社長の夢実現への道

ミッション・パーパス・経営理念など何を作成したらいいのか?

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ミッション、パーパス、経営理念、ビジョン、バリュー、何を作成したらいいのか?

自社の経営哲学を作成しようとしたときに、パーパスやバリュー、ミッション、ウェイなど、いったい何を作成したらいいのか迷われた経営者に向けて、経営哲学の用語の意味を考察し、どのような用語を使用したら良いのか、一つの答えを出したいと思います。

このコラムでは、次の目次に沿って、自社の経営哲学を作成しようとしたときに、どの用語を使用するか迷う理由や、経営哲学を作成するときの大切な考え方、経営理念に関する用語の定義などについて述べます。

長文になりますが、これから会社の経営哲学を作成したり、形骸化した経営哲学を見直したりしたい経営者のご参考になれば幸いです。

会社の経営哲学として何を作成したらいいのか迷う理由

経営理念に関連する用語は、たくさんの種類があります。

経営理念、企業理念、パーパス、ミッション、未来ビジョンや経営ビジョン、事業ビジョン、社是、社訓、経営方針、経営指針、行動指針、行動規範、ウェイ、バリューなど、さまざまです。

知り合いの社長に聞いてもバラバラですし、中には「経営理念を作成する前にやることがあるだろ!」と叱咤されることもあります。

そこで、いろいろな本を読んで勉強する方が多いと思います。

経営理念がまとめられた書籍を読んで思ったこと

書籍「ミッション・経営理念 社是社訓―有力企業983社の企業理念・行動指針」には、優良企業の経営理念がまとめられていて、とても参考になりますが、今一つ経営理念の用語が統一されていないことがわかります。

経営哲学のまとめ方として、長い文章であったり、箇条書きであったり、短い一文であったりとさまざまです。

社是や社訓という用語を用いている企業を見ても、社是と社訓の両方を策定していたり、社是だけであったり、社訓だけであったり、社訓と他のものを組み合わせていたりします。

経営哲学の用語は、企業によって定義がバラバラであることを知ってから、その本を読むと、とても参考になると思います。

理念経営を提唱している社長が書いた書籍を読んで思ったこと

その他の経営哲学の書籍として、理念経営を提唱している社長が書かれた書籍があります。

ミッションに関する本を読むと、「ミッションを作成したらいいのではないか?」と考えるのですが、パーパスの本を読むと「パーパスの方が大事だ」と考えてしまいます。「クレドが大事だ」と述べられている本もあります。

結局、自社にとって何がいいのか分かりません。

理念経営について書籍を出した社長が、後に不正をしたり、経営理念に反したことをしたりして、ニュースになったこともありました。そういった書籍は、素晴らしい内容だと思っても、書籍の内容にウソがあったり、理論的に何か限界があったりしたのかもしれません。

そういった意味では、人生を全うされた「上りの経営者」の書籍がおすすめです。例えば、松下幸之助先生(1894~1989)や稲盛和夫先生(1932~2022)です。

しかし、上りの経営者の経営哲学は、おおよそ会社が大企業になってからまとめられたものですので、中小企業経営の経営哲学としては、ピタリと合わない部分もあるのです。

ドラッカーや一倉定の書籍を読んで思ったこと

理念経営の大家のお一人と言えば、ピーター・ドラッカー先生(1909~2005)でしょう。ドラッカーの書籍を読んでも、内容が難解な上に、たくさんの書籍があるので、今一つ経営理念というものがどういったものなのか、理解に苦しみます。

ドラッカーの書籍は、1冊読むのに1ヶ月かかったとして、2冊3冊と読み進んでいくうちに、前に読んだ書籍の内容が忘れ去られていきます。

ドラッカーの書籍は、何度も何度も繰り返し読んで、考えて考えて考え続ける内容の書籍です。それを繰り返しているうちに、いつの間にか経営哲学が身に付いていく感じがします。1冊を3回以上読めば、スルスルッと言葉が心にしみてきて、「なるほど」と思うようになります。

