志の高い社長が、お一人で事業を立ち上げて、なかなか会社が大きくならない場合は、人材がいないからです。
一代で大企業にまで成長させた社長の自伝を読んでいると、必ず優秀なナンバー2と言える人材の存在があります。
今まで会社が大きくならなかったのに、優秀のナンバー2が入社することで、事業規模が毎年倍々で成長していくことは、よくあることです。
優秀な人材は多いと思いますが、優秀なナンバー2に求められる能力は、優秀な人材の能力とは異なる能力が求められます。
この記事では、志の高い社長がどのような人をナンバー2として受け入れたらいいのか、ナンバー2を受け入れられる社長の心構えはどういったものなのか、ナンバー2と何をしたらいいのかを解説いたします。
どのようなナンバー2が必要なのか?
一代で会社を大きくした社長のエピソードを分析していると、社長を支えるナンバー2と言える人材が3人は必要だと思われます。その3人とは、次のような人材です。
- 社長の苦手分野を担い、社長の悩みを取り除いてくれるナンバー2(実質のナンバー2)
- 社長の得意分野を補佐し、目先の仕事を奪ってくれるナンバー2
- 社長のムチャ振りに耐えられる奥様
1つ目は、実質のナンバー2です。優秀なナンバー2は、社長の志をくみ取り、次々と思いもしなかったような提案をしてきて、新しい手を打っていってくれます。
社長は苦手分野については、気持ちが乗らないためか、その部分がボトルネックとなって、会社の成長を止めてしまうことがあります。苦手分野を補ってくれるナンバー2がいたら、社長の気が付かないことを気が付いて、トラブルが起こらないように手を打ってくれます。社長の仕事がみるみる減っていき、社長が未来のことに集中できるようにしてくれます。
さらには、社長のストレスをナンバー2が引き受けてくれるようになります。社長は、ナンバー2のストレスが大きくなってきたら、ナンバー2にも補佐役を置いてあげるようにしてください。
2つ目のナンバー2は、社長の仕事を肩代わりしてくれる人材です。社長が技術系であれば、技術の部分を支えてくれる人材です。営業系の社長であれば、営業の代役や補佐をしてくれます。
3番目が奥様です。会社が大きくなってくると、社長のストレスは計り知れないほど大きなものになります。ナンバー2が社長のストレスを引き受けてくれたとしても、社長にかかる重圧は大きなものです。そのストレスをかかえて帰宅してくるわけですから、奥様に器がなければ、奥様は耐えられなくなります。
奥様と離婚してしまったら、奥様と共に築いてきた社長が保有している会社の資産を、基本的に半分にしないといけなくなります。それも会社の成長が止まってしまう原因の一つになります。
そのようにして、3人の優秀な人材によって社長が支えられることになります。
ナンバー2の自分とは異なる能力を受け入れること
会社を大きくできない社長には、いくつかの共通する間違った心構えがあります。
会社が大きくならない理由は、優秀な人材を採用しても、社長が原因で会社を去っていってしまうからです。また、社内の人材が育たないからという、人材の理由があります。そこにも、社長の間違った心構えがあります。
その間違った心構えとは、社長のプライドと言えばそうなのですが、「負けず嫌い」のプライドです。
優秀なナンバー2が入ってきたときに、そのナンバー2よりも上に立とうとしてしまい、強がりをしてしまうのです。それがナンバー2を排斥するような動きになり、ナンバー2も社長に着いていけなくなり、ナンバー2が定着しないのです。
社長とナンバー2は、役職では上下関係なのですが、人間的には対等の関係でないと、ナンバー2が定着しないのです。本当に志の高い社長であれば、自分よりもナンバー2に高いお給料を払っても良いくらいです。
「ナンバー2に自分よりも高い給料を払ったら、自分が事業活動をする意味が無いではないか」と考える社長もいらっしゃることでしょう。そのような考えをしていては、優秀なナンバー2は入ってきませんから、ご安心ください。
社長は筆頭株主ですから、ナンバー2に会社を大きくしてもらい、そうなったら自分に配当を出せば良いと思います。またナンバー2は、社長が自由にお金を使えるように、そして夢や志を実現してくれるように動いてくれます。お金が必要であれば、それをナンバー2に伝えたら良いのです。
優秀なナンバー2は、社長のすべてを心得ているので、プライベートはともかく何も隠し事をする必要はありません。そしてナンバー2は、プライベートのことまで言ってきませんから、「ただお金がほしい」と言えば良いのです。
ナンバー2の異なる能力を受け入れたら、ナンバー2を使い潰さないことです。ナンバー2は、役職上は部下であったとしても、社長との対等な立場を取るべきです。
ナンバー2を手下のように働いてくれますが、何でもかんでも仕事を振っていくと、ナンバー2が本来の仕事ができなくなってしまいます。そして疲れ切ったナンバー2は、数年で会社を去っていくことになります。
ナンバー2に自分の弱みをカバーしてもらうこと
社長には得意分野があります。代表的な得意分野は、次の3タイプに分かれます。
- 開発
- 営業
- 経理
おおよそこの3種類のどれかが得意なはずです。昭和の時代では、開発が得意な社長が、営業や経理の得意なナンバー2と組んで大企業にしていった企業が多くありました。その偉人社長を分析していると、必ずと言ってよいほど、営業や資金繰りで苦労なさっています。
昭和の時代では、開発系の社長が目立つ時代でした。
営業系の社長は、開発が苦手です。売れる商品があれば売ってくる天才的な社長が多いのですが、売れる商品が開発できないのです。優秀なナンバー2が売れる商品開発を補佐することができたら、その会社は成長のチャンスを迎えます。
