社長の夢実現への道

経営理念と利益追求どちらを優先?利益低下の会社が採るべき選択肢

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利益が下がった会社は経営理念遂行と利益追求のどちらを優先すべき?

経営理念を策定したあとに、景気の波によって売上高が減ってきたときに、社長が悩むことは、「経営理念を優先すべきか、それとも利益追求を優先すべきか?」ということです。

社長は、その答に対して優柔不断ではいけません。優柔不断がもっとも会社を危険にします。

経営理念の実現と利益追求の二択の場合は?

「経営理念遂行」よりも「利益追求」を優先してください。

会社の売上や利益が下がってしまって、経営理念の実現をそのまま目指すべきか、それとも利益追求に切り替えるべきか、理想と現実の二択しかない場合には、どちらを選ぶべきでしょうか。

まずは、その疑問にお答えします。


二択の場合は「利益追求」を優先してください。

経営理想の実現を選んで会社が倒産してしまっては、経営理念を果たすことはできませんし、社員やその家族を幸せにすることはできません。

経営理念の実現を目指すよりも、経営の立て直しを優先してください。

経営理念を策定したら利益が減るのか?

経営理念を策定したら利益が減る場合がありますが、その理由は簡単です。

経営理念が間違っているか、経営理念の浸透の仕方が間違っているか

このどちらかです。以下、次の目次の流れでご説明いたします。

経営理念が間違っている場合

経営理念を策定して利益が減ってしまった場合は、経営理念のどこに間違いがあるのでしょうか。次のことに対して経営理念を点検してみてください

  1. 経営理念に社長の熱い想いが込められていない
  2. 社員を働かせるために経営理念を策定した
  3. 経営理念に込められた会社の目標があいまい
  4. 経営理念を実現する方法が策定されていない/もしくは不十分
  5. 商品が限定されている

1. 経営理念に社長の熱い想いが込められていない

経営理念に社長の熱い想いが込められていない場合としてよくあるパターンは、他社の経営理念を真似して策定した場合、もしくは社員が経営理念を策定した場合があります。

経営理念が策定されたら、社長自ら経営理念実現のために取り組むべきです。社長の後ろ姿を見て育つ社員が、会社を成長に導く本物の社員になります。ところが、他社を真似て策定された経営理念や社員が作った経営理念に、社長自ら熱意を持って取り組むことができるでしょうか。そして、社長が実践しようとしない経営理念を、社員が実践するでしょうか。

やはり、社長自らの言葉で構築された経営理念でなければ、社長自身が奮い立ちませんし、社員もやる気は出ないことでしょう。

2. 社員を働かせるために経営理念を策定した

2番目の社員を働かせるための経営理念ですと、社長は経営理念から治外法権です。「世のため人のため」と書かれていたとしても、社員には「社長自身の私欲を満たすために経営理念を策定したのか」と捉えられてしまいます。

経営理念を社長の上に置いて、社長自ら先頭を切って経営理念の実現に取り組むことが大切です。

3. 経営理念に込められた会社の目標があいまい

3番目に目標のことをあげました。目標があいまいであれば、人によって解釈が異なってしまいます。そのような経営理念では、社員の仕事の方向性が定まりにくくなるので、利益が出にくくなります。

会社の目標を立てる場合は、顧客を明確にすることから始めます。次に、顧客にどのような価値を提供するのかを考えます。顧客や顧客が求める価値を明確にすることで、社員は成果を高めることができるようになります。

4. 経営理念を実現する方法が策定されていない/もしくは不十分

4番目は、経営指針や行動指針のことです。経営指針は、基本理念や企業ビジョンを実現するための、経営陣の判断基準が策定されています。また、行動指針は、仕事で成果を出し報酬が増え、基本理念や企業ビジョンを実現するための方法が策定されているものです。経営理念に入念に考え抜かれた経営指針や行動指針が加わることで、売上を上げるための自社オリジナルの理論が揃います。

「緻密」とは、抜けのないことを意味します。例えば、行動指針に「クレームは迅速に適切に対処せよ」と書かれていたとしましょう。では、その「適切」とは、何をもって適切なのでしょうか。これでは、行動指針の内容としては不十分です。

5. 商品が限定されている

特定の商品やサービスで事業を行うことを経営理念に盛り込んでいる場合は、その商品が陳腐化したときに、経営理念を取るべきか利益追求をすべきかで迷います。

例えば、「ポケベルを普及させて、人々の生活に革命をもたらす」という経営理念を掲げた、ポケベルの販売会社があったとしましょう。ポケベルは2019年に国内ではすべての事業が終了しています。今現在、ポケベルの普及に成功したらまさしく革命ですが、携帯電話やスマートフォンの普及で姿を消しました。この経営理念を優先しては、会社の生き残りは不可能です。

