製造業改善改革いろは

製造業で新しい価値を生み出して成功するための方法

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5Sとバリューチェーン

製造業で新しい価値を生み出すイノベーション

ものづくりの流れである生産ラインは、個々の工程の連鎖からなり、プロダクトという成果物を生み出しています。このプロダクトは、顧客や社会のためになる価値でもあります。そういった意味で、生産ラインはバリューチェーンともいわれます。バリューとは価値のことです。

生産ラインの生み出す価値への影響度の最も大きな工程のことを、私は「本丸工程」と呼んでいます。5S活動による本丸工程の改善が、工場や製品のイノベーションにつながります。

製造業で新しい価値を生み出すイノベーションを成功させるための2段階論

イノベーションには、「体系的廃棄」と「新価値創造」の2種類があります。

新価値創造は、新しい生産方法を開発することもそうですが、既存市場にない新たな新商品を生み出し、広く世の中に浸透し人々から喜ばれることが主となります。それは、高い価値(スマート)と低コスト(リーン)を合わせもつもので、有名なブルーオーシャン戦略といわれるものですが、製造だけでなく市場戦略にも関わるものなので、そう簡単に実現できるものではありません。

新価値創造を行う場合、価値(差別化)とコストを別々に順にレベルアップしていくことで成功確率が高まるといわれていますし、私は、製造業改善コンサルティングを通じて、それが現実的であると確信しています。順番としては、1段階目が「徹底した低コスト化」、2段階目が「徹底した差別化(高付加価値化)」です。この2つのイノベーションについてご説明いたします。

1段階目:徹底した低コスト化

「5Mベースの5S」理論による低コスト化

徹底した低コスト化とは、製品を製造するためのコストを下げることです。製造業でのコストに、機械、作業工程、運搬などさまざまな要素があり、複雑です。ここで「5Mベースの5S」理論の登場です。5Mとは、次の5つのことです。

  1. MAN(人)
  2. MACHINE(設備、治工具)
  3. MATERIAL(素材/副資材)
  4. METHOD(方法/手順)
  5. MEASURING(計測)

生産ライン全体をリードタイムの視点で眺め、時間が長いプロセスの5Mに着目します。そして5Mの中でも最も影響しているものに絞りエネルギーをそこに集中させます。ムダ肉がそぎ落とされ、これをくりかえすことで全体のリードタイムが短縮され、大幅なコストダウンが可能となります。

たとえば、資材置き場が煩雑でピッキングをする時間が、製造工程全体の20%を占めており、それが問題となっていたとします。すると、他の改善については考えずに、資材置き場の改善にエネルギーを集中させます。ムダ肉がそぎ落とされたら、次の問題に取り掛かるという具合です。

4Sによる低コスト化

徹底した低コスト化には、もう1つの手法があります。それは、現状の成果物の価値をベースに、本丸工程は十分機能しているか、他の工程は、本丸工程とリンクして有効に機能しているか、過不足はないか、そういった視点で生産ラインを眺めます。そして、

  1. 全くムダな工程は止める(STOP)
  2. 複雑で機能が発揮しづらい工程は単純化する(SYMPLIFY)
  3. 類似工程は統合する(SYNTHSIZE)
  4. 強化が必要な新たな工程を追加する(STRENGTHEN)

これら4つの活動を実施します。これらの4つの活動のことを「4S」と呼んでいます。

4Sによる低コスト化を行うと、工程がかなり変わりますので、工程のつながり具合や細部に問題がないか、あらためて「5Mベースの5S」理論で徹底的にチェックしておくことが不可欠です。

2段階目:徹底した差別化(高付加価値化)

1段階目では、低コスト化という成果物としての価値は固定されていましたが、2段階目では、市場に目を向けたいと思います。

製造業では、顧客や世の中の変化に対応し、競争も激しくなるので、徹底した差別化、高付加価値化が必須となります。したがって、新たににプロダクトが開発され、その結果、生産ラインも大幅に変えざるを得ないということが前提となります。

従来の本丸工程がそのまま継続できればよいのですが、市場の変化で本丸工程も変わることが多いと思われます。たとえば自動車業界で、市場が電気自動車に移行すれば、従来の心臓である内燃式エンジンは役目を終え、生産ラインでの本丸ではなくなります。

