WordPressでホームページを制作したときに、制作会社や制作スタッフがどのようなパターンのテーマを導入したかによって、その後にSEO対策をしっかり行うことができるかが異なります。
SEO対策がもっともやりやすいテーマのパターンは、「完全自作」のテーマです。
このコラムでは、次の目次に沿って、WordPressテーマのパターン別でSEO対策の注意点をご紹介いたします。
WordPressとテーマ
WordPressのSEO対策には、WordPressの仕組みとテーマを知ることが大切です。まず、WordPressとテーマをご説明いたします。
WordPressとは?
WordPressとは、ホームページを自動生成してくれる、世界で最も利用されているプログラムです。コンテンツマネジメントシステム(CMS)の一種です。WordPressは次のような特長があります。
- Free(無料)で使用できる
- たくさんの無料のプラグインで機能が追加できる
- SNSの更新のように、文章や画像などを入れて投稿するだけで、自動的にページが生成される
- 使いやすく高機能設定が可能なので、初心者からプロまで利用できる
WordPressで構築されたホームページは、アクセスするとデータベースからデザインのデータと文章や画像のデータを組み合わせて、自動的にページを構成してくれて、訪問者に表示してくれる仕組みです。
WordPressのテーマとは?
WordPressのデザインのテンプレートのことを、「テーマ」と言います。WordPressのデザイン制作は、テーマの制作と同義と考えることもできます。
WordPressがSEO対策がしっかり行えるかどうかは、テーマの作り方にも左右されます。
WordPressのSEO対策の方法
WordPressを導入して制作されたホームページのSEO対策は、HTMLコーディングで制作されたホームページと同じことを行えば良いです。また、WordPress特有のこととして、SEO対策のプラグインの設定と、余計な機能のそぎ落としを行います。
- テーマのSEO改善(土台の改善)
- SEO対策プラグインの設定
- 余計な機能のそぎ落とし
- 既存ページの見出しなどの文章構造の改善
- 既存ページのコンテンツ追加
- コンテンツページ追加
テーマのSEO改善(土台の改善)
1番目の「テーマのSEO改善(土台の改善)」は、WordPressテーマのHTMLをSEO改善することです。
テーマは、ヘッダーやフッター、各種ナビゲーションのデザインテンプレートですが、その土台となる部分をしっかりSEO対策することで、他のSEO対策の効果を高められることが期待できます。
SEO対策プラグインの設定
今まで本格的にSEO対策をしたことのない企業のホームページでは、「WordPressにSEO対策のプラグインをインストールすればSEO対策ができている」と勘違いされている方が多いです。
SEO対策の有名なプラグインには、「All In One SEO」や「Yoast SEO」があります。「どちらのプラグインを利用したら良いのか?」ですが、私は「Yoast SEO」をおすすめしています。
これらのプラグインがインストールされているだけで、正しく設定されていないホームページの場合、「SEO対策が入っていると聞いている」と言われても、機能が入っているだけで、設定はお客様任せにしているホームページ制作者もいるのです。
SEO対策のプラグインを正しく設定することで、SEO対策の土台づくり
余計な機能のそぎ落とし
WordPressの知識をお持ちで、SEO対策の知識のないホームページ制作者もいます。そういった人が制作したホームページをSEO対策する場合、別の問題が発生します。
それは、WordPressに余計な機能やプラグインがたくさん盛り込まれているので、SEO対策がしにくいということです。余計と述べるのは、複雑な機能なので、WordPressの利用者がその機能を使いこなしていない場合です。
また、ホームページ制作者がWordPressの初期設定をやりやすくするために、プラグインを導入することもあります。
プラグインが多いと、わずかだと思いますがホームページの表示速度が落ちることが考えられます。また、サーバは2~3年に1回ほどPHPのバージョンアップがありますが、そのときにプラグインが悪さしてバージョンアップができないことが、たまにあります。
