今回は今までと少し違ったテーマとして、中小企業に就職した人が、その会社で出世するための条件を述べたいと思います。
この記事のタイトルには「中小企業」と書きましたが、想定した企業レベルは、従業員数が10名以下の零細企業です。
そういった小さな会社では、人材を育成する仕組みは出来ていませんし、就労規則や会社のルールはほとんどありません。そういった会社に新卒で入社したり、大企業から転職したりすると、あまりにも仕事内容が固まっていないので、最初は困惑することがほとんどです。
そのような小さな会社に就職した人が出世するためには、ただ一つ、すべての権限を持つ社長に引き上げてもらうことです。そのためには、さまざまな条件があります。また、スピード出世は期待できませんので、ご了承ください。
そこで、中小企業に入社して、うまくやっていける条件、つまりは出世できる条件をまとめました。出世には他にも条件があると思いますが、「大事だ」と思われたことは、ぜひお試しください。
また最後に、中小企業でも出世できる理想的な社員に、会社に居続けてもらう方法を述べたいと思います。中小企業の経営者には、どのような社員が出世させるべきなのか、またそういった社員への待遇の仕方も参考になると思います。
出世するまでに退職しないこと
入社した会社で出世するためには、その会社に居続けなければなりません。つまりは、退職を願い出ないことです。
一度退職してしまったら、その会社には、よほどのことがない限り、戻ることができません。愛社心が芽生えるようであれば、その会社に居続けたら良いと思いますし、愛社心が出てこないようであれば、その会社にいても能力が高まりにくいので、別の会社に転職した方が良いです。
社長は、社員個人に愛社心があるかどうかを見抜いてしまいます。愛社心のない人は出世させられないことが世の常です。
愛社心がなかったとしても、「石の上にも三年」と言われるように、社長や古参社員がいい人たちであれば、2~3年ほどで愛社心が出てくる場合があります。
社員が退職する理由の多くは人間関係だと言われています。会社の業績が急転直下したのであれば話は違ってきますが、会社で私利私欲の気持ちを出さずに、何があっても我慢できれば、たいていは長く居続けることができます。
長く仕事を続けられるためには、仕事内容が自分に合っていることも大事です。プログラミングの仕事をしたいと思っている人が、たまたま飲食店に就職して愛社心が出てきたとしても、長続きするかどうかです。
社長から古参社員よりも気に入られること
最初に、古参社員のことを書いておきたいと思います。小さな会社の古参社員は、一般採用された人ではなく、社長の身内や知り合いがほとんどです。
古参社員の中には、社長から絶大に信頼されている人もいます。その古参社員から嫌われたら、出世はほぼ諦めることになります。
たいていの社長は、新入社員と古参社員を比べると、古参社員を優先する傾向があります。「今まで、わが社に貢献してくれた」という恩義があるからです。
いつも否定的な発想をする古参社員に嫌われてしまったら、古参社員から自分のダメな部分のみが社長に伝わります。社長の部下を見る目が弱かったり、古参社員の言うことを鵜呑みにしてしまう社長であったりした場合は、社長から「出来ない人間だ」とレッテルを貼られてしまいます。
その古参社員が、社長の奥様だったら、出世は諦めてください。(奥様のことについては、後ほどご説明いたします。)
入社したら、社長だけでなく、できれば権限を持っている古参社員にも気に入られるようにしてください。社長と古参社員がケンカしている場合は、どちらにも同調しなで客観的な立場でいるようにしてください。
社内の空気に少しずつ慣れてきたら、馴れ馴れしくしないで言葉や態度に気を使い、古参社員と競争しないようにしつつ、私利私欲は出さずにしてください。できるならば、古参社員が社長から認められるように導いて、ときには成果を譲ることも大事です。
もし、古参社員に「謀反の疑いがある」と誤解されてしまった場合は、こみ上げてくる憤りの気持ちを抑えて、言い訳しないで、疑いを持たせてしまったことを謝り、謀反が誤解であることを素直な気持ちで伝えることです。
会社が発展すること
当たり前のことですが、会社が発展しなければ、出世はまずありません。
社長が「会社を発展させたい」という気持ちを持っていなければ、会社の発展はあり得ません。その場合は、出世をあきらめてください。
また、社長が「発展させたいという」気持ちを持っていた場合でも、零細企業では、社内には仕事能力の高い人ややる気のある人がいないことが現状です。
そういった会社で出世を目指すのであれば、自分自身が自家発電してやる気を出し、「社長や他の社員のために自分が会社を発展させるのだ」という気持ちを人一倍持つことが大事です。
社長が「何でも自由に取り組んで良い」という経営スタイルを持っていたら、実務を早めに片付けつつ、新規事業などに取り組むと良いと思います。また、発展していく前兆が見えたりしたら本気で「会社を発展させたい」という気持ちが出てきて、勢いが出てくる可能性もあります。
実績を積み上げること
