社長の夢実現への道

社員の仕事能力向上のために行動指針に入れるべき内容とは?

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社員の仕事能力向上のために行動指針に入れるべき内容とは?

行動指針を正しく作成しそれを浸透させると、社員の人間性が成長し、仕事能力が向上するので、会社が発展するようになります。

経営理念の一部である行動指針には、そのような力があります。ただし、「正しく作成された行動指針」に限ってです。

行動指針を正しく作成するためには、人間性の成長と仕事能力の向上について盛り込む必要があります。

行動指針と人間性の成長の関係については、「従業員の人間性の成長を考えた行動指針の内容とは?」をご覧ください。

また、「行動指針の内容に入れるべき仕事の基本姿勢」と題して、行動指針に入れるべき仕事能力向上の初級レベルである、仕事の基本姿勢について述べております。

今回の記事では、仕事の基本姿勢が身に付いた社員が、さらに仕事能力を高め、プラスアルファの成果を上げるための実践的な内容を挙げたいと思います。

しっかりとした基礎の上に、今回述べる内容が行動指針に盛り込まれ、浸透し習慣化することで、社員が会社の戦力となり、未来の管理職候補となる「仕事ができる人」に成長してゆくことができると思います。

「行動指針を作成し浸透させて、従業員の仕事能力を高めたい」とお考えの経営者に、行動指針の内容をどのように作成したら良いのかの文例になると思います。ぜひ参考にしていただけたらと思います。

対人関係能力

人が一人でできることには限界があります。他の人と協力して仕事をするからこそ、個人で働く以上の成果が得られます。そのため、会社などの組織を作り、多くの人たちで力を合わせて仕事をすることで、大きな成果を上げることができるのです。

組織において、力を合わせて仕事をしていく上で非常に大事になるのが「対人関係能力」です。

対人関係能力とは?

会社では、個人がバラバラに働くのではなく、他の人々と協力して成果を上げることができてはじめて、付加価値の高い仕事ができ、さらには有用な人材に成長することができます。そのための能力が対人関係能力です。

対人関係能力を身に着けることで、組織を引っ張ってゆくリーダーとして、有用な人材になることもできます。

対人関係能力は、組織で働く場面やお客様と対面での営業、商談、販売、プレゼンテーション、アフターサービス、電話対応、メールのやりとり、同僚・上司・部下との対話、ミーティングや会議、発表やスピーチ、広告宣伝、報告書や日報の作成など、あらゆる場面で必要となる能力です。

対人関係能力には、さまざまな能力があります。職種や役職などによって、求められる対人関係能力の内容は異なりますが、コミュニケーション力はあらゆる企業人にとって必要となる能力と言えます。

そのため、行動指針にコミュニケーション力の内容を盛り込む企業が多いです。

コミュニケーションの本質

コミュニケーションの本質とは、「よき変化を起こすこと」です。仕事で成果を上げるためには、仕事でのコミュニケーションを通じて、よき変化を引き起こすことができればよいわけです。

例えば、お客様との商談で制約をするというよき変化を起こすとなると、お客様との良好なコミュニケーションが大事になります。また、部下指導において部下をやる気にさせるというよき変化を起こす場合にも、部下との良好はコミュニケーションが大事です。さらには、上司との関係でよき変化を起こす場合には、例えば期待以上の仕事をするために、上司からの指示を明確に聞き取るといった具合です。

このように考えると、すべてのコミュニケーションには、成功と失敗があることが分かります。よき変化が起こらないなら、それは、そのコミュニケーションが成功していないことを意味します。

まず、「コミュニケーションには成功と失敗がある」ということを意識して、一つひとつのコミュニケーションの場面にて丁寧に望むことで、人間関係が調和し、成果を上げることができるようになるのです。

また、コミュニケーション力を高めることによって、どのような相手とでも調和することが可能になります。

コミュニケーション力はリーダーに必須の能力

コミュニケーション力は、よきリーダーになるために特に大切です。リーダーの役割とは、多くの人々をよい方向に導く役割を担っているので、多くの人々とのコミュニケーションをする場面が多いからです。

コミュニケーション力の高い人ほど、人の手を通じて成果を上げることができ、組織を動かすことができるのです。

コミュニケーション力は、決して先天的なものではありません。後天的に磨くことができ、今から身に着けることができる能力なのです。

コミュニケーション力の磨き方

コミュニケーション力の要素は数多くありますが、ここではコミュニケーション力の基礎にあたる内容について述べたいと思います。これらの内容を、行動指針に入れて浸透することによって、コミュニケーション力の高い人材を育てることができます。

