社長の夢実現への道

売上が伸びない中小企業の社長の共通点

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売上が伸びない中小企業の社長の共通点

多くの企業では売上アップを目指しています。そして、新規事業を立ち上げたり、PR方法を検討したりと工夫を重ねています。

社長ご自身の考えた新規事業やPR方法などがあり、「商品がもっと売れるようになるだろうか?」「売上アップができるだろうか?」と悩みますが、その考えが正しいものなのかを確認するために、当社のようなコンサルタント会社に相談してこられます。

ときどき当社へのご相談で、「この新規事業が売れるかどうか教えて欲しい」「新しく開発した製品の売り方を教えて欲しい」と訊ねられることがあります。

小さな会社であったとしても、売上が伸びない理由は、本当に多岐にわたります。そのなかで、社長の考え方が問題であることも多いのですが、その考え方に共通点があるように思います。

ご相談を頂くことはありがたいのですが、社長の考え方が、私の考える共通項に合致していたら、返答はいつも同じで、「売れません!」のみです。

以前に、私が「売れません」と即答したら、「販売もしないで売れないなんて判らないではないか!」と叱られてしまったこともありました。そこで、論理的に売れない理由と、どれだけの赤字が出るかを試算してみせました。しかし、結局は「やってみなければ判らないではないか!」ということで新規事業をスタートされたのですが、その新規事業の結果は私の予想通りの金額での赤字でした。

確かに、事業活動は社長の熱意や運、市場動向の変化などといった不確定要素があるので、やってみなければ判りませんし、結果が全てです。しかし、マーケッターが統計的に予想できるものは、おおよそそのようになることが多いです。

今、何か新規事業を立ち上げていたり、新しいPR方法を試そうとしている場合に、それが売れない社長の考え方を述べたいと思います。それに当てはまる社長は、「それは売れないものだ」と思い、もう一度、根本から考え直してください。

売上が伸びない会社の社長の共通点「やり方から入る」

最初に答えから述べたいと思います。中小企業で、売上が伸びない会社の社長の共通点は、「やり方から入ること」です。

経営コンサルティングやWeb集客でのご相談をされたときに、中小企業の社長の多くは、方法や手段といった「やり方」から訊いて来られます。次のようなご質問は、やり方から入る典型です。

  • 新規事業を立ち上げたけど、儲かるだろうか?
  • 製品を開発したのだけれども、売れるだろうか?
  • この商品をどうやったら売れるのか?
  • この商品は、ホームページで売れるようになるのか?

商品の開発は「やり方」です。例えるならば、デイトレードを始めたばかりの人が、「株価が上がりそうな上場企業を教えて欲しい」と聞かれるようなものです。

売り方も、もちろん「やり方」です。私が何か魔法のようなものを使って売れるようになるのかを期待されているのかもしれませんが、売れないものは売れないのです。

「やり方」から聞いてくる社長の多くは、手っ取り早さを求めているか、楽をすることを求めているのか、考えることを放棄しているかのどれかです。

手っ取り早く儲かる方法や楽をして儲かる方法は、世の中にあるかもしれませんが、「急がば回れ」というものが経営の鉄則です。考えることを放棄したら、経営などできませんので、会社を売却して投資信託をした方が良いでしょう。

では、「やり方」からではなく、何から入ったらいいのか?

それは、「考え方」からです。「原理原則」と言ってもよいかもしれません。「やり方」から入ったものは、たいてい自社都合のものです。自社都合の商品が売れるはずがありませんし、自社都合のPR方法で売れるはずがないのです。

そして、すでに新規事業の契約をしてしまった後、ホームページ制作やシステム開発などを契約してしまった後に、相談してくることになります。そして、私のダメ出しを受けることになります。

なぜ多くの社長は「やり方」から入って失敗していくのか?

なぜ多くの社長は「やり方」から入って失敗していくのか?

この記事をご覧になられている方は、自動車の運転をされるでしょうか?

