さいたま市や東京24区まで出張して建設工事を行ったとしても、出張費が高くついて赤字になるので、周辺都市までを商圏とすることが現実的です。
すると、「土地活用」で上位ヒットしてご相談があったとしても、99%のお客様のご相談を、お断りしなければなりません。
そうしたら、お問い合わせをする12人の中の1%ですから、1ヶ月当たり0.12人となります。そこからさらに、お問い合わせのあった人の中からご発注がある割合を1/4とすると、1ヶ月当たり0.03人。つまり、3年に1回ほどのご注文ということになります。
「多大なSEO対策の費用と手間をかけて、3年に1回のご注文は魅力的ですか?」という質問をさせていただき、お客様はギブアップされました。
もし、「それでも『土地活用』でSEO対策したい」とおっしゃった場合には、次の2つのことをご説明しなければなりません。
そもそも業者を探している人は「土地活用」という単ワードで検索するのか?
ご相談のあった企業様は建設会社です。マンションを建てるときは、1社のスタッフだけで建てるのではなく、型枠工事、電気配線、内装工事など専門性のある協力会社に協力してもらって建てるはずです。
では、ご自身の会社で、このような協力業者を探すときのことを想定してみてください。
例えば、型枠を施工してくれる業者を探しているとしましょう。そのときに、「型枠工事」や「型枠 施工業者」といったキーワードで検索するでしょうか。いえ、「型枠工事 埼玉県」などの地域名のキーワードと併せて検索するはずです。
仮に、「型枠工事」で検索し、上位ヒットしてきた企業が北海道や沖縄を拠点としている企業だったとしたら、そこに依頼するでしょうか?
そのようなムダなことはしないはずです。それにもかかわらず、自社のことになると、そのことに気が付かない場合があるのです。
そもそも大手不動産会社よりも予算を掛けられるのか?
さらには、「土地活用」で検索した場合、上位ヒットする企業は、大手不動産会社や情報サイトばかりです。それらの企業にSEO対策で勝つためには、ランチェスターの法則で述べると、それらの企業よりも予算をかけることが基本です。
大手不動産企業が、SEO対策の外注費にどれぐらいの予算を割いているか不明ですが、おそらくはトータルで年間1億円以上使っていることと推測されます。SEO対策費に1億円を毎年かけ続けて、3年に1件の注文をもらうことは、割に合わないことでしょう。
そのような客観情勢の中で、当社のようなコンサルティング会社にご相談いただくことは、とても名誉なことだと感じました。
ムダなSEO対策をしていないか?
SEO対策を効果的に行うと、場合によっては、3年ほどの継続で売上高を数倍に増やすことも可能です。しかし、ホームページで集客するためには、SEO対策だけでなく、お問い合わせをもらうためのシカケも必要です。
つまり、SEO対策をしている企業で、集客できていない理由には、主に次のことがあります。
- 効果の薄い検索キーワードでSEO対策している
- ホームページの訴求力が弱い
- 市場がない
- ビジネスモデルに問題がある
すでにSEO対策を業者に依頼している中小企業で、「ムダなことをしているかもしれない」と思われた方は、ぜひ当社までご相談ください。
では何をしたら効果的なのか?
