会社の成長は、イノベーションによって行われます。成長を考える社長であれば、イノベーションに関心のある方は多いことでしょう。
ともあれ、「会社をイノベーションさせたい」と考えても、どのようにイノベーションさせたら良いのか、わかりにくいものです。
イノベーションの大家でもあられるピーター・ドラッカー先生(1909~2005)の書籍を読んでも難解です。
そこで、イノベーションの方法について、できるだけ簡単な言葉でご説明したいと思います。
イノベーションとは?
イノベーションとは、世の中の常識を変えるくらいのインパクトのある商品を開発することと思われることがあります。
iPhoneが生まれたことによって、生活がとても便利になりました。エアーバッグが生まれたことによって、交通事故による死亡者数が激減しました。
確かに、そのようなこともイノベーションの1つですが、実のところそれだけではありません。
イノベーションは、企業が社会に対して役割を果たすために、「古いものを計画的に、かつ体系的に廃棄すること」です。古いものには、考え方やルールなども含まれます。「ゴミ箱の位置を変える」といった小さな変化でも、それが生産性の向上につながるのであれば、イノベーションです。
イノベーションするための考え方
イノベーションをするためには、まず「イノベーションさせたい」と思う必要があります。どうしたらそのように思うのかは、イノベーションの機会をつかむことです。イノベーションの機会をつかむためには、変化を捉えることです。どのような変化を捉えたら良いのか、後ほどご紹介いたしますが、そういった知識があれば、イノベーションを起こしやすくなります。
企業における毎日の業務は、繰り返しの業務が多いと思います。そういった中でも、変化を見逃さずに捉え、それをイノベーションに活かすことが大事です。
イノベーションのためのルールづくりも大事です。トヨタ生産方式も、そのルールの一つと思われます。ルールが浸透すると、イノベーションをすることが日常で行われ、社員が成長していきます。
トヨタ生産方式の大家でもあられる大野耐一(おおのたいいち、1912~1990)氏によると、トヨタ生産方式は経営システムだそうですが、イノベーションの勉強をしていくと、そのことがより深く理解できます。ご著書の「トヨタ生産方式―脱規模の経営をめざして」(ダイヤモンド社)を読むと、トヨタ生産方式は単なるルールではなく、幅の広さやレベルの高さ、気迫などが伺えます。
話は逸れましたが、このコラムでは、会社を成長させるためのイノベーションの機会を捉える方法について述べたいと思います。
会社が成長するためのイノベーションの方向性
社長が「会社を成長させたい」「売上高や利益を増やしたい」と考えている場合、会社をイノベーションさせていく必要があります。
イノベーションの方向性は大きく2つ
企業が成長するためには、基本的にイノベーションが必要です。イノベーションの方向性は、次の2つにほぼ集約されます。
- 品質向上
- 時間短縮
商品開発の方向性もこの2つです。営業部門でも、営業における品質向上や時間短縮があります。経理部門や財務部門においても同様です。
製造部門での生産性向上は、時間短縮に分類できます。
未来のために過去を捨てるイノベーションを
また、イノベーションをしていく場合、過去の商品にばかり気が取られてしまい、それをイノベーションさせようとする社長は多いことでしょう。私は、それを否定するつもりは毛頭ありません。
しかし、目先の売上のために過去の商品ことばかりに気が取られてしまって、未来のためのイノベーションを忘れてしまうことは良くありません。
ドラッカー先生は、「イノベーションの戦略の一歩は、古いもの、死につつあるもの、陳腐化したものを計画的かつ体系的に捨てることである。」(マネジメント[エッセンシャル版]、ダイヤモンド出版)と述べています。
中小企業では、会社が成長するためには、現在の商品のことを80%程度、将来のことは20%程度のエネルギー配分が適切なのではないかと考えます。
とは言うものの、社長の頭の中は、50%程度は未来のことを考えて置く必要があります。
理想と課題意識を持つ
イノベーションのアイデアを出すためには、課題意識を持ち、改善や新商品のアイデアなどを考え続けていることが大切です。
