今回のコラムは、少し違ったテーマで述べたいと思います。タイトルに「病気」とありますが、身体の病気ではなく、経営に関する考え違いなどです。
当社は、今までたくさんの企業と、コンサルティング支援や実務支援で関わってきました。
多くのクライアント企業は、会社を傾かせてしまって、「なんとかしてほしい」ということで、当社の支援をご依頼されました。その中には、当社のアドバイスを受け入れられなくて、傾いていった会社もあり、当社の力不足を実感することもありました。
このコラムでは、さまざまな会社をコンサルティング支援してきた中で感じた、不健全な経営におちいりやすい経営者の考えや発想、行動などをご理解いただきたく、中小企業の社長や経営幹部に起こりやすい「経営の病気(社長病)」として、いくつかご紹介したいと思います。
ここでご紹介する内容は、もちろん私自身にも当てはまるもの、もしくは当てはまる可能性があるものですので、偉そうに言うつもりはありません。生意気に見えてしまったら申し訳ございません。先に謝っておきます。
該当するものがあれば、会社が赤字になって経営が傾いたり、場合によっては倒産しかけたりする場合もあります。心当たりのある方は、末期症状が出る前に、経営方法を健全な方法に変える努力をしていただけたらと思います。
コスト病
最初は、言わずと知れたコスト病です。中小企業の社長みならず、大企業の社長でも、この病気にかかる方は多いことでしょう。
社長がいつも、「コスト~、コスト~」と叫び続けます。社内を回っては、社員の行動を常に見張り続ける人もいて、社員は仕事がやりにくくなります。「コスト~」以外にも、いつも「ノウリツ~、ノウリツ~」や「セイサンセイ~、セイサンセイ~」と連呼する社長がいたら、コスト病に罹っている可能性が高いです。
末期症状としては、販売のための費用までコストと勘違いし、それを削ってしまった結果、売上高を大幅にダウンすることがあります。赤字に転落するぐらいならまだ回復できるのですが、ライバル企業に追い越されてしまって、回復が難しくなるケースもあります。
コスト病で売上ダウン
コスト病に罹ってしまった経営者は、コストを下げることばかり考えがちになり、売上がダウンすることが多いです。
コスト削減によって商品の品質やサービス品質が下がり、売上がダウンします。そのダウンした利益を取り戻すかのように、コスト病が悪化していきます。
また、広告宣伝費の削減を行って、売上がダウンすることもあります。いろいろな方面に広告宣伝費を使っている場合は、どの広告宣伝が非効率になっているのか検討し、非効率な物を削減して、その費用を効果的なところに投入した方がよいです。
コスト病で新規開発失敗
コスト病に罹っている社長は、新規開発でもコスト意識を持ち込んでしまいます。
もちろん、新規開発といえども、予算は青天井ではありません。ある程度のコスト意識は大事です。ところが、最初にリリースする商品が、コスト病の中で開発されたために、競合他社よりも性能が劣っていたり、顧客が求める価値に達していなかったりする場合があるのです。
新規開発は、もちろん財務状況を確認しながら進めていく必要がありますが、その範囲を超えているような開発は、自社のキャパシティを超えた開発だと言えます。その目算も、先見性の一つです。
1960年代、本田技研工業がマン島TTレースやF1に出場していたころ、世界的にヒットしていたスーパーカブの利益をすべて研究開発につぎ込み、またそれを超えるぐらいの費用をかけて、研究開発を行っていました。
当時の本田技研工業の場合は「ヘンタイ」と言われただけあって極端ですが、研究開発はコストだけでなく、未来への投資と捉えるべきです。研究費用の掛け方にはバランスがあり、コストだけを考えるべきではありません。
コスト病の原因
コスト病の原因は、社長に投資と浪費の区別がついていないことが主な原因です。社員が使う経費の多くをコストと感じてしまうばかりか、外注費もコストとみなされるようになります。
「コスト削減が黒字化の最有力な方法だ」と勘違いしたときに、初期症状を発症します。
また、経営者がコスト病にかかりやすいのは、利益率の低い商売をしている企業です。
例えば、経常利益率が2.5%の会社があったとして、この企業が25万円のコスト削減に成功したら、その削減額を逆算すると1,000万円の売上高を得たことに匹敵します。そのとき、「外部活動で1,000万円の仕事を得るよりも、内部活動で25万円をコスト削減した方が楽だ」と考えてしまったときに、コスト病が重症化していくことになります。