明るさ

コミュニケーションの基本の一つ目は「明るさ」です。

人は誰でも自分の気持ちを明るくしてくれるような人を好むものです。そういったことからも、組織のリーダー、もしくはリーダーになっていく人材は、明るさが大事です。

では、暗い気持ちの人が、どうすれば明るい気持ちになれるでしょうか。

それは、まず明るい態度を取ることです。元気の出ない時には、下を向くのをやめて、上を向くことです。

著名な心理学者ウィリアム・ジェームズが「人は悲しいから泣くのではない。泣くから悲しいのだ」という趣旨を説いているように、態度が精神状態を決定するのです。

意識して、常に柔和な笑顔をつくるようにすることで、心を明るくすることができるのです。

聴く耳を持つ

二つ目は、相手の立場に立って話を聴くことです。

良好なコミュニケーションを取るためには、相手の関心を引こうとするよりも、相手に純粋な関心を寄せることが大事なのです。

相手の話をあまり聞かずに、自分が言いたいことを延々と話し続けているシーンをよく見かけます。そのような人は、コミュニケーション力の低い人です。この比重を反対にし、相手の話を聴く比重を多くすることが必要です。

まず、8割くらい相手の話を聴くようにして、自分が話す量を2割程度にするのです。このように心掛けるだけで、コミュニケーションがとても良くなるのを実感できるでしょう。

また、仕事においては、相手が一から十まで丁寧に説明してくれないことも多いでしょう。その時に、「なぜ?」と考えることが大事です。

例えば、営業担当から「ご挨拶用の粗品を用意しておいて」と言われたら、粗品だけを用意するのではなく、粗品の用途を確認します。その結果、「新規顧客に伺って面会し、わが社のサービスを伝えたい」と聞いたならば、その目的を果たすことを考えて、会社のパンフレットも準備しておいたり、持ち運びやすい手提げに入れておいたりと行動すれば、プラスアルファの成果を出すことができます。これも「聴く力」の一つです。

長所の発見

三つ目に、相手の良い面に焦点を当てて、長所を発見するように対話することです。

相手の長所、素晴らしい点を見つけて、素直に口に出して伝えること。これが自然にできることが、良好なコミュニケーションを取る秘訣です。

人間は、長所よりも、欠点のほうに目が行きがちなものです。そこで、努力して長所にフォーカスする習慣を付けると、コミュニケーションが格段に良くなります。

相手の長所を発見できて、それを伝えることができたら、相手は「自分のことを理解してくれた」と思うようになります。人は「自分のことが相手に理解された」と感じると、安心して心の窓を開き、本音を語ってくれるのです。

また、会議や部下指導の際に、相手の長所を認め、それを言葉として伝えると、相手に自信が出てきます。その自信がやる気の素となり、行動を決意する大きな動機となります。お客様の長所を発見できれば、安心して心を開いてもらえることでしょう。

ここでは、対人関係能力の中でも重要なコミュニケーション力について述べました。行動指針に入れるべき対人関係能力については、業種や役職などによって、他にも必要なことがあると思います。御社に合った言葉で入れてください。

正確で速い仕事をする

仕事ができるようになるための基本的な条件は、「正確でミスのない仕事ができること」と「自分で締め切りを設定できること」です。つまり、仕事が正確で速いということです。

組織では、自分の上流、下流で仕事をしている人がいるので、ミスが多かったり、締め切りを守れなかったりすると、他の人の時間を奪ってしまいます。他人の時間を奪うような人は仕事ができない人です。仕事ができる人の理想は、他人の時間を生み出す人ですが、最低でも正確で速く仕事ができる人が望ましいです。

正確な仕事をするためには

正確な仕事をするためには、自分の仕事に求められる成果と要件を把握して、十分な質になっているか。間違いはないか。また、抜けている点はないか、ということをチェックできることが大事です。

また、自分に与えられている部分だけでなく、仕事の全体像をつかみ、自分の仕事が誰と関係しているかを考えて、全体の仕事がきちんと流れていくようにすることが大事です。

そのようなことから、会社のビジョン実現のためにも、社員全員が正確な仕事ができるように、行動指針に明記しておくことが大事です。

速い仕事をするためには

仕事の締め切りが15日であるとしたら、当日ギリギリに間に合わせるということでは十分ではありません。

やはり、1日でも2日でも早く仕上げるように計画を立てて仕事を進めることが大事です。

上司の立場に立って、「自分の仕事がいつまでに仕上がればベストなのか」という発想ができる人は仕事ができる人です。

「早く仕上げると、やることがなくなって困る」とか、「他の仕事が入ってきて仕事量が増える」と考えるようでは、仕事能力が高まりません。

納期や締め切りよりも早く仕上がった場合には、仕事の改善やマニュアル化などといったプラスアルファの仕事をすることもできますし、他の人の仕事を手伝うこともできます。

また、「この部下は仕事が速いので、仕事量が増えた時に頼める」と見られるようになれば、上司から頼りにされ、上司がやっている仕事を任せてもらえたり、重要な仕事を任せてもらえるようになったります。

このようになれば、仕事に対するやりがいが増してさらなる仕事能力の向上につながります。また、そのような人材は、会社として評価する仕組みを取り入れるべきです。

仕事の体系化

前項で「仕事を早く仕上げるとプラスアルファの仕事ができる」と述べましたが、プラスアルファの仕事の一つが、仕事の体系化です。

体系化とは?

