社長の夢実現への道

何から備えたら良い?中小企業の地震対策、備蓄品、復旧いろは

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中小企業では地震に備えて何を備蓄すべき?

会社の経営者は、自然災害が発生したときに社員の命を守らないといけません。できれば、社員のご家族の命も守りたいものです。

どの会社でも、防災の知識がなかったとしても、水と食料は備蓄していることでしょう。しかし、水や食料の他にも備蓄すべきものはたくさんあります。

このコラムでは、防災士の著者が、中小企業向けに会社で備蓄すべきものを検討するための考え方や備蓄品などについて、取り組みやすい内容に絞って、わかりやすくまとめました。

現実に迫っている大震災

日本国内にある企業のすべてが共通して被災しえる災害は、震災でしょう。そして、現実に、南海トラフや首都直下型の大地震が、いつ発生してもおかしくない状態だと言われ、大震災が身近に迫っていると言えます。

最近は、自然災害が増えてきているように感じます。日本での災害と言えば、地震と台風が主なところでしょう。直近では、南海トラフ地震首都直下型地震の発生が懸念されています。

大地震はいつ頃発生しそうなのか、気象庁のホームページを調べてみました。「南海トラフ地震に関連する情報」によると、このコラムを執筆した日では南海トラフ地震について、次のように記載されています。

南海トラフ沿いの大規模地震(M8からM9クラス)は、「平常時」においても今後30年以内に発生する確率が70から80%であり、昭和東南海地震・昭和南海地震の発生から既に70年以上が経過していることから切迫性の高い状態です。

M9は、東日本大震災とおなじマグニチュードです。南海トラフ地震は、高知県や和歌山県のように思いますが、断層は伊豆半島の西側、駿河湾まで伸びているので、そのあたりで大地震が発生した場合には、関東も相当なダメージを受けると予想されます。

首都直下地震でも、国土交通省のホームページによると、2020年の段階で「M7クラスの大地震が30年以内に70%の発生確率」とされています。どちらの地震も、もう来ていてもおかしくないぐらいのタイミングなのです。

2011年に発生した東日本大震災、いわゆる3.11のときは、東京都を中心とする都心では公共交通機関がすべて止まり、帰宅困難者を大量に生み出してしまいました。そのため、企業に帰宅困難者をなるべく出さないような取り組みを、多方面から望まれるようになりました。

東京都では、2012年3月の東京都公報増刊12号に、「東京都帰宅困難者対策条例」として企業で働く従業員が帰宅困難者となっておこる混乱を防止するために、企業では従業員のための3日分の備蓄をすることが、努力目標として示されました。これは努力目標ですので、今のところ義務ではありません。

企業に限らず、幼稚園や高齢者施設などでも備蓄が推進されています。

大地震発生時に起こりえること

大地震が発生したときに、震災対策をしていないオフィスがどのような状態になるのかを、架空のストーリーでご紹介いたします。

このストーリーは、私が考えた架空のものですが、ごく一般的に起こりそうなことですので、想像しながらお読みください。すると、この架空ストーリーから、震災対策として何をしたら良いのかが見えてくるはずです。

とあるオフィスでの大地震遭遇(架空ストーリー)

ある日の夕方に地震が発生

 とあるオフィスでの大地震遭遇(架空ストーリー)

ある日の夕方、そろそろ仕事も終えて、帰宅のことを考えているときのことです。

スマートフォンの聞きなれないアラート音とほぼ同時に、ドッとオフィスが揺れました。そこにいたスタッフ全員が、それが地震だということに即座に気が付きました。

男性スタッフは、棚が倒れないように、手で押さえました。棚が倒れてしまったら、書類が散乱して、後片付けが大変だからです。他のスタッフも、机の上に置かれたパソコンやディスプレイが飛ばないように手で押さえました。

その直後に大地震

その直後に、さらなる巨大地震が来たのです。震度は6強でした。

震度6強では、人は立っていられません。棚を抑えていた男性スタッフは、すぐにしゃがみこみました。その上に、棚が倒れてくることは、容易に想像できます。幸いにも、机の上に棚が倒れてくれたので、命は助かりましたが、棚のガラスが割れて、当たり一面はガラスが散らばりました。もちろん、窓ガラスも割れて飛散しました。

