社長の夢実現への道

経営方針とは?経営方針の種類と内容

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経営方針とは?

会社の方向性は決まった。どのように実現するか?経営方針を定めるべき

経営方針とは、経営幹部が社長に代わって経営判断ができるようになるための、判断基準のことです。

経営方針の内容は、もちろん会社が目指しているビジョンや目標、経営計画の実現のための方針になります。

事業を拡大し、会社を大きくしていくと、社長の見える範囲に限界が生じます。経営幹部に社長の仕事の一部を任せていく必要があります。この判断基準があることによって、経営陣が育ち、社長に代わって経営判断をしてくれるようになります。

よくある勘違いとして、「経営方針は1つあれば良い」というのは誤りです。たいてい箇条書きで、会社が目指していることを実現するための方針を全方位で網羅していなければなりません。また、目標には時系列があります。時系列に応じた経営方針があります。

以下、それらのことをご紹介しつつ、経営方針をご説明いたします。

経営方針の種類

経営方針には、社長が考える「何年先には何を実現したいのか」に基づいて、経営方針が立てられます。その時系列に応じて、経営方針に種類があります。次の種類があります。

  • 企業ビジョン(全社目標)を実現するための経営理念に含まれる経営方針
  • 長期計画を実現するための長期経営方針(5~10年後、場合によっては20~30年後)
  • 中期計画を実現するための中期経営方針(3~5年後)
  • 短期計画を実現するための短期経営方針(1年後)

企業ビジョン経営計画は、それぞれ時系列が異なります。それらを実現するためには、そのための経営方針が必要となります。

もし会社に経営方針がなく、「社員が自由にやってよい」ということであれば、社員はそれぞれ自分流に勝手な方法でやるようになり、会社に損害を出してしまうこともあります。実際にそのような会社を見たこともあります。

会社が目指すゴールを指し示されたものが目標や経営計画です。どのような方法でゴールに達するかの方針をまとめたものが経営方針です。

経営理念に含まれる経営方針

経営理念には、次の4つのパーツで構成されたものです。

  1. 基本理念
  2. 企業ビジョン(全社目標)
  3. 経営方針
  4. 行動指針

基本理念は、経営理念を一言で表した抽象的な言葉であることが多いです。企業ビジョンは、基本理念が実現した姿を可視化したものです。全社目標は、企業の最終目標です。それらを実現するために経営陣が経営判断のより所とするものが、経営理念に含まれる経営方針の意味です。

次にご説明する経営計画を実現するための経営方針と区別するために、「基本方針」と呼ばれる場合もあります。

なお、行動指針は、経営理念を実現するために、社長を含む全社員がそれに従って行動するというものです。経営方針と似ているように思えますが、行動指針は「全社員が取るべき行動」という意味で、経営方針とは異なります。

経営計画を実現するための経営方針

経営計画は、未来に実現したい目標が、数字の羅列となって表現されているものです。長期計画は、5~10年後の未来の姿を数値化したものです。短期計画は1年後です。中期計画は、長期と短期の中間で3~5年であることが多いです。

社長は、その数字をどのようにして実現していくのかを、明確にし、経営方針にまとめる必要があります。さもないと、社員には数字だけ出されて、「とにかく数字を達成せよ」と言われても、何をやったらいいのか分かりません。

例えば、工務店であれば、「エクステリアのリフォームの商品ラインナップを増やす。」とか、「A地区を重点地区とする。B地区は弱いので販売は成り行きとする。」といった具合です。そのような方針を出さなければ、社員が勝手に売りたいもの、売りやすいものを売ってしまい、社長の予期せぬ方向に会社が進んでしまう可能性があります。

社長が立てた目標をどのように達するのかを、より具体的な経営方針で指し示します。

経営理念の経営方針と区別するために、経営計画を実現するための経営方針のことを「戦略方針」と言われることもあります。

各種経営方針の内容

上記4種類の経営方針の内容は異なり、経営理念に含まれる経営方針は、本当に抽象化された内容になります。短期であるほど、具体的な内容の経営方針になります。

経営理念に含まれる経営方針の内容

経営理念に含まれる経営方針の内容には、本当に抽象的な内容であることが多いです。箇条書きで全方位的な内容が記載されていることもあれば、3条程度であまりにも抽象的な内容に過ぎない場合もあります。