中小企業でも大企業でも同じことですが、出世の必要条件は「会社が求めている成果出して、実績をつくること」です。それが積みあがってくると、その量に応じて出世していきます。
社長に求められる実績はさまざまです。部門によって異なります。人材育成の実績、販売や売上高に貢献、新商品開発などの実績を出すことです。そのような実績を蓄積し続けます。
そうすると、実績に応じて、新しい仕事にチャレンジすることが認められます。
社長によっては、新規事業にチャレンジさせてもらえない場合があります。その場合は、社長に「仕事を早く終わらせて、空いた時間で、会社に迷惑が掛からないように新規事業を推進させていただいても良いでしょうか?」と、提案してみてください。たいていの社長は、OKを出してくれると思います。
新規事業が軌道に乗ったら、社長から褒めてもらえますが、そこでうかれてはいけません。「社長の先見力の賜物です。社長がOKしてくれなければ、新規事業はありませんでした。また、他の方々が支えてくださったからです。」と、社長や他の人たちへの感謝を忘れず、謙虚な姿勢でいてください。
そして、その手柄を自分一人のものにしないで、うまく社長や古参社員と共有できるようにしてください。すると、社長や古参社員は自分自身のことを高く評価してくれるはずです。
どのような仕事でも素早く対応できること
中小企業で求められる仕事能力は、専門職の仕事能力と、「何でもできる」というオールマイティな仕事能力です。また、どのような仕事でも素早く対応できることが出世の条件になります。
事業活動は、競合他社と戦って勝つ必要があるので、自分自身の能力が、競合他社の優秀な社員よりも優れている必要があります。専門職の仕事能力は、自社内のメンバーと比較するのではなく、競合他社の優秀な人と比べてください。
また、オールマイティな仕事能力を身に付けたら、まずは、社長の雑務を取り上げることで、社長が営業や未来事業のことに集中できるようにすることです。場合によっては経理の仕事を任せられることもあります。
通常の実務を高いレベルでこなしつつ、社長の仕事も代行していきます。そこで、スピード感が大事になります。
「スピードが速いね」と言われたら、評価された証拠です。「君のおかげで、仕事が楽になったよ」とか「トラブルが減ったよ」と言われたら実績として認識してもらえています。
自力で仕事能力を高めること
仕事能力が高くても、それに甘んじていたら出世が遠のいてしまいます。実績が出せたら、会社が成長していきます。会社が成長していくと、出世してリーダーに抜擢されたり、部下ができたりするわけですから、その成長に合わせて、自力で仕事能力を高めることです。
従業員数が10人ほどの会社に入社したのであれば、その会社の業務は仕組みで仕事ができていないと思います。その規模の会社ですと、社長がたくさんの仕事を抱えていることが多いです。お客様の御用聞きをしながら仕事をもらっていることが、主な理由です。
商品を体系化し、業務の仕組み化し、新入社員を育成するのも仕組み化し、社員が増えても業務に支障が出ないようにします。
従業員数が10人の会社が成長して30人になったとしたら、それに貢献した人は5~10人の部門を任されることと思います。そこでは、その部門で成果を出すことや、部門の仕事を円滑に進めるためのマネジメント能力が求められます。
いずれは、社長の補佐役に出世していきますが、そのときには経営計画を立てたり、経営理念の作成を支援したりできなければいけません。
そのように、自分一人だけの実績を出すのではなく、組織として働いて実績を出せるようにならなければ、出世は止まってしまいます。
このときに必要となる能力は、経営の知識や知恵とコミュニケーションスキルです。このどちらも、実践で学ぶとなると時間がかかるので、セミナーや書籍などで勉強することをおすすめします。
当社で開催しているセミナーであれば、経営の知識や知恵を得たい場合は小さな会社の社長のためのセミナーをおすすめします。また、コミュニケーションスキルを鍛えるためのセミナーとして、ビジネスコーチ養成講座を開催しています。ぜひご利用ください。
社長の地位を脅かさないこと
仕事能力が高すぎて、優秀過ぎるところを見せると、社長が警戒心を持つことがあります。社長は、「自分の地位が脅かされるかもしれない」と勘違いする場合があるからです。
社長の地位が脅かされる場合というのは、優秀な社員が独立して、自社の競合他社になる場合です。しかも、他の社員を引き連れて辞めてしまうことです。
社長とのコミュニケーションの頻度が少なくなってくると、そのように勘違いされることもあります。
社長に対して、明るく接しつつ、社長が知りたいと思う情報を伝えたり、会社にとって良いと思うことを提案するようにしてください。また、ときどき社長を居酒屋に誘って、社長の自慢話を延々と聞いてあげることも大事です。
社長の良いところを発見しリスペクトすること
また、仕事能力が高くなってくると、社長の粗が見えてくることがあります。その粗を、同僚との飲み会で披露してしまい、尾ひれがついて社長の耳に入ってしまったら、どうなるでしょうか?
