企業ビジョンとは、社長が考える会社の未来像を、だれでも理解できるようにしたものです。
企業ビジョンは図やイラストといったビジュアルで表現されることもありますし、文章で長く書かれることもあります。短い一文であることも多いです。
さまざまな言い方があり、単にビジョンと言ったり、経営ビジョンや事業ビジョン、未来ビジョンと言ったりします。意味はほぼ同じですが、大きな企業では使い分けているところもあると思います。
ちなみに、当社では単に「ビジョン」と言った場合は企業ビジョンのことを指します。経営ビジョンや未来ビジョンも同様です。
また、事業ビジョンとは「どのような事業を行っていきたいか(将来のKPI)」もしくは「事業そのものが実現したときの姿」のように定義しています。企業ビジョンと事業ビジョンの違いについては、「事業ビジョンと企業ビジョンの違いは?」をご参照ください。
では、企業ビジョンとはどういったものなのか、その正しい作り方はどうなのかをご説明いたします。また、どのようなビジョンを描くとしても、正しい企業ビジョンと間違った企業ビジョンがあります。このことについても述べたいと思います。
正しい企業ビジョンとは?
企業ビジョンは、社長の理想や自己実現したいことをビジョン化したものです。言い換えれば、「会社の可能性が最大化したときに何が実現できるのか?」をビジョン化したものです。
そのような企業ビジョンを持つ社長の熱意と熱弁に呼応して、社員のモチベーションが高まり、社員の仕事能力や人間関係能力などが高まっていきます。
社長の理想実現、自己実現をビジョン化したものですが、社員を働かせるためのものではないことにご留意ください。
社長に企業ビジョンを伺ったときに、「社員が安い給料でバリバリ働いて・・・」というものは正しい企業ビジョンではありません。そのようなお考えをお持ちであれば、どのような立派な経営理念で着飾っても、何かの拍子にお面が剥がれて本性が出てしまい、社員のモチベーションが一気に冷めてしまうこともあります。
社員が、世のため人のために働いている社長の背中を見て発奮し、しっかりお給料ももらえて、人間性が成長し、仕事能力が向上していくための熱意の源泉が企業ビジョンです。
つまり、社長が志や使命感に目覚め、それを実現するための企業ビジョンを掲げます。そして、会社が社長の財布のように私物化されていたものから、世のため人のための会社に変化していくのです。その中で、社長の熱意が高まります。
企業ビジョンを明確にすることは、「社長の熱意を高めるために作成する」とも言えます。
企業ビジョンは誰が作成すべきか?
結論から先に申しますと、正しい企業ビジョンを作成するためには、社長お一人、もしくは社長が経営理念コンサルタントの支援を受けながら作成すべきす。
もちろん、作成された企業ビジョンを経営幹部に問うて、意見を聞くことは良いことです。しかし、草案は社長お一人でないと作成できないのです。
そもそも会社は、社長が最高責任者です。社長は最高責任者として、「自社をどのような会社にしたいのか?」、「自社の事業を通じてどのような社会を実現したいのか?」といった会社の未来の姿を社員に示す必要があります。
仮に、会社の未来の姿である企業ビジョンを、社員が作成したとしましょう。その企業ビジョンを、会社の最高責任者である社長が、自分自身も心から共感し、熱意を持って目指すことができるでしょうか?
