初めて起業する人にとっては、起業のハードルは高いと感じるものです。
ところが、1回でも起業したことのある人にとっては、「簡単だ」と感じます。なぜなら、勝手がわかるからです。
「起業は簡単にできても、利益を出すことは難しいのではないか」と思われた方もいることでしょう。それについても、利益を出す方法がわかっている人からすると簡単なのです。
このコラムでは、これから起業したいと思っている方に向けに、起業でのよくある悩みごとや思わぬ失敗にお答えしたいと思います。
「起業して、しっかりと経営していけるように学びたい」とお考えの方は、当社にて毎月定期開催している零細企業の社長や中小企業の経営幹部向けの社長セミナーをご利用ください。
起業は簡単!?
さっそく、起業は簡単なのか、難しいのかをご説明していきたいと思います。
事業を始めるための難易度が高い業種
起業の難易度は、業種によって異なります。業種による難易度には、2つあります。
- 設備投資の大きさ
- ノウハウの難易度
設備投資の大きさ
事業を始める難易度の高い業種は、多くの設備投資を必要とする業種です。設備投資には、土地や施設、設備などがありますが、これらの費用がたくさん必要とするものは、起業の難易度が上がります。
設備投資の費用が非常にかかる事業としては、製鉄業や造船業がそうでしょう。「将来、製鉄所を起業したい」と思った人に相談されたら、「国策で支援してもらえないとムリでしょう」となります。
もっと身近なものとして、「パン屋さんをやりたい」という場合でしたら、難易度がグッと下がり、個人レベルでお金を貯めて起業することもできます。
このように、どのような事業で起業したいのかによって、難易度が大きく異なる場合があります。事業経営の経験がない人であれば、できれば設備投資の小さい事業での起業を検討してください。
ノウハウの難易度
たくさんのノウハウを必要とするために、起業が難しい業種もあります。ノウハウが必要なものとしては、例えば病院でしょう。固定費を安価に抑えて内科クリニックを経営したいと思ったら、自分、もしくは家族のだれかが医師免許を持っていた方が良いです。
「誰も医師免許を持っていないので、医者を雇ってクリニックを経営しよう」とした場合、生活品の店舗経営とは異なるクリニック経営特有のノウハウが必要です。
「フランチャイズですべて教えてもらえるから安心」という事業もあります。コンビニ経営や、高級食パンの店舗経営などがそうです。フランチャイズで起業の難易度が低くなってくれば、「起業したい」という人が出やすいので、今度は黒字経営のための特別なノウハウが必要となる場合があります。
1人で起業する場合
リスクを低くして起業する場合は、自分1人もしくは夫婦で起業する事業が良いでしょう。人を雇うと、必ず給料を支払わなければいけませんので、利益が出ないうちから固定費がかかってしまうからです。
起業したての頃に、もっとも経費を必要とするものが、おそらくは人件費です。利益が出ないうちは、準備資金がみるみる減ってくるので、社長の気持ちは不安だらけになり、さらに経営を悪化させてしまう場合もあります。
やはり、1人で起業できる事業は気楽で良いです。気楽さに安心して、事業拡大が止まることもあるので、別の意味で要注意の場合もありますが。
小さな事業で起業する方法
例えば、サービス業を1人で起業する場合は、実は簡単です。起業するための最初のハードルをご紹介しますと、次のようなことです。
- 個人の銀行口座を開設すること
- 事業を開始すること
- それから1カ月以内に、開業所在地の税務署に開業届を提出すること
すると、個人事業主で起業したことになります。
開業日をいつにするか?
パン屋さんや飲食店などの店舗販売であれば、店舗を開店すること。ネットショップであれば、ホームページを開設した日を開業日としたら良いと思います。
自宅でホームページ制作などの役務提供を行う場合は、制作を開始した日や、「今日から開業したぞ!」と自分一人で宣言した日を開業日としたら良いと思います。
税務署への開業届は紙を出すだけ
私が初めて開業届を出したときは、重苦しい気持ちで自宅から歩いて税務署に行ったのですが、書類を提出すると、税務署の女性スタッフに「はい、受け付けました」と言われた程度で、あっけなく終わってしまったことにびっくりしました。
その他の手続は、税務署に相談をお願いしたら、丁寧に答えてくださいます。私は、ときどきわからないことを相談しに行っています。
「開業届を出してしまったら、費用や税金がかかるのではないか?」と思われた方もいらっしゃることでしょう。ところが、開業届に手数料などといった費用はかかりませんし、売上高が低すぎたら、税金はかからないのです。
起業の何が難しいと感じるのか?