そのように時間をかけて学び、いろいろと試して失敗と成功を繰り返し、社長が経営について悟っていく中で、本物の経営哲学がつくられていくものです。自社に合った本物の経営哲学を作成することは、本来なら時間がかかります。

また、ドラッカーは従業員数が万から数十万の企業を調査してまとめたものです。そのため、中小企業経営では、一部参考になりますが、そのまま適用できるものではありません。中小企業経営では、一倉定先生(1918~1999)の書籍シリーズ「一倉定の社長学」の方が経営哲学としても合っていると思います。

しかし、一倉定先生の書籍では、社長学に関することだけが書かれていて、社員に対することは、「社長の背中を見て育つものだ」と言わんばかりです。確かにそうなのですが、その部分に関しては今の時代には物足りなさを感じます。

温故知新

最近、当社では江戸時代の経営哲学の研究がブームになりつつあります。

アダム・スミス(1723~1790)よりも何十年も前に、石田梅岩(1685~1744)の思想があり、その時代には日本にすでに資本主義の精神がありました。石田梅岩のお弟子さんたちは、商人に対して経営コンサルティングをしつつ、商人の存在意義を説いていたようです。

その100年ほど後は、二宮尊徳(1787~1856)による報徳思想、資本主義の精神がありました。

そのような商人道とも言えるものが、江戸時代から明治、大正、昭和と時代を経て、時代に合ったものに変わりながら受け継がれているので、パーパスやらミッションやらそういった理念経営は、江戸時代ではすでに行われていたことが明らかです。

近江商人の思想のひとつである「三方よし」をとり上げても、経営思想として現在にも通じているものがありますが、それひとつだけでは、今の会社経営全体の哲学に成り得るとは思えません。

江戸時代の経営哲学は、とても興味深い話ですし、会社の経営哲学を作成する上で、とても役立ちます。難点は、資料が膨大にあり、集めるだけでも大変なことです。

このように、経営哲学は、学びだすとキリがありません。

会社の経営哲学を作成する上での大切な考え方

会社の経営哲学を作成する上で大切な考え方を、いくつかご紹介いたします。

どのような会社を目指すのか?

経営哲学は、どのような用語を採用するとしても、社長が「経営哲学をつくろう」考えたのには理由や目的があるはずです。経営哲学は、その目的が達成するような内容のものにしないといけません。

経営哲学をつくる上で大事なことは、「どのような会社を目指すのか?」を考えて、明確にすることが大事です。

社長自らが、「わが社は何のために存在するのか?」を考え続け、その答えが最大化した姿をイメージすることです。それを実現するために大切なこと、自社で大切にすべき価値観を考えます。

それを具体的にまとめ、明文化したものが経営哲学です。

1つの文章だけでは使い物にならない

もうひとつ大切な考え方として、経営哲学は「何か1つの文章を作成しただけでは完成ではない」ということです。

自社の経営哲学のすべてを網羅した、深い意味が込められた一文を作成することは可能です。一文だけであれば、誰でも覚えやすいことでしょう。

しかし、その一文に込められた深い意味を紐解いて理解し、それに基づいて行動ができる人は、その一文を作成した社長本人ただ一人です。

その一文に込められた深い意味を、経営幹部が理解できない場合は、経営幹部が社長に代わって経営判断ができないため、すべての経営判断を社長に相談することになり、社長は忙しいままです。また、その意味を社員全員が理解できない場合は、社員それぞれが独自の解釈で仕事をするので、会社に経営哲学に基づいたカルチャーができません。

そのように、経営哲学が一文だけですと、使い物にならないのです。

では、どうしたらいいのか。それは、その一文の意味を、社員全員が理解でき、かつ社員全員が活用できるように、いくつかのパーツに分けて定義することです。

経営哲学は、そのように一文ではなく、いくつかの項目に分解して、一つのパッケージとして運用することが大事です。そういったパッケージ化され、機能するように作成された経営哲学のことを、当社では「正しい経営理念」と呼んでいます。このパッケージについては、後ほどご説明いたします。