どのような内容にしても、社長が考える基本理念や企業ビジョンを達成するための、経営判断材料になります。あまりにも抽象的な場合には、それを補うために、経営理念解説書が充実していたり、行動指針で補完されていたりする場合が多いです。

ここで、トヨタ自動車の経営方針を参考にさせていただきたいと思います。「基本理念」という名称で、次のものが掲げられています。

トヨタ自動車の基本理念

  • 内外の法およびその精神を遵守し、オープンでフェアな企業活動を通じて、国際社会から信頼される企業市民をめざす
  • 各国、各地域の文化、慣習を尊重し、地域に根ざした企業活動を通じて、経済・社会の発展に貢献する
  • クリーンで安全な商品の提供を使命とし、あらゆる企業活動を通じて、住みよい地球と豊かな社会づくりに取り組む
  • 様々な分野での最先端技術の研究と開発に努め、世界中のお客様のご要望にお応えする魅力あふれる商品・サービスを提供する
  • 労使相互信頼・責任を基本に、個人の創造力とチームワークの強みを最大限に高める企業風土をつくる
  • グローバルで革新的な経営により、社会との調和ある成長をめざす
  • 開かれた取引関係を基本に、互いに研究と創造に努め、長期安定的な成長と共存共栄を実現する

こちらのページを参照

私はトヨタ自動車からすると外部の人間ですので、この経営理念を的確に評価することは適いませんが、簡単に感じたことを述べたいと思います。

トヨタ自動車の経営方針は、存外具体的です。会社と国際社会の関係がどうあるべきなのか、社会貢献をするときの注意点、人材や研究の方針についてなど、地域性から地球全体まで、経営の全方位的な内容が網羅された経営方針になっています。

何度も読んでみたのですが、かなり入念に練り込まれた内容になっていると思います。

経営理念に関する用語の用いられ方は、企業によって異なります。トヨタ自動車には、豊田綱領をベースとしたトヨタフィロソフィーがあり、その要素として、当社で述べるところの基本理念は「Mission」という名称で掲げられています。また企業ビジョン(全社目標)は「Vision」という名称で掲げられています。

MissionとVisionを見ると何の事業活動で何を目指していくのかが分かり、基本理念を見るとそれをどのように実現していくのか経営陣は判断することができます。これらを基にして、長期計画が策定され、おおざっぱにですが商品戦略や販売戦略が策定されていきます。

ここで興味深いことに、これらの項目の中に、「自動車」というキーワードが見られません。社名からして自動車を製造することが当たり前になっているのか、それとも自動車という概念を超えいくのか、その両方の意味を含んでいる可能性もあります。

自動車はあくまでも移動や運送の手段であり、時間短縮につながるものです。時間短縮につながるものは、何も自動車に限ったことではないということかもしれません。また、時間短縮をした結果に得られるものも提供することも狙っているように見えます。

この経営方針の内容は、規模が大きい内容ですので、中小企業はそのまま真似するわけにはいきませんが、とても参考になると思います。

自社商品に自信があり、いずれ世界企業を目指すのであれば、経営方針や企業ビジョンの中に、本田宗一郎のように「わが社は、世界的視野に立ち・・・」と一言入れても良いかもしれません。

長期経営方針の内容

長期経営方針は、長期計画を実現するための方針です。長期とは5~10年後であることが多いです。企業によっては、20年後や30年後を長期としている場合もあります。長期計画と長期経営方針を合わせたものを、長期経営計画と言います。

社長に先見力や自信があり、未来ビジョンがありありとイメージできる人であれば、30年後でも明確にイメージすることができます。予知能力とも言えるような能力を発揮でき、それを実現しようと本気で取り組んでいる社長もいます。

どのような長期計画を立てるかは、経営理念や外部環境、経営理念で建てられた経営方針などによって異なります。

フェルミ推定で「いずれ地域No1の会社になりそうだ」という成り行き経営でなく、経営理念に掲げられた大義名分から「地域No1を目指さなければならないのだ」という強い思いに基づいて長期計画を立てるのが、正しい経営計画の立て方になります。

長期経営方針の内容は、基本理念や企業ビジョンの実現に向けて事業の方向性を大きく変えていったり、時間をかけて少しずつ事業内容を拡大していったりする方針であることが多いです。