コストには、費用対効果があります。費用対効果をしっかり検討してから、効率の悪いコストを削っていくようにするとよいでしょう。
コストを下げることの限界
最初は、コスト削減によって経常利益がプラスになるようになっても、コスト削減にもコストがかかることを知らないと、コスト病によって、余計にコストがかかってしまうことがあります。
コスト削減の目標を立てることは大事です。その目標達成に向けて、全社で取り組んでいくべきです。
コストを下げることが、いずれ限界に達するため、「限界を感じたら相談してもらいたい」と社員に伝えておくべきです。
社員は、各々の事情でコスト削減に取り組みます。その取り組みは実務の仕事レベルを下げない程度に行ないます。また、社員が行うコスト削減の方法は、経営者から見たらまだまだムダが発生していることもあります。
経営者は、監視しすぎないこと。また、コスト削減の指示を出したまま放置しないでおくことです。後にご紹介する、小事が気になる病や、部下放置病におちいらないようにしてください。
新商品開発中のコスト削減に注意
新商品開発をしているときに、経営者がコスト病にかかっていたら、商品開発に失敗しやすいです。なぜなら、最高品質の新商品ができないからです。
新商品開発は、コストを度外視というわけにはいきませんが、ある程度費用をかけて、最高品質のものを創ります。新商品が売れるようであれば、品質をそのままにコスト削減を考えていくべきです。
流行り病
中小企業の経営者で、やたらと流行に敏感な人がいます。流行に敏感なことはよいと思います。
お客様の社長とカラオケに行ったときに、AKBの曲を歌い出したときにはびっくりしました。このように、社長は流行に敏感であるべきだと思います。世の中の変化を読み取って、自社のイノベーションの方法やタイミングをつかむのです。
ところが、この流行を追いかけることが行き過ぎた経営者の中に、会社の成長を止めてしまったり、経営危機にまで発展してしまったりする場合があります。
よく飛びつくのが流行りもの
経営者がよく飛びつく流行りものをご紹介いたします。
流行りのPR方法
経営が傾くほど重症化はしませんが、流行りのPR方法にすぐに飛びつく場合は、そのPRがムダなることが多いです。
「Xが流行っているらしい。我社もXだ!」とか「動画が流行っているらしい。動画制作だ!」といった具合です。
それらを任された社員は大変です。そういったものは、1回始めたら、やり続けないといけないことを知っているからです。
流行り病に罹ってしまった経営者からすると、「手軽に始められると聞いた」という具合ですが、それはやり方や効果を知っている人がいう言葉です。それを鵜呑みにしてしまい、任された社員が被害を受けます。
次から次へと、「これを始めたい」という具合に、XやらFacebookやら初めていくのですが、どれも放置されていくことになります。
流行りの投資話
広告宣伝であればまだよいのですが、これが投資話であれば大変なことになる場合があります。
「ラクして儲けられるものは無い」と知りつつも、話に乗ってしまうのです。そして、「流行が永遠に続くもの」と勘違いしてしまいます。
ある程度大きな会社の社長の場合、創業社長であればそういった投資話に飛びつかないのですが、二代目社長になったときが危険です。新しい事業を始めて、それが飽きてしまったら前の流行はそっちのけになり、新しい投資話に飛びついて、次から次へと新しいことを始めていきます。
すべての投資話が成功していたら、リスク分散になってよいと思います。しかし、そういったことはまずありません。新しい投資話の経営を社員に任せていったら、田分け(たわけ)になり、力が分散してどれもうまくいかなくなります。このことがボトルネックとなって、経営を圧迫していくことにつながり、経営者は戯け(たわけ)となります。
分けた田は、一つずつ成長させていって、充分に成長したら次の田分けを行っていくことが、正しい方法です。
流行りの経営手法
流行りの経営手法についても同様です。すぐに飛びついてしまって、前の経営手法は二の次です。
例えば、最近ではパーパス経営というものが流行していました。その前は、ミッション経営というものが流行していました。「その前は、その前は・・・」の連続です。