もちろん、まだ揺れが続いているので、そのガラスで数名が軽い怪我をします。オフィスはめちゃくちゃです。

オフィスには、大型コピー機が置いてあることでしょう。大型コピー機は、地震の揺れで滑っていくように移動していき、人を襲います。レーザープリンターも飛んできます。大型コピー機の直撃を受けた人は、手を床についたときに、ガラスで手を怪我してしまいました。

30秒ほど強く揺れたあと、ようやく揺れが止まりました。オフィスでは電気が消え、薄暗い状態です。上司がすぐさま全員に声を掛けました。スマートフォンを手元に持っている人が、照明で辺りを照らしました。

幸いにも全員の命は無事で、骨を折った人もいませんでした。一人、怪我をした女性スタッフがパニックになり、落ち着きを取り戻すのにしばらく時間がかかりました。

オフィスの電源は落ちてしまったので、インターネットは止まり、ノートパソコンでも情報を取得できなくなっています。スマートフォンでニュースサイトを確認したところ、震度6強の地震が発生したことだけ理解できました。

公園に避難

ともあれ、上司の指示でオフィスから出ることにしました。非常階段で急いでオフィスビルの1階に降り、近所の公園に避難します。公園では、避難してきた人たちで大混雑していましたが、次から次へと人が押し寄せてきます。

誰もが携帯電話を持っていて、電話を掛けようとしたり、SNSを利用しようとしたりしています。携帯電話の基地局は補助電源で動作しているので、携帯電話は使えるのですが、緊急回線用が優先されるので、個人利用では電話はほとんどできません。携帯電話のアプリで家族の無事を確認します。

公園に集まった人たちは、帰宅できるのか、電車は動くのか、電気は復活するのか、議論してもムダなことを延々と話し続けます。誰かと話しをしたり、不確定であっても情報を得たりすることで安心できるからです。

公園に避難してから10分ほどしたら、また大地震が発生しました。震度5強でした。あちこちから悲鳴が上がり、普段は冷静な人でも緊張が走りました。

オフィスに戻る

2時間ほどして強い余震はなくなり、オフィスにいったん戻ることを考えます。女性スタッフの1人が「オフィスに戻るのは怖い」と言い出したので、男性スタッフ1人に残ってもらうことにし、2人を公園に残し、他の人たちはオフィスに戻ります。

オフィスに戻ったら、オフィスのめちゃくちゃな状況を見て、改めて地震の強さを思い知ります。オフィスの一部を片付けて、ゆっくり座れる場所を確保します。

オフィスで一晩過ごせるか?

オフィスの整理を始め、居場所を確保しつつ、震災直後は、誰もが不安が高まり、「被害状況を知りたい」と、情報に対する欲求が強まります。

主な情報源はラジオです。しかし、ラジオが会社に置いてあったとしても、社員のだれもが、その存在を知りません。発見したとしても、電池が無くて使えません。普段から使わないものは、無いものと考えた方が良いです。オフィスにラジカセが置いてあったとしても、単一電池がなければ使えません。

次第にトイレに行きたい人が出てきますが、水が出ませんので、トイレが流せません。トイレのタンクに水が溜まっているので、1回は流せるのですが、トイレの配管が壊れていて、汚水が漏れてしまう可能性があります。大震災であれば、トイレの配管点検をしてもらうだけでも、数か月待ちとなる可能性があります。

帰宅したくても交通機関はすべて止まっていることが容易に予想できます。もう夜8時ですので、帰宅しないでオフィスに一晩泊まることを考えました。その直後に、震度5弱ほどの強い余震が発生し、さらに不安に陥ります。

避難所に移動

何も備えのないオフィスの人たちは、「とりあえず避難所に行こう」ということになる場合もあります。避難所には水や食料、トイレなどがそろっているはずだからです。

さて、避難所は通常、近隣の住民用として用意されたものです。運営は、近隣住民のボランティアで行われます。そこに住民でない人が押し寄せたら、無下に拒否されることはないと思いますが、基本的に受け入れてはくれないはずです。

避難所に入ることを拒否された社員の中には、感情が高ぶってしまう人もいることでしょう。自分の命に危険を感じているからです。しかし、避難所としても受け入れるわけにはいきません。実情として、避難所は近隣の住民ですら全員を受け入れられるキャパシティがないので、ご老人や子どもといった弱者を優先したいからです。