社長にとってしっくりくる用語を使用する

そして、ミッションやらパーパスやら、社是やら、「どの用語を使用するか?」ですが、当社の提案としては、社長にとってしっくりくる用語を使用することをおすすめしています。

経営理念に関する用語の意味を、ご自身で定義して、その意味に則した内容で、社長の経営哲学を明文化していったら良いと考えます。

ここで、どのように用語を定義していったら良いのか、自分で辞書を作成するようなものですので、用語を一つずつ定義していくことは難しいことかもしれませんし、時間のムダになることと思います。

そこで、当社で定義したものをベースにして、カスタマイズしてご利用いただけたらと思います。

経営哲学を進化させていく

経営哲学は追求していくとキリがありませんし、時間がかかりすぎます。また、社長の経営の悟りが高まることによって、経営哲学も広く深く進化していくものです。

そこで、今現在における社長の経営の悟りで、最高の経営哲学を作成することが大事です。そして、いったんそれでスタートし、社長の経営の悟りが進化したり、経営で何か問題があれば、内容を追加・変更していくようにすれば良いと思います。そのようにして、経営哲学を進化させると良いでしょう。

経営哲学の内容を追加・変更するときは、社員から「社長の朝令暮改には困ったものだ」と思われるかもしれません。しかしそれに屈せず、社員に頭を下げて、社員を説得してください。

しかし、経営哲学は1つの文章ではなく、全方位的で立体的に作成することが大事です。社長がまだ知らない部分で抜けがあって、会社運営に大きなダメージがあってはいけません。

そこで、経営理念コンサルタントの支援を受けて、経営哲学の作成を支援してもらったり、社長ご自身が作成された経営哲学をチェックしてもらったりしすると良いでしょう。

経営理念に関する用語の定義案

以下、経営理念に関する用語を、当社の解釈やご提案として定義したものをご紹介いたします。語源を調査したわけではございませんので、さまざま異論があるかもしれませんが、明確な定義は、専門の先生にお任せしたいと思います。

一般的な定義を試みるというよりは、立派な会社を創りたいと考える社長向けに、「納得のいく経営哲学の用語を使用し、独自で定義する」という意味でのご提案として、作成いたしました。

ここでご紹介する定義案を採用されても良いですし、社長独自の定義をされてもかまいません。

経営理念

「経営理念」という用語は、本当にさまざまな意味で用いられています。

先ほど、「1文だけでは使い物にならない」、「社員全員が理解でき、かつ社員全員が活用できるように、いくつかのパーツに分けて定義すること」と述べました。そこで当社では、「経営理念」とは次の4つの項目でパッケージ化されたものと定義しています。

  • 基本理念
  • 企業ビジョン(全社目標)
  • 経営指針
  • 行動指針

このように定義した理由は、さまざまな企業の経営理念を研究した結果から、この4種類があると経営理念が機能しやすいためです。

「経営理念が機能する」とは、社員全員が経営理念に基づいて仕事に取り組み、成果を上げ、企業ビジョンを実現していき、いずれは基本理念や全社目標が実現することです。

基本理念

基本理念とは、次の3つのことを、定性的な文章で表現されたものです。

  • わが社の存在目的
  • わが社でもっとも大切にする価値観
  • 具体的な仕事目標が引き出せること

存在目的とは、わが社がどのように世の中に貢献するかを明確化したものです。価値観とは、経営をしていくためのより所とする経営哲学です。

短い一言で表されたり、文章や箇条書きで表されたりすることもあります。例えば、「未来の子供たちに美しい地球を」といったものです。

一般的に「経営理念」と言われるものは、基本理念のことを指す場合が多いです。

ミッション

ミッションは、直訳すると使命です。ミッションの語源はラテン語で「送る」などを意味する「mittere」で、キリスト教での本来の意味は「伝道」だそうです。それが広義で「使命」と訳されるようになりました。

企業におけるミッションとは、企業が持つ使命のことです。つまり「会社が何をやり遂げるために存在しているのか?」という存在目的と、最終的なゴールの意味も含んでいます。ミッションステートメントと言われることもあります。

