社長の夢実現への道

新規事業に参入して失敗しないための考え方

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新規事業に参入するときに注意すべきこと

当社がご支援させていただいている企業様の中でも、新規事業に参入することのご相談が増えてまいりました。

最近は、新規事業の参入に助成金や助成金の支援が豊富にあります。経済面で新規事業に参入するチャンスが増えてきています。

新規事業に参入して失敗しないためには、資金や採算性だけを考えてはいけません。

このコラムでは、新規事業に参入して成功するために知っておくべきこととして、考え方をまとめました。次の目次に沿って、ご説明いたします。

新規事業に参入するときに最も大切なことは?

運命的な事業はやる気の源泉

新規事業に参入するときに、最も大切なことは何だと思いますか?

市場でしょうか?

正解です。しかし、他にもありそうですね。

リスクの低さでしょうか?

それも正解ですが、もっと大切なことがあります。

新規事業に参入するときには、困難が付きまとうものです。商品開発や事業化するときの障壁、市場に受け入れられるまでの時間、顧客との予期せぬトラブルやクレームなどです。

そのような困難を乗り越えるためには、やる気覇気が必要です。

予想される困難に対して、やる気や覇気を出し続けることができるかどうか。

それは、新規事業のアイデアや機会に巡り合えたときに出てくる、ワクワク感高揚感です。

言い換えれば、「運命」でしょう。

また、新規事業を立ち上げているときに出てくる、やる気や覇気の源泉は何でしょうか?

それは、「使命感」です。

運命とは、直観的で何ともしがたいものがありますが、直観はあなたご自身が今まで経験してきたこと、学んできたこと、願望などの集大成だと思います。

新規事業の立ち上げを行うプロジェクトリーダーが、何らかの使命感を感じないようであれば、チャレンジすべきではないと考えます。

中には、片手間でできて儲かる新規事業もあることでしょう。そのような新規事業は、誰しも参入してきて、市場の食い合いになりやすいため、あまりお勧めできません。

やはり、新規事業に参入して失敗しないためには、「集中」と「時間」が必要となります。

新規事業を担当する人は、基本的に仕事が好きであることが多いことでしょう。運命を感じるような事業に取り組むのであれば、なおさらです。そうであるなら、新規事業への集中や時間をかけることへのストレスに耐えることができます。

新規事業に集中できるか?

新規事業は、自社の未来の収益のために立ち上げられるはずです。そのため、小さな会社であれば社長自ら陣頭指揮を取って行われることでしょう。もし、社長に考えることが多く、新規事業に集中できないようであれば、最も優秀な人材をリーダーとして据えるべきです。

製造業の企業に場合に多いのですが、品質管理部門の責任者に新規事業も担当してもらうことがあります。それは止めた方が良いです。なぜなら、クレーム対応は緊急性が高く重要な仕事なので、品質管理部門の責任者は、そちらに気が取られてしまい、新規事業立ち上げは後回しになってしまうためです。

ともあれ、新規事業の立ち上げが捗らなくてお困りの場合は、新規事業に集中できていないのではないでしょうか。

新規事業を早く立ち上げる方法の一つに、期限を決めて予算をつぎ込み、コンサルタントや協力会社などの外部の人の支援を受けて行うことです。そうすると、強制的に時間を空けざるを得なくなり、新規事業が立ち上がりやすいです。

長い時間をかけてでもやり抜けるか?