経営理念の浸透の仕方が間違っている場合

経営理念が緻密に策定されていたとしても、浸透の仕方に失敗すると、売上が減ってしまうことがあります。急激に減ることもあります。その代表例として、経営理念を急激に伝え過ぎた場合と、社員が経営理念にメリットを感じない場合があります。

経営理念を急激に伝え過ぎた場合

とある小企業で、経営理念を策定して情熱にみなぎった社長が、その熱意を次の日に社員全員を集めて熱く語りました。社員はあっけにとられていましたが、熱の高まらない社員に対して、社長は最後には怒鳴りつける始末でした。

その結果、社員のほとんどがすぐに辞表を出してしまいました。

この実例は極端な話ですが、社長と社員の関係は、溶けた鉄を水の中に放り込んで、水蒸気爆発が起こったようなものです。

社長の社員の間には温度差があるため、経営理念を浸透させるとき、最初は経営幹部などの身近な人から少しずつ浸透させていくことです。経営理念の浸透にも時間がかかります。石油タンカーが時間をかけて方向転換するように、人の考えが変わったり成長したりするのにも時間がかかるためです。

経営理念の浸透で大切なことは、社員に社長自ら「わが社が何のために存在しているのか」といった会社の存在目的と、そして、それを実現するために社員にどうしてもらいたいのかを語り続けることです。

社員がメリットを感じない場合

経営理念を遂行するということは、社員にとっては今までと違った方法で仕事を考えて実行することになります。今までの考え方ややり方で何も注意されてこなかったのにもかかわらず、社長の命令でガラッと変えることになり、社内は混乱することが予想されます。

社内の混乱は、社員にとってはストレスが増えることになります。社員の給料はそのままで、ストレスが増えるとなると、社員は経営理念にメリットを感じません。社員の中から、「今までうまくいっていたのだから、それでいいじゃないか」と、反発の声が出てくることでしょう。

そのためにも、経営理念の浸透では、社員に希望を与えることが大切です。社員の希望とは、経営理念を遂行すると仕事でさらなる成果を出すことができ、給料が増え、家族を幸せにできることです。そのような希望を持った社員は、経営理念を受け入れてくれることでしょう。

利益を上げられる正しい経営理念とは?

経営理念にこれが含まれていますか?

では、どのような経営理念が「正しい経営理念」と言えるのでしょうか。

経営理念には、社会貢献のことが中心に書かれることが多いですが、それだけでは言葉足らずです。社会貢献をしつつ、しっかり利益が上げられる正しい経営理念はあります。

そのような経営理念の構成要素と、基本理念や企業ビジョンに込められているべき内容について述べます。

経営理念の正しい構成要素

経営理念の構成要素は、次の4つです。

  1. 基本理念
  2. 企業ビジョン(全社目標)
  3. 経営指針
  4. 行動指針

基本理念とは

これを見て、「経営理念は、短い一文なのではないか」と思われた方も多いことでしょう。しかし、その一文はこの4つの中の基本理念に当たる部分です。基本理念は、抽象化された言葉で、社是と呼ばれることもあります。社長がこの言葉を思い出す度に情熱がみなぎるものが、本物の基本理念です。

企業ビジョン(全社目標)とは

企業ビジョンは、ビジョンというだけあって明確な目標です。誰が、もしくは何が、どれぐらい、どのようになる。そのような企業ビジョンであるべきです。例えば、「世界から公害を無くす」「地域の人を笑顔にする」という具合です。

基本理念と企業ビジョンを合わせて、1つの言葉で表現している会社もあります。

経営指針とは

経営指針は、経営幹部が社長に代わって経営判断ができる判断基準のことです。事業を拡大し、会社を大きくしていくと、社長の見える範囲に限界が生じます。そのときに、経営幹部に一部を任せていく必要があります。

この判断基準があることによって、経営陣が育ち、社長に代わって基本理念や企業ビジョンの実現に向けて経営判断をしてくれるようになります。

行動指針とは

行動指針は、社長を含む全社員がそれに従って仕事を行う、行動マニュアルです。社訓と言われることもあります。行動指針には、会社の仕事の考え方が含まれており、それに従って行動すると仕事で成果が上げられ、給料が増え、家族を幸せにできることが書かれています。