そういった意味では、「基本理念」と後ほどご紹介する「全社目標」とが合わさったものと定義できます。そこで、上でご説明した経営理念のパーツの一つである、基本理念を「ミッション」という名称で使用したり、全社目標を「ミッション」と称したりしても良いと思います。

当社のミッションを全社目標の意味で述べると、「世界のすべての企業や組織で理念経営を実現すること」といったものを掲げています。

パーパス

パーパスは、神や宇宙、自然摂理から与えられた存在意義、使命や機能のような意味だと思います。ミッションとほとんど同じ意味です。パーパスを実現させて得られる理想の姿がミッションです。

例えば、水であれば、人々を潤したり、汚れを流したりするパーパスがあります。自動車であれば、「人や荷物を運ぶこと」がパーパスです。

企業のパーパスは例えば、当社のようなコンサルティング会社であれば、「クライアント企業の理想を実現すること」や「経営課題を解決すること」、「社長の悩みを無くすこと」などがパーパスになります。

ミッションは、自ら悟ったり、神から与えられたりした使命のような意味になると思います。

「ミッションとパーパスのどちらが良いのか?」と思われた方も、いらっしゃることでしょう。私はどちらか、しっくりきた方を使われたら良いと考えます。

バリュー

バリューとは、会社が大切にしている価値観のことです。

バリューは、大きく2つの意味があります。「会社全体で大切にする一つの価値観」という意味では、基本理念と同じ意味になります。また、「経営判断をするときに大切な価値観」という意味では、経営指針と同じ意味になります。

バリューを使用する場合は、どちらの意味なのか明確に定義しておいた方が良いです。

ウェイ

ウェイの意味は、「らしさ」で、価値観を意味する用語です。バリューと意味は同じですが、どちらかと言えば、経営指針としての意味の方が強いのではないかと思います。

ウェイを用いると、若さや勢いを感じます。

ウェイは、企業名の後にウェイを付けます。例えば、「IngIngウェイ」という具合です。

ウェイの直訳は「道」です。日本語の「道」を用いると、何か専門職としての究極の業を追求するような意味になります。当社を例にとれば、「IngIngウェイ」と「IngIng道」では、意味が異なるように聞こえるのではないでしょうか。

専門職を追従するような企業であれば、「道」を用いることで印象に残りやすいし、面白味があって良いと思います。

経営哲学を書籍で浸透

ウェイで思い出すことが、ヴァージン・グループの創設者であるリチャード・ブランソン(1950~)の著書「ヴァージン・ウェイ」です。

リチャード・ブランソンの「常識にとらわれない経営スタイル」という新しさと、「顧客を大切にし、社長が全責任を背負う」という古きよきものを両立された意味に加え、社長の決意の強さを表しています。

リチャード・ブランソンの会社のように、世界企業になってしまって、世界中に従業員がいる場合は、経営理念が末端の企業や提携先の企業まで浸透しにくいと思います。そこで、会社の経営哲学を書籍でまとめて、ストーリーにして社内外に発信することは、経営理念の浸透方法として興味深い方法だと思います。

スピリット

スピリットは、直訳すると「精神」です。ウェイと同じ意味と考えて良いと思います。

スピリットは、ウェイと比べたら体育会系のような企業イメージがあります。いばらの道をも突き進んでいき、後世の人のために整地していくような感じがします。

未来ビジョン

未来ビジョンとは、会社が事業活動を通じて未来に実現させたいことを、具体的にイメージできるもののことです。絵で表したり、文章で表したりします。企業ビジョンや経営ビジョンと言われたり、単に「ビジョン」と言われたりする場合もあります。

会社の未来ビジョンで描くべき内容

会社の未来ビジョンとして描かれる内容は、次のようなものがあります。

  • 会社の規模
  • 事業内容
  • 事業活動を通じて実現する社会貢献
  • 社員の処遇

会社の規模は、「地域ナンバー1」や「世界企業を目指す」といった会社の規模です。事業内容としては、現業がどのように進化するのか。将来、参入したい事業は何なのかといった具合です。

