社長の夢実現への道

和菓子屋で実証!ちょっとの工夫で店舗を売上アップできた方法

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ちょっとの工夫で店舗を売上アップさせた方法

とある山手線の駅ビルに和菓子屋があり、私は数年前から月1~2回ほど利用しています。そこにお勤めの気さくな女性店長Sさんとは、ときどき世間話をすることもあります。

1年ほど前に、Sさんに「新型コロナになってからの売上はどうですか?」と聞くと、案の定、以前よりも悪いとのことで残念がっていました。そこで、「簡単に売上アップする方法で、しかも手間がかからず、コストもかからない方法をお教えしましょう。」ということで、3つほどお教えしました。

その中の1つは、手書きのポップを設置することです。どのような手書きのポップが良いのかもアドバイスしました。

後日、店舗を訪れると、お教えしたことすべてを試したようで、「売上アップしました!」と喜んでいただけました。Sさんの直観で、20%ほど購入者数が増えたそうです。

次の目次に沿って、その方法をご紹介いたします。

店舗を運営されている店長さんは、ぜひお試しください。

店舗の状況

簡単に和菓子屋の店舗の状況についてご説明いたします。その和菓子屋は、江戸時代から続く老舗で、都内に20店舗以上あります。

私は一つの店舗にしか行ったことがありませんが、次のような運営がなされていると思われます。

客層ミドル層
店舗運営店長の自由裁量
店舗の広さ1.5坪ほど
主な商品
  • あんみつ
  • わらび餅
  • どら焼き
  • 羊羹
  • 季節の和菓子
店長の特性気さくな性格。笑顔。

店舗のレイアウトは、通路に沿って平ケースとオープン冷蔵ショーケースが並んでいる、対面販売スタイルです。

ちなみに、私のおすすめは、わらび餅と季節の和菓子です。

店長にお教えした売上アップの方法

その店舗では、「店長さんの強みを活かして、リピーターづくりが大切だ」と感じたため、次のことをお教えしました。

お客様と親密になること

お客様と親密になると、「ちょっと寄ってみよう」ということになるかもしれませんし、そのときに季節の和菓子をおすすめできます。

お客様との親密さを増すためには、会話が大切です。会話のキッカケづくりとしてアドバイスした、手間やコストがかからない、ちょっとした工夫は、次の3点です。

  1. 手書きのポップを作ること
  2. チョットしたおすすめの理由を考えること
  3. 消費期限の長い物から販売すること

たったこれだけのことです。そして、この3つのことは、ご来店されたお客様とのちょっとした会話のキッカケづくりなのです。

Sさんは、会話をするとすぐに友達になれるような気さくさがあるので、とにかく会話に持っていくための手法を提案しました。

新型コロナで、ダイレクト・コミュニケーションが強制的に減少している時代です。その反作用として、ダイレクト・コミュニケーションを求めている人が増えてきている可能性があると予想します。

また、Sさんの凄いところは、自宅に帰って、すぐさまポップづくりを実行したことです。自宅に帰ってまで仕事をしてくれる店長さんは、貴重な存在だと思います。

上記3つの方法を、簡単にご説明いたします。

1. 手書きのポップ

和菓子を購入する顧客は、商品がいくつも並んでいる中で、その中で何を選んだら良いのか迷うことがあります。初めて店舗を訪れた人であれば、なおさらです。迷っているうちに、店員さんと目が合って無言で帰ってしまう人もいます。迷っているときこそ、ポップがあれば、思わず見てしまいます。

私がアドバイスしたポップは、次の3点です。

  1. 店長おすすめ
  2. お土産に最適
  3. 期間限定!

しかも、これらを手書きで作るようにアドバイスしました。手作りの和菓子には、本来、人の温もりがあるはずです。その温もりを販売し終えるときまで伝えるためには、手書きしかありません。

Sさんは、お世辞にもきれいな字とは言えませんが、色を用いてイラストも入った小さなポップを作り、それをクリップに挟んで飾りました。

判りやすい3点のポップに絞ったのにも理由があります。ポップがあり過ぎると、また迷ってしまうからです。

先日、ポップの効果を聞いたら、「いつもなら素通りするような人が、『店長おすすめ』を購入してくれる機会が増えました。」と喜んでいました。

2. チョットしたおすすめの理由

店長おすすめの商品は、なぜおすすめなのか理由を考えてもらいました。Sさんに、おすすめ商品に選んだ理由を尋ねると、笑顔で「これが好きだから」でした。

それでいいのです。

もし、「なぜこれがおすすめなのですか?」と聞かれたら、「私はこれが一番好きだからです。」と答えるようにすすめました。

お客様とSさんとの、価値観の共有によって、お客様はリピートしやすくなることでしょ。

Sさんはお客様の顔を覚えられる人なので、次にご来店があったときは、「以前、これをご購入されましたね。いかがでした?」と聞かれることでしょう。するとその人は、お店の常連客の仲間入りです。

