このコラムでは、私の体験を踏まえて、コーチングの基礎スキルがどのように営業力アップにつながるのかをご紹介したいと思います。
営業の場面で、お客様から信頼されて、商品やサービスの説明を聞いていただけたら、どれほど良いか。私がWeb制作会社を起業したときに、そのことを痛感しました。
ある時期までは情けないことに、「一流のWeb集客の技術があるので、この技術を欲しいと思う人は多いはずだ」と思っていました。しかし、現実は大きく違っていました。
ところが、10年ほど前にご紹介でコーチング基礎講座を何度か受講し、コーチングの基礎スキルを身に付けてから、営業力が明らかに増加しました。
このように、コーチングがどのように営業力アップに影響するのか、コーチングの基礎スキルや魅力を述べます。
最後にお知らせで、当社で活躍するビジネスコーチ(経営理念コンサルタント)がお教えする実践コーチング基礎講座のご案内をさせていただきます。
コーチングの基礎スキルとは?
コーチングとは、相手に気づきを与えて正しい方向に導く指導方法です。相手自身が認知しないすばらしい自分に気が付いてもらい、自信が満ちるように導きます。相手に解決方法を教えて導くティーチングと対比して説明されることが多いです。
コーチングでは、質問をしてそれに応えてもらう方法を学ぶように思われることがありますが、それはコーチングの一部に過ぎません。まず相手との信頼関係を築くことから始まります。
そのようなコーチングの基礎スキルをご紹介いたします。これらのスキルは、音楽バンドのドラマーが手足を連続で動かしてリズムを創り出すように、相手の反応に応じて連続で繰り出されるものです。何度も練習して使いこなせるようになることは、述べるまでもありません。
前提条件としての心構え
まずは、コーチングの前提条件です。この前提条件がなければ、コーチングは機能しません。それは
「相手のお役に立ちたい」という気持ちを持つこと
営業であれば、お客様に「当社の商品やサービスを通じて、お客様に貢献したい」という気持ちです。
こういった善なる気持ちよりも、「営業のノルマを達成したい」とか「報酬が欲しい」という気持ちが先行してしまったら、コーチングのスキルを使ったところで、相手と信頼関係を築くことが難しくなります。
力技で営業ノルマを達成していくような人の中には、「営業とは、相手に商品やサービスを売り込むことだ」と思っている人が少なからずいますが、私にとっての営業とは、「商品やサービスを通じて、相手の悩みを解決してあげること」と定義しています。
営業をこのように定義すると、相手の悩みを解決できる商品やサービスを提案することが営業担当の仕事となり、コーチングによって提案力が増すことが、営業力アップにつながるのです。
傾聴
傾聴は、相手に傾いて話を聴くことです。「聞く」と聴く」には違いがあり、何気ない会話を聞くような聞き方でなく、相手を心から理解するように聴くことです。相手の話をそのように聴くことで、自然に次の動作をしていることがあります。
- 笑顔
- うなずき/あいづち
- オウム返し
- ミラーリング
- ペーシング
これらは、コーチングでの傾聴のための基本スキルです。コーチングの基礎練習として、まず傾聴の基本スキルを練習します。
もちろん、前提条件としての「相手のお役に立ちたい」という気持ちがあり、傾聴のスキルを活用すると、相手と信頼関係を結ぶことが容易にできるようになります。そして、以下に説明する、承認や質問といったスキルが生きてきます。
「営業では、自社の商品やサービスの良さをお客様に伝えることだ」と考え、話してばかりの人もいます。しかし、営業の場では、お客様の話をしっかりと聴くこと、そしてお客様が「理解してもらえた」と思ってもらうことが大切です。
承認
承認とは、相手を認めることです。人は、他人から認められることで自信を持つものです。また承認してくれた相手を信頼するようになります。
承認のスキルはいくつかあります。
- 認める
- 褒める
- 肯定する
- 賛成・賛同する
営業は、「相手の悩みを解決してあげること」ですので、相手の悩みに賛同し、悩みの中にも美点があるので、それを認めて褒めてあげられたら、ますます信頼関係が深まります。
例えば、お客様が「家が雨漏りして困っている」ということであれば、「なるほど」と返すのではなく、「それはお困りですね」と賛同してあげてください。
また、「営業力を高めたい」とお悩みであれば、「会社のために売上を上げたいのですね?」と褒めてあげてください。
質問
質問は、相手に質問をすることです。そのままです。
しかし、コーチングでは質問力によってコーチングの腕が違ってくると言われています。もちろん、さきほど述べた「相手のお役に立ちたい」という気持ちの強さがあってのものです。
質問のスキルには、次の3種類あります。
- チャンクアップ
- チャンクダウン
- スライドアウト
1.チャンクアップ
チャンクの意味は、「塊」だそうです。それを持ち上げるとのことです。チャンクアップの質問は、主に「Why」です。
営業の場面では、例えば「ホームページを作りたいです。」と言われたら、通常であれば「どのようなホームページがいいですか? デザインは?」となりますが、チャンクアップでは、「なぜホームページを作りたいのですか?」という質問になります。
すると、「当社の営業力をアップしたいのです。」と返答されます。もっとチャンクアップしていくと、「業界ナンバー1を目指したいのです。」となっていくことでしょう。
単にホームページを作りたいのと、業界ナンバー1を目指すためのホームページでは、規模が異なってきます。営業としては、大きな案件になったので喜びますし、お客様としては単なるホームページ制作が、業界ナンバー1になるためのホームページを作ってもらえるということで満足感が格段に高まります。
2.チャンクダウン
チャンクダウンは、具体化の質問です。主に、「What」「When」「Who」「Where」「How」です。
チャンクダウンの質問によって、相手のイメージしたものが具体的に明文化されていきます。それをそのまま提案することで、相手は受け入れてくれやすいです。
