先日、とある上場企業にお勤めの営業職の男性から、「定年後に起業して、年金がもらえるまででいいので、充分な収入を得たい。」とご相談をいただきました。あと2~3年で定年だそうです。
今の状態では、100%ムリだとは申しませんが、限りなくムリに近いと、読者の方であればお判りのことでしょう。
とは言え、その方にコーチングを行って、理想の状態をイメージしてもらうようにしました。しかし、いくらチャンクアップしても、出てくる答えは「家族がなんとか食べていきたい」というものでしたし、ビジネスの知識がほとんどない状態でした。
起業するだけなら簡単なことです。経営をしていくことは難しくはありませんが、厳しいものです。この方へのアドバイスを兼ねて、その厳しさに耐えて生き残り、収入を得続けるための経営マインドをご紹介します。
ご相談者の状況
起業のご相談をいただいた方の状況をまとめると、次のようになります。
- あと2~3年で起業したいので、その準備を始めたい。
- 起業したい理由は、年金がもらえるまで家族が食べていけるようにしたい。
- どういった商売で起業したらいいのかわからない。
- 今まで営業職でずっとやってきた。
- 経営の勉強はほとんどしてこなかった。
- 「料理が得意」や「釣りがプロ並み」などといった特別な能力はない。
- 趣味は、自宅での毎晩のビールを飲みながらスポーツ観戦。
年金がもらえるまで、嘱託社員で残ることもできるそうですが、それを選ばずに起業するということは、向上心がある方です。また、家族の生活が心配だということで、家族思いでもあります。
経営の勉強をしてこなかったことは痛手ですが、会社に営業職として尽くしてこられ、出世欲のない人だったのでしょう。
毎晩ビールを飲みながら、野球やサッカーを観戦することは、絵にかいたような、昭和から平成にかけての幸せな家族との団らんです。30年以上も続けてきた習慣ですので、今日から毎晩、ビールの時間を経営の勉強に充てるとは思えません。
私との相談でも、「経営コンサルティングをお願いするほどのお金がないので、飲みに誘っている。」とのことでした。
起業の条件は次のようになると思われます。
- 定年時に家族が食べていける収入を得られている。
- あと2~3年で死ぬほど勉強するとも思えないので、今まで学んできた知識を活かす。
- 起業のための投資は、期待できない。
起業する人にとって大事な経営マインド
起業をするときに、その人にとって大事な経営マインドがあります。それは、利他の精神です。利他と言っても、商品やサービスを無料で提供するボランティア精神ではありません。
商売というものは、利他の精神でお客様に奉仕し、その感謝の気持ちとしてお代をいただくのです。
ご相談された方の隠された声として、「自分と家族さえ食べていけたらいいので、お客様が困ろうが関係ない。」、「年金がもらえるようになったら、商売なんてどうでもよい。私が商売をたたんでも、お客様は他のところで購入したらいいのだ。」と、自己中心的な心の声が聞こえてきて仕方がありません。
もし、このお客様無視の声が、お客様に聞こえてしまったとしたら、商売は成立しません。
私も少なくとも、「何をやるべきか分からないが、定年退職後に自分の強みを活かして商売をして、世間様のお役に立ちたい。願わくば、今のお給料ぐらいもらえるようになりたい。」とお考えであれば、「では、その方法をお教えしましょう。」となるのですが。
起業するために経営の勉強は必要か?
経営の勉強は必要なのか聞かれたら、「必要だ」と答えるようにしています。
あらかじめ知識があることに越したことはない
日本では、起業をして10年以内に、ほとんどの会社が事業をたたんでいることが現状です。そういった中で、経営の勉強をしてこなかった50代の男性が、起業して収入を得られるでしょうか。
起業前に経営の知識を習得しておくと、実際に経営をしてみて初めて「なるほど、こういう意味だったのか。」と実感できることが多いです。勉強していないよりは、勉強している方が、成功しやすいことでしょう。
「経営の勉強をしても、しなくても、倒産するときはするのだ」と言われる人もいらっしゃいます。起業したことのない人には商売の厳しさは本当の意味で理解できていませんし、起業したことのある人の発言であれば、その人は商売をしていく中で経営の勉強を実学されているはずです。
経営につまずいて、痛い目に遭いながら勉強しても良いかもしれませんが、そういったときには手遅れの場合もあります。先に、起業時には必要とされる経営の知識を勉強しておいた方が良いです。少なくとも、そうしておいた方が、食べていくだけの収入を得やすいと思います。
ご相談者からの意味不明なアイデア
ちなみに、ご相談者から、次のようなことを聞かれました。
どういった商売で起業したらいいのかわからないので、「とりあえず会社だけ作っておく」ということはどうだろうか?