パーパスは、会社の存在意義です。会社の存在意義を考え続けた結果、導き出される会社の使命がミッションです。
このように考えると、パーパス経営もミッション経営も同じようなことなのです。そういったものを理念経営といいますが、理念経営は日本国内でも1950年代から多くの企業が導入していきましたし、また、明治時代の大企業にもミッションやパーパスに該当するような理念をかかげていた企業は、たくさん存在していました。
ITなどでもそうです。最近ではAIが出てきていますが、その前まではDXがあり、その前はビッグデータとか言われていました。次から次へと新しい言葉を創っていき、それを流行らそうとしている仕掛け人がいます。
流行に敏感になりすぎて、余計なお金を使ってしまわないようにしてください。そのためには、経営の目的として、パーパスやミッションをしっかり持つようにしてください。
流行り病が出てくるタイミング
流行り病の原因は、経営者の知り合いの企業で、たまたま儲かったという話を聞いたときや、投資セミナーに参加したとき、新刊書を読んだときです。
特に知り合いの経営者で成功した人を見たときに、「あの人にもできるのなら、当社もできるはずだ」とか「自分も同じようになりたい」と背伸びをしてしまいます。
簡単に集客ができる方法などありませんし、手軽に儲かる商売など無いことは世の常です。成功しているところは、何か工夫をしていて、その要因は教えてくれないものです。
当社がWeb集客をコンサルティング支援して、数年で年商が2倍ぐらいに伸びたクライアント企業様の事例をご紹介いたします。その会社の社長は、なぜ年商が2倍ぐらいに伸びたのか、知り合いの経営者に理由を尋ねられたときに、「ホームページを制作したから」と答えたそうです。
確かにホームページを制作したことは事実ですが、入念なWebマーケティングや継続的な施策などについては、まったく述べませんでした。
別の工作機メーカーのクライアント企業様でも同様に、業界の会合で売上アップの理由を尋ねられたときに、「さぁ、なぜか知りませんが、売上が伸びたのです」と答えたそうです。
このお二人は、私がお教えしたことを、よく守ってくださっていて安心です。
流行りの投資話に飛びつきやすい経営者の特徴
自社の事業に熱意を感じていない経営者は、流行りの投資話に飛びつきやすいと思います。
今の事業に熱意を感じていないので、「何か熱意が注げるものを探したい」とお考えの場合もありますが、「熱意が注げるものは儲かりそうな事業だ」と勘違いしてしまった場合です。
もちろん、新しい事業を行うことを否定しているわけではありません。会社が生き延びるための道を探すために、試行錯誤をしている経営者もいます。
しかし、熱意のない経営者の場合、人材が集まらなかったり、継続しなかったり、自ら陣頭指揮を執らなかったりと、新しいことが失敗する最大の原因を作ってしまいます。
儲かりそうな事業に反応することはよいのですが、そういった事業は同じように考えている人も多いので、競合他社が多くなります。競合他社に勝つためにも、単に「儲かりそうだから」という理由ではなく、事業を行うこと自体に熱意を感じてもらいたいものです。
新規事業のお話しがあった場合は、しっかりと分析をしてから取り入れるかどうかを検討すべきですし、「自分はこの事業をすることに、使命感を感じているのか?」と問うてください。
もっというならば、今行っている事業に使命感を感じてもらいたいものです。
予算使っちゃう病
「予算使っちゃう病」は、いつも予算を使い切ってしまうことを考えてしまうという病気です。特に期末になってくると症状が悪化してきます。予算を使い切ってしまうが故に、会社の内部留保はゼロに近い状態です。
流行り病と合併症を引き起こしてしまうこともあります。
決められた範囲で予算を使い切ってしまうことはよくありますが、利益を予算と勘違いして全部使い切ってしまうこともあります。すると、来期に投資ができなくなったり、ちょっとした景気変動で赤字に転落しやすかったりします。
お金を使い切ってしまったら内部留保がありませんので、お金が必要となったときに、すぐに借金することになります。何か投資をする場合でも、該当する補助金が出てくるのを待っていることが多いので、投資のタイミングが遅くなってしまいます。
そのようなことで、会社はいつまで経っても大きくなりません。
なぜ予算を使い切ってしまうのか?