新規事業に運命を感じるようであれば、その新規事業に親和性があると言え、まるで趣味のように時間をかけて取り組むことができます。運命に感じたかどうかわからない状態でも、事業を長く続けることができたら、そこには運命的なものがあったと言えると思います。

どちらにしても、長い時間をかけてでもやり抜くことを決心しなければ、事業は本物にはなってきません。時間をかけてでも、困難を乗り越え、お客様から教えていただき、事業をより良いものに改善していくことで、新規事業の失敗を防ぐばかりか、事業を大きくすることができます。

新規事業は開発できたら終わりではありません。改善してより良いものに仕上げていく必要があります。また、事業の成長とともに社長や担当者が成長していかなければなりません。

そういったことからも、長い時間がかかるものと考えた方が良いです。

単に自分が稼ぎたいだけでは人がついてこない

守銭奴には人が付いてこない

新規事業に取り組むということは、チャレンジ精神があり、社長の仕事である「メシの種を探すこと」をしていると思います。

しかし、ただ単に自分が稼ぎたいだけの事業であれば、そこに魅力に感じません。従業員は、給料をもらっているので仕方なく働いている状態で、良い商売ができるとは思えません。

新規事業に大義があれば、従業員のやる気も出てくるものです。

お客様もそうでしょう。お客様に「自分が稼ぎたいのでこの商品を創りました。買ってください。」と言って販売する人はいません。もし社長の心の声が相手に聞こえてしまうとしたなら、お客様はいくら良い商品でも買うことに躊躇することでしょう。

まとめると、事業に運命的なものを感じるのであれば、その事業に取り組むべきです。集中し時間をかけて、事業をより良いものにしていき、事業を通じてお客様に貢献していくことを考えることができたら、その新規事業は伸びていくことでしょう。

新規事業が顧客のニーズに合致しているか?

事業が提供する価値とニーズが合致しているか?

新規事業を成功に導くためには、使命感だけでは、何ともならないことがあります。それは、顧客がいるからです。

新規事業を立ち上げている人は、商品やサービスは売れて利益が出ることを見込んで開発しているはずです。売れるためには、顧客のニーズに合致している必要があります。

この「ニーズに合致する」ということを、当事者である社長は忘れがちになることが、多いのです。

お客様は商品やサービスが持つ機能を買う

商品やサービスが売れるときは、その商品やサービスが持つ価値が、お客様のニーズに合致していることが必須です。お客様は、商品やサービスそのものにお金を払うように思いますが、実は機能にお金を払っているのです。

顧客は商品が持つ機能を買っている

例えば、冷蔵庫を購入したいというお客様がいたとしましょう。お客様は冷蔵庫が欲しいのですが、その機能を求めているのです。

それは、「食材や食品を長期保存できる」とい機能です。

その機能は、実際に使ってみなければ判らない部分もあります。その場合は、機能の期待感にお金を出すのです。

顧客目線に立つ

お客様からのご相談で、「こんな製品を開発したのだけど、どうやったら売れるだろうか?」と聞かれることがあります。製品を開発した社長にとっては素晴らしいものだと感じていても、お客様が欲しいと思わなければ売れません。

倒産した唐揚げ店の事例

去年あたりですが、とある飲食店がチェーン展開で唐揚げ専門の弁当屋を出店しました。開発した唐揚げは、地鶏を使い、とてもヘルシーでやわらかく、美味しく、お年寄りでも美味しく食べられるものでした。

「お年寄りに、おいしい唐揚げを食べてもらいたい」ということで、お年寄りが多い下町にお店を出しました。

確かにお年寄りにも食べて美味しい唐揚げだったようですが、周辺に住むお年寄りには、ニーズがありませんでした。

その下町には、唐揚げ好きな若者も多少住んでいたのですが、若者が食べるのには小さく、値段の割に小腹を満たす程度のものだったので、若者にも売れませんでした。唐揚げ好きの若者がいたとしても、買うのは月に数回のことでしょう。

その唐揚げ店は、あえなく半年ほどで閉店しました。

この唐揚げの弁当屋は、「お年寄りでも美味しく食べられる唐揚げ」という新しい価値を創造しました。しかし、お年寄りには唐揚げを食べるというニーズが存在しませんでした。