仕事能力が高まるのと同時に自制心を高め、社長の粗探しをしないようにしてください。社長の粗を埋められる人が、優秀な社員なのです。
そして、社長の良いところを発見し尊敬することです。それを違和感のないように褒めることです。気持ちがこもっていたら、褒められて嫌がられる人はいません。また、社長の良いところを仕事に活かせたら、なお良いです。
社長の良いところを発見しリスペクトすることは、社長におべんちゃらを言うことではありません。人の気持ちを見抜いてしまう社長の場合、おべんちゃらで社長を褒めたら、社長は違和感を覚え、その人を信頼しないと思います。
社長を心からリスペクトするようにしてください。
他の社員は、実績を出している社員が社長をリスペクトする気持ちを見て、「社長にもいいところがあるのだな」と気が付いたり、「社長は実は立派な人なのだな」と感じたりして、会社の中で社長を持ち上げる雰囲気が出てきます。
すると、社長もその雰囲気に応えるかのように、成長意欲が増したり、威厳が出てきたりします。
社長の悩み相談に対応すること
社長から悩み相談を受けるようになると、社長から信頼されている証拠となります。しかし、そこで浮かれていてはいけません。
本当に優秀な社員は、そこでコーチングをするのです。
自分自身よりも、社長の方が人生に長けています。社長の悩みに対して、意見を求められたらそれに応えたら良いと思いますが、基本的には社長に質問をして、社長ご自身で結論や解決策を導き出すようにしてください。
コーチングで話した内容をレポートにまとめ、後で社長に提出すると良いでしょう。
また、会社の問題を解決するための方策を思いついたとしたら、そのレポートや企画書を作成して、社長に提案すると良いと思います。すると、何らかのプロジェクトを任されることもあるかもしれません。
時には、社長から家庭問題の相談を受けることもあります。社長から奥様や家族の相談を受けるようになったら、社長から信頼されている証拠です。
家族関係の悩み相談であれば、その場で受け答えをすれば良いと思います。ただし、社長の悩みに同情しつつも、ご家族の悪口を言わないようにしてください。
社長の奥様に気に入られることも出世の条件
社長が男性の場合、社長に気に入られても、社長の奥様に気に入られなければ、出世できない場合があります。
会社によっては、社長の奥様が会社の方向性を決めている場合があります。小さな会社では、社長の奥様が相談役や参謀役の場合が多いからです。
社長の奥様に気に入られるポイントは、まず品性です。言葉遣い、真摯さ、清潔感などです。
社長と家族づきあいができれば、社長の奥様からも信頼されている証拠です。
しかし、ここで安心してはいけません。社長のご家族とも家族づきあいができたとしても、社長のご家族は自分の家族と異なります。親しくしつつも、どこかでビジネス的な感覚で距離を取っておいた方が良いです。
人の悪口は言わないこと
小さな会社の社長は、評判をとても気にする人が多いです。例え、どのようなことであっても、どのような場所であっても、友達との飲み会でも、社長や社員の悪口を言ってはいけません。どこで誰が聴いているかわからないからです。
また、社長でなく他人の悪口もご法度です。人の良いところを発見して、それを口にするようにしてください。悪口も誉め言葉も、間接的に伝わると、効果が倍増するのです。
人の悪口は、尾ひれがついて伝わるものです。また、社長に対して社員の悪口を言ってしまったら、その人も社長に対して自分の悪口を言う可能性があります。
また、社長の悪口を聞いた場合は、それに同調しないで、反対に社長の良いところを述べてあげられる人の方が出世しやすいです。
人の悪口を言わない人は、基本的に人が好きな人です。人が好きになれる人は、相手を理解し、相手の立場で考えられる人です。