予算を使い切ってしまう社長は、おおよそ次の3種類の性質に分類されると思います。
- 税金を払いたくない
- 大企業の発想で経営をする
- 未来の売上予想に甘さがある
1番目の「税金を払いたくない」という理由は、最も人数が多いことでしょう。説明するまでもありません。
2つ目は、大企業にお勤めだった人が起業した場合に多いです。大企業では、あらゆる予算が組まれています。その予算を、多くの人がなぜか「使い切らないといけない」と思い込んでいる人が多いのです。
その発想を持ったまま起業した場合、年度末近くになったときに利益が出そうになったら、その利益を帳消しにするかのように、予算として使ってしまうのです。
必要なものを購入する場合でしたら、問題ありませんし、必要なものですので購入すべきです。しかし、「利益が出そうだ」ということで、予算を使い切るかのように余計なものを購入することは、事業経営としては非効率だと言えます。
3つ目の未来の売上予想は、「どれぐらいの売上があるかの見込みのこと」ですので、その読みに甘さがあった場合は、お金を使ってしまいやすくなります。
いわゆる、「捕らぬ狸の皮算用」ですが、「これだけ売上があるのだから、これぐらい使っても大丈夫だろう」という具合です。
税金を払いたくない企業の特徴
会社の規模を今のまま維持して、「会社を成長させたくない」と考えている経営者と、ある程度でよいのですが財務の知識がない経営者が、予算を使ってしまいやすいです。
個人レベルの会社で、「これ以上会社を成長させたくない」と考えている経営者であれば、固定客がいて売上の見込みがある場合は、予算を使い切ってしまっても、「生活ができなくなる」という深刻な状態にはなりにくいと思います。
しかし、会社を大きくしたいと考えている経営者で、いつも予算を使い切っている場合は、未来への投資ができなくなります。そういった経営者は、資本主義の意味や積小為大の大事さを知る必要があります。
たまに当たることもある
税金の金額を低く抑えるために、いつも予算を使い切っている企業で、当社のWeb集客コンサルティングをご依頼いただいた経営者がいらっしゃいました。
年度末の利益が見えてきたときに、何百万円か利益が出そうになり、予算消化のつもりで当社にホームページ制作をご依頼されました。その結果、今まで停滞していた新規顧客獲得ができるようになり、利益がもっと出るようになり、新規事業にまで取り組むことができるようになった会社もあります。
そのように、予算使っちゃう病が功を奏する場合もありますが、たいていは予算を浪費して終わります。
たまに当たることを、経営者が「自分の見立てた人物は間違いない」と思い込んで、被害を受ける人もいます。なお、それを経験することは、経営を勉強していく中での通過点で、誰しも経験することです。経営者に、本当に人物を見抜く力があれば、社員は全員優秀なはずです。
ともあれ、お金を使い切ることを防ぐためには、ダム経営を意識し、少しでも利益を出すことを旨とすることです。
内部留保を貯める方法
では、内部留保を貯めようと思ったら、どうしたらよいのでしょうか? それは、内部留保を予算として計画したらよいのです。
内部留保が貯められたら、経営が楽になり、経営者はとても気が楽になります。突発的にお金が必要なときに、銀行や投資家と交渉しなくて済むからです。経営が楽になる金額を決めて、「内部留保をいくら貯めたい」という予算目標を立てて、そこから逆算して年次の経営計画を立てることをおすすめします。
目標となる内部留保の金額が1年では貯められない場合で、時間の余裕のある会社は、3年から5年の長期経営計画を立てるとよいでしょう。
創っても売れない病
創っても売れない病とは、社長がアイデアマンで、いろいろな商品を開発するのですが、それがまったく売れないか、売れたとしても趣味のレベルにとどまるような病気です。
売れると思っていて開発したものが、なかなか売れなくて困ることのですが、発作的に重症化することがあります。重症化した症例としては、1つも売れていない状態で大量仕入れをし、大きな借金を抱えてしまうことです。
「世の中に確実に売れるものはない」と認識する