行動指針をしっかり策定した場合は、経営理念解説書まで含めると、何十ページにもなることもあります。

このような経営理念が完成し、社員に希望を与えながら正しく浸透させることによって、社員がさらに成果を出して会社が成長していきます。

基本理念と企業ビジョンに込められるべき内容

従業員が希望を持つ基本理念と企業ビジョンの2つに込められるべき内容があります。会社によっては、基本理念だけ、もしくは企業ビジョンだけのこともありますが、それであったとしても、正しい経営理念には次のことが含まれています。

  1. 社会貢献
  2. 人の幸せ
  3. 会社が長い時間をかけてでも目指すこと
  4. 商品や活動の定義

社会貢献は、会社が存在する大義名分です。大義名分を掲げることで、社員が奮い立ちます。「人の幸せ」の人とは、会社と利害関係のある人(ステークホルダー)のことを指す場合が多いです。得意先やエンドユーザー、仕入先、従業員、株主などです。

4番目の「商品や活動の定義」とは、それらの機能を表します。例えば、「わが社はホームページ屋だ」と言っても、社員は奮い立ちません。また、先ほどのポケベルの話のように、商品が陳腐化してしまったら、経営理念は実現できません。

ホームページという商品が持っている機能を考えると、「売上アップ」と定義できます。すると、「わが社は、顧客の売上アップに貢献する」という定義が成り立ちます。単なるホームページ屋でなく、売上アップに貢献する会社の方が、提供している商品の質が高く見えませんか?

経営理念に商品や活動の定義が盛り込まれると、商品の質が変わり、商品の幅も広がり、未来に開発すべき商品が見えます。

「がめつい商売はしたくない」ということで、経営理念に利益追求を入れていない会社もありますが、利益があることで新商品を開発しサービスの質を高めることができ、顧客に高い価値が提供できるようになります。ですので、経営理念に利益の追求を盛り込むことは賛成します。

会社によっては、基本理念や企業ビジョンの中に、利益の追求を入れているところもありますが、そこに利益の追求の記載がなければ、経営指針に記載されているはずです。

経営理念の策定には会社の規模に応じた方法がある

あなたの会社は小さな会社?それとも大きな会社?

経営理念に間違いがあるのなら、利益を出した後で策定し直しとなります。最後に経営理念の策定方法について述べたいと思います。

ここで強く提唱したいことは、この見出しにあるように


会社の規模に応じて経営理念の策定方法が異なる

ということです。

世の中で市販されている経営理念に関する書籍の多くは、大企業やグローバル企業を題材としていることが非常に多いです。

確かに、大きくなった会社は経営理念を小さいうちから策定しているところがほとんどです。ですが、小さな会社のときに、どのように経営理念を策定していったのか、経営理念の成長については触れられているものは、皆無と言っても過言ではありません。

経営理念の進化は、創業期から主催に述べられている社史から読み解けるものと思われます。

本田技研工業の社史を読んでいると、本田技研工業の経営理念は創業してから4年目にして経営理念の根幹となる考え方を社報で示しています。そのときの従業員数は200人ほどです。

また、現在に残る本田技研工業の経営理念(社是)が策定されたときは、創業から9年目で、従業員数が2,400名を超えていました。

本田技研工業の経営理念には、当時社長だった本田宗一郎の哲学が反映されています。しかし、経営理念を策定したのは本田宗一郎でなく、ナンバー2の藤沢武夫がプロジェクトリーダーとなって策定しています。

会社の規模が、従業員数500人を超えるまで成長した企業であれば、市販されている書籍の経営理念策定方法は参考になるかもしれません。

しかし、経営理念が必要となってくる従業員数30人前後の企業では、書籍に書かれていることの大半が参考になるとしても、大企業の策定方法をそのまま踏襲したのでは、うまくいくことは稀です。そして、稀なために、ほとんどの中小企業は経営理念を策定しても成長することがないのです。

例えば、「経営理念は誰が策定べきか」ですが、中企業~大企業では、経営幹部や社員がプロジェクトチームを組んで行われることがあります。しかし小企業とでは、社長独りか、社長と経営理念策定を支援してくれるコンサルタントのみで行うべきです。

中小企業向け経営理念コンサルティングのご案内

もしあなたがが、30人前後の会社の社長で、経営理念の必要性をお感じなら、当社の経営理念コンサルティングは必ずと言ってよいほどお役に立つことができます。その理由は、ほぼ中小企業を専門として経営理念策定や浸透のご支援を行ってきたためです。

経営理念コンサルティングの導入をご検討中の方は、90分無料体験コンサルティングをお申込みいただき、経営理念コンサルタントとの相性をお確かめください。

経営理念の策定を急いでいない社長であれば、定期開催している小さな会社の社長のためのセミナーにご参加いただき、経営理念の基礎となる経営の原理原則などの知識を深められてはいかがでしょうか。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら数千を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくりる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

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