WordPressで構築されたホームページのSEO対策では、表示速度、操作性、将来のことも考えて、余計な機能をそぎ落とすことも行う場合があります。
既存ページの見出しなどの文章構造の改善
すでにWordPressで各種ページを投稿してある場合は、それらのページの文章構造を改善することで、SEO対策になります。
文章構造とは、見出しや段落、箇条書きなどです。
例えば、見出しとなる文章が、段落に設定されている場合は、見出しに変更します。
既存ページのコンテンツ追加
既存ページの文章量も検索順位に影響します。基本的に文章量の多いページは、上位ヒットしやすくなります。もちろん、画像や写真が使用されているページの方が、上位ヒットしやすいと考えます。
しかし、意味もなく文章量の多いページは、SEO対策の効果が多少あるとしても、上位ヒットしない場合もあります。文章量よりも、有用な文章が盛り込まれているかの方が大切だと考えます。
コンテンツページの量産
コンテンツページとは、検索者にとって意味のあるテーマに沿って書かれたページのことです。どのページも、あるテーマに沿っていると思いますが、検索者にとって意味のあるページを量産することです。
検索者にとって意味のないページとは、どのようなページでしょうか。それは、年末年始のお知らせなどの検索する人がいない内容が記載されたページのことです。最も意味のないものは、「ホームページを新しく刷新しました」という情報でしょう。
では、検索者にとって意味のあるページとは、よく検索されているキーワードに基づいて作成されたページのことです。
WordPressテーマのパターンは4種類
WordPressテーマのパターンには、次の4種類があります。
- 完全自作
- 配布テーマのカスタマイズ利用
- 配布テーマの子テーマ利用
- 配布テーマをそのまま利用
それぞれのテーマをご説明いたします。
完全自作
「完全自作」とは、WordPressのテーマをいちからプログラミングして制作されたテーマのことです。完全に自作するために、SEO対策は思いのまま行うことができます。
テーマのプログラミングの仕方によっては、WordPress管理画面の外観メニューにある機能が使用できない場合があります。その機能を用いて、トップページのスライドやロゴ、グローバルナビ、サイドバーなどのカスタマイズなどを手軽に行いたい場合は、テーマの制作費が高くなる恐れがあります。
とは言え、そのような機能があるために、WordPressの動作が遅くなっている場合もあります。また、一度ホームページを公開してしまうと、ロゴやグローバルナビ、サイドバーなどを変更することはありませんので心配ありません。
配布テーマのカスタマイズ利用
市販されていたり無料で提供されていたりする配布テーマを、カスタマイズして利用する方法です。配布されているテーマを雛形として使用し、カスタマイズして使用するため、製作費を安く抑えることができます。
配布テーマに更新がある場合は、配布テーマを直接カスタマイズしての利用には不向きです。なぜなら、更新してしまうと、カスタマイズしたプログラムが上書きされてしまって、元に戻ってしまうからです。
当社でも、ご予算が限られているお客様に対しては、配布テーマを利用して、機能をそぎ落としてSEO対策して納品することもございます。
テーマの更新を利用する場合は、次の子テーマ利用で対応します。
子テーマ利用
子テーマとは、配布テーマが更新されても上書きされないように、カスタマイズしたい一部を子テーマとして作成しておくテーマのことです。
SEO対策で、配布テーマを直接編集したとしましょう。配布テーマにバージョンアップがあった場合、SEO改善したデータが上書きされて、先祖返りしてしまうことがあります。
配布テーマを親テーマとして、配布テーマの編集したいPHP等をコピーして子テーマを作成します。
この子テーマを編集した場合、配布テーマである親テーマが更新されても、子テーマは影響を受けません。そのため、親テーマを更新しても、子テーマはそのままなので、ホームページのデザインが崩れることはありません。
しかし、親テーマの更新があった場合は、その内容を確認してください。PHPのバージョンアップに対応するための更新だった場合は、子テーマの修正も必要とされる場合があります。
子テーマの作り方
おまけで、子テーマの作り方をご紹介いたします。作り方は簡単です。
配布テーマをPCにダウンロードすると、フォルダ名が英数字で付けられていると思います。例えば、その名称を「hogehoge」としましょう。