経営コンサルタントに「これは売れるのに違いない」と言われたとしても、ご自身が納得できなければ、いきなり大量仕入れをしたり、設備を構築してしまったりしないようにしてください。
また、実績があり確実に売れると判っているものであったとしても、今までと異なる事業に手を出してしまい、ノウハウがなくて赤字が続いてしまうこともあります。これは、流行り病との合併症として出ることもあります。
また、条件が合ったとしても、他の企業も同じように参入しようとしている場合があります。競合他社との攻防も想定しておくことが大事です。
慢心と勉強不足が原因
「創ったものが必ず売れる」という発想は、慢心から生じます。また、マーケティング調査を自分自身で行わず、他人の都合の良い調査結果のみを信じて行動する人にも出てきます。
そういった原因から、販売においては、テスト販売をしないでいきなりお店を構えてしまう人がいたり、大量仕入れをする人がいたりします。
要注意が、会社の創業者が技術系出身のアイデアマンで、過去に華々しい実績を出した場合です。ここから慢心が出てしまって、勉強不足につながり、「売れる」と思っていたものが売れない場合が出てきます。
売れなかったから自分のアイデアが原因とは考えずに、営業担当の責任にしたり、市場の責任にしたりすることも多いです。
情熱が原因で発症することも
また、経営への熱意が両極端に振れたときに現れることがあります。あまりにも事業に対する情熱が強すぎて、顧客が見えていない場合と、その逆に、あまりにも情熱が無さすぎて、「儲かりそうだから始めた」という経営者です。
情熱が強いことはよいのですが、顧客に情熱を押し付けても、顧客がそれを求めていなければ売れません。また、情熱が無さ過ぎても、工夫が生まれないので、競合他社に負けてしまうことがあります。
事業経営に対する情熱を持ち、顧客マインドを持っていると、創っても売れない病を予防することができます。
小事ばかり気になる病
経営者によっては、社員の作業のことや、目先の仕事などの小事ばかりが気になる人がいます。
小事ばかり気になる経営者は、社員の仕事ぶりを注意ばかりして、社員がうんざりしていき、叱り方によっては社員がすぐに辞めてしまうことが挙げられます。
また、コスト病との合併症で、会社の売上が原因不明の下落をしていきます。ただし、この売上の下落は、なぜか経営者以外は原因が判ってしまうのです。
売上が下がった怒りの矛先を社員に向ける経営者もいますが、社員が辞めだし、競合他社よりも生産性が悪くなり、対外的な評判が落ちていきます。
小事ばかり気になる社長に認められ、経営幹部に抜擢された社員がいたとします。その社員も、小事ばかり気になる病が発症します。なぜなら、小事がきっちりできることで社長に認められたわけですから、社長に代わって他の社員の小事ばかり気にするようになります。
小事ばかり気になる経営者の特徴
小事ばかり気になる人の主な特徴として、次の2種類があると思います。
- 完璧主義で人を信用できない経営者
- 「経営者の仕事は内部管理だ」と勘違いしている経営者
どちらかの傾向がある場合は、会社の売上高が伸びることはほとんどありません。この両方が重なってしまったら、通常であれば、雇った社員がすぐに辞めていってしまいます。
ただし例外もあります。社長の側近、もしくはナンバー2に優秀な人がいて、実質的にその人物が会社を経営している場合です。
ただし、そういった場合は稀です。なぜなら、2つの特徴を持つ経営者には、「類は友を呼ぶ」で、優秀な側近やナンバー2が来ることはないからです。
小事ばかり気になる場合に注意すること
「経営者の仕事は内部管理だ」と勘違いしている経営者は、「経営者の仕事は、会社の未来を創ることだ」とか「外部活動だ」と考えるようにしてください。
経営者の本来の仕事とは、会社の内部のことよりも、会社の未来のことや外部のことの方が重大な事項です。そのために、経営者がそういったことに注力できるように、手隙の時間を作る必要があります。
会社の規模にもより対策が異なりますが、基本的には手隙の時間に経営理念を作成して、社員が成果を出せる仕組みを構築すべきです。
