中小企業の経営コンサルティングをしていて、会社が成長するために必要なことを聞かれることが、ときどきあります。もちろん、アドバイスの内容は、その会社の事情によって異なります。
会社によっては、経営理念や経営計画が必要であったり、細かなことでは就業規則や社員の育成が必要であったりします。
アドバイスを求めるコンサルタントによって、会社の成長に必要なことのアドバイスの内容は異なることでしょう。
間違いを恐れずに述べるとするならば、中小企業が成長するために必要なことは、大きくは次の3つに集約されると思います。
- 社長のマインド
- 経営力の成長とバランスを考える
- 社長自ら先見力を磨き続ける
どれも、社員ではなく社長お一人のことです。中小企業の成長は、99%が社長お一人の器で決まるからです。まさしくその通りだと思います。
コンサルティング支援させていただいているお客様の中には、「平野さんのおかげで会社が成長できました」と謙虚におっしゃられる社長もいらっしゃいます。しかし、当社のコンサルティングを選んだのは、社長なのです。その意味では、「社長が目利きであった」と言えるのです。
以下、この3つに加え、節の作り方についてご説明したいと思います。
社長のマインド
マインドとは、日本語では「心」と訳されますが、経営においては「考え方」です。単なる考え方ではなく、社長の心にしみ込んだ考え方のことです。
社長のマインドが、会社の成長の方向を向いているのか、それとも口先では「成長させたい」と思っているけれども、実際の心の中では、「成長を止めるような考え方」を持っているのかです。
社長のマインドと言っても、幅広いので、テーマを絞って述べたいと思います。
会社が成長するためのマインドとは?
会社には、必ずと言ってよいほど競合他社が存在します。市場では、自社と競合他社が競って見込み客の取り合いをしています。自社の商品なりサービスなりが見込み客に選ばれ、そしてリピートしてもらえることで、会社が成長していくのです。
つまり、競合他社よりも良い商品、良いサービスを開発し、競合他社よりも販売することで、会社が成長できるのです。
会社が成長するためには、社長一人が働くだけでなく、社員にも質の高い仕事をしてもらわなければなりません。
どちらの社長が会社を成長させるか?
ここで、2人の極端なマインドを持った社長をご紹介します。どちらの社長も、普段から「会社を成長させたい」と考えていたとします。
1人目は、自ら率先してアイデアを出し、お客様周りをして販売をし、社員に気を配りつつ励まし、会社の未来ビジョンを語り掛ける、徳のある社長だったとします。
2人目は、いつもゴルフばかり行き、たまに会社に来られたと思ったら、社員に営業成績の悪さを怒鳴りつけ、夕方になったら会社のお金で飲みに行ってしまう社長だったとします。
どちらの会社の社長に、社員は「会社のためにがんばりたい」と感じるでしょうか?
会社を成長させたいとお考えの社長が持つべきマインドというものが、見えてきたことでしょう。
まずは「会社を成長させたい」と思うこと
中小企業では、社長は会社の株主でもあり、トップです。そのため、会社の規模は、例外を除いて社長が思った以上の規模にはならないことに、ご留意ください。
社長が「会社を今の規模のまま維持したい」と考えている会社が、大きく成長することはありません。まずは、「会社を成長させたい」と強く願ってください。
「会社を大きくしたいと願っても、大きくなるものではない」と言われる方もいらっしゃいます。その通りだと思います。
しかし、会社を大きくしたいと願わなければ、確実に大きくならないのです。願うだけなら無料なので、願ってみられてはいかがでしょうか?
