社長の夢実現への道

小さな会社に経営理念は必要か?

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小さな会社に経営理念は必要か?

このコラムでは、パートやアルバイトを含んだ従業員数が数名以下の小さな会社には、経営理念が必要かどうかを考えたいと思います。

小さな会社を経営されている社長様に経営理念のことを聞くと、「経営理念が必要だ」と考えている方は少ないことでしょう。

また、小さな会社の社長様に、「事業を通じて何を実現したいですか?」と聞くと、「世の中を良くしたい」という社会的なご返答は頂けないことが多いです。

「会社の目的は、金を稼ぐこと」とおっしゃる方もいれば、場合によっては「小さな会社だから、経営理念を掲げたところで何になるのか?」と答えられる社長様もいます。

このコラムでは、まず、ほとんどの社長は公器性のある経営理念を持っていることをお伝えします。小さな会社の社長が持つ経営理念のよくある勘違いと、経営理念を掲げることのメリットをお伝えします。そして、経営理念に対する誤った理解を少しでも払拭できたらと思います。

多くの社長は公器的な経営理念を持っている

小さな会社では、社長が出す利益目標は、「会社の維持費」+「社長の欲望を満たす金額」であること多いと思います。

ところが、「事業を通じて何を実現したいですか?」「それはなぜですか?」と、社長をやっている理由について質問攻めにすると、会社を起業したときにはしっかりとした公器的な経営理念をお持ちだった社長様が多いことに気づかされます。

社長様は、ご自身に高い給料を出している方が多いですが、それに見合う以上の社会的責任が伴います。しかし、長年、会社を経営されているうちに、マンネリ化した仕事をこなし、何度も会社存続の危機を乗り越えているうちに、理想よりも現実が優先され、公器的な経営理念を持っていたことを忘れているだけではないかと思います。

とある小さな会社のクライアント様は、「わが社が目指すことは、顧客に製品をなるべく高く売りつけることだ」とおっしゃるのですが、社長の行動を見ていると「業界一の技術力を持ち続ける」という社会貢献のことを暗黙に掲げているように思えます。

他の小さな会社の社長様では、「地域の活性化」や「困っている人をなんとか助けたい」といった小さな範囲のものであったり、もっと大きな公器性に目覚めて経営理念が進化し、業界全体の発展や国の発展を経営理念にされたりする社長様もいます。

私事で申し訳ないのですが、正直、ホームページの仕事を始めたときは、「手軽に儲かりそう」という発想でした。ところが、ホームページを制作したお客様から、「注文が入ったよ!」とお褒めの言葉をいただくことが増え、「お客様の売上アップにもっと貢献したい」という気持ちが生まれました。

そして、お客様への貢献を考えて仕事をするようになってから、ホームページで集客ができても、別のことで会社を倒産させてしまった社長様が現れました。そこで、「ホームページだけではお客様が勝ち続けられない」と思い至り、コンサルティング会社を設立。そして、「泥中の花」という経営理念を掲げました。

経営理念のよくある勘違い

経営理念のよくある勘違いとして、次のようなものがあります。

  • 経営理念のひと言を創ったところで何になる?
  • 経営理念は社員を働かせるために作るものだ
  • 経営理念を創っても飯は食えない
  • 社員は理解できない

これらのよくある勘違いについてご説明いたします。

経営理念の要素

経営理念は、ひと言で表現されるものだと思われていますが、ひと言で表現されたものは、当社では基本理念と言っています。そして、基本理念から派生してくる未来ビジョンや経営指針、経営計画、行動指針、スローガン、経営理念解説書などによって、基本理念だけでは理解しにくい部分を補完し、経営理念が構成されます。

このように本物の経営理念づくりは、本当は複雑なものです。ですので、当社では経営理念を「つくる」ことを、「構築する」と言っています。経営理念コンサルティングをご覧いただけたら、本物の経営理念を構築するために必要なことがご理解いただけることと思います。

「経営理念のひと言で、何が変わるのか?」とお考えであれば、そのひと言は機械的に作られた可能性があり、魂が込められていません。魂が込められていない経営理念では、社長ご自身すら変えられません。

経営理念は短い時間で出来上がるものではなく、社長の人生観、宗教観、使命感、成功哲学、仕事の仕方やノウハウなど、さまざまなものが言葉に凝縮し、醸成して出来上がるものです。社長の成長によって、経営理念も進化します。

「経営理念のひと言を創ったところで何になる?」というお考えは、払拭されたでしょうか?