社員たちは、避難所で配られた水を手にして、しぶしぶオフィスに戻ることになります。

翌日20kmもの道のりを徒歩で帰宅

オフィスで朝を迎えました。スタッフ全員が空腹だし、夜中は寒かったので、よく眠れませんでしたので、疲れ切った様子です。

本社と連絡が取れ、上司は本社から「一刻も早く社員を家に帰らせよ」と指示を受けます。スタッフたちは、上司から「後のことは、詳細が決まってから連絡をする」と伝えられ、20km以上もの道のりを、震災直後でガタガタの町中を、手ぶらで歩いて帰らせようとするのです。

オフィスにあった地図を頼りに、帰宅ルートを紙に書き、帰宅させます。スマートフォンで地図を確認しようとしても、夜中中ずっとSNSをしていたので、電池はもうありません。

長距離を歩くのに適していない革靴やヒールを履いての、徒歩による10時間の帰路です。

外に出ると、同じように帰宅している人たちがゾロゾロと歩いています。その流れの中に、全員が入っていきました。

架空ストーリーからわかる震災への備え

さて、この架空ストーリーから何から、震災に対してどのような備えが必要なのかがわかったことと思います。いくつか、列挙いたしましょう。

  • 棚やコピー機の固定やガラス飛散防止
  • 懐中電灯
  • 簡易トイレ
  • ビスケットなどの調理せずに食べられる食料
  • 防災ラジオ
  • 断熱シート
  • スマートフォンの補助バッテリー

このように、大地震のときに起こりそうなことを想定することで、備えるものが何かがわかります。

そして何よりも、普段から大地震があることを意識することです。最低でも1年に1回は、スタッフ全員で地震が発生したらどういったことが起こり、どのように行動すべきかを話し合うべきでしょう。

この架空ストーリーでは火災が発生していませんが、火災も想定しておいてください。火災が発生したら、消化器による初期消火が大切です。オフィスでの火災は、漏電火災が多いと思われるので、メインブレーカの位置も把握しておいてください。

以下、震災から命を守る対策と備蓄品について、具体的に説明していきたいと思います。

まず大地震から命を守る対策を

備蓄は、地震で命を落とさなかった人が使用するものです。備蓄の前に、命を守るためのオフィスの地震対策をすべきです。

地震から命を守るためには、次の2つのことを考えます。

  • 地震の揺れから命を守る
  • 二次災害から命を守る

大地震の揺れから命を守る

架空ストーリーでもあったように、大地震があると、オフィスの什器類が凶器となります。地震の揺れから命を守るためには、オフィスに置いてあるものが飛んできたり、下敷きになったりしないように対策することです。

地震の揺れから命を守る具体的には、棚やコピー機などの重量物を固定したり、棚を突っ張り棒や固定金具で固定したりすることです。

東日本大震災が発生したときの映像で、揺れている棚を抑えようとしていた男性の姿を見たことがあります。とても危険な行為だということをご理解いただけることでしょう。什器類が固定されていたら、それらの揺れを気にすることなく、机の下に避難することができます。

もちろん、普段から机の下側を片づけておくことが大事です。

二次災害から命を守る

非常用持出袋

二次災害とは、地震の揺れではなく、火事や津波などの、地震の後に発生する災害のことです。二次災害の主なものは、火事と移動中の怪我です。

二次災害の対策には、具体的には、普段から避難経路を確保することや、ヘルメットや軍手、懐中電灯の用意です。それらが、非常用持出袋として用意されていれば理想的です。

大地震でむちゃくちゃになったオフィスでは、ガラスの破片が飛び散っていることがあります。紙類が散乱して足を滑らす場合もあります。そういったことにも注意しながら、あわてずに避難することが大事です。

また、大地震が発生した直後は停電することが多いのですが、避難の際には、電気の大本であるブレーカを切ってから移動することが大事です。電気が復旧したときに、倒れた電気ストーブや漏電などで火災が発生することが多いからです。

備蓄品の選び方

会社に備蓄品が置いてあるところは多いことでしょう。何をどれくらい備蓄したらいいのか、管理をどうしたらいいのかについてご説明いたします。

何を備蓄すべきか?

