社長の夢実現への道

FMEAを導入すべき企業・すべきでない企業

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――その品質活動、本当に自社に必要ですか?

FMEAを導入すべき企業・すべきでない企業

近年、品質問題や製品事故が社会的に大きく報道されるたびに、「未然防止」の重要性が叫ばれます。

未然防止とは、文字通り「事故を未然に防止する対策」のことです。

その文脈で必ず登場するのが FMEA(Failure Mode and Effects Analysis:故障モード影響解析)です。

FMEAは、起こり得る不具合を事前に想定し、その影響を分析し、優先順位をつけて対策を講じる手法です。大手製造業では長年活用され、自動車業界や医療機器業界では事実上の標準となっている未然防止策の一つです。そして、それらの業界以外でも、FMEAの導入が増えてきています。

しかし私は、声を大にして申し上げたいことがあります。それは

FMEAは、すべての企業が導入すべき手法ではありません。

組織がFMEAを受け入れる体制が整っていないのに、やみくもに導入すれば、時間と労力を浪費し、かえって組織の疲弊を招きます。一方で、条件が整っている企業にとっては、FMEAは企業体質を根底から強くする力を持っています。

では、どのような企業が導入すべきで、どのような企業はまだ導入すべきでないのでしょうか。

FMEAを「今は」導入すべきでない企業

FMEAは未然防止策として効果的ですが、すべての企業にとって有効だとは限りません。一言で、FMEAを受け入れる素地がないと、逆効果になることもあります。そのように、FMEAを導入すべきでない企業もありますが、まず申し上げたいのは、「導入すべきでない=永遠に不要」という意味ではありません。“今はまだ時期ではない”ということです。

① 経営層が品質を戦略と捉えていない企業

FMEAは現場だけで完結する活動ではありません。設計、製造、品質保証、場合によっては営業や購買も巻き込みます。全社的な取り組みによって、FMEAが機能します。

もし経営者が「品質は品質部門の仕事」「売上が最優先」と考えているのであれば、FMEAは形骸化します。

FMEAは“未来の失敗”に時間を投資する活動です。その価値を経営が理解していなければ、必ず途中で止まり、今までの投資がムダになります。

売上を最優先しているのであれば、当社のマーケティングコンサルティングをご利用ください。

② 会議文化が機能していない企業

FMEAは品質会議などでの議論の手法でもあります。

  • どんな不具合が起きるか
  • なぜ起きるか
  • どう防ぐか

といったことを、経営層も交えた品質会議などで率直に話し合います。しかし、会議が形式的で、本音が出ない文化の企業ではどうなるでしょうか。

  • 波風を立てない
  • 上司の意見に逆らわない
  • 前例を否定しない

このような風土では、リスクは表面化しません。FMEAは“正直な組織”、“率直に話し合える組織”でなければ機能しないのです。

③ 製品リスクが極めて低い企業

製品リスクとは、製品の欠陥などによって利用者がどのようなダメージを受けるのかといったリスクのことです。FMEAは自動車や医療といった、人の命に関係する分野での製品やサービスで発達したものです。すべての企業が高度な未然防止策を必要とするわけではありませんので、すべての企業がFMEAの導入をする必要はありません。

単純構造・低価格・短納期型製品で、万一の不具合が重大事故につながらない場合、過剰な分析はコスト増になることもあります。品質活動は目的ではなく手段です。費用対効果を冷静に見る視点も必要です。

FMEAを導入するためには、組織にFMEAを受け入れるだけの下地が必要です。当社の製造業改善コンサルティングでは、組織の下地づくりの支援も行っています。

FMEAを導入すべき企業

では、どのような企業にFMEAは力を発揮するのでしょうか。

① 設計変更やクレームが繰り返されている企業

同じような不具合が何度も発生している企業では、次のようなことが常態化していることが多いです。

  • 出荷後に設計変更
  • クレーム対応に追われる
  • 原因究明に時間がかかる

これらは“想定不足”のサインです。FMEAは、想定の質を高めます。「起きてから対応する企業」から「起きる前にトラブルの芽を発見し潰す企業」へ転換します。

② 属人化が進んでいる企業

ベテランの頭の中にしかリスク情報がない。若手が育たない。そういった企業にも、FMEAの導入をおすすめします。

FMEAを導入・浸透することで、ベテラン社員だけが持つリスクに対する暗黙知を、誰でも理解できる形式知に変えます。「なぜそれが危険か」を言語化することで、組織の知的資産が蓄積されます。これは中小企業にとって極めて大きな価値です。

