社長の夢実現への道

経営方針のない会社はどうすれば良いのか?

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経営方針のない会社はどうすれば良いのか?

小さな会社では、経営方針が策定されていないことがほとんどです。

とは言え、社長の頭の中には、何らかの経営方針があるものです。

社長の頭の中で考えられている経営方針は、社長の認識の範囲内での考えのみですので、おそらくは、開発、生産、販売の3つのことのみだと思います。

本当は、もっと複線的に考えないと、会社は大きくならないのですが、多くの社長は「利益がちょっと増えたらいいな」という程度の発想なので、経営方針がなくても問題はありません。

しかし、社長が会社の成長を目指している場合には、そうはいきません。

社長が会社の成長を目指しているが、経営方針のない場合はどうしたらいいのか、社長の立場、社員の立場で、それぞれご説明いたします。

経営方針とは?

経営方針とは、「この目標に向かって、この方向でやっていきますよ」という意思表示や具体的な方法です。

経営方針の種類

経営方針の種類は、目標の射程距離に応じた種類が存在します。

目標経営方針の種類
全社目標(企業ビジョン)経営理念の経営方針
長期経営計画長期経営方針
中期経営計画中期経営方針
短期経営計画短期経営方針

このように、全社目標(企業ビジョン)という経営全体の長期的な経営方針から、短期経営計画の短期経営方針まで、時系列で長短さまざまあります。

経営方針の種類は、時系列でたくさんの種類があります。大企業であればすべて作成されていることと思いますが、中小企業では最低限、長期経営指針と短期経営指針があれば良いと思います。

全社目標の経営方針の名称について

全社目標(企業ビジョン)の経営方針と経営計画の経営方針を明確に分けるために、当社では全社目標の経営方針の名称を「経営指針」としています。会社によっては、「基本方針」や「社是」と言っているところもあります。

このように、経営理念に関する用語は、会社によって定義が異なるので、経営方針を策定するときには、その名称の定義を最初に記載して、混乱を防ぐことが大事です。

「経営方針は経営に関する方針なので、事業の方針とは異なる。会社全体の方針を経営方針、事業活動の方針を事業方針である」と定義されている社長もいらっしゃいます。私は、会社それぞれの定義があって良いと思います。要するに、正しく方針が立てられ、社員が混乱しなければそれで良いのです。

経営指針の詳細は、「経営指針とは?経営理念との関係や浸透方法」をご覧ください。

経営方針の内容について

経営指針の内容には、最初にその名称の定義が書かれますが、本文は時系列によって、内容がまったく異なります。

長期的な経営方針は、内容が抽象的ですし、経営幹部が把握しておくものです。

経営指針の内容を、3~5項目の箇条書きにしたものなど、項目を絞り込んだものが理想的です。社長の経営の熟練度が上がれば上がるほど、経営指針の内容が洗練され、その項目数が少なくなっていく傾向があります。

短期的な経営方針は、いつ、だれが、どこで、何を、どのように、どれくらいするのか? それをする理由は何か?といった具体的な内容が書かれたものです。さらに具体的なものの中で重要なものは、プロジェクト計画として、社長や経営幹部がプロジェクトリーダーとして推進するものもあります。

このように、長期的なものは抽象的で考えさせられるものであり、短期的なものは具体的で誰でもそれに従って動けるようなものです。

経営方針の種類の詳細は、「経営方針とは?経営方針の種類と内容」をご覧ください。

経営方針のない会社は小さな会社が多い

このように、経営方針とは何かを知らなければ、作りようがありません。内容を知ったら、「漠然とだが、経営方針のようなものを考えてはいる」と思われたことでしょう。

小さな会社の社長の場合であれば、社長がおおよそすべて把握できていることや、会社の成長を目指していないので、そういった会社では、経営方針は必要ではありません。

成り行き経営

経営方針のない会社は「成り行き経営」が行われています。成り行き経営とは、行き当たりばったりな経営なのですが、会社が生き残っている以上、社長の直感で「市場の変化に合わせてイノベーションさせられている」と言えます。

「市場の変化は読んでも違っていることもあるし、経営は実際にやってみないと分からない部分がある。だから経営方針なんて立てられない」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

しかし、成り行き経営では会社が大きくならないことは、重々に承知されていることと思います。

経営方針を作らない社長の特徴

経営方針を作らない社長の特徴は次のような人物です。

  • 経営方針の必要性を知らない。
  • コロコロと方針が変わるので、経営方針が立てられない。
  • 方針を立てて失敗したら、社長としての威厳が保てないと勘違いしている。
  • 方針は社員が提案するものだと思っている。また「社員を評価することが社長の仕事である」と思っている。
  • そして「当社の社員は仕事ができない」と言っている。
  • できる社員の仕事は属人化しているが、気にもしない。

小さな会社では、社長自らがうんうん唸って経営方針を立てて、その方針通りに社員に働いてもらうことが基本です。

経営方針の作成は何から始めたら良いのか?