新規事業は、まずはお客様目線に立ち、ニーズに合致していかを考えるべきです。

ニーズの創造

ニーズの創造はステップアップで考える

「ニーズの創造」とは、簡単に言えば、今までになく、お客様がまだ気が付いていないニーズを新しく生み出すことです。新規事業には、ニーズの創造のことがよくあります。先ほどの、お年寄りを対象とした唐揚げ専門の弁当屋もそうです。

企業によっては、どうしても新しい価値を提供したい場合もあることでそう。そのような場合は、まず、顧客のニーズを満たし、それによって得られた価値、例えば知名度や信用、利益を活用して、新しい価値を提供し、ニーズを生み出すようにすることが、常套手段だと言えます。

唐揚げ専門の弁当屋であれば、お年寄りがお弁当屋さんに求める価値を考え、その価値を満たす料理店を出店すべきです。

そして、その店の人気が出てきたら、お年寄りでも食べられる唐揚げを提供するように、段階的に事業展開すべきです。お年寄りは、「美味しいお弁当を提供してくれるお店が、唐揚げを出した。これも美味しいに違いない。」と考え、購入してくれるようになります。

ニーズの創造をする場合、市場調査やテスト販売ができるものであれば、できる限り行うようにしてください。そして、小さく始めるようにしてください。中小企業であれば、ニーズの創造をする前に、ニーズを満たすことから始めて、ブランディングしてください。

唐揚げ専門の弁当屋は、まだ事業規模が小さなものですので、売れなかったとしてもダメージは小さいものですが、事業規模が大きい場合のニーズの創造は、市場に熱が帯びるまでに時間がかかり、ハイリスク・ハイリターンとなりやすいです。

新規事業の市場規模はどれぐらいか?

新規事業の事業規模を考える

お客様目線で事業を始めても、顧客数が増えなければ、売上高は増えません。新規事業を始める前に、どれぐらい売れそうなのか、市場規模を検討すべきです。

会社の規模に応じて、新規事業に着手すべきかを考えます。小さな会社であれば、小さな事業規模のものでも着手できますが、大企業の場合は、市場規模の大きな新規事業に取り組んでいかなければ、会社を支えることができなくなります。

市場規模の考え方は、例えば、飲食店を新しくオープンさせるのであれば、飲食店からどれぐらいの距離までに住んでいる人、その地域で仕事をしている人がいるか。観光地であれば、旅行で来てくださる人がどれぐらいいるのかを調べるべきです。

お店のコンセプトや味、PRの仕方にもよりますが、そこから一定の割合の人がお店に来てくれます。その計算をあらかじめしておいた方が良いです。

商品やサービスを購入してくれる人がどれぐらいいて、どれぐらいお金をお支払いいただけるか予想し、そこから利益がどれぐらい出るか。そういった採算性を考えるべきです。

このとき、もちろんのことですが、設備投資があれば減価償却の費用を、借入をしている場合には返済も考える必要がありますが、述べるまでもありません。

「直観的に儲かりそうだ」ということで、新規事業を始める社長もいますが、これぐらいの試算は頭の中でも行っておいてください。

既存の事業に関連していること

新規事業は、既存の事業に関連していると失敗しにくいです。なぜなら、採算や事業の可能性、事業の構築、PRの仕方などの感覚がつかめるからです。

関連性のない事業への参入について

関連性のない新規事業に取り組む場合は研究開発期間が長くなる

以前にニュースで、地方の建築業者が養殖の事業を始めたというものがありました。また、電気部品メーカーがキノコの生産を始めたというニュースも見たことがあります。

私は、このような関連性のない新規事業に「参入してはいけない」とは申しません。運命を感じたのであれば、それはぜひともチャレンジしていただきたいと思います。

そのような、まったくの業界が違う新規事業を行う場合には、事業としてスタートさせるのに2~3年の研究が必要となることが多いです。また、事業規模によっては、そこから採算が取れるようになるのに、数年かかる場合もあります。

まったくの新しい業界への参入は、仕入れルート、生産方法、生産管理、販売の方法など、あらゆるものを新しく開発していくことが常です。

2~3年は採算が取れないと考えて、時間をかけて、新規事業を育てていくという気概を持ってお取組みください。

販路は大丈夫か?