③ 社会的責任が高まっている企業

医療、インフラ、自動車部品、食品製造、建設関連など――事故が人命や社会的信用に直結する分野では、未然防止は必須です。

大きな品質問題が発生すると、ニュースやSNSで瞬く間に広がり、一瞬で企業の信用を失います。信用回復には何年もかかります。FMEAは単なる品質改善や未然防止の手法ではなく、企業の社会的責任を果たす仕組みなのです。

特に、次のようなジャンルではFMEAの導入をおすすめします。

  • 食品製造業(食中毒で人が死ぬこともある)
  • 子供用品製造(子供は時に突拍子もない使い方をする)
  • システム会社(ハッキングや事故で情報漏洩が増えている)

FMEA導入の本質

FMEAを導入したことのある企業であればご存じのことと思いますが、FMEAを導入するとたくさんの図表を作成します。ここで重要なのは、FMEAは“表を埋めること”が目的ではないということです。

FMEA導入の本質は、すべてのスタッフに次の問いを組織に根づかせること、習慣化することです。

  • 本当にこれで大丈夫か?
  • 他に起こり得ることはないか?
  • 最悪の事態を想定しているか?

この問いを習慣化した企業は、直観力が働くようになり、それが上司などに報告されるようになるので、事故対応や変化に強くなります。FMEAは企業文化を変え、貴社を考える組織、学習する組織にする装置なのです。

導入前に自問すべきこと

FMEAを導入前に、経営者にぜひ考えていただきたい問いがあります。それは、

  • 品質管理を“コスト”と考えていないか?
  • 未来の失敗に時間を投資する覚悟があるか?
  • 組織の弱点を直視できるか?
  • 事故の発生を組織の責任にしないで仕組みを構築できていない経営者自身の責任にできるか?

これらの問いに、経営者が素直に「はい」と答えられる企業であれば、FMEAは必ず力になります。

日本の中小企業を強くするために

日本の中小企業は技術力があります。真面目さがあります。責任感があります。しかし、体系的未然防止の仕組みが弱い場合が多いようです。

FMEAは大企業だけのものではありません。本来は、リソースが限られる中小企業こそ必要な手法です。中小企業は、失敗のコストに耐えられないからこそ、失敗を未然に防ぐ仕組みが必要なのです。

チームコンサルティングIngIngでは、日本の中小企業を強くすることを目的に、その一環としてFMEAの導入支援を行っています。

私たちのFMEA導入支援

世の中には、FMEAのセミナーや講習会が増えてきています。そして、やみくもに導入し、組織が混乱したり、ムダになったりしているところが少なからずあります。私たちのFMEA導入支援は、単なるFMEA講習ではなく、

  • 導入適否診断
  • 経営層向け意識共有セッション
  • 実案件を用いた実践型研修
  • 定着化支援コンサルティング

を通じて、“形骸化しない導入”を支援します。目的は表を作ることではありません。企業を強くすることです。FMEAを正しく導入するなら、当社までお声がけください。

FMEAセミナーとコンサルティングのご案内

FMEAを導入すべき企業かどうか。それは、「未来の失敗を本気で減らしたいか」という問いにどう答えるかで決まります。

品質とは、社会への約束です。その約束を守る仕組みがFMEAです。もし本気で、「自社を次世代へ残したい」とお考えなら、一度、当社のFMEA入門セミナーにご参加ください。

当社では、FMEA導入個別セミナーを随時受け付けています。セミナーは、入門編と実践編、応用編の3種類ご用意しています。

  • 入門編:FMEAとは何か、メリットや導入方法などを解説します。
  • 実践編:サンプル事例(食品製造と部品製造の事例)にてFMEA導入の体験をしていただくワークショップです。
  • 応用編:御社の失敗事例を元に、ワークショップを開催します。実際のクレーム事例を題材に、FMEAの考え方を体験していただく。難しい理論ではなく、現場で使える形でお伝えします。

その後に、継続的にFMEA導入を支援するFMEAコンサルティングも行っています。FMEAコンサルティングでは、ミニマムスタートを基本としています。まずは、一部の部門や製品にてFMEAを導入し、経営層や品質管理担当がFMEAに慣れ、FMEAに対応した考える力を身につけてから全社に対応させていくように導入支援をしています。

この記事の著者

村上豊

製造業改善コンサルタント
村上 豊 (Murakami Yutaka)

名古屋大学工学部、修士課程卒業後、トヨタ系列の電装を担う大手メーカーに30年間従事。製造部門のみならず、国内工場の工場長や英国の新工場立ち上げをも担当する。コンサルタントとして独立後、さまざまな製造業種の企業を支援し、5S活動の理論に基づいて工場の人材育成、生産、保全、品質、製造技術の改革に取り組む。人の能力を引き出し高めるマネジメントで、多くの製造工場の改善・改革、カルチャーづくり、理念経営を支援。

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