ご相談のあった企業様は、何をしたらいいのかをご説明いたします。
それでもSEO対策したい場合
リスティング広告の活用
それでもSEO対策したい場合は、その場合は、リスティング広告をご活用ください。リスティング広告は、お金をかけたら、SEO対策が難しいどのようなキーワードでも、検索結果の上位に自社ホームページを掲載することが可能です。
それによって、どのような検索キーワードで集客ができるのかを分析し、集客効果の高い検索キーワードを発見したら、そのキーワードでSEO対策したら良いと思います。
ロングテールSEO
ロングテールSEOとは、簡単に述べると、難易度が高い単ワードのSEO対策ではなく、複合キーワードでのSEO対策で、なおかつ、たくさんの検索キーワードでSEO対策することです。
「土地活用」であれば、「土地活用 地域名 おすすめ方法」や「土地活用 〇〇駅前 相談」などの複合キーワードでのSEO対策です。地域密着ビジネスの場合、地域名や駅名などを含めた複合キーワードでのSEO対策がおすすめです。
チラシの活用
地域密着ビジネスの場合は、チラシが有効な場合が多いです。不動産投資であれば、土地活用をしている人は、新聞を読んでいる人が多いことでしょう。ですので、新聞折込チラシをすることが一つでしょう。
また、土地を運営されている人は、大きなご自宅をお持ちのことが多いです。そういった家に、不動産投資のチラシをポスティングしていくことも、効果がある可能性があります。
不動産投資を検討する場合は、タイミングがあるはずです。チラシを撒いたときに、たまたま不動産投資を検討している人がチラシを見てくれます。ですので、チラシは何回も撒くことが大事です。
チラシとホームページを連動させることで、チラシだけでは伝えきれないことを、ホームページで伝えることが可能です。例えば、キャンペーン情報をチラシに記載しておき、QRコードのURLにアクセスすると、キャンペーンの詳細が見られるようにするといった具合です。
もし当社が何でもご支援させていただけるなら何をする?
もし、ご相談のあった企業様に、もし当社が何でもご支援させていただけるのなら、どのような支援をするのか述べたいと思います。
もし経営のご支援ができたら何からするか?
今回のご相談はSEO対策でしたので、経営のアドバイスはいたしませんでした。仮に、ご相談のあった企業様のご支援させていただくとしたら、まず次のことを確認します。
- 長期ビジョンは?
- 長期ビジョンを実現するための長期経営計画が?
- 長期経営計画を実現するための短期経営計画は?
- 短期経営計画を実現するための販売方針は?
これらのものがなければ、最低でも短期経営計画から販売方針を策定していただきます。
これらのものがそろっていた場合、販売方針に矛盾や間違いがあったら、まずそれを指摘させていただきます。そして、客観情勢に対して商品やサービス、ビジネスモデルなどに問題があれば、そこの改善から入ります。
商売は、強みのある商品・サービスがあり、それを販売する力があることで成り立ちます。また、売れ続けるためには、長期的にどのようにしていくのかの方針と改善も大事です。
もし営業全般のご支援ができたら何をするか?
もし営業全般のご支援であれば、次のことを行うと思います。
- ペルソナ分析と競合他社分析
- 商品・サービスの改善提案
- 販売計画や販売方法の改善提案
- PR施策実施
ペルソナ分析と競合他社分析は、マーケティングの3C分析による市場分析と強みの発見を行います。また、商品・サービスならびに販売計画や販売方法の改善は、クロスSWOT分析やバリューチェーンの分析などによって行います。
このようなフレームワークを用いて分析することで、計画の致命的な見落としを防ぐことができます。
また、事業経営は多くの人がかかわるものです。その人たちに協力してもらうためには、社長の考えや方針を納得してもらう必要があります。導きだされたPR方法が、考えうる最適解であるという根拠を示すためにも、フレームワークによる分析が大事です。
先ほども述べましたが、PR方法がいくら良くても、商品やサービスに価値を感じてもらえなければ売れません。
商品やサービスの基本価値を満たしているか検討し、満たしていない場合は改善を行います。また、顧客ニーズに合った強みを付加価値として加えていく検討も行います。
土地活用をしたいと思っている人のペルソナを考えると、おそらくはインターネットで気軽に業者を探すことはしないと思われます。まず相談する人は、税理士や会計士などのコンサルタント、実際に土地を運用している知り合い、取引のある地元の不動産会社でしょう。
ですので、ホームページの改善とともに、新聞折込チラシや地元の大きなご自宅にチラシのポスティングすることをアドバイスすると思います。しかも、月1回以上、何度も何度もポスティングし続けることをおすすめすると思います。
当社では、せっかく発注する気がいっぱいのお客様でも、ご事情を考慮して費用対効果が合わないと判断される場合には、ご支援をお断りする場合があります。
今回のようなSEO対策といった販売戦術のご相談ではなく、できれば、営業戦略のご相談をいただけたら、より良いご提案ができるかと存じます。
営業力の強化をお考えの企業様は、ぜひ当社の集客コンサルティングをご検討ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。