販路が無ければ商品が売れない

新規事業で「材料の仕入れができました。生産もできました。販路ができません。」という話はよく聞きます。

業種によっては、組合や協会を通さないと流通されないものもあります。

場合によっては、暗黙のルールや老舗企業の圧力で参入が阻まれることもあります。

とある業種で起業した若者の事例

地元や業界なおのルールで販路が確保できなくなることもある

だいぶ前に聞いた、新規に起業したときに、老舗企業に圧力を受けたエピソードをご紹介します。

大学を卒業し、資格を取得して都内の一流企業で技術を身に着けた若者が、「地元の企業を支援したい」ということで、地方で起業しました。

営業を開始して数か月が経過したときに、とある老舗の社長からお電話が入りました。

「オレに挨拶もせず市場を荒らしやがって。この地域で商売ができないようにしてやるから、覚えていろよ。」

そのような暗黙のルールがあるなんて知りもしない若者は、恐怖と怒りを覚えましたが、それに負けずに事業を行ったそうです。

これは恐喝にも等しく、ビジネスの世界では、そのようなことをしてはいけません。老舗企業の社長としては、今まで独占市場でぬるま湯に浸っていたところに、いきなり若手が営業を開始したことで、相手も恐怖と怒りがこみ上げたのでしょう。

いくら良い商品ができても、販路ができなければ売れません。この例では、販路を失うことはありませんでしたが、販路の確保ができるかどうかは、新事業の研究開発を始める前に念のため調べておいた方が良いです。また、大手企業や力の強い企業が競合になる場合には、パイの取り合いは避けた方が良いです。

既存事業に関連する新規事業であれば、そういった暗黙のルールをご存じのことだと思いますので、参入しやすいはずです。

小さな領域でも最初からナンバー1を目指すこと

新規事業を行う場合は、それがどれぐらいの市場になるかは、予想しにくいものです。もしかしたら、市場が受け入れてくれて、想像以上の売上高になり、利益がたくさん出ることもあります。

想像以上の売上高や利益が得られたら起きること

もし、新規事業が想像以上の売上高や利益が得られるようになったら、次のようなことが起こることが、容易に予想できます。

  • 競合他社が生まれ、市場を侵食されてしまう。
  • 競合他社が強くなってしまったら、利益を出しにくくなる。

そのような事態が起きないようにするために、もしくは起きてしまったとしても、対策できるようにするために、新規事業を立ち上げるときに、何か小さな領域でも良いので、ナンバー1を目指すことが大切です。

小さな領域でのナンバー1とは?

ナンバー1は、決して売上高のことを言っているのではありません。小さな領域でも良いのです。

例えば、地域ナンバー1、〇〇専門として知られること、性能で選ぶならどこそこの製品、サービスで選ぶならどこそこの企業、業界で一番大きい・小さい・早い・使い勝手が良い製品、といった具合です。

ナンバー1になったとしたら、市場で名前を憶えてもらうことができます。例えば、日本一高い山は富士山だと即答できます。名前を憶えてもらえるということは、顧客から選ばれやすいということを意味します。

ナンバー1になっても油断大敵

このように、ナンバー1になっても、油断大敵です。新規事業を維持するためには、新規事業に改善を加え、別のことでナンバー1になることを求めていくことや、他の者のナンバー1になろうとする行動を阻止する必要があります。

工作機械メーカーのエピソード

都内にある工作機械メーカーでのエピソードです。その会社は技術力があり、優秀な工作機械を製造するメーカーで、特殊な工作機械でしたが、日本国内でもナンバー1の売上高でした。