企業は、事業活動を通じて社会貢献することで、存続が許されています。その社会貢献をしていった結果、どのような未来社会を実現したいのかを描きます。それが、社員にとっての大義名分になります。

また、それらが実現したときに、社員の処遇がどうなのかも、イメージできるようにした方が良いです。会社が成長したら、将来の生活が豊かになるのであれば、社員もチャレンジのし甲斐が出てくるものです。

「4つの中で、どれを決めたら良いのか?」ですが、この4つすべて決めると良いと思います。

ビジョンの時系列

未来と言っても、時系列があり、短期的なビジョンのことを「短期ビジョン」、長期的なビジョンのことを「長期ビジョン」、最終的に実現させたいことを「全社目標」と言ったりします。

このように時系列がさまざまですので、単に「未来ビジョンを作成した」と言う場合には、いつの未来ビジョンなのかを明確にする必要があります。

ビジョン達成の時期が10年後であれば、「10年ビジョン」という名称を使うこともあります。10年後は長期ビジョンのように思われるかもしれませんが、大手企業の中には10年ビジョンを「中期経営計画」と位置付けている企業もあります。

「どれくらい先のビジョンが長期ビジョンなのか?」と疑問に思われた方もいらっしゃることでしょう。社長が考える最長の未来ビジョンのことを、「長期ビジョン」と言います。中期ビジョンは、その中間に位置するビジョンです。

いつの未来ビジョンを描けば良いのか?

できるならば、会社の最終ゴールとなる長期ビジョンを描いてください。それが10年先であろうが、30年先であろうが、社長がイメージできる最長の未来ビジョンを作成します。

その未来ビジョンの時系列に応じて、途中段階の未来ビジョンを、逆算で作成してもかまいません。

長期ビジョンが30年先のことであれば、中期ビジョンは10年先が妥当です。また、長期ビジョンが10年先のことであれば、中期ビジョンは5年先が妥当です。長期ビジョンが5年先であれば、中期ビジョンは必要ないと思います。

もし、10年先や30年先などといった長期ビジョンがイメージできない場合は、3年先ぐらいの未来ビジョンでかまいません。それをイメージして事業経営に取り組んでいくことで、社長の経営の悟りが高まり、少しずつ未来ビジョンをイメージすることにも慣れていきます。もっと先の未来ビジョンをイメージできるようになってから、長期ビジョンを作成しても良いと思います。

社長の経営の悟りがさらに高まってくると、以前に作成した経営哲学が「しっくりこない」と感じるようにんあるときがあります。そのときは、以前に作成した経営哲学がしっくりこないようであれば、作り直しのときです。

企業ビジョン

企業ビジョンとは、会社をあげて実現したい、社会貢献を含めた定量的な目標の未来ビジョンのことです。基本理念やミッションが実現した姿を段階的に描いたものです。当社では、最終的な企業ビジョンを「全社目標」と言っています。

上記の「未来ビジョン」と同じ意味ですが、「企業における未来ビジョンである」と明確にしたいので、名称を「企業ビジョン」と言っています。

ビジョンは「見えること」ですから、明確に描かれた目標でなければなりません。例えば、「地球から公害をなくす」というものです。この例では、地球全体や公害ゼロという、壮大で定量的な目標になっており、全社目標と言えるものです。

経営ビジョン

経営ビジョンとは、企業ビジョンと同じ意味です。

あえて経営ビジョンと企業ビジョンを、2つに分けるのであれば、経営ビジョンは「どのような事業活動を行っていくのか」、企業ビジョンは「会社をあげてどのような未来社会を実現したいのか」を描くと良いでしょう。

事業ビジョン

事業ビジョンとは、会社ではなく会社が行っている事業活動の未来ビジョンです。当社では、企業ビジョンと別けて、事業ビジョンをそのように定義しています。

会社が1つの事業のみを行っている場合は、企業ビジョンと事業ビジョンが同じになる場合もあります。

事業ビジョンについての詳細は、「中小企業における事業ビジョンの作り方」をご覧ください。

全社目標

全社目標とは、基本理念やミッションが実現した姿を描いたもので、全社を挙げて取り組んで実現させたいという、社長の強い目標です。段階的な目標である企業ビジョンの、最終段階が実現した姿とも言えます。