もし、「共感できる」とおっしゃるのであれば、その社員は社長よりも見識があり、かなりの説得力があるので、社長の器を持っている可能性があります。次期社長候補として育てていくべき逸材です。
先ほど、「社員が、社長の「世のため人のために働いている」という背中を見て発奮する」と述べましたが、企業ビジョンを明確にすることは、「社長の熱意を高めるために作成する」とも言えます。
次期社長候補がいなければ、なおさら社長がお一人で作成すべきです。次期社長候補がいたら、その人材に企業ビジョンを作成してもらい、社長がそれに心から共感して、陣頭指揮を人材に任せたら良いと考えます。
企業ビジョンの正しい作成方法
企業ビジョンは、「社長の理想実現や自己実現をビジョン化したもの」、「会社の可能性が最大化したときに何が実現できるのかをビジョン化したもの」と述べましたが、企業ビジョンの正しい作り方は、まさしくそれ自問自答して導き出すことです。
「我社は何のために存在するのか?」を問い続ける
まず、社長自ら「我社は何のために存在するのか?」と問い続けます。いわゆるパーパスというものです。事業経営を通じて、これを問い続けているうちに、だんだんと見えてくることがあります。
会社の存在理由が発見できたら、それが実現した姿をイメージします。そのイメージが、「ぜひとも実現させたい」と願えるものであれば、それが社長にとってのミッションです。
ミッションに加える4つの要素
そのミッションに次の4つの要素を加えると、企業ビジョンになります。
- 未来の会社の規模
- 未来の事業内容
- 事業活動を通じて実現する社会貢献
- 未来の社員の処遇
これら4つのことを考えたときに、会社が最大化した姿、もっとも社会に貢献した姿が、最終的な企業ビジョンになります。最終的な企業ビジョンのことを、当社では「全社目標」と定義しています。
例えば、スイーツを製造・販売している企業の社長が、「我社はスイーツで家族の団らんを幸せなものにしたい」という考えに至ったとしましょう。それが実現した姿をイメージしたときに、地域だけで良いのか、それとも日本全国の家族まで幸せなものにしたいのかがイメージできます。
それを実現させることがミッションで、そのイメージできたものが企業ビジョンです。
もし、日本全国の家族まで幸せにしたいと考えるのであれば、今の社員たちは、全国展開したスイーツ店の店長に抜擢されていったり、地域統括のマーケティング担当になったり、開発部門を任されたり、会社の重役になったりと、自分たちの将来の姿がイメージできます。それが、将来の社員の処遇になります。
出来上がった企業ビジョンは情熱が沸いてくるものか?
企業ビジョンが出来上がったら、その企業ビジョンを眺めていると情熱が沸いてくるものかどうかを確認してください。
会社の成長は、社長の情熱の高さが影響します。その情熱は、社長の志や使命感から出てくるものです。その志や使命感をビジョン化したものが、企業ビジョンです。
出来上がった企業ビジョンを見て情熱が出ていたとしても、1週間ほど経過したら情熱が出なくなる場合もあります。そういった企業ビジョンは、練り直しが必要です。
そして、1週間経っても、1ヶ月経っても、1年経っても情熱の消えない企業ビジョンが、本物の企業ビジョンです。そういった情熱の高まる企業ビジョンは、社長自ら率先して実現に取り組むことになります。
反対に情熱のない企業ビジョンは、社員を働かせるための企業ビジョンで、社長は知らんぷりです。そういった企業ビジョンは、もちろん社員は受け入れてくれないので、浸透しません。
初めて企業ビジョンを作成するときは、段階的な企業ビジョンを作成する
本物の企業ビジョンは大きなものになりがちですが、それをそのまま社長の情熱と共に社員に浸透させようとしても、社員は大やけどするだけです。社員は、冷ややかな目で「目先のことさえできていないのに、何が日本一だ」とか、「また変なことを言い始めた」と思ってしまうわけです。
企業ビジョンを達成するためには、社員が社長のイメージ通りに働いてくれて実現するものです。社長からのイノベーションの指示があっても、ビジョンもなしに行うのであれば、社員は疲弊してしまいます。大きすぎる企業ビジョンですと、社員は受け入れてくれません。
そこで、社員にとって大きすぎる企業ビジョンは、時系列で分割して段階的な企業ビジョンを作成することをおすすめします。
例えば、「日本一」という長期企業ビジョンを20年後に達成したいとすると、10年後の中期企業ビジョンとして「関東No1」というビジョンを立てます。そして、3年後の短期企業ビジョンとして、例えば「関東の出店数を3店舗から10店舗に増やす」といったビジョンを立てます。
イメージできた企業ビジョンを、会社の錦の御旗として掲げたときに、社員のモチベーションが高まり、社長の号令について来てくれるかをイメージしてください。
それがイメージできるのであれば、正しい企業ビジョンができた可能性があります。
企業ビジョンが正しいかどうかの判断
作成した企業ビジョンが正しいものかどうかは、企業ビジョンを浸透させたときに、社員がやる気が出るかどうかで判断します。浸透させてやる気が出る企業ビジョンが正しい企業ビジョンということです。
