ポップアップストアとは?
ポップアップストアとは、期間限定で出店しているショップのことです。「期間限定ショップ」とも言われます電車の駅の構内やデパートの入り口などに1週間ほどの期間限定で出店されます。それに相対し、ずっと出展している店舗のことを、常設店舗と言います。
ポップアップストアでは、1店舗だけで小さく販売されていたり、一画を借り切って物産展をやっていたりします。
先日、仕事で埼玉県の都市に行きました。駅の西口では物産展が行われていました。また、近くのデパートに入ったところで、チーズケーキのポップアップストアがありました。
いつものマーケティング調査をしているときに、両方の店舗で聞いたセールストークには、「これだと販売はあまり伸びないな」と感じる共通点を発見しました。
それを見かねた私は、余計だったかもしれませんが、チーズケーキを販売している女性スタッフの方にセールストークをアドバイスしました。その方は、アドバイスを熱心にメモされ、「偉いな」と感じました。もちろん、チーズケーキを購入し、おいしくいただきました。
さて、2つのポップアップストアで共通する、売れないセールストークとは、どういったものだったのか。どういったセールストークなら、購入してもらいやすいのかを、ご紹介いたします。
ポップアップストアでの売れないセールストーク
まずは、両方のお店のセールストークをご紹介しつつ、2店舗に共通する問題点を探りたいと思います。
物産店でのセールストーク
物産展では、いろいろな店舗が並んでおり、その中の1つにボリュームのある珍しい厚揚げと薄手の油揚げが冷蔵ショーケースで販売されていました。とても美味しそうだったので、それを眺めていて、販売スタッフと目が合ったときに、次のように声をかけられました。
どちらにしますか?
私は、まだ購入を決めたわけでもないし、ボリュームのある厚揚げは、美味しい食べ方すらわかりません。私は、「いえ、見ているだけです。」と述べて、去ってしまいました。
駅での物産展は、雰囲気だけで人が集まるように思います。しかし、スタッフのやる気があまり感じられなかったのは、私がスーツを着ていたからでしょうか?
チーズケーキ店でのセールストーク
続いてチーズケーキ店ですが、ショーケースの中に1種類のチーズケーキが2種類のサイズで販売されていました。珍しいチーズケーキだったので、ショーケースを眺めていると、笑顔の女性スタッフが次のように声を掛けてきました。
大きいホールが4~5人前で、小さい方は1人前です。
そのようなことは、言われるまでもなく見たら分かります。せっかくの素敵な笑顔なのにもったいないと感じ、「ええい、もう!」ということで、セールストークをアドバイスしてしまった次第です。
2店のセールストークに共通することとは?
この2店で共通することは、お判りでしょうか?
それは、「顧客目線でない」ということです。
どちらの販売スタッフも、2~3時間ほど立ちっぱなしで疲れてきていたかもしれませんし、たまたまだったかもしれません。しかし、機会損失が発生したことは事実としてあります。
それぞれのお店で、1つの商機を逃さず、勝機を見出すためのセールストークを考えたいと思います。
1つ目のお店では、ボリュームのある珍しい厚揚げを眺めていたわけですから、厚揚げの特長を述べたら良かったのです。例えば次のようなセールストークです。
とても珍しい厚揚げです。小さく切って焼いて食べても美味しいし、スライスしてお味噌汁に入れてもなかなかですよ。
焼いたものは、隣で売られているお酒ともよく合いますよ。
このように言われたら、「では1ついただこうかな。ついでに隣の日本酒も購入しよう。」という具合になります。
また、私はスーツを着ていたわけですから、次のように声を掛けても良いかもしれません。
お仕事中ですか? それなら、今夜の仕事疲れを癒すのに、おいしい日本酒といかがですか? もちろんビールとも相性はいいですよ。
次にチーズケーキ店です。こちらのお店ではアドバイスをしたので、その内容をご説明いたします。販売スタッフは、若い女性の方だったので、その特性を活かして、次のようなセールストークをアドバイスしました。
ふわふわ・トロトロで、とにかく、すっごく美味しいんです❤
ショーケースを眺めていた人には、これでたいてい売れると思います。また、ある程度の人通りもあったので、お会計をする人がいたら、大きめの声で次のように声掛けをしたら良いでしょう。
有名店のチーズケーキを限定販売! ご購入の方は、どうぞお並びください!
