商品やサービス(以下、商品)を開発し、それが予想通りに売れてくれたら問題ないのですが、売れてくれないのが世の常です。
今ある商品をどうしたら良いのか、その方向性を示してくれるのが、この記事でご紹介する商品分析です。
商品分析とは、自社が持っている商品をすべてリストアップして、それらを商品の性質や売れ行きなどで分類し、必要な対策を立てることです。
もし、商品の販売を強化したり、営業担当に気合をかけたりしても、売れ行きが伸びないのであれば、商品に対して正しい対策が打てていない可能性があります。
次の目次に沿って、商品分析フレームワークによる商品の分類と利益を出すための正しい対策をご紹介いたします。
商品分析の準備
商品分析をするための準備は、すべての商品をリスト化し、商品リストを作成することです。同じ商品であったとしても、色違いや寸法違いがあれば、それらもリスト化すべきです。あまりにも商品点数が多くなる場合には、商品をカテゴリ分けしても良いです。
Excelなどの表計算ソフトを使用すると便利です。すでに商品リストを制作されているのであれば、それを使用してもかまいません。
商品リストには、次の項目があると良いのですが、後で使用しやすいように、貴社オリジナルのものを作成してもかまいません。
- 通し番号
- 商品カテゴリ
- 商品名
- 型番
- 諸元
- 商品分析の分類
その他として、色やJANコード、担当者などを記載しても良いでしょう。
商品の分類と一般的な対策
商品リストができたら、すべての商品に対して、次の表に示す分類のどれに該当するかを記入します。
1 | 未来の商品 | 見えていない商品 |
---|---|---|
2 | 検討/開発中の商品 | |
3 | 主力商品 | 新商品 |
4 | 現在の商品 | |
5 | 過去の商品 | 要修正の商品 |
6 | 切り捨ての商品 | |
7 | 特殊品 | 必要な特殊品 |
8 | 不必要な特殊品 | |
9 | 独りよがりの商品 | |
10 | シンデレラ商品 |
大きな分類は6種類。細かく分けると10種類になります。業種や会社の規模に応じて若干種類が増える場合もありますが、基本はこの分類になります。
先ほど説明した商品リストの「商品分析の分類」に、該当する項目を記入してください。
これらの分類の解説と一般的な対策をご紹介いたします。
未来の商品
未来の商品とは、今現在商品化されていないものです。未来の商品には、見えていない商品と検討/開発中の商品があります。
見えていない商品
見えていない商品とは、貴社がまだ発見していないニーズやウォンツのことです。これをいち早く発見し、商品化に成功できたら、先行者利益が得られる可能性が高まります。
まだ見えていない商品ですから、商品リストにはこの項目に該当するものは、存在しないことでしょう。
この商品の一般的な対策は、何も行われていないことが普通です。「どうやら売れているらしい」ということで開発を始め、商品が出来上がった頃にはタイミングを逃して、値切られてほとんど利益が得られなかったり、損失を出したりすることが多いことでしょう。
検討/開発中の商品
検討/開発中の商品とは、まさしく企画検討中、未来の商品です。すでに商品が出来上がり、生産体制をすでに創ってしまって、どのように売ろうか検討しているところもあります。
検討中の商品では、社長の直観によって売れそうかどうかが検討されることが多いことでしょう。また、開発中の商品は、「売れるかどうかわからない」ということで、売る前から開発コストの削減を考えているところもあります。
また、開発は良いものの、どのように売るかの検討がなされていないことも多いです。
主力商品
主力商品は、会社に利益をもたらしてくれる商品のことです。新商品と現在の商品に分類されます。
新商品
新商品は、これから現在の商品へと成長させていくべく、新しくリリースされた商品です。たくさん売れることが期待されるのですが、思ったほど売れないことが多いことでしょう。