3.スライドアウト
スライドアウトの質問は、「他にありますか?」だけです。この質問は、チャンクアップとチャンクダウンの両方で使いますが、主にチャンクダウンで使用します。
例えば、ホームページ制作であれば、「どのような人に見てもらいたいですか?」と質問したら、「工作機械を探している町工場の社長」と応えられたとしましょう。すると、スライドアウトで「他にありますか?」と聞いてください。
スライドアウトは、基本的に相手から出せるだけ繰り返します。
明確化
明確化とは、曖昧な言葉を明確にすることと、お客様が使う用語の意味を知ることです。質問のスキルでは、チャンクダウンとスライドアウトです。
例えば、「対象顧客はどのような人ですか?」と質問して、「近所の人」と応えられたとしましょう。この近所とは、どれぐらいの範囲の人なのか明確でありません。自分としては徒歩5分程度のところを近所と思ったとしても、相手にとっては自動車で10分ぐらいの範囲かもしれません。
そこで、「近所とは、どれぐらいの範囲の人のことでしょうか?」と質問して、明確にしていきます。
また、言葉の意味についてですが、お客様と自分とで言葉の意味が微妙に異なる場合があります。例えば、「明日までにメールで報告を出す」と打ち合わせた場合に、お客様は「明日の18時までだろう。だから帰宅中に確認できる」と考えていたとしても、自分が「明日は23時59分までだ」と考えていたら、お客様からクレームが入ることでしょう。
そこで、「明日とは、明日の23時59分まででよろしいでしょうか?」と質問してください。すると、「いや18時までに報告が欲しい」と時間が明確化されます。
私の経験では、この明確化がしっかりできれば、提案が通りやすくなります。
フィードバック
フィードバックとは、相手が話された内容を要約して返すことです。
相手は、こちらからの質問によってさまざまなことに応えてくれます。ある程度話すと、相手は何を話してきたか忘れてきて、話の方向が違ったところに向かってしまうことがあります。
そこで、「今まで話されたことをまとめますと・・・」という具合にフィードバックすると、相手は自分が話されたことに、自分自身で納得します。その内容がそのまま提案になっていくので、相手が納得したものが提案されると、その提案を承認しないわけにはいかなくなります。
お客様は納得してくださっているので、提案が通りやすいのです。
コーチングを取り入れた営業スタイル
コーチングの基礎スキルを用いて、営業の提案力をアップさせる方法について述べてきましたが、それらをもう少し営業寄りに解説いたします。
解説の前に、前提条件となる「相手のお役に立ちたい」という気持ちを持つことが大切なことを、繰り返し述べておきたいと思います。
お客様に気持ちよく話してもらうこと
営業力を高めるためには、傾聴のスキルを発揮し、相手の話をとにかく聴くことです。その中で、相手を認め、相手を理解し、相手が求めているものを引き出すためのチャンクアップの質問をくり出します。
質問のスキルを使いこなせるようになると、とにかく相手が話してくださるようになります。
お客様のニーズの本音をつかみ出すこと
傾聴のスキルを効果的に用いつつ、質問のスキルの中のチャンクアップを多用していきます。すると、お客様のニーズの本音を引き出すことができ、「ここが本音だ」というところをフィードバックして確かめます。
お客様が、「そうそう」とおっしゃる内容が本音部分だと思われます。その「そうそう」を何度も言ってもらえるようにしていくと、その部分をキーワードとして、営業の提案に結びつけていくようにします。
あいまいな表現を明確にしていくこと
質問のスキルの中でも、チャンクダウンとスライドアウトを活用しつつ、相手のあいまいな表現を明確にします。このスキルはとても大切です。
明確になった表現で提案することで、提案が採用されやすくなります。
また、よく使われる用語や言葉の意味、サービス内容や約束内容を明確化し、お互いの認識が異なっていたらすり合わせることで、後々のトラブルを回避することができます。
営業の場で話をまとめること
営業の場で話をまとめるためには、フィードバックのスキルを活用します。相手が話されたことをフィードバックすることにより、相手自身で話が整理され、自分が何を求めているのか明確にイメージできます。
また、フィードバックをすることで自分自身でも話が明確化され、それをメモしておけば、そのまま企画書に流用できます。そのため、企画提案をまとめるのも時間が短縮されます。
明確化のフィードバックをしているときに、言葉の意味の捉え方が違っていたら、お客様から「いや違う。こうだ」と指摘してくださるので、後のトラブルが回避できます。
実践コーチング基礎講座のご案内
当社では、経営理念コンサルタントが教える「実践コーチング基礎講座」を開催しています。経営理念コンサルティングでは、ビジネスコーチングのスキルを活用し、社長が考える経営理念や企業ビジョンなどを作り上げていくことをしています。
講座の名称に「実践」と付いているのは、ビジネスコーチを目指されている方をも対象とした、練習を取り入れた講座だからです。当社オリジナルテキストで、営業での提案力が高まるコーチングの基礎スキルの練習方法を学び、講座の中でもたくさんの練習を行います。
講座の最後では、「GROWモデル」と言って、相手の問題解決や人生計画を立てたりできるコーチングのモデルで、コーチングのスキルをすべて使った練習を行います。
受講生の中には、自分の将来の夢や人生の目標が見つかり、涙される方もいます。他の人の気持ちが伝わって前向きな気持ちになれ、すぐさま友達関係に発展する人も多いです。受講生がお互いに相手から信頼されるコミュニケーション・スキルを身に付けるためです。
コーチング基礎スキルを学び、営業の提案力をアップしたい方は、ぜひご当社のビジネスコーチ養成講座の受講をご検討ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。