3. 消費期限の長いものから販売

和菓子に限らず、食品を販売しているのであれば、消費期限の短いものから販売したくなるものです。しかし、お客様の立場で考えてみたら、お客様は消費期限の長い物が欲しいはずです。

商品のどら焼きは、袋に入って脱酸素剤が封入されており、日持ちするものです。

ショーケースの上に並んだどら焼きは、お客様側に消費期限が短いものから並べられていました。それらの中から、消費期限が短めの物をお客様が手に取ったら、「お客様、こちらの方が、消費期限が長いので、こちらをお包みしても良いですか?」と尋ねるようにアドバイスしました。

今回のコラムは、Sさんにちょっとした工夫のアドバイスをして、和菓子屋の売上アップに貢献してしまいました。Sさんは大喜びで、Sさんが自腹で購入された小さな羊羹をプレゼントしてくださいました。報酬の内容としてはともかく、Sさんの喜ぶ顔が忘れられません。

現在は、新型コロナで人とのつながりが希薄になってきている時代です。そういった時代だからこそ、人の温かさが伝わるような接客ができている店舗が売上アップしていくものと思われます。

誰でも思いつきそうなことが思いつかない理由

店舗の話はここまでとして、アイデアについての一般論を述べたいと思います。

今回アドバイスした3つのことは、誰でも思いつきそうなことです。他社の店でも見かけるようなことばかりです。しかし、当の本人は、今まで一度も試したことがなく、思いつきもしないものです。

なぜ、誰でも思いつきそうなことが思いつかないのでしょうか。

いくつか理由はあると思いますが、大きな理由は、次のことではないでしょうか?

顧客の立場で考えられていない

他社の飲食店に入ったときに、「ここの店員さんは愛想が悪いな」と思ったとしても、まさか自分の会社のスタッフの愛想が悪いと思うことは少ないはずです。

自分のことよりも、他人のことが気になることは、無意識に「自分はできている」と感じているのでしょう。私自身も含め、人はどうしても自己中心的になりがちです。

自己中心になりすぎないようにするためには、自分を客観的に振り返ることが大切です。要するに、相手の立場で考えることです。このことは、人の集合体である会社も同様です。

そのためにも、積極的な改善(イノベーション)のためのキッカケづくりが大切になります。

アイデアは普段から課題意識を持って考えている人に降りてききやすいものです。現状に満足せず、何か改善のアイデアはないか常日頃から考えるようにしてみてください。

改善(イノベーション)のキッカケづくりの方法

利益を増やすための改善すべき場所は、販売の方法だけではありません。原材料費を下げたり、生産性を高めたりすることでも利益は出ます。

改善(イノベーション)のキッカケづくりの方法をご紹介いたします。

他人ごとを自分に当てはめる

飲食店に入ったときに、「ここの店員さんは愛想が悪いな」とか「愛想がいいな」と感じることがあったとします。そういったタイミングのときに、自分のことや自社のスタッフことに当てはめて考えるようにすると、もっと売上がアップする方法がないか、考える機会になります。

ときどき、ニュースで企業の不祥事が取り上げられる場合があります。そういった場合には、「ひどい会社もあるものだ」と他人事でスルーするのではなく、「わが社は大丈夫なのだろうか?」「この不祥事をわが社に置き換えたら何が考えられるだろうか?」と自分事に発想すると良いでしょう。

この方法では、普段から課題意識を持って、改善に取り組んでいるときに、ふとアイデアに巡り合うという、偶然性を利用したものです。

フレームワークで考える

改善(イノベーション)のキッカケづくりには、経営に関するフレームワークでも考えることができます。フレームワークを用いることで、体系的に改善を行うことができます。

代表的なフレームワークをご紹介します。

他にもたくさんございます。集客や増収増益に関するさまざまなフレームワークは、小さな社長のためのセミナーWeb集客コンサルティングなどでお教えしています。ご興味のある方は、ぜひご連絡ください。

社内外からの諫言・苦言を受け入れる

ズバリ言われると辛いこともありますが、すれを素直に聞き入れることで、改善(イノベーション)ができます。特に部下とコンサルタントの諫言はためになると思うので、トップは、それを受け入れられるぐらいの度量が求められます。