レジ対応をしていて、他の人に声掛けができなかったら、人が立ち止まってもすぐに去っていく可能性があります。何かお声がけをしたら、足止めする効果は、多少あることでしょう。
セールストークの研究と工夫を
セールストークを鍛える方法をご紹介いたします。個人差はあると思いますが、お試しください。
まずは商品の特長を話す
どのようなセールストークをしたら良いのか、わからない方は、商品の特長を話すようにしてください。商品の特長を話せば、まずセールストークとしては間違いありません。
上述したセールストークのサンプルは、どちらも商品の特長を話したものです。セールストークで特長を話すことは、第一段階で行われるべきことです。
珍しい商品を購入したい人は、商品自体が欲しいのではなく、「特長を購入したい」のです。
セールストークを研究する
そして第二段階としては、足を止められたお客様に声を掛けつつ観察して、「どのような人に、どのようなセールストークを掛けたら良いのか?」と研究してみることです。
慣れてきたら、お客様に軽く質問をしながら、ニーズを聴き出しつつ、顧客が考えていることを察して、提案ができるようになったら理想的です。
チーズケーキ店でしたら、「おいしいチーズケーキはお好きですか?」とか、「ふわふわ・トロトロのチーズケーキは、食べたことはございますか?」といった具合で、シズル感を添えながら質問をして、ニーズを引き出していったら良いと思います。
そして、食品の場合は、相手に食べた美味しさをイメージしてもらえるようなセールストークが良いです。
そのようにしていると、質問力に磨きがかかり、直観力も鍛えられ、それに伴って販売も伸びていくことでしょう。
1日の販売を反省する
さらには、もっと販売するために大事なことは、反省をすることです。
その日のセールストークや顧客対応などを思い出して、「もっとこうしておけば売れていた」とか「あのお客様を逃した理由は〇〇だった」といった具合です。それをメモしておけば、明日以降にも活かせますし、新人スタッフの育成にも利用できます。
反省は、出来なかったことを振り返ることだけではありません。出来たことも振り返ってください。「なぜあの人は購入してくださったのだろうか」とか「購入してくださった方が、もっとたくさん購入してくれる方法はなかったのだろうか」といった具合です。
販売後は波状攻撃でリピーターづくりを
販売は1回成功したら終わりではありません。商品を気に入ってくれた人が、リピート購入してくれる可能性があるからです。ご購入された方の中から多くの人がリピーターになったら、延々と新規顧客獲得のために多大な労力を使い続ける必要がなくなります。
ポップアップストアに再来してもらいたい場合は、「このお店はあと3日やっていますので、気に入ったらぜひご利用ください。」と付け加えます。再度来られた方には、「おいしかったでしょう?」とお声がけされたら良いと思います。
物産展では、同じ場所で定期的に巡回してくると思うので、「次回は〇月〇日にまた来ますので、どうぞご利用ください」といった具合です。
さて、アドバイスさせていただいたチーズケーキ店では、実は商品を購入させてもらいました。ビニール袋の中には、案内チラシが3種類も入っていて、感心しました。
- チーズケーキの食べ方の説明
- 母の日のプレゼントご案内
- ポップアップストアの出店スケジュールやネット通販のQRコード
チーズケーキのお店は、とても工夫していると思い、こちらが勉強になりました。
セールストークを他から学ぶ
今まで販売スタッフ向けに述べてきましたが、次は逆の立場での勉強です。自分自身が、ポップアップストアでお客様として商品を眺めているときに、販売スタッフに何か言われて、商品を購入してしまったとします。そのセールストークも勉強になります。
値段にもよりますが、うまいセールストークを言われた場合は、「勉強になった」ということで、なるべく商品を購入するようにしています。それをノートなどにまとめても良いですし、私のようにブログにしても良いでしょう。すると印象に残りやすいです。
また、誰しも、コンビニやスーパーマーケットなどで頻繁に買い物をしているはずです。そのときに、「なぜこの商品を購入してしまったのか?」と自問自答してみてください。商品を購入するときに、無意識で購入する人はいないはずです。必ず何かを考えて購入しているはずです。
普段からよく購入しているものほど、何も考えないで購入していることが分かります。ポップアップストアのように、普段は利用しないお店の場合は、何かと葛藤しながら自分自身を説得したり、何か理由を付けたりして購入する場合があります。
販売スタッフが、お客様自身の説得材料や購入理由をセールストークで述べてあげると、すんなり購入してくれるようになります。
冒頭に商品の特長を話すように述べましたが、食品販売の場合は、単価が安いので、ちょっとしたセールストークでも有効になりやすいです。
このように、普段何気なく考えて行動している自分自身の声を確認することでも、セールストークにつながるヒントがあるのです。
経営者はセールストークのマニュアル化を
最後に経営者目線でのお話しをしたいと思います。上記のエピソードは、「せっかく美味しい食品を開発しても、販売の仕方で機会損失している場合がある」ということを物語っています。
経営者は、自ら店頭に立ち、販売スタッフには販売の流れだけでなく、セールストークのことや、お客様をよく見ることも指導することもお勧めします。
販売促進の方法は、セールストークだけでなく、他にもいろいろな方法があります。例えば、粗品を付けたりとか、レシピ集を付けたりとか、値引きをするとか、いろいろとあります。それらの中から、誰でもできる効果的な方法をルーチン化すると良いでしょう。
そういった中で、ルーチン化されたセールストークは、おおよそ誰でも利用できることと思います。セールストークまで含めた販売業務マニュアルを作成しても良いでしょう。
そのときに、どのようなセールストークをマニュアル化するかと言えば、一番販売成績の良いスタッフのセールストークです。ただ単に、ロボットのようにセールストークを繰り返すだけでも、どのスタッフも一定の販売力の向上にもつながると思います。
それでも良いのですが、もっと言えば、そのスタッフがお客様のどういったところを見ているのか、何を考えて、どのようなセールストークを繰り出しているのか、そういったノウハウまでマニュアル化できたら理想的です。
また、マニュアル化されたセールストークは、採用面接の試験でも利用できると思います。面接を受ける人が、セールストークを正しく話せるかどうかを、採用基準の一ついできます。
以上、ポップアップストアでの販売スタッフのセールストークに絞って、販売成績の伸ばし方を述べてきました。販売スタッフの成績が伸び悩んでいる経営者に参考になれば幸いです。
もちろん、販売方法が伸びる方法は、セールストーク以外にもいろいろとあります。ポップアップストアでなくても、常設店舗でも同様のことが言えますが、常設店舗の場合はもう少し別の方法もあります。
その一部を、コラム「和菓子屋で実証!ちょっとの工夫で店舗を売上アップできた方法」でご紹介しているので、ご参考になさってください。
また、当社では上記のような販売指導のご支援や、販売スタッフや店長の育成やコミュニケーション研修なども承っています。販売が伸び悩んで困っている企業様は、ぜひご利用ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。