10年ほど前から、技術力の乏しい競合他社が、安価な海外製品を輸入販売するようになりました。

その社長は、その存在を認識していましたが、「自社は高級な製品。競合他社は安物の製品」として市場が異なるということで、放置していました。

ところが、後発の競合他社が、工作機械の性能とは別の領域で、ナンバー1を目指して行動しはじめ、ついには売上高を逆転させてしまいました。

その領域とは、Webマーケティングだったのです。

つまり、競合他社は強力にロングテールSEOを行い、あらゆるキーワードで上位ヒットさせました。その結果、ネット経由での売上がすべて奪われてしまったのです。

このお客様は、いくつかのホームページ制作業者とやり取りをしていましたが、「この競合他社には勝てない」ということで、困り果てていました。そのようなときに、当社の噂を聞きつけてご契約に至り、売上高の回復ができました。

このように、ナンバー2以下の競合他社は、ナンバー1企業の隙間をついて攻めてきます。また、攻められる方は、どこから攻めてくるのかが予想できないことが多いのです。

そのためにも、新規事業がうまくいきはじめたら、市場の分析を客観的かつ全体的に行うことを、仕組化しておく必要があります。

とは述べたものの、自社を自分たちで客観視することは難しいものです。多くの企業が、当社が行っているサービスの1つ、マーケティング・コンサルティングを利用する理由も、そこにあります。

新知識・新技術による新規事業にチャレンジする場合

新規事業の中には、今までにない新しい知識や技術を積み上げていって商品化・サービス化されていくイノベーションがあります。これは、多くの場合がニーズの創造になります。

そのような新しい知識や技術が伴う新規事業にチャレンジする場合には、いくつかの注意が必要です。

さまざまな知識・技術がすべてそろって事業化される

新知識・新技術による新規事業にチャレンジする場合

宅配便の誕生も、新知識・新技術による新規事業です。

宅配便の事業化は、今までの「荷物を運ぶ」という仕組みだけでなく、顧客対応や集金、宅配までの一連の流れに新しい仕組みを構築する必要がありました。

半導体メーカーであれば、微細な半導体を生産するためには、今までにない新知識や新技術の導入が必要でした。

飛行機の開発で有名な人物と言えば、ライト兄弟です。しかし、ライト兄弟は飛行機を開発して有名になったものの、航空事業化はできていません。

蒸気機関で有名な人物と言えば、ジェームズ・ワットです。ジェームズ・ワットは、蒸気機関の特許を取得したものの、蒸気機関の事業を行ったのは別の人物です。

新知識・新技術による新規事業はあらゆる知識や技術がそろって初めて事業化ができる

新技術を開発すると、「世界初」という栄誉を手に入れることができますが、あまりお金を手に入れずに終わります。

その栄誉をお金に換えるためには、そのものの新知識や新技術だけでなく、事業化をするための多岐に渡る知識や技術が必要になります。

そのため、事業化をするのには、多くの場合においてナンバー2や経営参謀といった、事業経営を支えてくれる人物の存在が欠かせません。

売れるかは事業化しなければわからない

怖い話ですが、新知識・新技術による新規事業は、今までにないものを生み出しているため、それが事業化されなければ、売れるかどうかは分かりません。

馬車しかなかった時代に、あるとき蒸気期間が発明され、鉄道が誕生しました。鉄道事業を始めるときに、アンケートで「鉄道を利用しますか?」と聞いても、人々は鉄道をイメージができないので、「わからない」「利用しない」と答えることでしょう。

テスト販売できるものであれば、行ってください。

新規事業がリリースされたら、「どうやら便利らしい」と人々が気づきだし、見ていた人がそれを受け入れて利用者数が増えていきます。そのようにして、市場に熱が帯びてきます。

その反対に、市場から無視されたり攻撃されたりする新規事業もあります。

新知識・新技術による新規事業は参入期間が限定される

新知識・新技術による新規事業は、ニーズが想像され市場がそれを受け入れて熱が帯びてくると、さまざまな企業が一斉に参入しだすことがあります。

オートバイ産業の例

新知識・新技術による新規事業で参入期間が限られたオートバイ産業の事例

例えば、オートバイ産業がそうです。それらの産業が日本で開花したときには、新知識・新技術が必須でした。

オートバイメーカーが国内で生まれたのは、1948年から1957年までの10年間ほどです。国内でピークのときに、実に250社ほどもオートバイメーカーがあったと言われています。