経営理念には会社が目指す方向を示したものですので、それが浸透したら、社員たちは「社長は目指すものがあるので、小事が気になるのだ」という気持ちが出てきて、社長の小事へのこだわりを我慢できるかもしれません。
部下放置病
経営者の中には、部下を放置してしまう傾向のある人がいます。部下の放置には、さまざまな種類がありますので、その原因もさまざまです。
指示の出しっぱなし
中小企業の経営者でよくあることが、指示の出しっぱなしです。指示を出したことすら忘れてしまう人もいます。
指示を出しっぱなしにされた社員
社員は、経営者の指示を聞き入れてくれる人とそうでない人に分かれます。経営者は、言いやすい社員に指示を出すのですが、出した指示は忘れっぱなしになります。
そして、あるときに突如として指示したことを思い出し、「あれはどうなった?」と尋ねることがあるのですが、指示を受けた社員は「実務が忙しくて何もできていません。今の仕事が片付いたら行います。」という返答になります。
そして、その社員は、経営者からたくさんの指示を受けているので、仕事が片付くことは、一生来ないというものです。経営者からの指示ということもあって、優先順位はすべてMAXレベルです。すべての指示を食い散らかしてしまって、どれも片付きません。
経営者にとって重要なプロジェクトがあり、それを誰かに任せたいのであれば、任せたい人が今行っている実務をすべて別の人に振ってしまい、プロジェクトリーダーに選任するぐらいの器量がいります。
指示の出しっぱなしを防ぐ方法
細かい指示であったとしても、経営者にとっては重要なことが含まれていることもあります。細かな指示は、秘書役の人に指示を出して、管理してもらうとよいでしょう。秘書がいない場合は、秘書を雇うか、自分自身でToDoリストなどを用いて管理しておくことです。
社長が外に出っぱなしの場合は、内部を任せている側近にお願いしてもよいでしょう。
秘書や内部を任せた側近に、指示したことをメモしておいてもらい、低規定に報告をさせたらよいと思います。
部下や外注先からの連絡を欲しがるのに自分が連絡しない放置病
部下に対してメールなり電話なりした場合、すぐに返信がなければ激怒するのに、自分から部下に対して返信のレスポンスが悪い人がいます。
連絡を求めるくせに自分からの連絡を放置する経営者の傾向
部下や外注先との連絡が少ない経営者は、相手に対する思いやりが少ないことはもちろんですが、コミュニケーションが苦手か、もしくは文章を書くことが苦手な方であることも多いです。
また、部下や外注先を、単なる労働力と見ている人で、自己中で会話が面倒だと思っている人は、この病気にかかりやすいです。
言葉や文章や苦手な人の例
言葉や文章が苦手は人は、相手とコミュニケーションを取ることを面倒になっていく場合があります。
例えば、オムライスを注文するときに、店員が「ケチャップはどうされますか?」と尋ねたときに、お客様が「普通で」と答えたとしましょう。お客様にとっての普通が、ケチャップをかけない状態が普通なのか、それとも適量のケチャップをかけたものが普通なのか不明です。
店員は「ケチャップをかけてもよいですか?」という具合に、YesかNoで答えられるように質問をした方が親切です。また、お客様は「掛けてください」とYesかNoで答えた方が分かりやすいので、親切な返答です。
他にも、メールの文章でも、相手がどちらにでも意味が取れるような書き方をする場合があります。
例えば、メールの文章で「ホームページを修正したので、変更内容をご確認ください。内容に問題がなければ本番にアップいたします。」と尋ねたとしましょう。返事は「確認しました。アップをお願いします。」や「内容に問題ございません。」というものが正しい返答かと思います。
ところが、メールの文章を普段の会話のように、「確認しました。」とだけ返事する人もいます。この返答の場合、アップしてよいのかどうかわかりませんので、アップしてよいかの確認を再度メールしなければなりません。
自己中で会話が面倒だと思っている経営者の例
自己中で会話が面倒だと思っている経営者の場合、お客様に対してはきちんと会話をするのですが、部下や外注先には、口数が少なくて指示の内容も少ないことが多いです。
