事業ビジョンとは?
事業ビジョンとは、事業における未来ビジョンで、「事業を通じて、どのようなことを実現したいのか」をイメージできるようにしたものです。
現在ある商品をどのように改善していきたいのか、商品を改善したときにどのような顧客に購入してもらいたいのか、顧客にどのような価値を提供するのかといったことも含まれると理想的な事業ビジョンです。
企業ビジョンと事業ビジョンの違い
事業ビジョンと同じような意味のビジョンとして、企業ビジョンがあります。当社では、企業ビジョンとは、会社をどのようにしたいのかをイメージできるようにしたものと定義しています。
企業にはたいてい複数の事業があります。それらの事業ごとに作られるビジョンが事業ビジョンで、企業全体のビジョンは企業ビジョンです。
企業ビジョンの表現方法は、企業によって異なります。絵に表したものもあれば、箇条書きされたものもあります。絵で表したものを、当社では未来創造マップと呼んでいます。
コンサルタントによっては、企業ビジョンと事業ビジョンを同じ意味で捉えている人がいます。当社では、事業ビジョンと企業ビジョンを使い分けています。経営理念用語は、世間一般的には明確に定義されていないので、私は同じ意味で捉えても、別の意味で定義しても、どちらでも良いと思います。
事業ビジョンと企業ビジョンの使い分け
中小企業の場合は、1つの事業であることが多いので、事業ビジョンと企業ビジョンが同じ意味で使用されている場合が多いです。一つの事業しか行っていない企業であれば、事業ビジョンと企業ビジョンは同じ内容のものになる場合もあります。
どちらも意味はともかく、「会社が何を目指しているのか」といったビジョンを明確にすると、心ある従業員は仕事がしやすくなると思います。
事業規模で異なる事業ビジョンの作り方
事業ビジョンの作り方は、中小企業と大企業とで大きく異なることがあります。それは、従業員が納得するかどうかです。大企業であれば、優秀な社員がたくさんいますので、彼らを納得してもらうためには、事業ビジョンを作るときに従業員の参画が大切とされています。
ところが、中小企業では、もっとも優勝な人材は社長本人です。中小企業では、事業ビジョンは社長自らの責任で作る必要があります。
それでは、次の目次に沿って、中小企業における事業ビジョンの作り方をご説明いたします。
中小企業のビジョンの作り方は大きく分けて2種類
中小企業における事業ビジョンの作り方は、コンサルタントによって異なります。当社が中小企業をコンサルティング支援する中で事業ビジョンを作るときは、次の2種類の方法のどちらかを選びます。
- 社長の志や経営理念から作る方法
- 顧客を明確にして作る方法
社長の志や経営理念から作る方法
社長の志や経営理念は、事業ビジョンよりも上位概念です。社長の志や経営理念を明確にし、そこから導き出される未来の姿として、事業ビジョンを作成します。そのようにして導き出して作られる事業ビジョンが、本物の事業ビジョンであると言えます。
従業員数が10名を超えてくると正しい経営理念がなければ、会社が大きく成長することはありません。経営理念を明確にし、それに基づいた商品やサービスを開発し、今いる従業員では対応しきれないほど仕事が入るようになってきたら、募集をかけます。
すると、経営理念に共感するメンバーが集まってくるようになるので、会社は成長していきます。
経営理念について詳しく知りたい方は、機能する正しい経営理念とは?経営理念の構成要素をご覧ください。
顧客を明確にして作る方法
会社が小さい場合には、社長が志や経営理念を深く考えていない場合もあります。これから起業したい人や、従業員数が数名程度の会社の場合、志は持っておいてほしいものですが、経営理念がなくても経営はできます。
その場合には、顧客を明確にして、疑似的な事業ビジョンを作成します。経営理念が明確になるまでの暫定的なものになります。疑似的ですが、顧客を明確にすることから始めるため、大きく外すものではありませんのでご安心ください。
作り方は次の手順で考えていきます。
- 顧客は誰か?
- 顧客が求める価値は何か?
- 我々の成果は何か?
- 事業ビジョンは何か?
この方法は、P・F・ドラッカーの「経営者に贈る5つの質問」を変更したものです。この方法ですと、志や経営理念を深く考えていなかったとしても、事業ビジョンを比較的簡単に作ることができます。
以下に、この方法で事業ビジョンを作る方法を、流れに沿って解説いたします。
顧客は誰か?
最初に顧客の設定です。商品やサービスを販売しようとしている、もしくは販売している取引先のことです。
中小企業を対象とした事業ビジョンですので、顧客は絞り込めば絞り込むほど良いです。私のやり方では、一人にまで絞り込むことを考えます。顧客がイメージできない場合は、過去に喜んでいただいた顧客を設定しても良いです。
顧客はどこに住んでいる人でしょうか。年齢層はどれぐらいでしょうか。働いている人でしょうか。それとも、学生でしょうか。
顧客が求める価値は何か?
次に、顧客が絞り込めたら、その顧客はどのような価値を求めているのかを考えます。顧客が商品を選ぶ要点でもあります。
独り暮らしを始めたときに、真っ先に購入するものの一つに洗濯機があります。洗濯機を購入する理由は、時間の短縮です。全自動できれいに洗ってくれる洗濯機であることはもちろんのこと、節水してくれたり、乾燥までしてくれたりと、さまざまな価値を求めて、予算と相談しながら購入します。洗濯板を購入する人はまずいません。
冷凍食品会社であれば、顧客がご家庭であれば「お弁当の手間を減らしつつ、栄養価の高いものをもう1品追加したい」といった具合です。
我々の成果は何か?
次に我々の成果ですが、「成果は利益を得ること」と考えがちですが、ここでの成果はそうではありません。上記の顧客や顧客が求める価値が明確になったら、その欲求を満たす商品やサービスのことです。
冷凍食品会社の例であれば、「凍ったまま入れられるホウレンソウのおひたしや、きんぴらごぼうなど」が成果になります。
ここで、市場の規模まで考えておくと、事業ビジョンが考えやすくなります。
事業ビジョンは何か?
最後に事業ビジョンです。事業ビジョンは、事業における未来ビジョンです。その事業にどのような未来を設定するかです。イメージできる事業規模によって異なります。
そして、その事業がイメージできる範囲で最大限まで広がったら、何が実現されるのかを考えると良いでしょう。お弁当の例であれば、「日本全国のお弁当に栄養価の高いもう1品を追加する」というものもあることでしょう。すると、そこから実現される社会はどのようなものでしょうか。
「親子の絆」かもしれませんし、「家族の健康」かもしれません。このように、事業ビジョンが企業ビジョンにまで広がることもあります。
いかがだったでしょうか。思ったよりも簡単に事業ビジョンを作ることができそうに思われたことでしょう。
簡単に作ることができるので、「この事業ビジョンで本当に良いのだろうか?」と思われた場合には、顧客を明確にすることから再び取り組んでみてください。
事業ビジョンができたら次に取り組むこと
事業ビジョンができたら、それを実現するための戦略・戦術などを盛り込んだ、事業計画を立てていきます。
事業計画ができたら行動です。行動したらその結果に基づいて、PDCAサイクルで戦術を改善します。場合によっては、戦略の見直しを考えることもあります。
最後に当社のサービスのPRで閉めたいと思います。
もし、事業ビジョンをお一人で考えることが困難であれば、当社のサービスをご利用ください。起業を目指している人から従業員数10名以下の社長であれば「ビジネスコーチング」、組織化されている企業様であれば経営理念コンサルティングの導入をご検討いただけたら幸いです。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。