このような諫言や苦言による改善は、緊急性の高い場合が多いです。

店長からの意見を求める場合は、それを否定することなく受け入れ、店長会議では数字やクレームの報告だけでなく、客観情勢や工夫したことなどもフィードバックしてもらい、他の人たちにも共有できるようにしておくことが望ましいです。

最初はムリのない程度のお試しから

最初は、ムリのない程度のことから、実験的に始めてみてください。イメージとしては、「簡単なポップを1か所だけ設置してみよう」という具合に、1日に1か所の工夫でかまいません。

店舗運営をしている社長であれば、店長や従業員に指示を出す場合は、ムリさせ過ぎないようにしてください。最初は、できれば社長もいっしょに取り組むぐらいのスタンスが良いです。

ムリしすぎると負担になりますし、お店のイメージが変わってしまう可能性もあり、固定客が離れてしまうこともあります。

今回、Sさんにした3つのアドバイスは、店舗に立ち寄ったときに、1つずつ具体的にアドバイスをしていきました。一度に何種類ものアドバイスをしても、覚えられませんし、どのアドバイスが効果が出たのかが、Sさんに把握ができないからです。

さて、何か工夫をして1週間ほどしたら、その効果がどれぐらいのものだったか、振り返ってみてください。店長は、社長の指示で工夫を行ったのであれば、効果を社長に報告してあげてください。社長は、その結果が、次の手を考えるための材料になるからです。

その工夫は、やりっぱなしは良くありません。ポップであれば、いくつかの種類を作成したり、色を変えたりして、反応を確認しながら、良いものを探すぐらいのことはしたいものです。改善できそうなものがあれば改善し、またその効果を試すと良いでしょう。

この繰り返しで、良いものを残していくことで、少しずつ売上がアップしていくことでしょう。

なぜSさんを別店舗に派遣した?

その後のSさん

売上アップができて喜んでいたSさんですが、先日お店にしばらく顔を出さなかったので、理由を伺うと「他の販売不振のお店の支援に入っていた」とのことでした。

支援しているお店で、「売れ行きの悪い商品を、どのように売ったらいいのか悩んでいる」とのことだったので、そのお店の売上アップの方法とポップの改善策をアドバイスしておきました。

会社としては、Sさんが店舗の売上アップの張本人だと知っての派遣だったと思います。

ここで会社は、Sさんを間違った使い方をしていることに、気づかれた方もいることでしょう。間違いは次の2点です。

  • 売上が落ちている商品を売りたい
  • そもそもSさんを別店舗に派遣したこと

1つ目については、売上が落ちている商品は、リピート客がその商品に飽きてきている可能性があります。飽きたものを売ることは難しいため、新規顧客を増やすことが大切ですが、ポップによる集客は一時的なものとなります。

例えば、あんみつを売ることについて考えましょう。あんみつがよほど好きだったら別ですが、同じ味だと飽きてきます。顧客が飽きてしまったあんみつを多く売りたいなら、新しい味を開発して、期間限定でテスト販売したら良いと思います。

2つ目の理由は、Sさんを別店舗に派遣することによって、Sさんと親密になっていたリピート客が離れていく可能性があることです。

販売不振のお店では、新規顧客がSさんと親密になって、少しずつ売上高が回復しても、もともといたお店はリピート客を失うので、トータルでは売上高が減損する可能性が高いです。

さらに付け加えておくと、Sさんの派遣先は、売上高の高いお店にすべきです。

売上高の高いお店は、新規顧客やリピート客が多いはずです。その店の工夫をすることで、リピート率や顧客単価を高められる可能性があり、売上不振の店舗を回復させるよりも、会社全体の売上高はアップできるからです。

今の時代は、お店の売上アップは、何かやり方を変えることから考えるのではなく、人とのつながりを大切にしていくようにすることで、達成できると思います。

手段ばかり気にしていませんか?

当社に集客支援のご依頼をいただいた企業様を、多数ご支援している中で、売上が落ちている理由に共通点があることに気が付きました。

それは、ほとんどの企業様で、「手段ばかり気になる」ということです。例えば、次のような具合です。

  • SNSをやった方が良いのか?
  • ホームページを刷新したら集客はできそうか?
  • チラシのデザインを見てもらいたい

このようなことは、旅行で例えると、旅行先を決めないで、交通手段を先に決めようとしているのと同じです。

お店の売上が落ちている理由は、我社の存在理由と顧客ニーズが合致していないことであることが、ほとんどです。 経営者は、「Sさんを売上の落ちている店に派遣しよう」という手段ではなく、まずは自社の存在理由を考え直し、顧客ニーズの変化を読み取り、成功パターンをつくり、それをベースに育成プランをつくり、全員が品質の高いサービスを提供できるようにすべきだと考えます。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら数千を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくりる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

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