子テーマ用に、別のフォルダを新しく作成します。その名前は、親テーマ名に「-child」を付けます。親テーマのフォルダ名は「hogehoge」なので、子テーマのフォルダ名は「hogehoge-child」です。
子テーマの中に、テキストファイルを2個作成してください。名前は、「style.css」と「function.php」です。
テキストエディタにそれぞれ、次のものを書き込んで上書き保存してください。
「style.css」の内容
/* Theme Name: hogehoge Child Version: 1.0 Template: hogehoge */
ここで、「Theme Name:」は子テーマの名前です。その後に、自由にテーマ名を入れてください。ここでは、「hogehoge Child」にしました。
「Version:」は子テーマのバージョンを意味しますが、「1.0」にしてみました。Versionは必須項目でないので、記載しなくても動作します。
「Template:」は親テーマのフォルダ名(ディレクトリ名)を入れます。親テーマのテーマ名とは異なるので、大文字/小文字の違いにご注意ください。
「function.php」の内容
<?php add_action( 'wp_enqueue_scripts', 'theme_enqueue_styles' ); function theme_enqueue_styles() { wp_enqueue_style( 'parent-style', get_template_directory_uri() . '/style.css' ); wp_enqueue_style( 'child-style', get_stylesheet_directory_uri() . '/style.css', array('parent-style') ); } ?>
この内容をコピー&ペーストして、上書き保存してください。
この2つのファイルが保存された子テーマのフォルダを、サーバにアップロードします。アップロード先は、WordPressのテーマが保存されているディレクトリです。すでに、親テーマがそのディレクトリに入っているので、それと同じ場所に子テーマのデータをフォルダごと移動させます。
以上で、子テーマの設定が完了です。
アップロードの方法は他に、WordPress管理画面の「外観」→「テーマ」画面でアップロードが可能です。
次にWordPressの設定を行います。子テーマがアップロードされたら、テーマ画面のテーマ一覧の中に、先ほどstyle.cssの「Theme Name:」に設定した名称で、子テーマが表示されます。上記のstyle.cssの例では、「hogehoge Child」という名称になります。
そこの「有効化」ボタンをクリックしてください。
配布テーマをそのまま利用
話をWordPressテーマのパターンに戻しますと、4種類目が配布テーマをそのまま利用するパターンです。
配布テーマをそのまま利用する方法は、もっとも安価に導入できる方法です。WordPressの操作方法を短期間で教えてくれる講座では、ほとんどの場合、このパターンのみを教えているものと思われます。そういった講座で学んだ個人が起業することもあります。
そのような個人にホームページ制作を依頼すると、格安で制作してもらえます。見た目は立派なホームページが出来上がったとしても、WordPressの知識が少ないので、WordPressをカスタマイズする場合は、プラグインを利用することが多いと思います。
テーマの種類別SEO対策の注意点
WordPressテーマの種類別にSEO対策の注意点についてまとめました。すべてに共通する注意点は、PHPとWordPressテーマを改善するための知識が、最低限必要だということです。
「完全自作」テーマのSEO対策の注意点
WordPressテーマが完全自作ですと、テーマのHTML構造をガチガチにSEO対策することができます。
テーマを制作した制作会社が別にいる場合は、そこと連絡を取り合って、更新後に古いバージョンのテーマをアップロードして、先祖返りしないように注意が必要です。
当社にホームページ制作をご依頼された場合は、ほとんどの場合で、完全自作のテーマをご提供しています。完全自作ですと、SEO対策は思いのままですので、強力なSEOコーディングを行うことができます。
配布テーマをカスタマイズした場合のSEO対策の注意点