商品の開発に時間がかかったときほど、開発することが目的となってしまいがちになります。ようやく新商品が開発されて一息ついてしまい、販売に力を入れ忘れることがあります。また、販売のことを考慮せずに開発された新商品もあります。
新しく生まれた新商品など、誰も知らないわけですから、売れるはずがありません。
現在の商品
現在の商品とは、自社でもっとも利益を上げてくれている商品のことです。
ここで行われている間違った対策は、「売れて、十分に利益が出ているのだから放置しよう」ということです。
過去の商品
過去の商品とは、斜陽化している商品、つまり以前は現在の商品として利益を出してくれていたのですが、だんだんと売れなくなってきている商品のことです。
過去の商品は、斜陽化に気が付いたらすぐさま原因を分析し、その結果から要修正の商品と切り捨ての商品に分類します。
要修正の商品
要修正の商品とは、斜陽化している原因を調べたところ、改善が可能な商品のことです。
多くの会社では、斜陽化している原因を詳しく調べもせずに、「今まで売れていたのに、おかしいな。競合他社が営業を強化したのかもしれない。」といった安易な分析で、自社の優良な営業資源をつぎ込んでいく傾向があります。
切り捨ての商品
切り捨ての商品は、顧客ニーズがなくなりすでに斜陽化しすぎていて、沈みゆく太陽のように、もう引き戻すことができない商品です。
この商品も過去に主力商品だったため、販売数を戻したいと考えるのが世の常です。多くの会社では値下げやキャンペーンを行い、良質な営業資源をつぎ込む傾向があります。
値下げやキャンペーンで利益が出ないうえに良質な営業資源の投入という、つまりムダなコストをかけてしまい、赤字が膨らんでしまうことになります。
特殊品
特殊品とは、オーダーメイドや季節商品などの、一般的な商品とは異なる商品のことです。特殊品は、必要な特殊品と不必要な特殊品に分けられます。
必要な特殊品
必要な特殊品は、面倒な商品なのですが利益が出ているものです。必要な特殊品が主なる商品であり、利益を十分に得ているのであれば、主力商品に入れても良いぐらいです。
中小企業ではオーダーメイドは強みになりやすいですが、上得意先からの注文で値切られて、あまり値段を高くできない傾向があります。
不必要な特殊品
不必要な特殊品は、利益が出ていない特殊品のことです。
上得意先からの注文で、「ちょっと設計しなおしてよ」という具合に、主力商品だったものでも設計変更が余儀なくされ、設計変更代金が上乗せできないようなパターンです。社長も、「設計変更はタダで良い」と言う始末です。
独りよがりの商品
独りよがりの商品とは、社長の直観で「これは売れるに違いない」ということで開発された商品のことです。出来上がった商品に対して社長は大満足なのですが、唯一満足できないものは売れ行きです。
社長が心血を注いで開発したものですから、社長自ら顧客に売り込みに入ります。顧客からは、「これはいいですね。検討します。」と言われるものの、一向に注文が入らない商品です。
シンデレラ商品
シンデレラ商品とは、社内では継子扱いされているのにも関わらず、どこから噂を聞いたのか不定期に注文が入り、また利益率も高い商品のことです。
社長や営業部長にも眼中にないので、無視され続けている商品です。どのような会社にも、シンデレラ商品は1つぐらい存在します。
利益を出すための正しい対策
商品分析の仕方と、一般的な対応の仕方をご紹介いたしましたが、すでにどのような対策をしたら正しいと言えるのか、お判りのことでしょう。念のためご紹介いたします。
1.見えていない商品
見えていない商品は、発見する仕組みを構築する必要があります。見えていない商品の発見のフレームワークは、「イノベーション7つの機会」と「3C分析」が効果的です。3C分析の詳細については、「3C分析とは?手順や活用法の徹底解説」をご覧ください。
2.検討/開発中の商品
検討/開発中の商品については、3C分析を行うことはもちろんで、商品開発では世の中で最高に良い商品を開発することです。