会社の成長を止める社長のマインド
中小企業の会社の成長を止める社長のマインドには、恐怖心と劣等感があります。
恐怖心
「いやいや、私は会社を大きく成長させたいと思っていますよ」と言われる社長さんでも、「今すぐ、10倍の規模の同業他社の社長に就任してください」と言われたら、ものすごいプレッシャーを感じることでしょう。
このように、会社が成長することに対して、恐怖心を持っていても会社が大きくならないことが多いのです。
恐怖心をどのように克服するかですが、それは、社長が持つ大義名分と自信です。そこから勇気が出てきます。
恐怖心には、そこから来るストレスがあります。ストレス耐性を持つことも、社長のマインドです。
会社が順調に成長したら、「このままずっと成長し続けるのではないか」と思うのですが、売上高の踊り場が出てきます。後に「経営力の成長とバランス」でご説明するところでもありますが、成長が止まったときは、社長のマインドが成長するための踊り場でもあります。
売上高が踊り場のときは、会社は成長していないように感じますが、水面下では次の成長の準備がなされているのです。
劣等感
劣等感とは、自分が他人よりも劣っているように思っていることです。劣等感は、形が違って現れてくることがあります。次のような考えを持っている人は、劣等感を持っている可能性があります。
- 成長しようとしている社員をイジメてしまう
- よく他人の悪口を言ったり、あら探しをしたりする
- 会社を成長させた知り合いの社長に、いつも嫉妬している
劣等感のある社長は、一時的に会社が成長したとしても、それが砂上の楼閣のように崩れていってしまうことがあります。
劣等感を持っている社長は、「どのようにマインドを変えたら良いか?」ですが、人それぞれなので、なかなか一言では難しいです。主には、できていない自分を受け入れて謙虚になること、社員に対しては自分以上の能力を身に付けてもらえたら良しとすることだと思います。
「いやいや、私には恐怖心も劣等感もありませんよ」と言われる方もいらっしゃることでしょう。でも、よくお考えください。恐怖心や劣等感は、根深いところにあるものです。
経営力の成長とバランスを考える
経営力の成長とバランスは、どちらかと言えば実務寄りになります。
中小企業を経営されている社長の経営力は、「何でもって経営力なのか」を説明しつつ、そのバランスについて述べたいと思います。
起業したばかりもしくは家族経営の中小企業の場合
会社を起業したばかり、もしくは家族経営している中小企業であれば、次の3つが強ければ会社は成長させられると思います。
- 商品開発
- 生産
- 販売
とにかく売れて利益が出る商品を開発しなければ、会社はたちまち倒産です。起業したばかりの会社であれば、商品開発と販売に注力してください。
次に、生産と販売のバランスが大事になります。生産しすぎたら余剰在庫になってしまいますし、販売し過ぎたら機会損失になってしまいます。
サービス業の場合は、若干人員が足りないぐらいがベストです。工夫を重ねて、今の人数でも対応できるように、生産性を高めていくようにしてください。どうしても労力が足りない部分は、アウトソーシングすると良いでしょう。
仕事をアウトソーシングする場合の注意点は、「自社でもできないことはないが、人手が足りないのでアウトソーシングする」というものに限った方が良いです。自社にノウハウがない場合は、簡単にアウトソーシングできない場合が多く、トラブルの元になりやすいからです。
従業員数100人ぐらいまでの中小企業の場合
商品開発に成功し、ヒット商品が生まれたら、販売数が飛躍的に伸びていきます。生産と販売のバランスを取りつつ、会社が成長していくのですが、次に必要なバランスは、次の3つだと思います。
- 生産
- 販売
- 経理
生産と販売はそのままバランスを取る必要があるのですが、成長している会社が取るべきバランスとして、経理が入ってきます。経理のバランスと言うか、現金がなければ、会社が倒産する場合があります。
最近では、現金取引が多くなり、手形を切る会社は少なくなってきましたが、倒産はあります。会社が倒産するときというのは、買掛金が支払えなくなったときです。
何かを生産するためには、設備を導入したり、原材料を購入したり、人件費を払ったりする必要があります。売上による現金が入ってくるのは、商品やサービスが売れて、売掛金を回収したときです。商品やサービスが売れたら黒字になりますが、そのタイミングを待たずに支払いが発生し、現金が準備できなければ倒産です。
社長は、何か得意なことがあって起業したことと思います。多くの社長は、生産か販売のどちらか、もしくは両方が得意な人が多いことと思います。そういった社長ほど、経理に目が向かない場合があります。そういった社長は、会社を成長させるためにも、経理の学習を多少なりともされ、把握できるようになってください。
これ以外にも、商品開発はもちろん続けなければいけませんし、冒頭で述べたように経営理念が必要になったり、就業規則が必要になったりします。100人ぐらいの会社になってくると、人事課のない会社であっても総務部の中に人事や採用の担当者が必要になってきます。経理関連の中には財務的な知識も必要となってきます。
ともあれ、企業したばかりから家族経営まで、一般採用をし始めて100人以下の企業までは、上記のそれぞれ3点のバランスに気を配るようにしてください。
社長自ら先見力を磨き続ける
社長が起業したときは、何かの飯の種があり、それを事業化していったことと思います。
その事業がヒットして会社が成長し、社員を採用するようになってきたら、社員たちに給料が払えるだけの商品を開発し続けなければなりません。
そのためにも、社長は自ら先見力を磨き続ける必要があります。
先見力とは?