ここでご注意していただきたいことは、社員のやる気が出るかどうかは、企業ビジョンの正しさだけでなく、浸透の方法も関わることです。いくら正しい企業ビジョンを作成したとしても、浸透方法が正しくなければ、社員のやる気が出ることはありません。
例えば、社長が「企業ビジョンを作成したから、社員でこのビジョンを達成させるように」と社長は何もしなければ、社員のやる気は一時的に出たとしても持続することはありません。また、企業ビジョンを実現していったときにボーナスなどの金銭的な享受を約束したとしても、社員はお金のために働く人間性の成長を止めてしまうようなこともあります。
企業ビジョンの浸透は、社長が企業ビジョンの実現に使命感と熱意を持って積極的に取り組むことで、社員も企業ビジョンを受け入れるようになります。
経営理念コンサルタントに支援を依頼するメリット
当社では、企業ビジョンの作成と浸透をご支援していますが、経営理念コンサルタントに依頼することのメリットをご紹介したいと思います。
本心からの正しい企業ビジョンが作成できる
社長お一人で企業ビジョンを作成された場合、それが社長の本心からの企業ビジョンなのか、ご自身で判断することはたいへん難しいのです。
なぜなら、ご自身の評価をご自身で客観的にできる人はほとんどいないからです。
企業ビジョンを2週間ほど考えて作成された社長からのご相談で、「企業ビジョンを見てもらいたい」とのことでアドバイスさせていただいたときのことです。経営理念コンサルタントがいくつか質問しただけで、「自分の企業ビジョンの練り込みが甘かったです。」となったこともありました。
例えば、「これを本当に目指されますか?」と訊ねたとき、「本当にこれを目指していいのだろうか?」と考え込んでしまった社長もいます。
経営理念コンサルタントのこういった質問を繰り返していくことによって、社長が心から実現したいことが明確になっていき、「世のため人のために事業活動をしたい」という気持ちが高まり、最高の企業ビジョンが出来上がります。
出来上がった企業ビジョンが正しいかどうかの判断ができる
経営理念コンサルタントは、たくさんの企業の企業ビジョン作成をご支援させていただいた実績があります。その実績から、社長が描く企業ビジョンが本当に正しいものかを、判断いたします。
もしコンサルタントに依頼しない場合であれば、正しく浸透させてみて初めて正しいかどうかの判断ができるのですが、正しくなければまた作り直しです。
経営理念コンサルタントに企業ビジョンの作成を依頼すれば、最初から正しい企業ビジョンを作成することができます。
企業ビジョンを正しく浸透できる
企業ビジョンは作成して終わりではありません。社員に浸透させて、社長と社員が一丸となって企業ビジョンの実現に向けて取り組むようになり、それが持続する仕組みを構築できて完了です。
そのためには、正しい企業ビジョンを作成するだけでなく、正しく浸透させることが大切です。
経営理念コンサルタントの支援があれば、社長をプロジェクトリーダーとする企業ビジョンの浸透を正しく行うことができます。
また、社員全員が企業ビジョンを把握できたとしても、その実現方法がわからないと具体的な行動ができません。その対策として、企業ビジョンの実現に向けた行動指針の作成と浸透を行います。
当社の経営理念コンサルタントは、企業ビジョン作成のご支援だけでなく、それを実現するための行動指針の作成や浸透もご支援いたします。
企業ビジョンに基づいた経営計画や経営方針が立てられる
企業ビジョンを実現していくためには、長期経営計画から短期経営計画までの数字に落とし込むこと、またそれらを実現するための経営方針を練り込んでいく必要があります。
企業ビジョンに基づいて経営計画や経営方針を立てていく作業を、初めてお取組みになられる社長は、とても時間がかかることと思います。やり方が分からなければ、誰かに聞くことが早いと思いますが、やはり専門家である経営理念コンサルタントに聞くことが手っ取り早いと思います。
当社の経営理念コンサルタントが、経営の原理原則に基づいて、経営計画や経営方針の作成、そして経営幹部の育成までご支援いたします。
社長が時間に耐えられるようになる
企業ビジョンが実現するためには、社員の成長が欠かせません。社員が成長するまでには、何年もの時間がかかることが多いです。
その間、社長は社員の成長と会社への貢献を信じて、社長が陣頭指揮を執って育成していかなければなりません。社員の成長はそれこそ何年もかかりますが、その間にさまざまな経営の問題や課題に直面します。経営の問題や課題に対して、企業ビジョンや経営指針、行動指針などに基づいて解決していかなければなりません。
そのような原理原則に基づいた経営判断を行うためには、経営の問題や課題の本質を見抜く必要があります。たいていの社長は、一人でうんうんと悩むことが多いです。
そこで、経営理念コンサルタントがいたら、経営の問題や課題の本質を見抜いて、社長がどのような判断や決断を行うべきかをアドバイスを受けられたり、必要に応じてチームを組んで実務をご支援してもらえたりします。
企業ビジョンの作成や浸透では、ぜひ経営理念コンサルティング支援の導入をご検討ください。
正しい企業ビジョンを作成し、正しく浸透させ、自社を活気ある成長企業にしたいとお考えの社長は、ぜひチームコンサルティングIngIngまでご相談ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。