病院にお勤めの先生が、独立して自前でクリニックを開業するときには、開業資金が必要です。
開業資金は、自分で準備することもできますが、全額を自分で準備することは難しいので、どこからか借金をして資金調達をすることが一般的です。
クリニックを開業しようとする先生は、「どこから調達したらいいのか?」、「自分に調達ができるのか?」、「どれくらい調達したらいいのか?」などの疑問や心配ごとをお持ちのことと思います。
この記事では、独立起業をお考えの先生に向けに、クリニックを新規開業するときの資金調達のコツを述べたいと思います。
どこから資金調達できるのか?
資金調達とは、何か事業を始めるときに、事業の資金をどこからか調達してくることです。
クリニックを新規開業するときの資金調達の方法としては、主に次のような方法があります。
- 自己資金
- 親類からの借金
- 銀行などの金融機関からの借金
自己資金とは、自分で貯めた現金のことです。この資金は返済の必要がないため、「自己資本」と言われます。
親類からの借金とは、両親や親戚から借金することです。銀行などの金融機関からの借金は、メガバンクや地方銀行、日本政策金融公庫などからお金を借りることです。これらの資金調達は、自分とは異なる他人の資金調達方法ですので、「他人資本」と言われています。
資金調達は、これらの組み合わせで行われます。
自己資金の場合は、自分でお金を貯めてそれを基金とするので、最も調達しやすい方法なのですし、金利が付きません。出来る限り、自己資金で開業できたら理想的です。しかし、派手にお金を使ってしまうのではなく、生活を質素にして、お給料をコツコツと貯めておく必要があります。
親類からの借金は、親類が現金を持っている必要がありますし、親類との人間関係とも関わりがあります。
金融機関からの調達は、すぐに高額の資金を調達できるものの、医師の人間性やクリニックの事業性が問われ、それを納得させられるくらいの資料を準備しなければいけません。そのため、資金調達の難易度が高まります。
他人資本から資金調達をした場合は、借金の返済はもちろんのこと、それに利息を付けて返済をしていきます。その利息の割合のことを、「金利」と言います。
金利が高ければ、返済する金額が大きくなります。返済する金額が大きくなると、クリニックの経営が厳しくなりやすいので、なるべく金利の安い金融機関から借金することが望ましいです。
資金が必要となるタイミング
クリニックを開業するときに、資金調達をするタイミングですが、それはもちろん開業資金が必要となるときです。
開業資金が必要となる最初のタイミングが、賃貸物件を契約をするときです。賃貸物件の契約時には、保証金が必要になることがほとんどで、たいてい家賃の10カ月分ほどの金額が必要です。
賃貸物件の賃貸料が月50万円としたら、保証金が10カ月分の500万円、そして礼金がかかるところもあり、最初の月の家賃と合わせて600万円~700万円必要になります。
また、賃貸物件を契約をしたら内装工事が始まります。内装工事は着手金が必要となります。その金額は工事費の1/3が一般的ですが、その金額も準備しておく必要があります。
工事が完了したらもちろん全額を払いますし、インテリア用品や医療機器類も導入しなければいけません。
また、開業した直後は、すぐに患者さんが来てくれるわけではないので、スタッフやご自身のお給料、水道光熱費、消耗品代などの運転資金も、調達した資金から捻出します。
そういったクリニックの賃貸契約から内装工事、初期にかかるコスト分を、たいていは賃貸物件契約時に一括で資金調達します。
金利の安い地方銀行からの資金調達で苦労した先生のエピソード
資金調達は主に金融機関からの調達になりますが、「金利の安いところから借金したらいいのか?」とお考えになる医師が多いことでしょう。金融機関選びは、金利の安さだけで選ぶと、とんでもない目に遭う場合があります。
ここで1つのエピソードをご紹介します。
とある地方でクリニックを新規開業したいという医師が、クリニック開業コンサルタントから「メガバンクから借りると良い」とアドバイスを受けていたのですが、ご自身で地元の銀行から低金利での資金調達の約束を取り付けました。
開業コンサルタントも立ち会い、契約書類に併せて返済計画も添えて提出したところ、銀行の審査はすんなり通過し、銀行担当者からすると一括ですぐに融資が出る予定でした。
自己資金で物件を契約して、「さて内装工事を始めましょう」というときに、地方銀行の担当者から連絡が入り、「残っている自己資金を当銀行口座に入れて欲しい」とか、「物件の契約書類を追加でもらいたい」、「融資は一括ではなく、2分割で行いたい。2回目の融資は開業後にしたい。」と、次々と融資の条件を後出しされました。
銀行とケンカをして、融資を断られてしまっても困るため、銀行の条件を全て飲み、開業の準備資金を何とか別口から調達して開業までこぎつけました。また、2回目の融資が出なければ、即倒産ですので、ハラハラしながら融資をまちました。
金融機関を選ぶコツは、「金利が安いだけで選ばないこと」です。
余談ですが、金利の安さだけで選ぼうとする人は、クリニックの内装工事も坪単価の安さだけで選ぶことが多いです。クリニックの内装工事を妥協して、後で大きな金額の工事が必要となることもあります。クリニックの内装工事は事業活動のものですので、自宅の新築工事を同じ発想で選ばない方が良いです。