例えば、経営者が社員に判断の難しいことを聞いたとしましょう。経営者から部下に、判断材料が渡されていない場合が多いので、部下は即答に困ります。経営者は「俺の気持ちを理解しておきなさい」とか「俺の考えていることをいつも把握しておきなさい」と言ってしまう人もいます。
そういった経営者の元で働く部下は、何か指示があったときは、軍隊と同じで事情も知らずに「はい」か「Yes」しか言えなくなり、疲弊していって、自分になるべく責任のある仕事が来ないように仕向けてしまいます。
そういった部下は、ミスがあったときに経営者が指摘すると、ミスの原因を他人や環境の責任にし、また経営者から激怒し、そのうち辞めていくパターンです。
指示に対しては、松下幸之助先生のおっしゃるように「任せて任せず」が正しいスタンスです。
外注先にも連絡しない人
外注先にも同様な対応をする人がいます。外注先の担当者をまるで自社のダメ社員かのような扱いをしたり、仕事のムチャ振りをしたりして、徳のない経営者の代名詞のような振舞をする人がいます。
そのような人は、エリート意識の高い人や、柄の悪い人が多いです。「金を払っているのはこちらだから、こちらの言うことを聞け」「こちらの気持ちを読み取って提案しろ」という具合で、王様扱いを求めます。
外注先の担当者が、相手の考えや動きをよく理解していて連携が取りやすい人であれば、その経営者は病気が発症していても仕事が成り立ちます。しかし、そういった外注先の担当者は、他の企業からも人気があるので、いずれフェードアウトしていくことが常です。
そういったこともあり、部下放置病を発症した経営者は、ビジネスパートナーに恵まれないため、いつまで経っても、会社は成長していきません。
やはり、経営者は人への思いやりを持ち、いろいろな話題でダイレクトコミュニケーションをしていこうと努力していく必要があります。
外注先に対しては、上下関係や上から目線ではなく、ビジネスパートナーであることを認識して公平無私で対応すべきでしょう。
新規事業を任せた社員を放置
こういった人はあまりいませんが、新規事業を始めたときに、プロジェクトリーダーにベテラン社員を据えたら、放置しても問題ないことがあります。ところが、誰も任せる人がいなくて、新入社員に新規事業を任せてしまう人がいます。
新入社員が、何も指示されないでどこまで仕事ができるのか、面白い経営方法だといえばそうなのですが、任された新入社員はたまったものではありません。
新規事業はトラブルの連続で、そのたびに経営判断が求められます。新入社員に経営判断ができるはずもなく、経営者に相談するのですが、経営者は他の仕事で忙しくて放置されてしまうパターンです。
何をどうしたらよいのかわからず、トラブルでご迷惑をかけてしまった人に、ただひたすら謝るしかありません。
そのような不運に見舞われた新入社員は、宝くじを当てるほどの確率で急成長するか、ほとんどの場合はすぐに辞めていってしまいます。しかし、成長した社員は経営者レベルの実力が身に付いているはずですので、処遇に不満を感じて辞めていってしまいます。
中小企業にとって新規事業を立ち上げることは、社運をかけたものですので、経営者は何をさておき新規事業の陣頭指揮を執るようにしてください。
経営者が罹りやすい経営の病気(社長病)をご紹介しましたが、他にもいくつかございます。
結局、経営者は叱ってくれる人がいないことが多いので、天狗になってしまいがちになります。そこで、こういった症状に自分自身で気が付き、日々反省しなくてはいけません。
社員から指摘を受ける場合もありますが、その社員は辞めることを覚悟したときです。しかし、徳のある経営者は、「諫言してくれてありがとう。会社にとって良いと思うことがあったら何でも言ってくれ」と頭が下げられる人ではないでしょうか?
ご紹介した経営の病気に心当たりのある方、これから起業して健全経営を行っていきたいとお考えの方は、ぜひ当社のセミナーにご参加ください。
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オンラインでのご参加も可能ですので、ぜひご参加ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。