先見力とは、先を見る力のことですが、顧客や自社商品の状況を分析し、世の中の動きを見極め、商品やサービスを改善したり、将来的に売れそうな商品のアイデアを出したりする力のことです。
社員から「これから何をしたらいいのでしょうか?」と聞かれることがあります。特に、会社の経済状況の厳しさが社員にも伝わったときには、社員としては会社にもっと貢献したいと考える人も出てきます。どのようなときでも、「我社は今現在、1年後、3年後、5年後は何をしているのか」に答えられなければならないのです。
そのためにも、社長には先見力が求められます。会社の全責任を背負っている社長だからこそ、先見力が大事になります。
顧客や自社商品の状況分析
短期的な先見力を発揮するためには、1つ目として顧客や自社商品の状況をつかんでいることです。顧客や自社商品の状況分析には、いくつも確認することがあります。次のコラムをご参照ください。
世の中の動きを見極める
長期的な先見力としては、世の中の動きを見極めることです。世の中の動きを見るためには、その変化をつかむ必要があります。変化をつかむためには、常に情報を仕入れておき、定点観測して以前との違いや変化を読み取ります。それを、自社の商品やサービスの改善や新商品のアイデアに活かすのです。
そのためにも、社長自らが常に情報を仕入れ続けることが大事です。
情報の仕入れ方
情報の仕入れ先は、新聞や雑誌、テレビ、インターネットだけでは足りません。お客様に話を聞くことはもちろんのこと、町の中で歩いている人を見たり、看板を見たり、流行っているお店に行ってみたり、普段歩かないルートを歩いてみたり、人の話を聞いたりすることです。
電車に乗ったときも、つり広告を見てください。そこにはアイデアが満載です。
流行っているお店に行ったときは、流行っている理由を考えてみてください。その理由を、自社の商品やサービスに当てはめてみたら、何か変化が起きないか考えてみてください。
時には、食中毒やら不正やら、ネガティブなニュースが入ってきます。そういったニュースも目を向け、自社の商品やサービスに当てはめてみてください。すると、時限爆弾やボトルネックを発見できる場合があります。
とにかく情報を数多く集めている中で、ひらめきがあったら、それをメモしておきます。すぐに使えるようなアイデアは、飯の種にはつながりにくく、アイデアを異種結合して熟成させていくのです。
世の中を見ている中で、「なぜだろう?」と感じるところがあれば、そこにセンスがあると言えます。誰しも素通りするところを、社長一人だけが気が付くわけです。そのセンスを鍛えていくことが、先見力につながっていくはずです。
社員に未来ビジョンを示す
先見力のある社長は、どのような事業をしていったら自社が成長できるのか、社員を幸せにできるのか、会社をどのように組織していったら良いのか、会社の未来の姿をイメージすることができます。
社員は、社長が指し示す会社の未来の姿を知りたいと思っています。社員は、自分自身の将来がどのようなものになるのか、社長の意向によって決定するからです。
会社に将来性がないと感じるようであれば、会社を離れていきますし、社長に着いて行ったら大変だと思ったとしても、自分が成長しお給料も上がっていくことが分かれば、がんばってついてきてくれるものです。社員は、社長の先見力に自分の人生を懸けているのです。
社長は社員の求めに応え、未来ビジョンを社員に示してあげる必要があります。特に若手社員にとっては、成長しない会社はかわいそうです。自社の成長した姿を明言することで、そこに期待感が生まれます。
社員に示す未来ビジョンは、次の3つのことが満たされていることで、社員は「社長がかかげる未来ビジョンに懸けてみよう」と考えます。
- 自社は、どのような人に、何でもって社会貢献をするのか?
- 将来の会社の規模は?
- 将来の社員の処遇は?
1つ目は、マーケティング的な要素が含まれます。2つ目は、どの程度の規模を目指すのかによって、社員が何をしなければいけないのかが、1つ目のことと合わさって、漠然と理解するようになります。3つ目は、それらが実現したときのインセンティブです。
これらを本当に実現する気があるのか、社長に問われます。そのために、具体的な方針として未来ビジョンを掲げる必要があります。そして、それを実現するための具体的な行動も必要です。
会社を成長させるための節を作る
会社の成長は、線形に伸びていくことは珍しく、一進一退を繰り返しながら、少しずつ成長していきます。線形に伸びていったところは、必ず大きな反作用で崩れていってしまう場合があります。
節とは竹の節のことです。竹は、節があることで、しなやかに伸びていくことができます。最近では、「レジリエンス」という言葉が流行っているようですが、会社にも弾力性がいります。
節を築いていくことは、鉄筋コンクリートの建物を建てることと同じです。コンクリートを流し込んだら、しばらく時間を置いて、足元を固めてから、さらに上層階を建てていきます。企業も、足元を固めるための時間が必要となる場合がほとんどです。
では、企業にとっての節や足元とは何かといえば、これまで述べてきたことに加え、次の2つのことを固めていくことです。
- 人材を固めていく
- 運営の仕方を固めていく
これらを固めていくためには、常套手段はもちろんありますが、常套手段を導入しつつもさまざまな工夫をしていかなければいけません。コンサルティングでさまざまな企業を見てきましたが、企業特有の固め方があります。
社長の性格や能力、社員の性格や能力が、どの企業もまったく異なるので、本当にそれぞれのやり方があります。厳しくして固めている企業もあれば、放漫経営のように思えるところでも人材が固まっているところもあります。
人材や運営の仕方を固めるためにも、先見力のようなものが経営者には必要となります。そのためにも、日々の学習や反省が大事になります。
最後に、中小企業が成長するために必要な知識が得られるセミナーのご案内をさせてください。
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分かりやすい言葉で、丁寧にご説明します。1年間で1クール、12回の講座ですが、繰り返し学んで、自分自身の経営を反省・改善できる内容です。
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この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。