最初はコストのことを考えずに開発し、商品化ができてから性能を下げずにコストを下げていくことを考えます。
新商品の企画をするときは、次のことを「顧客のため」でなく、顧客の立場で行うようにしてください。
- 新商品のミッション
- 対象顧客
- 対象顧客のニーズと市場規模
- 新商品が持つ価値と商品内容
- 損益分析、製造方法、PR方法、販売方法、提供方法等とリリース日
この5つの詳細は別のコラムでご紹介するかもしれません。
3.新商品
新商品は、将来の我社に利益をもたらしてくれる主力商品です。その将来性に懸けて、会社の良質な営業資源を投入すべきです。
世に知られていない新商品であれば、その価値を広く認知してもらうための施策が必要です。
商品の種類によっては、新しい販売チャネルの開拓が必要になる場合もあります。
4.現在の商品
現在の商品は、長く利益をより多くもたらしてくれるように検討します。その方法の代表的なものとしては、次のようなことを検討すると良いでしょう。
- 生産性を高めて利益を出すことができないか
- 商品の付加価値をさらに高められないか
- 同じ商品を別の業界に売れないか
- 商品の性能や顧客の利用方法、販売方法などにギャップはないか
- 顧客のニーズの変化がないか
5.要修正の商品
要修正の商品は、斜陽化した理由を調べ、そこに改善点を発見したものです。修正を加えることで、現在の商品に戻すことができるかもしれません。改善した場合には、そのことを顧客にしっかりと伝えることが大切です。
6.切り捨ての商品
修正ができない商品、もしくは顧客ニーズがなくなって修正してもムダな商品が、切り捨ての商品の対象です。
切り捨ての商品は、何もせずに赤字が出ないように、また顧客に迷惑をかけないようにしながら、機を見て切り捨てます。
7.必要な特殊品
必要な特殊品は、価格を安くし過ぎないことです。どのみち、他の企業ではできないことが多いので、値切りに根負けしないようにしてください。
オーダーメイドはとても労力がかかります。それを担ってくれている社員のことを考えたら、値引きすべきではありません。
8.不必要な特殊品
不必要な特殊品は、利益が出ないので、すぐさま切りたいところですが、断り切れないことも多いことでしょう。その場合は、上限を決めておくと良いでしょう。上限を超してしまう場合には、「今月はこれだけしか設計できないので、来月以降でも良いでしょうか」と後回しにしていくべきです。
9.独りよがりの商品
独りよがりの商品は、述べるまでもありません。すぐさま切り捨てです。
10.シンデレラ商品
シンデレラ商品は、舞踏会に出してあげるべきです。カタログやホームページに掲載したり、積極的に営業したりすべきです。それだけで、会社に大幅な利益をもたらしてくれる場合もあります。
以上、商品分析のフレームワークと、商品分類別の正しい対策について述べてきました。
商品の分類に対して、一般的な対応がいかに間違っているかをご理解いただけたことでしょう。「我社は正しい対応をしている」と述べているところでも、間違った対応をしていることもあります。
商品の分類は、業種や会社の規模に応じて若干種類が増えますので、同じ大分類にある商品だったとしても、対応の仕方が真逆になることも考えられます。
商品分析はABC分析と組み合わせて行われることが多いし、顧客分析の結果によっても変化するため、正しい対応の仕方はケースバイケースです。
商品分析の頻度と実施すべき会社とは?
顧客ニーズは2年ほどで変化してくるので、最低でも1年に1回ぐらいは商品分析を行った方が良いです。
特に、次のどれか1つでも合致するものがある会社では、商品分析をすると売上アップやコスト削減などの利益が短期間でもたらされることがあります。
- 今まで商品分析をしたことがない
- 商品点数が多すぎて分析ができていない
- 商品カタログを作ったことがない
商品分析や対策の検討などの支援をご希望の方は、当社までお問い合わせください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。