「自動車で温泉旅行に行きたい」と考えたとしましょう。すると、草津温泉だとか箱根温泉だとか、目的地を明確にし、そのルートを調べるはずです。どこに宿泊するのか、宿泊先を予約して、どのような観光を楽しむのかプランを立てるはずです。

そのようにして、楽しい温泉旅行を満喫できます。

手っ取り早く儲けるということは、まるで「自動車のエンジンをONにしたら、自動的に楽しい温泉を満喫できる」というものに近いと思います。

このようなON/OFFで経営の成否が決まるわけではありません。「自分が考えた新規事業は、必ず売れる」とか、「ホームページを制作したら必ず新規顧客が獲得できる」という発想と同じです。そういった発想で「やり方」から入って、失敗していくのです。

とあるホームページ制作会社の社長が、「ホームページで新規顧客獲得なんて、できるわけがない」と本気で言っている人がいました。そういった考えを持つホームページ制作会社の佐長は、一人だけではなく、何人もいたことに驚きます。その社長たちも、ON/OFFだけで考えている人なのでしょう。

世の中、手っ取り早く儲かるものは、ほとんどありません。苦労して、難行苦行に耐えてのみ、安定して儲かる経営ができるのです。

新規事業を立ち上げたら、その事業にどれだけ愛着があり、使命感があり、新規事業を通じてお客様を幸福にしたいと願う気持ちがあることで、新規事業が売れるものへと成長していきます。そして売れるようになるのです。

売り方もそうです。「ホームページを制作したら売れる」とか「SEO対策をしたら売れる」という短絡的なON/OFFの考え方では、結局利益が出ず、ホームページ業者やSEO業者が詐欺師認定されてしまいます。そして、社長が詐欺師認定を続けるだけです。

詐欺師認定を出してしまった社長は、それが先入観となり、「コンサルタントは全員詐欺師だ」とか、「ホームページでの新規顧客獲得は、ホームページが普及し始めた頃の話だ」と、間違った情報を腑に落としてしまうのです。

売上アップを目指すために、どういった考え方から入るべきなのか?

売上アップを目指すために、どういった考え方から入るべきなのか?

では、新規事業やPR方法といった「やり方」からないで「考え方」から入るとするならば、具体的に何を考えたらいいのかをご説明します。

考え方の具体例

考え方の具体例は、次のようなことです。

  1. 自社のミッションから考える
  2. 自社の顧客や顧客が求める価値から考える
  3. 基本動作から考える
  4. 「そもそも」で考える
  5. 自社の問題から考える

これらの項目は、連動している部分もあります。自社のミッションから考えることは、ドラッカー的な考え方です。ピーター・F・ドラッカー先生は、「マネジメントの父」と言われている偉人です。

中小企業の社長は、「ミッション」と言われてもピンとくる人は少ないことでしょう。そういった社長の場合は、2つ目の顧客から考えると良いと思います。自社の顧客や顧客が求める価値から考えることは、ドラッカー的ではありますが、一倉定のような考え方になります。

3つ目の基本動作は、挨拶の仕方、お客様訪問の頻度、クレーム対応などです。「売上を上げるための方法は、何も新規事業を立ち上げたりPR方法を変えたりすることだけではない」ということを意味します。顧客が満足するサービスを提供したら、自ずと顧客が増えてくることもあります。

4つ目の「そのそも」は、「そもそも、その新規事業は必要なのか?」、「そもそも、販売をなくす方法は無いか?」と考えられもします。

5つ目の自社の問題は、自社に目的や目標あっての問題です。目的や目標のない成り行き経営では、問題は発生し得ません。例えば、「売上が下がった」ということですら、売上に目標がなければ、気にはなりますが問題にはならないのです。

「売上が下がったら問題だ」と考える場面は、「売上が下がったから倒産するかもしれない。何としても倒産は避けたい。」という目標が定まることによって、売上が下がることが問題となるのです。

企業の目的や目標がなければ、問題が発見しにくくなります。そもそも「自社の問題が発見できていないことが問題なのでは?」という考えもあります。ある意味で、経営においては問題が無いことが最大の問題だと思います。

ドラッカーの「経営者に贈る5つの質問」

ドラッカー理論の中に、「経営者に贈る5つの質問」というものがあります。これは、そのままのタイトルで書籍にもなっています。この書籍は、ドラッカー理論の中でも理解しやすい内容だと思います。

その5つの質問とは、次のものです。

  1. 我々のミッションは何か?
  2. 我々の顧客は誰か?
  3. 顧客にとっての価値は何か?
  4. 我々の成果は何か?
  5. 我々の計画は何か?