先ほどの架空のストーリーから、何を備蓄すべきかのヒントとなったことでしょう。いくつか、備蓄すべきものを思いつかれたはずです。

備蓄品で最も必要とされるものは、生理的に我慢できないことで選ぶのが基本です。まずは、生理的に我慢できないことを、順番にしてみましょう。瞬きや呼吸などは、常識の範囲で省いてあります。

  • トイレ
  • 食事
  • 睡眠
  • 衛生

トイレの備蓄

最初に我慢できないものはトイレです。東日本大震災のときに、近所の公園に仮設トイレが設置され、帰宅難民の方々が利用されました。トイレはいくつも設置されたのですが、どのトイレも長い行列ができていました。最長2時間待ちだったそうです。

「会社のトイレを使用したらいいのではないか?」とお考えのことでしょう。電気が止まってしまったら水が出ません。トイレのタンクに水が溜められるタイプであれば、1回は流すことができますが、トイレの配管が壊れていて、見えないところで、汚水が漏れ出す可能性があるので、トイレの使用は控えた方が良いです。

トイレの備蓄としては、簡易トイレです。

人は1日5回程度、トイレに行くようですので、もし1人3日分の備蓄をする場合には、簡易トイレが15個必要だという計算になります。

水は、ペットボトルの水です。水は、飲み水としてやカップラーメンなどの食料を作るのに使用されます。他にも、歯を磨いたり、顔や手を洗ったりするのに使用します。

そのため、大人1人当たり、1日3リットル以上の備蓄が推奨されています。水を3日分備蓄するのであれば、1人当たり9リットルです。

食事

食事は、通常1日3食です。震災後は避難所で生活した女性の体験談では、ほとんど動かないし、震災のショックで食べ物が喉を通らない人もいるので、最初は1日2食ぐらいで、冷たいおかゆを食べて過ごしたそうです。

食べ物としては、アルファー米を考えると思いますが、経験として朝昼晩をアルファー米だけ食べたことがあるのですが、さすがに3食目は、喉を通りませんでした。

ですので、おかゆ、アルファー米、長期保存可能なパンなど、バリエーション豊富に防災食を備蓄しておくことをおすすめします。

よく、パスタを備蓄している人がいますが、パスタは大量の水と熱が必要ですので、大震災に備えた備蓄には不向きです。

3.11を仙台で被災した人から聞いたのですが、震災直後はショックを受けて、調理する気持ちが出なかったそうです。そういったときに、袋を開けて直接食べられるものに助けられたそうです。そういった場合に備えて、アルミパッケージに入ったおかゆやビスケットがあると良いでしょう。

睡眠

オフィスで仕事中に被災し、次の日に帰宅するとなると、オフィスで1泊することになります。オフィスの床がカーペットだったら寝やすいのですが、Pタイルなどだと冷たい場合には、ダンボールを何枚か敷くと良いです。

冬であれば、暖房が止まり、とても冷え込むので、毛布のような厚手のものがあれば良いのですが、毛布がかさばって備蓄できない場合には、保温用のアルミシートを備蓄しておくと良いでしょう。

衛生

衛生としては、感染症対策がメインとなります。体を清潔に保ち、人がよく触る部分を消毒するようにします。また、食事の前には手をしっかり消毒し、食事後は歯を磨くことが大事です。夜は、お風呂に入れませんが、身体をしっかりと拭くことができるタオルがあると良いです。

備蓄品としては、アルコール消毒液、歯ブラシ、身体拭きタオル、石鹸、タオル、下着です。

その他

会社では生活をする場所ではないので、自宅に帰ることが基本となります。そのために必要なものを備蓄しておくと良いです。

救急箱、軍手、ビニール袋、ラジオ、電池、懐中電灯、ヘルメット、生理用品、洗剤、紙皿、割りばし、携帯電話の充電装置です。

帰宅するときは、リュックのように背負えて、両手が使えるビニール袋があれば理想的です。

備蓄の目安量

社員や来訪者が帰宅できるまでの日数が、備蓄量の目安となります。想定としては、会社で2泊できる体制で、自宅まで帰ることを想定します。そうすると、最大3日分の備蓄で事足りると思います。

社員の中には、普段からの防災の意識が低い人もいます。「大地震のときは、市役所が食料を配ってくれるはずだ」と思っている人もいることでしょう。しかし、広範囲で被災しているので、市役所も食料が足りなくて困る状況になるかと思います。そういった人のために、余分に備蓄しておくこともおすすめです。