それ以降には、オートバイメーカーが生まれたという話は聞きませんし、あったとしても名も知れずに倒産しています。

倒産や吸収が相次ぎ、今では4社しか残っていません。いずれの4社も、その時期にオートバイ製造を始めています。

オートバイが好きで、「今から新しくオートバイメーカーを立ち上げたい」と考えたとしましょう。しかし、よほど頑張ったとしても、ホンダやヤマハなどの大手企業のオートバイには、デザイン・価格・性能など、あらゆる面で勝つことは不可能に近いでしょう。

特許でガチガチに固めてあることも参入を阻んでいますし、小さな町工場が大手企業の巨大工場に生産性で勝てません。エンジンや車体の設計・デザインをする人の人数も、桁が違います。

このように、新知識・新技術を伴った新規事業は、市場が開放された期間があります。その期間に参入できずに、業界が成熟してしまったら、新規参入は不可能に近くなります。

先行する企業を模倣する

先行企業が事業のやり方を教えてくれることもある

もし、市場が開放されている期間だと知った場合には、すでに先行している企業を分析し模倣して始めると良いでしょう。

その企業の社長が知り合で、教えてくれるようであれば、ありがたくノウハウの教えを乞うべきです。また、先行する企業を辞めた人を雇うこともありえます。

先行企業を模倣したオートバイメーカーの事例

ここで、もう一つオートバイ産業での事例を取り上げたいと思います。

1950年代前半は、オートバイ製造で先行する企業の1つに本田技研工業がありました。その本田技研工業を模倣して大きくなった企業があります。今も会社が存在するヤマハ発動機や鈴木自動車工業(現、スズキ株式会社)は、一部本田技研工業を模倣しています。1960年代に倒産してしまいましたが、丸正自動車製造もそうです。

大戦後に本田技研工業を創業した本田宗一郎は、「日本の技術水準を高めたい」という志を持っていました。そのため、本田技研工業の工場では、早くからベルトコンベアを取り入れ、流れ作業で生産性を高めることを行っています。

そのような本田技研工業の工場は、当時から見学を受け入れていました。それがたとえ競合他社の技術陣であったとしても、工場を見学させていたと言われています。

ヤマハ発動機はオートバイ製造を始める前に、本田技研工業の工場を見学させてもらっています。鈴木自動車工業は、レース用のオートバイを開発したりテスト走行したりするのを、本田技研工業に手伝ってもらっていた記録が残っています。

丸正自動車製造は、かつて本田宗一郎の直弟子だった伊藤正(いとうまさし、1913~2005)氏が起業したオートバイメーカーでした。

本田宗一郎は、伊藤正に対してオートバイの技術だけでなく、経営に対するアドバイスもしています。また、丸正自動車製造の技術者が、本田技研工業の技術者と意見交換をしていたり、浜松市にできたホンダの新工場を見学したりしたという記録があります。

そのように、丸正自動車製造は本田技研工業を模倣し、一時期日本で第三位の売上高にまで成長させることができています。

丸正自動車製造について詳しく知りたい方は、「丸正自動車製造の倒産理由から見える正しい経営理念とは?」をご覧ください。

先行する企業の模倣で注意すべきことがあります。それは、「模倣している企業も成長していること」と「模倣している企業の経営の本質を理解できているか」です。

模倣をして大きく事業を成長させることができたとしても、事業規模によって経営の方法を変えていかなければなりませんし、いずれはあらゆる面でオリジナルの部分を構築していかなければなりません。