起業をするときに、一番心配になることは、やはり収益でしょう。起業して生活できるほどの収益が得られるのかが、最初のハードルです。
収益を得るためには、販売をすることです。小企業までは、社長が考えるべきことの大部分が販売についてです。
販売は難しい?
販売とは、簡単に述べると「商品やサービスを提供して、お金をいただくこと」です。商品やサービスを提供して対価を得ることです。
「起業をしたら、販売は難しいのではないか?」と思わるかもしれません。確かに難しいと思います。販売に慣れていなければ、何をしていいのかわからないことでしょう。
販売をするためには、BtoCであれば、リアルやネットで店舗を開きますが、店舗を出すことの難しさや、集客の難しさがあります。
BtoB企業であれば、銀行口座を開設し、製品や役務を提供したら請求書を出して、銀行振込をしてもらうことが一般的です。そのような商取引の流れを知っている必要があります。
販売方法は業種によって異なるので、どういった方法で販売したら良いのか一概にご説明できませんが、販売ができなければ、起業はできません。
「販売しないで収益を得る方法はありませんか?」と相談されても、そのような方法は、特殊な事情がなければありえません。
営業が難しい?
販売ができたとしても、営業が難しい場合があります。実際に、起業後にもっとも難易度の高いものが営業だと思います。
営業とは、簡単に述べると、どのような顧客に対して、どのような商品やサービスを提供していくのか、商品やサービスの値打ちをどのように伝えるのかなどを考えることです。販売は、対価を得るための実施内容ですが、営業はマーケティングや戦略寄りのことです。
商品やサービスを販売するためには、まずは起業したことがターゲット層に知られないといけません。また、商品やサービスの魅力が伝わらなければ売れません。値決めも大事です。
大前提として、良い商品と良いサービスがあっての営業です。
私の場合は、会社を辞めるときには、事前に個人事業主の開業届を出していたと思います。そして、会社を退社する前に、お客様にご挨拶をしていったら、「では、起業されたら平野さんに仕事をお願いしたい」と何社からも言われて、ありがたくも困ってしまったこともありました。
一所懸命お客様にご奉仕をして、お客様にかわいがられていたら、お客様から自分を指名してくれるようになることもあります。
営業については、営業コンサルタントなどの専門家に相談したり、営業の書籍を読んだりして勉強しておくことを、強くおすすめします。
儲かる事業に手を出さない理由
私にとって営業や販売は、起業をしようと考えている人と比較すると簡単だと思っています。ですので、営業コンサルティングができているのだと思います。
お客様のご支援をしているときに、「なぜ他のもっと儲かりそうな事業をやらないのか?」と聞かれることがあります。
その理由は、次の3つのものを持っていないので、失敗する可能性が高いからです。
- 事業そのものに対するノウハウ
- 事業を継続させる熱意
- 事業活動を通じて世の中に貢献したいという使命感
事業そのものに対するノウハウ
これらの中で、最低限必要なものは、1番目の「事業そのものに対するノウハウ」です。今の事業は、素人が手っ取り早く初めて儲けられるものは、ほとんどありません。儲けが出るまでのノウハウが蓄積するまでに、とても時間がかかると思います。
事業を親から引き継いだり、事業を譲ってもらったりして、ノウハウを継承できることもあることでしょう。フランチャイズやコンサルティングでノウハウを購入することもできます。
そういったものがなければ、「何か儲かりそうな別事業で起業をしたい」という博打的なことは考えない方が良いでしょう。
事業を継続させる熱意
ノウハウを手に入れられたとしても、2番目に必要な「事業を継続させる熱意」が必要です。熱意のないところに継続はありません。
事業を自分で行うということは、誰かに指示されて働くわけではないので、自分で熱意を自家発電し続ける必要があります。
起業ができない理由は、熱意が足りないことが多いです。誰しも、初めて起業するときは恐怖心がありますが、熱意の高さで恐怖心を乗り越えることもできるのです。「仕方がなく起業した」という人を除いて、起業するためには熱意が必要です。
事業活動を通じて世の中に貢献したいという使命感
その熱意はどこから来るのかは、3番目の「事業活動を通じて世の中に貢献したいという使命感」です。
熱意を高めるものは使命感
熱意は維持できたらそれでいいのですが、ときどき熱意が下がって、仕事のやる気が失われる場合もあります。そういった場合には、使命感が大事になります。
事業活動の対価は、必ずお客様にご奉仕して得られます。お客様に対して、いやいや仕事をしていたら、いい仕事ができません。いい仕事ができなければ、対価が得られにくくなります。
お客様へのご奉仕は、「事業活動を通じて、世の中を良くしたい」という使命感です。社長それぞれに、良い世の中とはどのようなものなのか異なると思います。
人によっては、「環境問題を解決したい」や「多くの子どもの知性を伸ばして、立派な人を輩出したい」といったものです。その使命感は、社長が今まで経験してきたこと、考えてきたことから生まれてきます。
仕事に使命感が感じられない人は?