このことをビジネス的に勉強したい場合は、先ほどご紹介したビジネスコーチ養成講座もおすすめですが、書籍ではデール・カーネギー著「人を動かす」がおすすめです。この書籍は、当社のセミナーにご参加されている方には、必読書にしているものです。
賃金を求め過ぎないこと
働いて成果を出したら、それに見合い納得できる給料がもらえたら理想的です。
しかし、中小企業では実績を出したとしても、給料やボーナスに反映されないこともあります。そこで、欲を出して、社長に「給料を上げてほしい」と言ったら、社長によっては、「私利私欲が強い人物だったのかもしれない」と警戒される場合があります。
仕事で成果を出していたら、給料は後からついてくるものです。会社が10倍以上に発展して、給与形態がきちんとできてくると、しっかり給料がもらえるようになると思います。
実績を出し、社長から信頼されているのであれば、間接的に給料を上げることを伝えることもできます。それは、「がんばっている社員の給料を上げてくださ」と他の社員の給料アップをお願いするのです。
もし、給料を求め、もっと自分の実力を試したいのであれば、転職するか起業するかのどちらかです。
転職の場合は、会社を発展させた実績を携えて転職したら良いと思います。かなり成果を出して、会社が大発展した場合には、引き抜きもあるかもしれません。
起業する場合は、前の会社で成功させた事業を独自で行えば良いでしょう。
起業したら、初期の集客は大変ですが、当社のWeb集客コンサルティングをご依頼いただけましたら、成果のお約束はできませんが何とかいたしましょう。できれば、起業する前にご相談いただき、経営計画を立ててください。
従業員数が50人を超えてきたら
従業員数が50人を超えてきて、会社のナンバー2や社長の補佐役に抜擢されたら、さらなる高度なスキルが求められます。
ナンバー2の仕事内容は、「企業のナンバー2の仕事とは?」をご覧ください。この記事には、ナンバー2の8つの仕事をまとめています。
ナンバー2に求められる仕事内容は、上記の求められる内容と似ている部分もありますが、社長に代わって会社経営ができるぐらいのスキルが求められます。また、会社の実印やお金を預かるぐらいの人物になるためには、より一層の誠実さや社長からの信頼感、会社に対する忠誠心が大事になります。
理想的な社員に会社に居続けてもらう方法
理想的な社員像をまとめましたが、これを読まれた社長の中には、「このような社員はいない」と思われたかもしれません。
ところが、ごく稀にいるのです。
そういった人材には、社長ご自身のためにも、会社のためにも、手厚い待遇をしてあげることです。高いお給料が出せないのであれば、普段からしっかり褒めてあげ、能力を伸ばし活かしてあげることです。
また、理想的な社員は、お給料のためではなく、自分の実績のためや、やりがいのために働いている節があります。中小企業につなぎとめるためには、「自社で働く意義」を伝えてあげることです。
社長は、社員に対してロマンチストのように「わが社はいずれ、このような立派な会社に成長するのだ」と未来を語り、将来の自分自身の待遇を期待してもらうことです。また、それを社員と共に実現していくことを社員に誓い、その実現方法を示すことです。
それを明文化したものが経営理念です。入念に練り込まれた経営理念を作成し、共有することで、理想的な社員が自社で働き続けてくれるようになります。
「優秀な社員のためにも、しっかりとした経営理念を作りたい」とお考えであれば、ぜひ当社にご支援させてください。経営理念作成支援の詳細は、経営理念コンサルティングをご覧ください。
また、優秀な社員は「社長から信頼され、期待されている」と知ると、大きな動機付けにつながります。器の大きな社長は、社員を信頼しつつ、成果を期待しないぐらいでちょうど良いと思います。社長としての器づくりも大事です。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。