この場合は、新たな本丸の生産ラインを構築しなければなりません。ここに事業としての盛衰がかかっているといえます。新しい生産ラインの構築は、自力で構築するか、アウトソースするか、場合によっては、M&Aやアライアンスを結ぶことになるかもしれません。

ここでは、新しい生産ラインを自力で構築することとします。そして、生産ライン全体を見直し、生産技術レベルでの新たな構想にもとづく工程設計が必要となります。新しい生産ラインに従来設備などがどうしても転用できない場合は、新たに設備を導入しなければなりません。そして一番重要なことは、新しい生産ラインが新しい顧客価値や成果物を実際に生み出せるかどうかに成否がかかっているということです。

ここでやはり「5Mベースの5S」理論の登場です。生産ライン全体を眺め、製品は狙い通りの品質、コストでできているかといった視点で、発生する品質や設備などの問題点と関連する工程を見出し、その工程の5Mに徹底的にフォーカスしエネルギーを注ぎます。さらには、1段階目で紹介しました「4S」も必要になる場合もあります。

製造業のイノベーションには「5S活動の3段階理論」の全てが必要

ここまで、徹底した低コスト化と徹底した差別化(高付加価値化)の2つについて、「5Sの3段階理論」の「5Mベースの5S」理論を軸とする活動を紹介してきましたが、現実問題として、「イノベーションを興したり変革することばかりが全てではない」ということもお考えください。地味と思われるかもしれませんが、継続的・日常的には、「5Mベースの5S」活動に加え、「職場環境をスッキリさせること」や「改善につながる問題点を見える化すること」といった5S活動が欠かせないことを肝に銘じたいものです。

新しい価値を生み出しての成功はノウハウを5Mに蓄積すること(まとめ)

最後になりますが、最初に述べた通り、新しい価値を生み出すためのイノベーションは、高い価値(スマート)と低コスト(リーン)を合わせもつものが一般的であると思います。この2つの軸で同時にすすめることは大変難易度が高いと言われています。既存のノウハウが生かされにくい、つまりシナジーが効きにくいからです。そういう理由で本稿では、「イノベーション2段階論」をご紹介しました。

ここで少し補足しておきたいと思います。「高い価値と低コストを同時に行った方が良い」という意見はたしかにあります。ところが、2つの軸で同時に進めるという、ブルーオーシャン戦略は、仮に成功しても、その急所や特徴を抑えられると比較的容易に真似されてしまうといわれています。

例えば、ブルーオーシャン戦略の事例でおなじみ「1,000円の床屋さん」は、一時は大いにブームとなりもてはやされましたが、「ニーズがある」と競合に知られてコモディティ化してしまっています。それほど深いノウハウを必要としないビジネスモデルだからです。それに比べて、LCCのサウスウエスト航空もブルーオーシャン戦略で有名ですが、ノウハウが多岐にわたり複雑な構造であるため、多くの企業が真似はしましたが、結果的に成功した企業は2~3社程度だと言われています。

新規事業は、現状の事業と関連しながら進化させることでシナジーが効き成功確率が高くなるのですが、シナジー効果を製造業改善コンサルタントの立場として私なりによく考えてみますと、シナジーのもとになるもので特に重要なものは、現場ベースの見えざる資産でありノウハウでもある「5M」であると考えます。

「5Sの3段階理論」に基づいた活動「3段階の5S活動」により、改善や変革を地道につづけながらノウハウを「5M」に蓄積し続けていくことが、将来の事業成長の原動力になるものと私は確信しています。

製造業改善コンサルティングでは、単にリードタイムを短くしたり生産性を向上させるだけでなく、製造業で新しい価値を生み出して成功に導くためのご支援を行っています。

村上豊

製造業改善コンサルタント
村上 豊 Murakami Yutaka

製造技術をベースに、製造業や物流倉庫の生産性を高め会社に利益を出しつつ、現場のリーダーを育成するコンサルタントです。チームコンサルティングIngIngでは、世界中の管理技術や会社経営の手法を参考にしながら、オリジナル理論の構築を担当しています。

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