仕事に使命感を感じられない人は、仕事に対する面白さを感じていないと思うので、その事業では起業しない方が良いと思います。使命感を感じず、面白くない仕事で、いい仕事ができることはありませんので、リピーター客ができにくく、事業が安定しにくくなります。
使命感を発見したい人は、過去の成功体験を振り返ったり、何を考えてきたのかを思い出したりしてみてください。そこから、自分が何を目指してきたのか、目指しているものが最大化したものが実現したいことです。それを考えることで、使命感が生まれてきます。
「使命感を感じる事業を発見したいが、なかなか見つからない」という人は、当社のビジネスコーチングをご利用ください。
起業して儲けられるための定石
ほとんどの人は、起業する理由は「儲けたい」ということだと思います。儲けるための定石について、ご説明いたします。ただし、ここでご紹介する内容が、完全に正しいとは言えません。時と場合によります。
少しずつステップアップしていく
私は、物流に関してビジネススキームやトヨタ生産方式などの知識をある程度持っているのですが、物流事業で起業するためのノウハウはありません。スキームを知っていても、素人が成功するほど、ビジネスは甘くありませんので、私が物流事業で起業することは、今後一切ないでしょう。
仮に物流事業を始めたいと思っても、いきなり物流事業を大々的に始めるのではなく、物流に付随する小さく始められる事業から手を付けるべきです。そして、少しずつ事業を拡大していき、ノウハウや資本金などの準備ができてから物流事業を行っていくことが大事です。
例えば、ECサイトを運営することから始めて、小規模の物流を行い、それを横展開で事業を拡大していって、「物流企業の経営とはどういったものなのか」を肌で感じて、実績を積んで、いずれ物流事業を行うという具合です。
興味のある事業で起業すること
ある程度、経営のノウハウを積んだら、何をやっても成功させられることもありますが、最初の起業では、興味があるものに絞った方が良いです。
先ほど、使命感のところの内容と被りますが、興味が湧いてこない分野で、「何やら、この事業が儲かるらしい」ということで始めたものは、たいてい博打的になります。ある程度、事業が大きくなったとしても、情熱の湧いてこない事業は、いずれつまずくことが多いです。
参入障壁が高いのに自分ならすんなり乗り越えられる事業が有利
素人でもビジネスができてしまうようなものは、参入障壁が低いので、競合他社が多くなり、事業を継続させることが難しくなります。
飲食店やホームページ制作は参入障壁が低い代表例です。そういった事業は、需要よりも供給が多くなりやすく、価格競争が起こって、倒産しやすいのです。ホームページ制作では、固定費が小さいので、組織化しなければ倒産は少ないかもしれませんが、同業他社が多いので、アルバイトのお給料と同程度の利益すら得られないこともあります。
ともあれ、参入障壁が低くない事業であったとしても、何らかの付加価値があり、隠し味の部分がなければ、経営レベルの高い人にすぐに真似されてしまって、市場を奪われてしまうことが世の常です。
参入障壁が高すぎたら、競合他社が生まれにくいのですが、今度は自分が起業するハードルも高くなります。できれば、参入障壁が高いけれども、自分ならすんなり乗り越えられる事業が望ましいです。
そういった能力のことを、「強み」と言います。強みで起業すると有利だということです。
追い風が吹きそうな事業で起業
追い風が吹きそうな事業とは、これから伸びそうな事業のことです。すでに追い風が吹いている事業は、誰もが事業の参入を試みるので、競合他社が多くなります。
できれば、追い風が吹く前の事業が理想的です。そういった事業を先見力でもって発見して、すぐに利益が得られるように入念に準備してください。
たとえ向かい風の事業であっても、「その事業をぜひとも成功させたい」という熱意があり、何らかの勝算があり、売上がなかなか上がらなくても熱意を維持できれば、参入しても良いと思います。
定石には他にもたくさんあります。当社が毎月定期開催している社長セミナーにぜひご参加ください。
家族の理解