小企業が経営方針を作成するときに、何から手をつけたらよいのか、また経営方針を作成したら何をしたらよいのかをご説明いたします。

初めて経営方針を立てるときは短期経営方針から

経営方針は、経営計画を実現するための方法がまとめられたものです。そこで、経営方針を立てる前に経営計画を立てるわけですが、長期的な経営計画、ましてや正しい経営理念を立てるとなると、慣れていない場合には膨大な時間を要することになります。

初めて経営計画を立てる場合は、短期経営計画から立てると良いです。そして、それを実現するための短期経営方針を立てることです。

短期経営方針であれば、内容が具体的なので、社員も内容を理解して実施しやすいからです。全方位的に何をしたら良いのかをまとめることができたら、社員は社長が目指している方向性を理解し始め、自ら考えて仕事ができるように成長していきます。

最初の経営方針は「仕組みづくり」から

初めて経営方針を立てる中小企業では、最初の経営方針は「仕組みづくり」からです。

会社の売上高や利益は、社員が働いてくれて増やすことができます。そのため、社員が育つ必要がありますが、仕組みのない会社で売上高や利益が増えていくと、社員の仕事が属人化していきます。属人化されてしまったら、人が育つことが止まってしまいます。

優秀な社員ほど、自分の技術を隠したくなるものですが、本当に優秀な社員は、自分の技術を人に教えて、自分はさらなる高みを追求していくものです。その教えるための仕組みをつくるのです。

仕組みとは、簡単に述べるならば「マニュアルづくり」です。マニュアルができると、誰でも同じことをすれば再現できます。すると社員が育ちやすいのです。そして、その社員をどの程度増やしたら、いつにどれだけの売上高が増えるのかがわかるので、経営計画が立てやすくなります。

正しく仕組みができたら、あら不思議。社員の多くが質の高い仕事ができるようになり、売上高や利益が自然に増えていきます。

経営方針を実施してフィードバック分析を行う

その計画と方針を実施した結果、売上高はどのように変化したか、顧客の増減がどうなったかを定期的に分析します。このフィードバック分析は、小さな会社の場合は3ヶ月に1回程度で良いと思います。

また、業界の中で中規模程度の企業の場合は、市場占有率などの市場での地位を分析する経営指標を測定し、その数値がどのような傾向性を示したか、感覚をつかんでいくことが大事です。この傾向のフィードバック分析は、1年に1回程度の分析で良いと思います。

フィードバック分析をしていくと、少しずつ経営計画と経営方針を適切に立てられるようになります。また、自信が出てきて先見力が高まり、よりチャレンジングな計画に挑戦し、それを実現できるようになっていきます。そうなってくると、中長期経営計画を立てるときが来ていると言えます。

会社が成長して、縁故採用ではなく、ご縁の無かった方を新規採用して社員数が増えてくるようであれば、経営理念の策定に挑戦すべきときです。

経営方針はコロコロ変えて良いのか?

経営方針がコロコロ変わってしまうので、経営方針が立てられない社長もいます。「経営方針は無い方が良いのか?」「それともコロコロ変わってでも経営方針はあった方が良いのか?」ということが疑問になると思います。

正解は、「経営方針がコロコロ変わるようであれば、無い方が良い」です。

コロコロ変わるような経営方針は、入念に練り込まれた経営方針でないので、コロコロ変わってしまいます。そういった社長は、経営の素人である可能性もありますが、経営方針を立てることにチャレンジし、正しい経営方針が立てられるように訓練している社長とも言えます。

子供の頃、自転車に始めて乗るときは、転びながら練習をしたものです。コロコロ経営方針を変更することは、転びながら練習をするようなものです。「転んで怪我をするから」と言って自転車にいつまでも乗れないわけにはいきません。

そこで、親に自転車に乗る練習に手伝ってもらいます。その親の教え方が上手ければすぐに自転車に乗ることができます。経営方針を立てるときの親に当たる人は、経営コンサルタントです。経営コンサルタントの教え方が上手ければ、うまく経営方針を立てることができます。

経営方針をコロコロ変更することは、自転車で転倒することと同じですので、社員がダメージを受けます。そして、経営方針を立てても社員が言うことを聞かなくなっていきます。ですので、コロコロ変える経営方針を立てるようであれば、下手に立てない方が良いのです。

ただし、経営方針は変更すべき条件があります。それは、次の2点です。

  1. 社長の認識や先見力が高まり、より高い目標を目指したくなったとき
  2. 客観情勢が変わり、このままの方針では会社が危なくなったとき

このどちらかに合致する場合は、社員によくよく説明して経営方針を変更してください。

経営方針のない会社では、社員は何をしたらいいのか?