例えば、20年ほど前の印刷会社であれば、「今後は、紙媒体の印刷が少なくなり、インターネットがもっと普及するに違いない」と予見して、自社のデザイン力を応用して、ホームページ制作を研究して他社よりも先んじて商品開発し、「10年後には、ホームページ制作の需要がこれぐらいになると予想される。その中で、地域でシェア50%のナンバー1を目指す。」といった方針です。

中期経営方針の内容

中期計画は、長期計画と短期計画の中間の通過点を数値化したものです。その途中段階での方針が定められたものが、中期経営方針です。中期計画と中期経営方針を合わせたものを、中期経営計画と言います。

中期経営計画の期間は3~5年ですが、長期経営計画が5年であれば中期経営計画は3年で、長期経営計画が10年であれば中期経営計画は5年で立てられることが多いです。

印刷会社の例では、「3年以内にホームページ制作の部門を自立させられるぐらいの売上高にし、成長軌道に乗せる。」といった具合です。

短期経営方針の内容

短期経営方針は、短期計画を実現するための方針が書かれたものです。短期計画と短期経営方針を合わせて、短期経営計画と言います。短期計画は、中期や長期計画を実現するために、その1年後の未来が数値化されたものです。

1年後に実現するする数字が決まっているので、短期経営方針の内容はかなり具体的になります。反対に具体的でなければ、短期計画の実現は難しくなります。

項目には、次のものが掲げられ、これらを総合的に実施することで「確実に短期計画が達成できる」という短期経営方針ができると理想的です。

  • 商品の方針
  • 顧客の方針
  • 販売方法の方針
  • 商品開発の方針
  • 内部体制の方針

これらの内容にスローガンがあっても良いと思います。例えば、「地域ナンバー1」とか、「世界一の商品を開発する」、「顧客第一主義」といった具合です。

短期経営方針の具体的な内容については、別の機会に述べたいと思います。

経営方針が変更されるタイミング

経営方針は、どれも基本的には変更しませんが、変更しても良い場合があります。それをご説明いたします。

経営理念の経営方針を変更するタイミング

経営理念の経営方針を変更するタイミングは、次の2通りです。

  • 経営理念が刷新された場合
  • 今の経営方針では経営理念の実現が難しくなった場合

経営理念が刷新されたら、当然ながらそこに含まれる経営方針も変更されなければなりません。経営理念が変更されるタイミングは、先代の経営理念が時代に合わなくなってきたり、会社が成長して大きな経営理念を掲げるべきだったりする場合です。

また、会社の成長と共に、経営方針の内容に不足を感じた場合には、経営方針を刷新することがあります。社長が経営を経験する中で、経営の悟りとも言うべきものを積み重ね、経営方針がしっくりこなくなるタイミングもあります。

経営計画の経営方針を変更するタイミング

経営計画の経営方針を変更するタイミングは、2点のみです。

  • 社長の認識が広がり、より大きな経営計画に立て直した場合
  • 客観情勢が急激に変化して、経営計画の実現が難しくなった場合

前者は前向きな変更になります。想定以上に商品やサービスがヒットし、生産に注力しなければいけなくなったり、勢いに乗じて一層の拡大を検討したりする場合です。より大きな経営計画を実現するための経営方針に立て直してください。

後者は、後ろ向きな場合です。内部的な要因としては、競合他社や新技術の台頭、取引先の倒産、重要な社員の造反などです。外部的な要因としては、近年では新型コロナ感染症もありましたし、一部で貿易がストップしたこともありました。国際情勢や自然災害等によって、会社が急激なダメージを受ける、もしくはダメージを受けることが予想される場合もあります。

そういったときは、緊急事態として経営方針をすぐさま変更してください。

以上、経営方針とはどのようなものなのか、経営方針の種類やその内容について述べてきました。途中でも述べていますが、経営理念の用語の用いられ方は、企業によってバラバラです。ここで述べた経営方針は、経営理念や経営計画に具体的な方針を打ち出すものとして定義しています。

経営理念や経営計画に基づいて会社を運営していきたい社長は、ぜひ経営方針の策定にもお取組みください。経営方針の策定にお困りであれば、ぜひ当社のコンサルティングをご利用ください。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジン・マーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら数千を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツ・マーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくりる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

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