とあるオフィスでの大地震遭遇(架空ストーリー)
ある日の夕方に地震が発生
ある日の夕方、そろそろ仕事も終えて、帰宅のことを考えているときのことです。
スマートフォンの聞きなれないアラート音とほぼ同時に、ドッとオフィスが揺れました。そこにいたスタッフ全員が、それが地震だということに即座に気が付きました。
男性スタッフは、棚が倒れないように、手で押さえました。棚が倒れてしまったら、書類が散乱して、後片付けが大変だからです。他のスタッフも、机の上に置かれたパソコンやディスプレイが飛ばないように手で押さえました。
その直後に大地震
その直後に、さらなる巨大地震が来たのです。震度は6強でした。
震度6強では、人は立っていられません。棚を抑えていた男性スタッフは、すぐにしゃがみこみました。その上に、棚が倒れてくることは、容易に想像できます。幸いにも、机の上に棚が倒れてくれたので、命は助かりましたが、棚のガラスが割れて、当たり一面はガラスが散らばりました。もちろん、窓ガラスも割れて飛散しました。
もちろん、まだ揺れが続いているので、そのガラスで数名が軽い怪我をします。オフィスはめちゃくちゃです。
オフィスには、大型コピー機が置いてあることでしょう。大型コピー機は、地震の揺れで滑っていくように移動していき、人を襲います。レーザープリンターも飛んできます。大型コピー機の直撃を受けた人は、手を床についたときに、ガラスで手を怪我してしまいました。
30秒ほど強く揺れたあと、ようやく揺れが止まりました。オフィスでは電気が消え、薄暗い状態です。上司がすぐさま全員に声を掛けました。スマートフォンを手元に持っている人が、照明で辺りを照らしました。
幸いにも全員の命は無事で、骨を折った人もいませんでした。一人、怪我をした女性スタッフがパニックになり、落ち着きを取り戻すのにしばらく時間がかかりました。
オフィスの電源は落ちてしまったので、インターネットは止まり、ノートパソコンでも情報を取得できなくなっています。スマートフォンでニュースサイトを確認したところ、震度6強の地震が発生したことだけ理解できました。
公園に避難
ともあれ、上司の指示でオフィスから出ることにしました。非常階段で急いでオフィスビルの1階に降り、近所の公園に避難します。公園では、避難してきた人たちで大混雑していましたが、次から次へと人が押し寄せてきます。
誰もが携帯電話を持っていて、電話を掛けようとしたり、SNSを利用しようとしたりしています。携帯電話の基地局は補助電源で動作しているので、携帯電話は使えるのですが、緊急回線用が優先されるので、個人利用では電話はほとんどできません。携帯電話のアプリで家族の無事を確認します。
公園に集まった人たちは、帰宅できるのか、電車は動くのか、電気は復活するのか、議論してもムダなことを延々と話し続けます。誰かと話しをしたり、不確定であっても情報を得たりすることで安心できるからです。
公園に避難してから10分ほどしたら、また大地震が発生しました。震度5強でした。あちこちから悲鳴が上がり、普段は冷静な人でも緊張が走りました。
オフィスに戻る
2時間ほどして強い余震はなくなり、オフィスにいったん戻ることを考えます。女性スタッフの1人が「オフィスに戻るのは怖い」と言い出したので、男性スタッフ1人に残ってもらうことにし、2人を公園に残し、他の人たちはオフィスに戻ります。
オフィスに戻ったら、オフィスのめちゃくちゃな状況を見て、改めて地震の強さを思い知ります。オフィスの一部を片付けて、ゆっくり座れる場所を確保します。
オフィスで一晩過ごせるか?
オフィスの整理を始め、居場所を確保しつつ、震災直後は、誰もが不安が高まり、「被害状況を知りたい」と、情報に対する欲求が強まります。
主な情報源はラジオです。しかし、ラジオが会社に置いてあったとしても、社員のだれもが、その存在を知りません。発見したとしても、電池が無くて使えません。普段から使わないものは、無いものと考えた方が良いです。オフィスにラジカセが置いてあったとしても、単一電池がなければ使えません。
次第にトイレに行きたい人が出てきますが、水が出ませんので、トイレが流せません。トイレのタンクに水が溜まっているので、1回は流せるのですが、トイレの配管が壊れていて、汚水が漏れてしまう可能性があります。大震災であれば、トイレの配管点検をしてもらうだけでも、数か月待ちとなる可能性があります。
帰宅したくても交通機関はすべて止まっていることが容易に予想できます。もう夜8時ですので、帰宅しないでオフィスに一晩泊まることを考えました。その直後に、震度5弱ほどの強い余震が発生し、さらに不安に陥ります。
避難所に移動
何も備えのないオフィスの人たちは、「とりあえず避難所に行こう」ということになる場合もあります。避難所には水や食料、トイレなどがそろっているはずだからです。
さて、避難所は通常、近隣の住民用として用意されたものです。運営は、近隣住民のボランティアで行われます。そこに住民でない人が押し寄せたら、無下に拒否されることはないと思いますが、基本的に受け入れてはくれないはずです。
避難所に入ることを拒否された社員の中には、感情が高ぶってしまう人もいることでしょう。自分の命に危険を感じているからです。しかし、避難所としても受け入れるわけにはいきません。実情として、避難所は近隣の住民ですら全員を受け入れられるキャパシティがないので、ご老人や子どもといった弱者を優先したいからです。
社員たちは、避難所で配られた水を手にして、しぶしぶオフィスに戻ることになります。
翌日20kmもの道のりを徒歩で帰宅
オフィスで朝を迎えました。スタッフ全員が空腹だし、夜中は寒かったので、よく眠れませんでしたので、疲れ切った様子です。
本社と連絡が取れ、上司は本社から「一刻も早く社員を家に帰らせよ」と指示を受けます。スタッフたちは、上司から「後のことは、詳細が決まってから連絡をする」と伝えられ、20km以上もの道のりを、震災直後でガタガタの町中を、手ぶらで歩いて帰らせようとするのです。
オフィスにあった地図を頼りに、帰宅ルートを紙に書き、帰宅させます。スマートフォンで地図を確認しようとしても、夜中中ずっとSNSをしていたので、電池はもうありません。
長距離を歩くのに適していない革靴やヒールを履いての、徒歩による10時間の帰路です。
外に出ると、同じように帰宅している人たちがゾロゾロと歩いています。その流れの中に、全員が入っていきました。