ちなみに当社では、さまざまな備蓄品を1週間分用意しています。

定期的な震災に対する備えが大切

大震災への備えは、1回行ったら終わりではなく、定期的に行うことが大切です。定期的に行うことによって、いざ地震のときに慌てずに済みますし、安全のために考えて行動することができるからです。

よく、「防災マニュアルは作っておいた方が良いですか?」と聞かれることがあります。大きな会社であれば、トップマネジメントが中心となって防災マニュアルまで策定し、防災に積極的に取り組んでいるところがほとんどのことでしょう。社長が全員の顔と名前を把握できている中小企業であれば、防災マニュアルという立派なものまでは必要はないと考えます。

オフィスの震災対策

まず、大地震の揺れから命を守る対策です。棚やコピー機、パソコンのディスプレイなど、什器類の固定、避難経路の確保、避難グッズの準備を行います。

什器類の固定では、自治体によっては固定器具を配布していたり、補助金が出たりするところもあります。自治体で配布されているハザードマップも参考になります。

どのように対策したらいいのかわからない場合は、自治体の防災担当の方に問い合わせたら、親切に教えてもらえることもあります。人数がまとまるようであれば、消防署の署員さんに教えに来てくださるように依頼することもできるようです。

オフィスの対策には、「防災の目標を決めよう」とか「プランを立てなければ」と思われがちですが、あれこれ考える前に「とりあえずやってみよう」ということが大事だと思います。

備蓄の準備と管理

命が守られたら、次に生活を守ります。備蓄の目安は、先ほど述べたように3日分ですが、企業によってはもっと多くを備蓄されることもあるでしょう。

備蓄担当に誰が向いているかということですが、会社の中にアウトドアが趣味の人がいたら、その人に担当に入ってもらったら心強いです。震災のサバイバルは、キャンプと同じようなものだからです。

備蓄の食料品には消費期限が記載されています。消費期限が迫っている場合には、それをローテイションさせて、新しいものにしておくことが大事です。古いものは、訓練のときに試食にするか、自宅に持って帰ってもらっても良いでしょう。

備蓄品はリストで管理すると便利です。リストには、品目と数量、消費期限/賞味期限、保管期日、管理責任者、発注担当者を記載しておくと良いでしょう。

水の賞味期限について、一般的にはあまり知られていないことで、防災士の中では常識のことがあります。それは、「長期保存水は賞味期限を過ぎても、未開封のものであれば飲んでも安全」ということです。ペットボトル容器のミネラルウォーターの賞味期限は、「水の賞味期限」ではなく、「表示された容量が確保できる期限」を示しているのです。農林水産省のこちらのページをご参照ください。

緊急避難場所の把握

大地震による揺れで、オフィスの中にいたままですと不安になります。一刻も早くオフィスの外に避難したくなるものです。では、オフィスから出たものの、どこに行けばいいのでしょうか?

オフィスビルの横にいては、上からガラスが降ってくるかもしれませんし、場合によってはビルが倒れてくるかもしれません。

どこの自治体でも、緊急避難場所として指定された場所があります。自治体で防災地図が配布されていると思いますので、地図で把握することはもちろんのこと、一度そこまで歩いて移動することも訓練になります。

訓練と称して、緊急避難場所まで社員の皆様で歩いて移動していると、皆様「震災があったらどのような行動をすべきか?」といったことを考えます。考えることが大震災への対策のスタートになるのです。

定期的な防災訓練への参加

防災訓練は地方自治体や町内会の防災会が主催者となって、定期的に開催されています。防災訓練は案外勉強になります。子ども向けのイベントがあったり、たくさんプレゼントがもらえたり、防災食の試食があったりと盛りだくさんです。

防災訓練の参加は、たいてい休日なので、社員はなかなか参加しにくいことでしょう。社員によっては、冷めてしまっていて「僕は興味がありません」と、棒にも箸にもかからない人物もいます。そういった人には、ムリに参加させる必要はないと思います。

会社によっては、地域貢献を経営理念の内容の1つとして掲げ、実践しているところもあります。そういった会社の社員は、防災訓練に参加することもあることでしょう。なんとも素敵な会社です。

地域の防災会との連携

企業によっては、地域への貢献として、地域住民のための備蓄をしているところもあります。そういった企業では、近所の町内会で運営されている防災会と連携しておくことをおすすめします。