会社に入社したばかりのときは、基本的に社長や上司から言われたことだけをしていたら良いのですが、それは仕組みができている会社に限ったことです。

経営計画のない会社では、社員が育つ仕組みもないので、自分で勝手に育つ能力が求められます。そして、自分で勝手に育たない社員は居心地が悪くなります。

そういった意味で、経営方針のない小企業では、入社したばかりでも「何をしたらいいのか知っている」という即戦力の人材が求められます。

中企業以上の大きな会社から、小企業に転職してきた方であれば、仕組みが無いことに驚くはずです。優秀な方であれば、仕組みを創ろうとされる場合もありますが、仕組みづくりを進めても、社長の理解がなければ定着はしません。

そういった会社は、もちろん経営方針がないわけですが、そういった中で、どのように自分が会社に貢献できるかを考える必要があります。

自分個人の目標を立てる

経営計画のない会社は、ゴールのないマラソンをしているようなものです。経営方針の無い会社は、どこを走れば良いのかわからない状態です。そういった会社で働く社員は、社長の言動に翻弄されて疲弊してしまいます。

社員である自分に、何らかの志があった場合、「何らかの方向性を定めて仕事をしたい」と考えるものです。社長が経営方針を作成しないのであれば、自分だけの目標を立てることをおすすめします。自分で何らかの目標を決めて仕事をすることで、仕事が自分にとって意味のあるものになり、モチベーションも高まります。

ただし、社長が尊敬できない場合は、その目標を社長とは共有しない方が良いです。社長から目標を否定されることがあります。また、目標を達成しても自分にはインセンティブが入らないことを再確認し、モチベーションが下がってしまうからです。

中小企業の社長の特徴を理解する

技術や営業に長けている社長は、ほとんどの場合で負けず嫌いです。

負けず嫌いの社長は、能力のある社員に嫉妬することもあります。自分から目標を立てて、自ら成長していき、社長を超えるぐらいの実績が出せそうな勢いが出てくると、社長はその社員に嫉妬しはじめます。

そのときに、その嫉妬に対して反抗的な態度を取ると、社長から本格的な嫌がらせが始まることもあります。

能力のある社員は、社長を心から尊敬し、社長に花を持たせてあげられるように振舞ってください。

例えば、自分の目標を立てたとしたら、社長に「このような目標を立てたのですが、社長にご意見をお聞きしたいと思います」と相談するのです。その解答を得て、社長に感謝するようにしてください。すると社長は、「能力があるのに可愛げのある社員だ」ということで、嫉妬を回避できます。

新規事業を始める

実力のある人で、いずれ会社を辞めたいと考えているのであれば、社内起業で新規事業を始めることも良いでしょう。しかし、社長は簡単に許可を出すはずがありません。

社長には「通常業務が終わった後に、残業代や経費を請求しないので、新規事業の研究をしても良いでしょうか?」と訊ねてみてください。

そのときに、自分の欲望を出さないようにしておくことが大事です。

例えば、「新規事業が軌道に乗ったら、お給料やボーナスをたくさんもらいたい」や、「新規事業を立ち上げて、社内で英雄になりたい」といった欲望を克服し、あくまでも会社の利益ために新規事業を立ち上げるという気持ちを社長に伝えます。

もちろん、新規事業の内容にもよりますが、残業代がかからず経費も必要なく、関連する事業であれば今の事業に差しさわりがありませんので、OKが出るはずです。

会社で新規事業を始めることにOKが出なかった場合は、独立をも考えて、会社の休日に事業を始めたら良いと思います。

会社で新規事業を立ち上げて成果が出てくると、実力のある社員は社長がコントロールできなくなってきます。すると社長は、「会社を辞めてもらいたい」と考えるようになります。そういったときは、会社の居心地が悪くなるものです。それに備えるためにも、副業はおすすめです。

私は会社務めのときは、新規事業を2つ立ち上げて軌道に乗せ、なおかつ会社が休みのときに副業を行っており、会社でのお給料と同程度に稼いでいました。そのため、社長から肩をたたかれたときは、すぐに退社できました。

以上、経営方針のない会社について、社長の立場、社員の立場でそれぞれご説明いたしましたが、ご参考になったでしょうか?

この記事をご覧になられている方が社長であり、「自社を立派な会社にしたい」とお考えであれば、ぜひとも経営計画と経営方針の作成にチャレンジしてみてください。また、社員を一般採用している会社であれば、それらのみならず経営理念の策定にもチャレンジしてみてください。

それらが完成し、浸透させられ、会社の仕組みが出来てきたら、会社が見違えてきます。

一方、社員の立場で経営方針のない会社に就職してしまったら、自分の仕事能力を向上させて、社長の気持ちを読み取って対応し、社長の嫉妬を受けないようにしてください。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら数千を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくりる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

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