課題とは、理想と現実のギャップのことです。課題意識を持つためには、理想を持っている必要があります。
社長であれば、会社の存在意義を考え、会社の未来ビジョンを持っていると思います。また、経営判断については基準を持っていると思います。そういったものが経営理念にまとめられます。
経営理念や未来ビジョンを実現するためには、現在の会社と未来ビジョンで描く会社のギャップをつかむことです。そのギャップを解消していくことが、社長に課せられた課題です。社長は、課題を明確にするためにも、できれば経営理念や未来ビジョンの作成にお取組みください。
社員であれば、会社から与えられた目的を達成するための目標があると思います。その目標と現実とのギャップが、その人に与えられた課題です。
理想と課題を常日頃から持っていることによって、イノベーションのアイデアが生まれる下準備ができます。
イノベーションの機会を捉える
イノベーションをするタイミングには、いつも機会を捉えることから始めます。
私達は、普段のルーチン作業によって成果を出し、お客様から間接的にお給料をいただいています。ルーチン作業をこなしていたらお給料が得られるわけですから、それに慣れてしまって、ついついイノベーションのことを忘れてしまいがちになります。
会社の経営者も同様です。会社が順風であれば、ついついイノベーションをすることを後回しにしてしまい、成果の出ない業務をしてしまうのです。
そこで、イノベーションをする機会を捉えることによって、イノベーションをすることを思い出させてくれます。
機会を捉えるためには、何がイノベーションの機会となるのかを知る必要があります。その機会について、詳細は「ドラッカーのイノベーション7つの機会とは?わかりやすく解説」をご覧いただき、私が「これだけでも覚えておいてもらいたい」と思う主なものだけご紹介いたします。
- 予期しなかった出来事
- 目標と現実のギャップ
- 知識や労働力のニーズ
- とある地域の人数の変化
- 世の中の認識の変化
これらの項目の中で、特に大事な「予期できなかった成功や失敗」を解説いたします。
「社内の予期しなかった出来事」を認識する
社内で発生する予期しなかった来事には、失敗と成功があります。計画とは異なった結果が得られたり、突然に何かのイベントが発生したりした場合のことです。
予期しなかった失敗の例
予期しなかった失敗の例としては、次のようなものがあります。
- 社員が怪我をした
- お客様から突然クレームがあった
- なぜか売上高が下がった
- 社員が突然辞めていった
このような予期しなかった失敗があったら、それを認識してイノベーションの機会として捉えることが大事です。クレームであれば、クレーム対応の仕方を刷新したり、商品やサービスを改善するなどして、クレームが出ないようにする仕組みを取り入れたりといったイノベーションができます。
予期しなかった成功の例
予期しなかった失敗だけでなく、予期しなかった成功もイノベーションの機会となり得ます。これを、ドラッカー先生は「予期せぬ成功(The unexpected success)」と言っています。
この予期せぬ成功については、別の書籍でも述べられており、「非営利組織の経営」では、原文を直訳すると、次のように述べられていす。
自らを変えることに最も効果的な方法は、予期せぬ成功を発見し、それをたどること。ほとんどの人たちは、問題に気が取られてしまい、成功の証拠を払いのけてしまう。
人は目先の問題や失敗には反応しやすいのですが、目先の成功には反応しにくいところがあります。予期しなかった成功を捉えることは、「勝って兜の緒を締めよ」ということわざの通りです。
予期しなかった成功の例としては、次のようなものがあります。
- 今まで中小企業を相手に商売をしてきたのに、突然大企業から注文があった
- 予想以上に新商品が売れた
- 期中に目標売上高に達した
- 広告をしたら、予想以上の反響があった
- なぜか優秀な社員が入社してきた
こういった予想できなかった成功があったら、なぜそれが起きたのかの原因や、それを継続的に起こす方法、イノベーションさせたときの会社内外の影響を検討すべきです。