経理系の社長は珍しいです。有名な人であれば、ジョン・D・ロックフェラー先生です。
一代で巨大企業を創り上げた偉人のエピソードを読むと、ナンバー2がみるみる悩みを消し込んでいき、難なく会社を成長していったように描かれています。
会社の成長によって、今まで体験したことのない問題が噴出してきますから、悩みが出てきます。会社が大きければ、それだけ悩みも重いものになります。当の本人たちは必至でやっていたと思いますが、ナンバー2のお陰で難局を乗り越えることが多いのです。そして、それを社長の手柄にする人もいます。
社長の特性は、他にもあります。長期的な準備が得意な社長もいれば、目の前の業務処理が得意な社長もいます。
社長は自分が得意としない分野がボトルネックとなって、会社の成長を止めてしまいます。
ナンバー2にそのボトルネックを補ってもらって、会社の成長のバランスを取ってもらうことが大切です。
社長の弱みをカバーしてもらえたら、社長の悩みがみるみる消えていきます。そして、夢や志の実現に向けた悩みに変化していきます。
会社の成長に合わせて社長とナンバー2が共に成長すること
社長とナンバー2は、会社の成長と共に、お互いに成長していかいないと、うまくいかないことが多いです。お互いに、何を成長するかと申しますと、仕事能力の成長もそうなのですが、人格の成長も含まれます。
会社が成長し、お互いにたくさんのお金が使えるようになってくると、欲が出てくることがあります。その欲が、世間一般的なものから離れていってしまった場合に、二人の心が離れていってしまう場合があります。
会社が小さな頃は、認められていたことでも、会社が大きくなってくると認められなくなることもあります。例えば、会社のお金で飲みに行くことですが、会社が大きくなるにつれて、社員が経費として認めなくなってきます。
会社が大きくなってくると、会社は公器な存在となってきていますから、社長や社長を支えるナンバー2に欲があると、社員も同様にお金に対してルーズな考えを持ってしまいます。社長の欲を戒める人は、ナンバー2ですから、ナンバー2が無視無我に近づいていくための修練をしていくことが大事です。
そして、ナンバー2から戒められた社長は、その諫言を受け入れて、会社のお金ではなく、自分のお給料で飲みに行くようにすべきです。寛厳を受け入れられない場合は、最悪の場合、会社は社長の器に合わせて縮小していってしまいます。
ナンバー2を信頼し提案に従うこと
ナンバー2は戦略的に社長の夢や志の実現に動いてくれます。そして、社長の徳をナンバー2が創り上げてくれます。
ナンバー2の提案は、何も事業活動だけに絞られたものではありません。会社が永続的に発展していくための土台づくりをもしてくれるのです。その土台で大事なことは、社長の徳の醸成です。
本田宗一郎と藤沢武夫が社員たちと飲みにいったエピソードをご紹介します。
まだ本田技研工業が巨大企業にまで成長していなかったときのことと思います。
居酒屋で社員たちと飲んでいたときに、ふと藤沢が一人の社員に、「おい、そこにある本田の上着を取ってくれ」と頼みます。社員は、「何をするのだろうか?」と思って、本田の上着を渡したところ、その上着に入っていた財布から現金を抜き取り、「おい、これで会計をしてきてくれ」と頼みました。
藤沢は、本田が見ていないうちに本田のポケットマネーで全員の飲み代を支払わせたのですが、本田はそれを咎めないばかりか、それを良しとしました。
他にも次のようなエピソードがありました。
本田技研工業が、マン島TTレースで優勝し、鈴鹿サーキットが着工され、飛ぶ鳥を落とす勢いのとき、藤沢は本田に「奨学金の財団を設立し科学者を育成したい。そのためのお金を出捐する」と伝えました、それに対して本田は、「なら俺も出すしかないじゃないか」と二人で出捐することになりました。
このようにして、ナンバー2の行いで社長の徳を築き上げているのです。ナンバー2のことを信頼し切っている社長は、ナンバー2の発言にすべて「Yes」なのです。そうすることが、会社にとっても、自分の夢や志の実現にとっても最短ルートになります。
ナンバー2と力を合わせて組織をつくること
社長がナンバー2と協力して行うことの中に、組織作りがあります。組織作りは、どちらかが担当して行うものではなく、それぞれの得意分野があるので、それを活かして組織をつくっていきます。
最初の組織は、開発、営業、経理の3つしかありませんが、そのうちに総務ができ、人事ができ、経理が財務に成長し、開発と生産が分かれていき、そして広報部門ができていきます。
それらの組織や部門の仕組みをつくり、人材を育てていき、うまく育てていって、経営担当者を育成するのです。
以上、社長一人で創業した会社がナンバー2と協力して大きくできる条件について、概要的な内容になりましたが、解説いたしました。
社長は、頭が良いだけで務まるものではありません。責任感も必要です。社長として何をしたら良いのか、日ごろから勉強も必要です。ですが、それだけでは大きな会社をつくることは難しく、必ず人材が必要になります。
社長が人材を求めるのであれば、上記のことができるようにしていくために、人格力とも言えるものを磨いていくことが大切です。
また、何年も共にしてきたナンバー2が豹変して、会社にダメージをもたらす場合もあります。社長とナンバー2の関係は、信頼はするものの「任せて任さず」を貫き、友達としてではなくビジネスパートナーとして付き合うべきです。
高い志を持つ社長の参考になれば幸いです。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。