今回のコラムは、社員教育のやり方についてです。何かと心配になりがちな時勢です。社内の雰囲気も暗くなることもあるでしょう。こういったときは、社員教育をすべきときです。
社員教育には、さまざまな種類があります。会社の事業徳湯の技術を教える社員教育もあれば、当社で頻繁に行っていることですが、経営理念の教育もあります。社員のモチベーションを高める教育もあることでしょう。
そのような社員教育で、社員のやる気を引き出すために大切なことについて、次の項目でまとめました。
社員教育で社員のやる気を引き出すために大切なこと
結論から述べますと、社員教育で社員のやる気を引き出すため大切なことは、
社員に希望を与えること
社員にとっての希望とは何でしょうか。それは、仕事で成果を出し、給料が増えて、家族を幸せにできることです。質の高い生活ができ、趣味にもお金が使えることもあるでしょう。
仕事で成果を出すことによって、自分や家族の幸せが手に入ることなど、明るい未来を思い描くことができれば、仕事へのやる気が出ます。そのような希望を社員に持ってもらえるように、社員教育の目標を設定すればよいのです。
もちろん、社長の経営判断が正しくなければ、社員が討ち死にしていくだけです。社長は、勝つべくして勝つように、会社を導く必要があります。その方法については、別のコラムに譲りたいと思います。
正反対の希望が持てない社員教育を考えてみましょう
ここで、希望を持つことができない社員教育を考えてみましょう。
社員のやる気を引き出すためと称した社員教育で、先生役の上司が社員個人の売上目標を突きつけ、それを達成できていない社員たちが怒鳴りつけられる姿を想像してみてください。
例えば、会議室の壁には「100億必達!」と書かれた紙が貼られ、先生役の上司が、「おまえら、次に失敗したら承知しないからな」と脅されている状態です。
上司が社員に、この例のように述べたとしたならば、社員の潜在意識には「失敗」という言葉だけが刷り込まれます。すると、失敗しないように行動しているはずなのに、失敗してしまうことが多くなるのです。そして、次の社員教育で、ますます怒鳴られてしまいます。
そのような社員教育は、社員を恐怖で支配しようとしているように思います。その社員教育に出席した者は、その会社で生き残ることは難しいことでしょう。
過去に、とある会社でホームページ制作の打ち合わせに行ったときに、そのような場面に遭遇してしまったことがありましたが、部外者の私ですら居心地が悪いものでした。社員全員が、上司の叱責を聞きながら、一言もしゃべらずにうつむいたままでした。
そのような社員教育では、社員の意識改革は不可能に近いことでしょう。
希望に満ちた社員教育を考えてみましょう
もし、取引などで失敗した社員がいても、社員教育で希望を持つことができたなら、視線を上げ、目標を高く持ち、心からその目標を実現したいと思えます。その場合、目標達成が潜在意識に刷り込まれていきます。
社員全員が前向きでやる気に満ち、モチベーションが高く、闊達な意見交換が行われ、社員全員がうなずきながらメモを取っている姿を想像してみてください。
本田宗一郎に学ぶ社員教育
オートバイのトップメーカーであるホンダの創業者、本田宗一郎は、ナンバー2である藤沢武夫の協力を得て、経営理念を構築しました。その中に行動指針があり、それに反する行為を行った社員に対して、激しく叱ったことで有名です。
本田宗一郎から「なぜ出来ないんだ!」と叱られた場合、社員には「出来ない」という言葉が潜在意識に刷り込まれそうに思えます。しかし、本田宗一郎は社員の可能性を信じていたため、それが強く出ていたのではないかと推測します。
本田技研工業の前身である本田技研研究所が創業して間もない1947年のエピソードをご紹介します。本田宗一郎が40歳、将来2代目社長となる河島喜好が19歳で新入社員だったときです。
新開発した自転車用補助エンジン(通称バタバタ)のテストドライブに、社員数名で出かけていったときのことでした。河島喜好が乗っていた自転車のエンジンだけ、調子が悪くなって止まってしまいました。原因はガソリン切れでした。
それを本田宗一郎に報告したところ、大声で「バカ野郎!」と殴り飛ばされたそうです。そして、本田宗一郎は「お前はエンジニアだろうが! 残ったガソリンでどこまで走れるか把握していないでどうするのだ!」と涙を流していました。
この叱り方は、一見すると「お前は、なぜ出来ないのだ」というネガティブな発言のように思えます。しかし、本田宗一郎の涙を流しながらの叱責は、新入社員であっても技術者として認め、また社員の可能性を本気で信じていたことが伺えます。
また、日頃から「世界一のオートバイ屋になる」と述べていたことや「マン島TTレース出場宣言」からも判るように、社員にわが社の未来の姿を示していました。社員にの可能性を本気で信じ、わが社の未来の姿を示すことで、社員のやる気が引き出されたのだと思います。
また、本田技研工業では、藤沢武夫によって社員のやる気を引き出す仕組みを構築しています。当時は出世と言えば経営幹部に抜擢されることでしたが、技術者のままでも出世ができる仕組みを導入したことも、一つの取り組みです。
ホンダを調べると、「日本初」の多さに驚かされます。
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この記事の著者
経営理念コンサルタント
関山 淑男 (Sekiyama Toshio)
経営理念の構築・浸透とビジネスコーチングのスキルに親和性があることに気づき、研究や実績を重ね、経営理念コンサルタントとしてのスキルを確立していく。社長としての経営経験や赤字企業の業績回復支援の経験から掴んだ教訓、ピーター・ドラッカー先生や一倉定(いちくらさだむ)先生などの経営理論を融合させ、独自の経営理念コンサルティング・メソッドを開発。