全社目標は、未来ビジョンや企業ビジョンと似た言葉ですが、最終ゴールという意味では、それらとは異なります。何十年先かわからないぐらい未来、もしくは次の世界の人たちに実現してもらいたいぐらい未来のことを、明確にしても良いと思います。

全社目標が崇高なもので、多くの消費者に受け入れられた場合、例え一文無しであったとしても、大企業を創ることができた例もあります。

電力王、松永安左エ門が目指したこと

大戦前後を生きた人であれば有名な大経営者で電力王の松永安左エ門という人物がいました。彼は、戦前に日本最大の電力会社の社長をしていました。彼の掲げた全社目標は、「安価で安定した電力を日本中に供給したい。あらゆるものを電化して、日本の工業や家庭を近代化したい。」といったものでした。

松永安左エ門は、当時、数百社あった電力会社を吸収合併していき、経営と送配電を徹底合理化し、安価で安定した電力を提供しました。また、当時としては先進的であった動力電源の市場開拓・供給し、多くの工場が電化して、工場の近代化に貢献しました。

彼は、他人の支援を受けながら一文無しで起業し、日本最大の電力会社になりました。会社が電力を供給するエリア規模としては、グループ会社も合わせると、九州電力、関西電力、中部電力、東京電力を合わせたぐらいのエリアが商圏という、凄まじいものでした。

日本の産業への貢献は、大東亜戦争が終わった後も続きます。戦後ボロボロだった日本の産業の発展のために、戦後に政府やGHQと交渉し、資本主義の精神と電力事業の実情に基づいた電力事業の再建を、四面楚歌をもろともせずそれを押し通し、見事に成し遂げます。

このエピソードを思い出す度に、全社目標を本気で取り組んだら「何でも実現できる」と思え、情熱と勇気をいただけます。

経営指針

経営指針は、基本理念や企業ビジョンを達成するために、経営幹部が採るべき判断基準のことです。基本方針と言われることもあります。

基本理念には、わが社が大切にする価値観が含まれていますが、それを具体的に明文化したものです。箇条書きで書かれることが多いです。

経営指針の詳細は、「経営指針とは?経営理念との関係や浸透方法」をご覧ください。

経営方針

経営方針とは、経営計画を実現するための具体的な方針です。

企業によっては、「〇〇年度の会社の方針」と表現する場合もあります。その場合、「2021年度経営方針」などと、年度を入れることが多いです。経営理念の経営方針と区別するために、年度の経営方針のことを「戦略方針」と言ってもよいと思います。

経営方針については、コラム「経営方針とは?経営方針の種類と内容」もご参照ください。

綱領

綱領(こうりょう)とは、経営指針と同じ意味で、箇条書きにされたものが多いです。

「綱」の意味は、基本的な決まりのこと。「領」の意味は、自分のものにしたという意味です。これを2つ合わせた用語ですので、社長が会社を経営をしてきた中でつかんだ経営哲学として、後世の経営者が会社の経営判断をするための拠り所とすべきものです。

経営哲学の名称に「綱領」を使用している企業は、とても少ないのですが、皆様のご存じの有名企業にて綱領を用いられています。それは、豊田綱領です。

会社の経営哲学の中に「綱領」と書かれていると、初代社長が死にもの狂いで経営してきた中で、必死につかんだ経営の悟りのように思いますし、先代社長の遺訓のような感じもします。その言葉に、尊厳を感じます。

歴史の古い会社で、2代目以降の社長が「経営哲学をまとめたい」と考えたときに、創業社長以来、繰り返し繰り返し述べて伝えられてきた経営哲学の言葉をまとめたとしたら、「綱領」を使われても良いと思います。

また、すでに綱領の用語が使用されている経営哲学をお持ちの会社で、「経営哲学を時代に合わせて変更したい」とお考えであれば、綱領を残しつつ、別の経営哲学を付加して、時代に合うように補完しても良いと思います。