フランチャイズがあるなら、それに乗ることも一考すべきです。

フランチャイズの参画を検討する場合は、何の知識もなしに相手の説明を鵜呑みにするのではなく、マーケティングの知識を駆使して、採算性を試算したり、契約条件をしっかり確認したりして、未来にどのようなことが起こりそうかを検討するようにしてください。

市場が開放された期間を過ぎたら起こること

市場の開放期間が過ぎると価格競争が起こる

市場が開放された期間を過ぎてしまったら、どういったことが起こるのでしょうか。それを知っておくと、将来に対する予測と対策ができます。

まず発生することは、価格競争やサービス合戦です。市場が飽和していないときには、製造したら売れる期間が続きます。携帯電話もそうでした。しかし、市場が飽和してしまったら、価格競争やサービス合戦に入ります。

その時期に入ると、製造においてもサービス提供においても、生産性の高い企業が生き残ることが世の常です。

次に起こるのは、1社独占の大ヒット商品の誕生です。これが発生した段階で、市場は完全に閉じてしまったと見て良いでしょう。

オートバイや自動車もそうですし、スマートフォンやインターネットプロバイダーもそうです。インスタントラーメンやカップラーメンもそうですし、ポテトチップやチョコレートもそうです。CPUもそうですし、ノートパソコンもそうです。

もし参入が許され、既存起業に太刀打ちするのであれば、隙間産業への参入が常套手段です。

隙間産業に進出して、業界日本一になるほどの売上高になった会社もあります。格安の散髪チェーン店や、オンデマンド印刷、古本のネット通販はそうです。

それらの企業は、既存の事業の顧客ニーズで満たされていない部分に着目し、新知識を異種結合させ、新しい価値を生み出しました。

残るのは巨大な数社のみ

新知識・新技術による新規事業で残るのは巨大な数社のみ

新知識・新技術を伴う新規事業では、市場の開放期間が終わってしまったら、それからは淘汰の時代に入ります。大きな企業はますます大きくなり、小さな企業は倒産していきます。

最初は小企業のみが倒産していきましたが、極限まで生産性を高めていく戦いになってくれば、次に中企業が倒産し始めます。

小企業のうちは、事業を撤退するか倒産させることが多いです。小企業を脱した企業の場合には、成長している企業に吸収されることもあります。

中規模になってくると、その事業に参入したいと考えている大企業に買収されることになります。しかし、大企業の資本が入ったとしても、市場の開放期間は終わってしまっているので、立て直しは不可能に近いものがあります。

生き残る数社に入るためには?

開放期間が終わって生き残るのは数社だと述べましたが、その数社に入るためには、何をしたら良いのでしょうか?

ドラッカーの書籍に、次のように書いてありました。

この整理期に生き残るための処方は一つしかない。マネジメントである。

「イノベーションと起業家精神」(P・F・ドラッカー著、上田惇生編訳、ダイヤモンド社)

マネージメントとは、どういったもののことを言うのでしょうか。マネジメントは「経営」や「管理」と訳されるものですが、ドラッカーの述べるマネジメントは、そのような単純なものではありません。

ドラッカーは別の書籍にて、マネジメントには3つの役割があると述べています。

  1. 組織特有の公的な目的とミッション
  2. 生産的な仕事と働く人の成果を創り出す
  3. 社会的影響と社会的責任の管理

これら3つの役割を満たすことで、生き残る企業となれるのではないかと考えます。そのためにも、市場が開放されている期間のうちに、正しい経営理念の策定と浸透をお勧めします。

世界一のオートバイメーカーに成長した本田技研工業と、倒産していった丸正自動車製造を比較しても、マネジメントの3つの役割を果たせているかが大切だと判ります。

以上、新規事業に参入して失敗しないために、社長にぜひとも知っておいてもらいたい考え方を、小さな事業から巨大な事業についてまで述べました。

新規事業をつくりたいがいつまで経っても進まなくて困っている社長、新規事業の売れる仕組みの構築でお困りの社長は、ぜひ当社にご相談ください。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

プロフィール詳細


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