起業するためには、家族の理解が大事です。結婚して子どもがいるご家庭では、特にそうなります。
経営コンサルティングの相談で多いのですが、家族の理解が得られない場合は、事業を邪魔しにくることが多いです。
奥様が起業を止める理由
旦那さんが起業したいという場合、必ずと言って良いほど、奥様が止めにかかります。奥様は生活が心配になるので、旦那さんの起業を止めにかかることは理解できます。
起業という得体のしれない、儲けられるかどうか保障はなく、奥様ご自身も何をしたらいいのかノウハウはゼロ。世間的には、起業で失敗して借金まみれになる情報は、すぐに入ってきます。誰に相談しても「止めた方が良い」と言われる中で、「起業してもいいよ」なんて言えません。
起業したら起業したで、旦那さんは働きっぱなしです。家族と疎遠になる場合もあります。
奥様がそういった心配をされる場合は、説得を試みる方は多いと思います。しかし、説得は得策ではありません。起業のタイミングが迫っていていても、焦らずに次のタイミングを待ち、時間をかけてでも奥様が納得されてから起業した方が良いと思います。
奥様を説得して起業しようとすると、奥様に精神的負担がのしかかって病気になったり、子どもが入院したりといった不幸が重なって、安定した収入が必要となって起業できなくなるケースも少なからずあります。
奥様が「起業しても良い」と言ってくれるパターン
すぐさま「起業してもいいよ」と言ってくださる奥様は、ほとんどの場合が奥様のご両親が起業経験のある人で、それを見て育った人か、奥様に充分な別収入がある場合です。
奥様がご両親の事業を見て育った場合は、事業の感覚をつかんでいることや、悩みがあったら両親に相談することができるので安心です。
また、奥様に充分な別収入がれば、起業直後で収入が少ないときでも、家庭を支えてくれる場合が多いです。
「起業してもいいよ」と言ってくださる奥様を選んだことは、とても幸運なことですので、感謝すべきです。
奥様が起業する場合
反対に奥様がキャリアアップを目指す場合は、旦那さんの理解が必要です。旦那さんがある程度の収入があれば、「チャレンジしてみなさい」と言ってもらいやすいですし、旦那さんにビジネスの知識があれば、アドバイスをもらうこともできます。
そして、旦那さんの性格で、大事なことがあります。それは、奥様の「キャリアアップをしたい」という気持ちを理解してくれるだけでなく、家事をやってくれたり、しばらく相手をしなくても、機嫌良くやってくれたりするかどうかです。
旦那さんが起業するとしても、奥様が起業するとしても、伴侶の理解がなければ、家庭が崩壊することはほぼ確実です。
結婚前から、将来起業をしようと考えている人であれば、伴侶となる人が起業に対して、どのような考えを持っているのかを事前に確認しておいた方が良いです。
起業は小さく始めよう
大企業に勤めている人で、「そこで得たノウハウを活かして起業したい」と考える人は、大きく始めたがる人が多いです。「銀行からたくさんお金を借りて、事務所を借りて、人を雇って・・・」と計画を立てるのですが、多くの人がお花畑のような、甘い計画を立てられます。
お花畑のような甘い計画ですと、起業したら花火と同じで華々しく散っていくことが、ほとんどです。起業して、経営がうまくいかず、まもなく花火が爆発しそうな段階で、当社にご相談に来られても、手の打ちようがありません。できれば、起業する前の段階で、ご相談いただきたいものです。
成功している企業は、たいてい小さく始めノウハウを溜めていき、成長を目指して経営している中で、あるとき急に大きくしていることが多いのです。最初から急に大きくしたいと思っても、起業時とは異なるノウハウが蓄積されるまで、大きくなりません。
会社を大きくすることを目標としても良いですが、それは運に託すように考え、目指している企業規模の社長の努力の仕方や実力を手に入れることを目標とした方が良いです。
以上、起業をしようと志している人に対して、私が経験してきたことを含めて、基本的なことを書いてみました。
これから起業しようと考えている人にとって、何らかの参考になれば幸いです。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。