行動指針

行動指針とは、社長をはじめ会社に属する全従業員が取るべき行動のことです。社訓とも言われます。行動指針に従って行動すれば、正しい考え方ができ、仕事で成果をあげることができ、しいては、出世をして人生を豊かにできます。

つまり、行動指針は経営理念の構成要素の一つで、基本理念や企業ビジョンを実現のための方法が書かれたものです。

行動指針は、全社で共通の1つを作成しても良いですし、それに併せて営業部や開発部などの他の部署とは関連しない個別の行動指針を追加しても良いと思います。

当社のようなコンサルティング会社であれば、社員向けの行動指針とコンサルタント向けの行動指針の2つを作成しても良いと思います。

行動指針については、コラム「行動指針とは?企業における行動指針の意味と内容」もご参照ください。

社是

社是とは、会社が是とするもの、会社が正しいとする考え方、つまり会社が大切にしている価値観を表したものです。別の表現では「基本理念」としている場合が多くありますが、当社では「基本理念と経営指針が合わさったもの」と定義しています。

社是という用語は、明治時代から1960年代に生まれた企業でよく使用されています。社是単独ではなく、社訓や他の用語と併せて、2つ以上のセットで使用されることが多いです。

社訓

社訓とは「会社のおしえ」、人を導く教えのことですから、全社員に要望する行動指針と同じ意味です。

社訓を使用する企業は、社是と同様に明治時代から1960年代までの企業で、よく使用されています。

社訓は、基本理念や経営指針、社是などと併せて作成し、企業ビジョンを入れることで、上記の「経営理念」と同じ意味になります。社是と社訓を練り上げて、従業員に浸透させることによって、従業員の仕事の質が高まります。

経営哲学に関する用語は、他にもありますが、主だったものは定義できたと思います。

経営哲学が機能するための組み合わせ提案

ご紹介してきた経営哲学は、一つの用語を使用すれば良いのではなく、いくつかの用語を組み合わせることで、機能する「正しい経営理念」になることをご理解いただけたことと思います。

どのような組み合わせのものを使用したら良いのか、いくつかご提案いたします。

基本理念+企業ビジョン(全社目標)+経営指針+行動指針

当社でスタンダードとしている組み合わせです。それぞれの言葉の定義は、上記したものと同じです。この4種類をパッケージとして、「経営理念」と称しています。

これら4種類に含まれていないものは、社内ルールとして制定すると良いでしょう。

ミッション+未来ビジョン+経営指針+行動指針

この組み合わせは、上の基本理念をミッションに、企業ビジョンを未来ビジョンに、名称を変更しただけです。ミッションや未来ビジョンという名称を用いることで、近代的な企業の経営哲学のように見えつつ、全方位的に落ち度のない経営哲学になります。

経営指針を、全社に向けた「●●●ウェイ」に変更しても良いと思います。●●●には、会社名やブランド名などが入ります。ウェイを利用する場合は、経営者向けの行動指針を別途作成したら、全方位的な経営哲学になります。

社是+ミッション+行動指針

創業が古く、すでに「社是」という名称の経営哲学が存在している企業にて、経営理念を作り直したいと考えている企業におすすめの組み合わせです。「ミッション」を追加することで、新しさを感じます。

また、会社によっては、社是だけしか制定されていないところもあります。社是だけでは、社員が何を基準に仕事をしたら良いか不明確なので、「行動指針」を追加しました。

社是の内容が経営指針のような内容であれば、この組み合わせに「基本理念」を意味するものを追加すれば良いでしょう。

以上、自社の経営哲学を作成しようとしたときに、パーパスやバリュー、ミッション、ウェイなど、いったい何を作成したらいいのか迷われた経営者に向けて、経営哲学の内容をご提案いたしました。経営哲学の作成方法の参考になったことと思います。

経営哲学の作成で悩まれたときに、「専門のコンサルタントに相談したい」と思われた場合は、ぜひ当社にご相談ください。スポットでのご相談にも対応いたします。

これから会社の経営哲学を作成したり、形骸化した経営哲学を見直したりしたい経営者のご参考になれば幸いです。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

プロフィール詳細


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