金融機関から借りる場合の事業計画のコツ
金融機関からの調達は、クリニックの事業性が問われ、それを納得させられるくらいの資料を準備することを述べました。その資料とは、「事業計画」のことです。
事業計画の内容は、クリニックの収支予想や借金の返済計画を含む、事業内容のすべてが記載されたものです。
どこで開業するのかの場所、診療科目、内装工事でかかる費用、どのような機材を導入するのか、営業時間や定休日について、どれくらいの集患が見込めるのか、どれくらいの売上高や利益が得られるのか、数字の根拠も含めて書かれたものです。
金融機関が点検するところは、要するに「借金を返済してもらえるのか?」という見込みです。
実際にクリニックを開業するまでは、本当に事業計画通りに収益が得られるのか判りません。しかし、それを予想して事業計画を立てなければ、資金調達ができないのです。
開業を目指している医師が最も心配することは、「開業で失敗しないか?」ということです。つまりクリニックの収支が赤字になり、倒産しないかどうかです。
そこで、実際の事業計画を立てるときは、ガチガチに堅めに事業計画を立てます。しかし、堅い事業計画では、金融機関が納得しない場合もあります。そこで、金融機関にはお花畑でピクニックをするような、たくさんの利益が得られるような事業計画を立てて提出することが望ましいです。
硬めの事業計画を最低目標とし、お花畑の事業計画を最高目標として、クリニックを運営していくと良いと思います。
開業を考えたらすぐに資金の準備を
開業をお考えになられたら、すぐに資金の準備を始めてください。
資金の準備と言っても、まずは余計な出費をしないことから始めます。余計な出費とは、次のようなものがあります。
- 住宅ローン
- 投資物件のローン
- 生活費などのムダな浪費
支払う税金が高くなったとしても、これらを控えて資金を蓄えてください。たくさんの自己資金を蓄えることができたら、開業をした後のクリニック経営が安定的なものになり、それ以上のリターンを作ることも可能になります。
そして、何らかのローンが多い人は、金融機関からの資金調達が難しい場合もあるので、ご注意ください。
もちろん、生活費が多くなりすぎて生活が破綻した経験のある人、いわゆるブラックリストに載ってしまった人は、金融機関からの資金調達ができなくなると思います。そもそも、浪費癖のある人は、独立起業には向いていません。
ご自身が雇われている側から、経営者になっていくためのマインドチェンジも、開業準備の一つとして大事になります。経営者マインドを鍛えるためには、お忙しかったとしても、経営者セミナーや研修に参加するなどして、お勉強することをお勧めします。
当社のセミナーであれば、「小さな会社の社長のためのセミナー」をご利用ください。月1回のゆっくりペースで少しずつムリなく、経営者が何をしたらいいのかを学んでいくことができます。
クリニック新規開業は専門のコンサルタントに依頼すべき理由
資金調達をするためには、金融機関からの資金調達が一般的ですが、金融機関から資金調達をするためには、事業計画を立てることが必要であることを述べました。
事業計画を立てることは、とても大変な作業になるため、クリニック開業コンサルタントに依頼することが一般的です。
クリニック開業コンサルタントには、どのような人がいるのかを調査していると、大きく2種類に分類されることが分かりました。
- 病院に出入りしている医療機器や医薬品の業者が開業支援をするケース
- クリニック開業に特化したコンサルタントが開業支援をするケース
1つ目の場合には、もちろん経営の専門家でないために、クリニックを開業して1年ほどでクリニックが破綻したり、経営難や自転車操業をしているところが多いと思われます。そこで、2つ目のクリニック開業を専門としているコンサルタントに依頼することをおすすめします。
そして、2番目のケースでは、これも2種類のコンサルタントに分類されます。
- 内装工事や税務などの、何か実務に強みがあるが、全体を俯瞰した支援ができないコンサルタント
- クリニックの物件探しから初期の経営まですべて俯瞰して最適な支援をしてくれるコンサルタント
依頼すべきは、もちろん後者の開業コンサルタントです。
クリニックの開業には、本当にたくさんのことを気にかける必要があります。全体を俯瞰できるコンサルタントに依頼することで、事前に危険性を予測し、何百万円もの突発的な損失を防ぐことができたケースもあります。
クリニックの開業準備は時間がかかるので、1年以上前から全体が俯瞰できる開業コンサルタントに相談することが大事です。全体とは、開業場所選びや内装工事、消防や防災設備について、申請書類、事業計画立案や資金調達、医療機器の調達、電子カルテ、人材確保や人材教育、集患の方法など、本当に全体です。
私がおすすめする開業コンサルティング会社は、オクスアイ医療事業開発株式会社です。独立起業をお考えの医師は、お早目に専門のコンサルタントにご相談ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。