経営理念の最大の目的

社長が経営理念を構築し切ったとき、その経営理念を読み返すたびに、社長の情熱が湧き上がるものになります。そういった経営理念が本物であると言えます。

経営理念を構築する目的が、社員を働かせることであるならば、それは論外です。本物の経営理念を構築する目的は、小さな会社では、社長の熱意ややる気の発揚です。社長の戦闘力は、社員の10倍や100倍もあるので、社長の熱意が会社の成長や存続の原動力になります。

「経営理念は社員を働かせるために作るものだ」という発想ですと、経営理念ができて浸透させたら、社長は何もしなくても社員が勝手に働き、会社が勝手に運営されていくことになります。そのような会社は、まずありませんし、あったとしても利益はあまり出ていないことでしょう。ましてや、利益が出ていたら、主要な社員が全員退職して反旗を翻したり、会社を乗っ取ったりする危険性があります。

会社の存続を優先すべき

経営理念には企業ビジョンが含まれています。その企業ビジョンを実現すべく会社は活動をしています。

しかし、経営理念を創っても、顧客に価値を提供しなければ飯は食えません。経営理念の企業ビジョンは、顧客を創造するか、顧客が求める価値と合致させる必要があります。そして、充分な利益を得る必要があります。そのことを経営計画や経営方針などに入れておく必要があります。

また、会社が倒産しそうな状態のときに経営理念を優先すべきかどうかを聞かれたら、私は「飯を優先してください。」と答えます。なぜなら、会社が倒産してしまったら経営理念が実現できなくなり、顧客や取引先、社員に迷惑がかかるからです。

ときどき経営者から「経営理念を創っても飯は食えない」と言われることがあります。飯の食えない経営理念は、飯を食っていけるための要素が含まれていないので、本物の経営理念ではありません。本物の経営理念は、それを正しく浸透させると、飯が食っていけるどころか、会社が発展していくものです。

社員には経営理念の意味を伝え続ける努力を

経営理念の構成要素の一つである基本理念は、会社の理想が短い文章で描かれています。その文章を見たり読んだりしただけでは、経営理念を創った社長本人以外には、100%理解できません。「社員は理解できない」と言われたら、その通りです。

社員からすると、「社員を働かせるための道具だ」とか、「経営理念は宗教だ」、「どうせ、金儲けが目的だろう」と最初は思います。

それでも、本心からの経営理念を掲げた社長は、そういったネガティブな言葉に負けてはいけません。社長自ら率先して、経営理念の実現のために働き、それを伝え続けることが大切です。

そして、経営理念実現に貢献した社員を評価するなど、経営理念実現のための仕組みを構築することも大切です。

その結果、経営理念を理解できない社員は、会社を去っていきます。会社にとっては、それは正しいことです。経営理念をしっかり掲げた後は、経営理念に共感する人が入社してくるようになり、会社に新陳代謝が起こるようになります。

このようなことを考慮することで、機能する本物の経営理念が構築・浸透されていきます。

経営理念を掲げることのメリット

たとえ小さな会社であっても、経営理念に公器性があり、社長の本心からのものであれば、それを掲げることにメリットがあります。

経営理念は会社の存在目的が含まれているので、社員や取引先、銀行などにわが社の未来の可能性を感じてもらうことができます。会社の可能性を感じることができた人は、モチベーションが高まり、社長に協力するようになります。

経営理念が本心であればあるほど、その経営理念に共感する社員が増え、社長が指示しなくても経理理念に基づいて行動してくれる社員が現れ、コアなお客様が増えます。

そのようなコアなお客様が増えていけば、小さな会社でも「ブランド」になっていくと思います。

もし、会社の事業を通じての社会貢献を少しでもお考えであれば、それを経営理念にまとめられてはいかがでしょうか?

おそらく、「自分が創る経営理念にこれほどのパワーがあったのか」と驚かれることでしょう。

経営理念づくりを支援するコンサルタント選び

経営理念は、社長の考えや哲学を明文化したものです。経営理念づくりを支援するコンサルタントの中には、経営理念づくりを社長以外の人員で行うところがあると聞きます。

そういったところは、社長の理想が経営理念に盛り込まれない可能性があるので、おすすめできません。

また、経営理念を数回のヒアリングだけで構築してしまうところもあると聞きます。そのような経営理念では、社長が肚の底から情熱が沸き立つようなものにならないと思います。

やはり、経営理念づくりは、社長が主体となって取り組むべきです。コンサルタントに外部支援を依頼するときは、コンサルタントが経営理念をつくるのではなく、社長が主体となって経営理念をつくるような支援をしてくれるところで、なおかつ時間をかけてじっくりと支援してくれるところが望ましいです。

経営理念コンサルティング

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

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