当社では、私自身が町内会の防災担当をさせていただいており、防災訓練に積極的に参加したり、ボランティア活動をしたりして、地域の方々との連携を取るように心がけています。

「自社の町内会に防災会は存在するのだろうか?」と思われた方は、市区町村役場の防災課に問い合わせしてみてください。地域の町内会長さんに連絡を取ってくれるはずです。

地震保険特約の加入

オフィスであれば、それほど費用はかからないかもしれませんが、製造業であれば壊れた機械を修理するのに、たくさんのお金がかかる場合があります。精密機械であれば、買い直す必要も出ることでしょう。

オフィスでも、地震によって発生した火災で被害を受けた場合には、普通の火災保険では保障されません。

会社で入っている火災保険に、地震保険特約が付いているかどうかを確認すべきです。地震保険特約が付いていない場合には、できれば加入しておいた方が良いです。

事業の再開と復旧

大震災で命が守られ、生活もできるようになりました。その後は、いずれ地震が収まってくるので、事業を再開させ、災害前のように復旧しなければなりません。事業が復旧しなければ、復興も進まないからです。

事業の再開では、最低限度事業を行うことと、以前の状態まで復旧させることの2段階があります。また、震災の損害を取り戻すために、事業復旧後に挑戦的な目標を立てる企業もあります。

ともあれ、会社の存続のためには、早い段階での復旧が大事です。事業の復旧には、社長のリーダーシップが問われます。

熊本地震での事業継続・復旧支援を体験された方から聞いたエピソードです。(うる覚えなので、細部で間違っていたらすみません)

とある製造業の同業種同規模で、ライバル関係の会社が2社ありました。その2社は震災によって、工場内の機械はすべて故障し、どうにもならない状態でした。仮に、その会社の名前をA社、B社としましょう。

A社の社長は、「これでは復旧が難しい。自治体や政府からの支援を待つほかない。」と考え、社員を自宅待機にさせました。そして、復興のための補助金の申請などを経て、会社は3ヶ月経過してようやく稼働し始めました。

B社の社長は、「我社が製造する部品を待っているお客様がいる。一刻も早く事業を復旧させよ!」と、すぐさま社員全員に行動するように社長命令を出しました。各部門長に復旧のために必要なことをすべてリストアップさせ、会議室の壁一面に貼られた模造紙に記載しました。

社長は会議室に布団と食事を用意させ、「工場が稼働するまで、トイレとシャワー以外では会議室から出ない」と宣言し、そこで寝泊まりをしながら陣頭指揮を取ったのです。部門長から課題を解決したとの報告があったら、模造紙に黒線が引かれていきました。1週間後に、模造紙に書かれたすべての課題に黒線が引かれ、工場が稼働したのです。

社員たちは社長の熱意に鼓舞され、協力してくれる企業も現れるなどして、わずか1週間で復旧させ、部品がなくて困っている企業に納品することができました。

熊本地域で、「A社が製造を開始した」という噂が広まり、今までB社に部品製造を依頼していた企業が、競ってA社に依頼しました。

さて、ライバル関係だったA社は、その後どうなったのでしょうか? 言わずと知れたことでしょう。

このエピソードを聞いたとき、私は社長のリーダーシップのあるべき姿を考えさせられました。

企業としては、地震が発生してから復旧について考えるのではなく、地震の前にどのように事業を復旧させていくのかを考えることが推奨されます。

内閣府の防災情報のページに「中小企業の防災・事業継続の手引き」というものがあります。震災が発生したら、初動でどのような対応をし、事業を復旧させていくために何をするのかということをマニュアルとしてまとめるための手引きです。

会社の復旧のさせ方の考え方を学ぶことができるので、ぜひ目を通しておいてください。

以上、大震災に対して、まず何から備えたら良いのか、震災の企業防災についてまとめました。大震災は発生しないに越したことはありませんが、いずれ来るものと考えておいた方が、企業防衛につながります。

当社では、中小企業向けに防災に関するアドバイスや支援を行っています。「せめて備蓄だけでもやっておきたい」という企業様から、「事業の再開も検討しておきたい」とお考えの企業様まで、ご要望に合わせてご支援をしております。ご興味のある方は、ぜひご連絡ください。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジン・マーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら数千を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツ・マーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくりる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

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