予期しなかった出来事によるイノベーションの特徴
これらのような、社内で予期しなかった出来事によってのイノベーションは、実のところ素早く対応ができることや費用がかからないことが多いので、イノベーションに成功しやすいことが特徴です。
長年かけて基礎研究をしてきて開発される新商品よりも、圧倒的にイノベーションに成功しやすいです。しかも、イノベーションの方法が明確で単純です。
しかも、予期しなかった失敗は、ハインリッヒの法則のように、今後に重大な失敗が発生する可能性を秘めているものです。特に中小企業では、予期せぬ失敗を捉えたら、すぐさま社長に報告する仕組みを作ることが大事です。
報告の義務を社員に負わせる
成功の渦中にあれば、有頂天になり、夢の中にいるような気分になることがあります。気が緩んでしまうのか、次の成功や失敗の種を発見したり、認識したりできなくて、反省を強いられる状態に陥る場合があります。
成功しても有頂天にならずに、コツコツと毎日進化することを意識してください。
例えば、売上高目標を達成したら、それに甘んじることなく、なぜ達成できたのか、それを継続的に達成する方法はないか、さらに安定的に売上高を伸ばす方法はあるのか、売上高を伸ばすことによって会社にどのような影響があるのかなどを検討します。
予期しなかった失敗は、社員は隠したがるものです。それを隠さずに報告の義務を負わせることが大事です。そして、失敗の責任は社長が取るべきです。失敗に対して、社長が社員をガンガンにやっつけたら、社員は失敗を報告しなくなってしまいます。社員を叱るときは、経営理念や経営方針に反していたときだけです。
社員は最低限報告することを義務として負わせるべきです。社員がそれらに対して対策などの企画を立てられるようになったら、会社の成長は進むはずです。
報告させるためには、具体的なルールを決めると良いでしょう。例えば、クレームの報告であれば「クレームがあったら、大小に関わらず、すべて社長に報告すること。報告を怠ったら、厳罰を与える。ただし、クレームが発生したことに対しては社長責任とする。」という具合です。
「社外の予期しなかった出来事」を捉える
社外の予期しなかった出来事には、ニュース記事にヒットがたくさんあります。つまり、ニュースでの不祥事や倒産などの予期せぬ出来事を見たり聞いたりした場合、それがイノベーションの機会になる場合があります。
同業他社で不祥事があった場合に、「自社は大丈夫か?」と思って会社の体制を点検することで、イノベーションする機会を得ることができます。
同業他社でなくても、異なる業界の会社がニュースで取り上げられることがあります。最近では、インターネットが普及して、中小企業であっても不祥事がすぐに暴かれる時代になりました。そういったニュースを見て、「自社は大丈夫だろうか」と思うことで、イノベーションの機会と捉えることができます。
近年、飲食店でのバイトテロが定期的に話題となります。飲食店を経営されている当社お客様の社長は、そのニュースを見て「従業員が出店したら、ロッカールームにある貴重品ロッカーに自分のスマートフォンを入れてから仕事をするようにした」と、教えてくださいました。そのようにして、バイトテロを未然に防ぐために、業務の流れをイノベーションされていました。
以上、イノベーションを起こして会社を成長させるための基本を述べました。まとめますと、次のようになります。
- 理想と課題意識を持つ
- イノベーションの機会を捉える
- イノベーションの機会を報告させる
イノベーションの機会を捉えることができる人物は、中小企業であればほとんどが社長です。その方法を社長お一人のみの能力とするのではなく、その方法を体系化して、社員を教育し、社員が報告できるようにしていくことが大事です。
当社では、会社をイノベーションさせて、会社を成長させたい社長向けに、さまざまなソリューションをワンストップでご提供しています。経営理念の作成、営業や集客の仕組みづくりなどで、会社を成長軌道に乗せるご支援をいたします。
「会社を成長させたいが、何から始めたらいいのか分からない」という社長は、ぜひ当社までご相談ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。