配布テーマがカスタマイズされていても、プログラミングやコーディングを解析すればSEO改善ができます。
配布テーマに更新がなければ、そのままSEO改善をしたら良いのですが、更新ボタンを押してしまったら、SEO改善されたものが元に戻ってしまいます。それだけはご注意ください。
子テーマ利用時のSEO対策の注意点
親テーマをSEO改善したテーマを子テーマとしてサーバにアップロードしますが、header.phpやpage.phpなどテーマの主要なデータをすべてSEO改善することになります。
完全自作や配布テーマのカスタマイズと比べるとサーバに負担がかかるので、気にならないほどだと思われますが、表示速度が遅くなることが懸念されます。
また、子テーマが用いられたWordPressでは、WordPressにプラグインがたくさんインストールされていたり、function.phpが複雑にカスタマイズされて、機能がふんだんに用いられていることもあります。
複雑な機能は、ホームページの運営担当者様の利便性を向上させる目的もありますが、制作者側のWordPressの初期設定のしやすさから導入することもあります。
場合によっては、機能が複雑すぎて、運営担当者が「そのような機能が導入されていたなんて知らなかった」と言われることもあります。
そのような複雑な機能が盛り込まれているWordPressホームページに対して、高度なSEO対策を行う場合は、余計な機能をそぎ落とすことから始めないといけません。
配布テーマをそのまま利用している場合のSEO対策の注意点
配布テーマそのもののSEO改善か、子テーマ利用でのSEO改善を行います。WordPressのデザイン機能を引き続き使用するのであれば、子テーマの利用となります。
配布テーマをそのまま利用されたパターンのホームページは、WordPressのプラグインがたくさんインストールされていることが多いです。プラグインやテーマの機能が複雑に絡み合い、どの設定がどこに影響しているのかを分析することから始めます。
余計プラグインを削除していって、なるべくプラグインに頼らないホームページにしていくことで、SEO対策がしやすくなります。
また、プラグインがたくさんインストールされいているWordPressは、アップデートができないというトラブルが多発しやすいです。場合によっては、ホームページの表示速度が著しく低下することもあります。
余計なプラグインを削除することは、SEO対策のしやすさだけでなく、将来発生するトラブルを防ぎ、将来の余計な出費を抑えることにつながります。
高度なSEO対策をするたのテーマはどれが良い?
WordPressで構築されたホームページを、高度なSEO対策をしたい場合のテーマは、やはり「完全自作のテーマ」がおすすめです。SEO対策を考慮したHTMLを自由に書き込めるからです。
「完全自作のテーマだと、社内のスタッフがホームページのデザイン変更ができなくなる」と思われるかもしれませんが、PHPやHTMLを知らない人がSEO対策されたホームページを下手に触り、順位が下がって、営業の機会損失が発生することの方がデメリットかと思われます。
ここで、WordPressの知識のある方であれば、「配布テーマをカスタマイズして、完全自作のテーマにできないか」と思われたかもしれません。「ゼロから制作するより早くできるのではないか?」とお考えのことでしょう。
配布テーマが、複雑にプログラミングされたものでなければ、それも良いと思います。
複雑にプログラミングされたものであれば、どのプログラムをそぎ落としたら良いかを解析しなければなりません。たくさんのファイルが複雑に絡み合っていて、解析に時間がかかります。
それなら、ゼロからテーマを制作してしまった方が早くなります。
以上、WordPressテーマのパターンと、それぞれのSEO改善についてまとめました。おまけで、子テーマの作成方法をご紹介しました。強力にSEO対策をしたいのであれば、テーマは最初から完全自作で制作することをおすすめいたしました。
当社が提供するサービスの一つ、Web集客コンサルティングでは、WordPressで制作されたホームページのSEO対策にも対応しています。また、WordPressのSEO対策の仕方もお教えする研修、「SEO対策技術研修(WordPress編)」を提供していますので、どうぞご利用ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。