もはや意味不明でした。法人の登記には目的が必要ですし、登記したら利益の有無にかかわらず、毎年税金がかかります。
経営の勉強は、会社を自分で起こし経営されてこられて引退された方の書籍を中心に、初めはムリかもしれませんが、1日に1冊ぐらい読むように努力なさってください。
私の場合、この努力を10年続けてきたら、経営コンサルタントを名乗れるようになりました。
起業するときの動機はさまざまです。お金が欲しい、いやな上司に束縛されずに働きたいなどあります。
どのような動機であれ、経営や販売の勉強、専門分野の勉強を、少しずつでも毎日行うぐらいの経営者マインドを持ってもらいたいです。
趣味を仕事にする場合の考え方
起業したい人の中には、「趣味を仕事にしたい」とお考えの方もいることでしょう。そういった人は、趣味が大好きで、それをやっている時間や費やしたお金は、痛くも痒くもない人でしょう。
趣味が商売として成立するための条件
そういった人が、趣味を仕事にして、商売が成立するための条件は、次の2つです。
- 人のお困りごとを発見する
- それをキャッシュに変換する
例えば、魚釣りが趣味の人がいて、魚釣りを商売にしたいとしましょう。
とある人が、魚釣りを始めたいのに、何から始めたらいいのか分からずに困っている場合に、「初心者が1人でお魚が釣れるようになるまでサポート」というサービスがあったらどうでしょうか?
もらえるお金は少ないかもしれませんが、自分にとっては趣味ですので、痛くも痒くもありません。釣り具屋さんを始めるわけではないので、資本金はほとんどゼロで、必要なものは、今手持ちの釣り具とパソコン、携帯電話だけです。しかも、釣竿やエサを経費で購入できます。また、釣りをする人が増えて、しかもお金がもらえるなんて、嬉しいことでしょう。
趣味を商売として儲かるための趣味レベル
ただし、「儲かる」と分かった瞬間に、マネしてくる人がドッと増えて出てきます。その中で一番人気となる人は、どういった人か。それは
趣味のことが好き過ぎるぐらいの人
趣味のことが好き過ぎるので、24時間趣味のことばかりです。そこに創意工夫も生まれ、徹底的な研究も行われ、高収益な人気商品や人気サービスも生まれてきます。
その趣味を仕事にするならば、好き過ぎると思えるぐらいでちょうどです。中途半端はいけません。趣味を仕事にできない人は、今まで趣味への注力が中途半端ではなかったのかを反省してもらいたいぐらいです。
趣味を仕事にしてしまった人の例として、次のような人がいます。
- 鉄鍋が好き過ぎて、鋳造の工場に頼み込んで商品開発までしてしまった
- 動物が好き過ぎて、施設を買い取って改装し動物園にしてしまった
- キャンプが好き過ぎて、キャンプ用品の会社とコラボしてキャンプ用品を開発してしまった
- 本田宗一郎と藤沢武夫を尊敬し過ぎて、社長向けの本田流経営者研修を開発してしまった
ちなみに、4番目は当社のサービスのことです。
ご相談者は、ビールを飲むことが趣味です。もし、ビールを飲むことが好き過ぎるぐらいだったら、年に数回は海外旅行で、世界中のビールを飲みに行くことをしていたことでしょう。世界中のビールを味わい尽くしたら、飲食店にビールを紹介するサービスを開発できるはずです。
サッカーを見ながらビールを飲むのが趣味であれば、イタリアやドイツなどに旅行し、ワールドカップの度に現地の空気感を味わう旅行をして、自分なりにサービス開発しても良いはずです。サッカーとビールを組み合わせた楽しみ方を提供するお店を指導したり、たしなみ方をレクチャーしたりできるはずです。
まとめ
以上、定年退職間近で起業したい人からのご相談から、すぐにでも起業したい人が持っておくべき経営マインドをまとめました。趣味で起業するための考え方やマインドまで言及しました。
これから起業をお考えの方で、「経営の知識が足りない」とお感じの方は、当社にて毎月行っている小さな会社の社長のためのセミナーへの参加をご検討ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。