強みを活かして商売をすることで、商売で成功しやすいことは、だれもご承知のことでしょう。ここでの成功とは、競合他社よりも商品が売れ、利益が得られることです。
では、強みとはどのように定義したら良いでしょうか。
先日、とある企業の社長との会話の中で、自社の強みの話題になりました。その社長は、次のようなことを述べていました。
- 自社でできること
- 得意なこと
これらは、強みの可能性はありますが、強みと言い切れるものではないことは、予想ができそうです。なぜなら、1つ目は強みではなく「できること」ですし、2つ目も強みではなく「得意なこと」だからです。
次の目次に沿って、自社の商品やサービスの強みを発見する方法をご紹介いたします。
強みとは?
私の尊敬するピーター・ドラッカー先生(1909~2005)は、強みについて次のように述べています。
誰でも、自らの強みについてはよくわかっていると思っている。だが、たいていは間違っている。わかっているのは、せいぜい弱みである。それさえ間違っていることが多い。しかし何ごとかをなし遂げるのは、強みによってである。弱みによって何かを行うことはできない。できないことによって何かを行うことなど、とうていできない。
プロフェッショナルの条件(ドラッカー著)
自社の商品やサービスの強みをよく分かっていたとしても、「間違っているかも」と考えた方が白紙で考えられてよいと思います。後ほど説明しますが、強みだったものが弱みに変化する場合もあるため、弱みを「強みだ」とずっと考え続けることは危険だからです。
商品やサービスの強みは成果となって現れます。成果とは、商品が売れることを意味する場合もありますが、「商品やサービスを利用し、お客様が利益を得られること」と考えてみてはいかがでしょうか。
また、「強み」の対局に「弱み」があります。強弱は、何かと比較するときに発生するものです。つまり、競合商品や競合サービスとの比較で、強みが発見できるはずです。
これらを組み合わせると、商品やサービスの強みを次のように定義できます。
強みとは、顧客が求める価値の中で、自社の商品やサービスのみが与えられる価値
このような価値を発見することが、強みの発見だとすると、強みを発見する方法は、明らかにマーケティングの3C分析が最適です。
3C分析による強みの発見
次の3つの円が描かれた図は、マーケティングの3C分析の図です。上側の円が顧客(Customer)、左下の円が競合他社(Competitor)、右下の円が自社(Company)です。
それぞれの円は価値を表しています。顧客の円は、顧客が求める価値。競合他社の円は、競合他社が与えられる価値、自社の円は自社が与えられる価値です。
強みは、図の青色の部分にあるように「顧客が求める価値で、自社の商品やサービスのみが与えられる価値」です。この部分のことを、ブルーオーシャンといいます。
顧客が求める価値で、自社と競合が同じように与えられる場所のことを、レッドオーシャンといいます。ここの部分で商売をすると、競合他社と価格競争やサービス競争になり、強い企業が勝ち残ります。
では、「弱み」はどの部分でしょうか? 顧客が求めている価値の中で、競合他社商品が与えられ、自社商品が与えられない価値が「弱み」です。
3C分析の方法を詳細に知りたい方は、「自社の強みを発見するおすすめフレームワーク」をご覧ください。そのページの最後に、チームコンサルティングIngIngオリジナル3C分析テンプレートの無料ダウンロードもございます。
アンケートによる強みの発見
マーケティングの3C分析を用いる方法以外にも、自社の強みを知る方法があります。それは、「アンケートを取ること」です。
アンケートには、お客様に合ってヒアリングする方法と、紙面に記入してもらう方法があります。
アンケートで例えば、「なぜ当社の商品を選ばれたのでしょうか?」という質問は、自社の強みをお客様から聴き出すことができます。コーチングの基礎スキルがあれば、強みをより明確に聴き出すことも可能でしょう。
マーケティングの3C分析では、顧客や競合の情報がなければ自社都合で強みを想像してしまう可能性があります。アンケートを効果的に活用すれば、マーケティングの3C分析の有効性を高めることもできます。
強みが弱みに変化することも
マーケティングの3C分析でも述べたように、強みは顧客が求める価値に合致しているものですので、顧客が求める価値が変化したら、自社の強みも変化します。
自社の強みを白紙で考えることを述べましたが、強みだと思っていたことが、いつの間にか弱みに変化する場合もあるからです。
例えば、生徒の直接指導を強みとしている学習塾であれば、オンライン指導が当たり前のようになった現在では、弱みに変化している可能性があります。しかし、その強みだったものを無くしてしまったら、将来に直接面談が当たり前になったときに、オンライン面談が弱みになってしまう可能性もあります。
オートバイの世界企業、本田技研工業の創業期から大企業にまで変化していったときに、時勢の変化で強みが弱みになったエピソードがあります。
本田技研工業の強みの変化
本田技研工業の創業期は、創業者の本田宗一郎(1906年~1991年)はパワーとスピードの出る2サイクルエンジンの開発を強みとしていました。初めて製造したエンジンは排気量が50ccだったのですが、その後100cc、150ccとより大きなエンジンを搭載したオートバイを製造していくようになりました。
もちろん、戦後のオートバイ市場ではパワーとスピードが求められていたので、ホンダのオートバイ、ドリームD型は飛ぶように売れました。
1950年(昭和25年)に転機が訪れます。本田技研工業のナンバー2で、販売と資金繰りを担当していた藤沢武夫(1910年~1988年)が、藤沢は町中を走っているオートバイを眺めていて、「パワーは出るがエンジン音がうるさい2サイクルエンジンよりも、パワーは低いが静かな4サイクルエンジンの需要が伸びている」と見抜きます。
藤沢武夫は本田宗一郎に4サイクルエンジンの開発を再三依頼するのですが、エンジンのパワーに強くこだわっていた本田宗一郎は、4サイクルの開発を断り続けました。
パワーとスピードの出る2サイクルエンジンを搭載したオートバイ開発を強みだと考えていても、市場は静かな4サイクルエンジンを求めています。市場からは、「ホンダのオートバイは、パワーはあるがうるさい」と評されることもあったようで、その結果、月次の売上高が少しずつ低迷してしまいました。
売上高の低迷には、さすがに本田宗一郎も困ったようです。
そこで本田宗一郎は、「パワーとスピードが出る4サイクルエンジンを開発したら良いのだ」という結論に至り、当時としては画期的な新型のE型エンジン(OHVエンジン)を開発しました。それを搭載したドリームE型の試作車は、当時は難所とされた箱根峠越えにチャレンジして見事に達成し、エンジン性能の高さを証明しました。
その後は、4サイクルエンジンもホンダの強みとなり、1959年(昭和34年)にはオートバイレースのオリンピックとまで言われるマン島TTレース出場を果たしてチーム賞を受賞。1961年(昭和36年)には同レースにて、125ccクラスと250ccクラスで1位から5位までを独占という快挙を達成しました。
このように時勢が変化すると、強みがボトルネックになったり、弱みになってしまったりすることがあるため、少なくとも2年に1回、変化の激しい業界では半年に1回は強みの再確認をした方が良いです。
マーケティングの3C分析やアンケートの作成、自社の強みの発見のサポートをご要望であれば、当社のスポットでのコンサルティングをぜひご利用ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。