この5つの質問のうち、1~4が「考え方」になります。そして、5番目の質問が「やり方」になります。

1番目にミッションがあります。マネジメントの役割は、我社特有の使命を果たし、従業員に成果を出させ、社会的責任を果たすことです。我社特有の使命がミッションになります。

2番目と3番目の顧客と顧客にとっての価値は、マーケティングになります。マーケティングの3C分析を活用すると、これらの考えをまとめやすいです。ここで、ドラッカーは「顧客にとっての価値を想像してはいけない」と戒めています。勝手に想像することは、自社都合になってしまうからです。

4番目は、我社の成果ですが、短絡的には「売上を上げること」と捉えがちですが、ここで述べている成果とは、売上に限ったものではありません。どのような事業を立ち上げるのか、どのような事業を伸ばすべきなのか、どのような目標を立てるべきなのかといった成果を検討することです。

これらの1~4の内容をまとめ、それを実現するための計画を最後に立てるのです。その計画の中で、「どのような事業を立ち上げるべきなのか?」、「どのような販売方法を取るべきなのか?」といったやり方に入ります。

これらの内容を入念に考えることで、ON/OFFといった単純な判断ではない正しい判断ができるようになります。

経営者に贈る5つの質問は、別途コラムにて詳細にご説明したいと考えています。

実は、やり方から入ることは無駄ではない

やり方から入ることを、否定するような内容のことを書いてきましたが、私は「やり方から入る方が良い場面もある」と考えています。その場面とは、考え方のアイデアが浮かばないときです。

いくら考えても判らないときは「やり方」から入る

特に、初めての事業を行うときには、何から手をつけていったら良いのやら検討がつかないことがあります。そういったときには、いくら考えても計画が立ちません。小田原評定です。

そういったときは、「やり方」から入り、行動しているうちに知識が備わり、問題が発見されていき、「考え方」が生まれてくることがあります。計画を立てることは大事ですが、計画ばかり立てていて、行動しなければ結果が得られません。

松下幸之助先生の名言の一つに、「まずやってみなはれ」というものがあります。当社でコンサルタントの行動指針の一つにしている言葉です。やってみなければ、判らないことも多いのです。

初めての取り組みは、やり方から入ることが多いのですが、何かに取り組むと思考が回り始めます。そして、明確な目標があり、理想と現実のギャップである問題を発見できる人であるならば、そこから反省をして、理想に近づけることができます。

入念に計画を立てるよりも、実際に行動をしてPDCAサイクルを回した方が、圧倒的に早く事業展開ができるのです。

「やり方」から入るときは小さく始めること

「やり方」から入るときのコツは、まず小さく始めることです。

とある中小の食品会社様で、大手ECモールに出店して、かなり売上を伸ばした企業がありました。その社長から、「自社のECサイトを立ち上げて、コスト削減をしたい」というご相談をいただき、SEO対策に強いECサイトを制作したいことを述べていました。

その方は野心家で、大手ECサイトのように、さまざまな機能を搭載したシステムを開発しようとお考えでした。そのシステムを使って、自社商品が売れて利益が多くでたら、そのシステムを他社に販売しようとかんがえていたのです。まさしく、お花畑の自社都合の事業計画でした。

私はすぐさま止めにかかりました。幸いにも、まだECシステムの開発に着手していなかったので、システム開発をペンディングしてもらいました。まだ1円も稼ぎだしていないシステムに何百万円もかけようとしていたのです。さらには、システムが完成したら管理費と称した費用が毎月何万円もかかってしまいます。

まずは、WordPressを使ってECサイトを制作するなどして小さく始め、売上が増えて行って損益分岐点を超え、さらに「ECシステムを導入した方が良い」と考えられる程度の売上の見込みが立ってからECシステムを導入したら良いと思います。

ちなみに、そのECシステムはSEO対策が重要になるので、ECシステムの設計の段階からSEO対策のコンサルタントに入ってもらった方が良いです。なぜなら、SEO対策もまた、ON/OFFの「やり方」で入るSEO対策は効果が出ないからです。

売上が伸びない中小企業の社長に共通する、「やり方から入ること」について述べてきました。「やり方」よりも先に、会社の目的や目標設定、マーケティング分析、問題の明確化などといった「考え方」が先です。

では、「考え方をどのように学んだら良いのか?」ということですが、それはドラッカーや一倉定、もしくは昭和の時代の名経営者の書籍を勉強しつつ、PDCAサイクルを実施するのみです。

おすすめの名経営者の書籍は、佐伯勇、本田宗一郎、松下幸之助、井深大といった、名経営者の人たちの書籍はもちろんのこと、晩節を汚して名声を落としてしまった経営者の書籍も反面教師としておすすめです。当社では、両方の社長を分析しています。

それらの書籍を学ぶことが難しい方は、当社のセミナーにご参加いただけたらと思います。特に、小さな会社の社長のためのセミナーをおすすめします。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

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