体系化とは、「複数の知識を、関連づけて、まとめる」ことをいいます。また、「時系列に整理する」ということです。「何を、何のために、どの順序で行うか」を整理してまとめることです。

具体的には、自分一人がやっていた仕事を、他の人にもできるようにするために、ソフトやマニュアルを作ることです。

仕事の体系化を阻害する自己保身

ここで出やすいマイナス感情が、自己保身です。

「自分にしかできない仕事を残しておこう」と思い、自分の持つ知識を教えようとしないことがあります。

「それを教えると自分の仕事がなくなってしまうかもしれない」という不安から、他の人に教えず属人化してしまうのです。属人的な仕事を持っていると、他人から必要とされたり、頼りにされたりすることで、存在感や優越感が実感できることは分かります。また、ある仕事に慣れていて、実績がある場合には、その仕事をやり続けた方が成果を出しやすいので、執着する気持ちも理解できます。

しかし、実は、その自己保身を乗り越えて、会社全体の利益を考えられる人こそ評価すべきです。

属人化された仕事を、他の人でも出来るように体系化し、手放すことができる人には、会社としてより価値の高い仕事を用意し、その人を昇格するようにすべきです。

とある大企業で、末端の社員で体系化して成果を出した社員が、いきなり人事部の教育担当に抜擢されたり、企画室に採用されたりした事例もあります。

体系化のメリット

体系化された知識は、他の人でも理解しやすくなり、記憶の定着度が高まります。

体系化されたものは、「1なになに、2なになに」といった具合に、時系列でまとめられています。人間の記憶はストーリーを記憶する力が強いので、体系化されたものは覚えやすいです。

例えば、「一週間前に観たテレビドラマのストーリー」は覚えているものですが、「一週間前の夕食のメニュー」はなかなか思い出せないものです。

また、体系化された知識は、人に教えるための教材になります。個人として良い仕事ができる人でも、体系化が出来ていないと、どこから教えたら良いか、また教えているときに相手はどこが分らないかも判らず、場当たり的な教え方になってしまい、なかなか部下が育ちません。一方、体系化された知識があると、多くの人に速く、的確に仕事を教えることができるようになります。

仕事を体系化して他の人にもできるようにすることで、仕事の属人化がなくなり、その人材に手隙の時間ができるようになって、より高度で付加価値の高い仕事に着手することができるようになるのです。

社員の仕事能力向上のために、仕事を属人化させない仕組みや体系化して他人で仕事ができるようにする仕組みを、行動指針に盛り込んでおく必要があります。

企画・提案力

プラスアルファの仕事のもう一つが企画・提案です。

仕事能力を高めるためには、与えられた仕事をこなすだけでなく、「こうすればもっと良くなる」という企画を出し、提案できる力を育てることが大事です。

ダイヤモンドの原石を探し集める

会社の未来を決定するのはもちろんトップの仕事ですが、発展し続けるためには、社員たちの衆知を集めることも大事です。

現場に近いところで働いている人ほど、直接お客様に接する機会が多く、現場での課題もよく見えます。そこに会社が発展するための情報がたくさんあります。つまり、現場に近いほど「アイデアの宝庫」です。

末端の社員であったとしても、その人の立場でなければ、見えないことがあります。入社したばかりの社員だったとしても、その人にしか見えないこともあります。

その見えたものが未来事業の源泉になることもあります。

ですから、社員たちが会社の目となり耳となって、お客様の言葉や、現場で起きていることなどに敏感になることが大事です。

情報を活用して新しい価値を生み出すのは上層部の仕事かもしれません。しかし、現場に近い人がダイヤモンドの原石を探してくることで、イノベーションの材料が集まってくるのです。

そのようなことから、行動指針には、衆知が集まるような内容を盛り込んでおくことが大事です。

積極的に企画・提案できる社風を目指して

衆知が集まる企業になるだけで、優れた企業になることもできますが、社員がさらに育成できる行動指針にすることもできます。それは、社員が自ら企画・提案し、チャレンジできることを盛り込んでおくことです。

新しい事にチャレンジするということは大変なことです。企画・提案する社員も大変ですが、それをサポートする経営者も大変です。

いろいろな情報を集めたり、考えたりして準備をすることが必要ですし、初めてやる仕事では、失敗のリスクも伴いますから、社員は二の足を踏む人も多いかもしれませんが、それを社員に任せていかないといけません。

しかし、それが実現できると、社員はさらに成長し、会社も発展していきます。

チャレンジ精神を持って、企画・提案ができる人材が多いほど、会社のイノベーションの速度が早まります。

チャレンジ精神

企業によっては、「社員に積極的なチャレンジ精神を持ってもらいたい」とお考えの経営者もいらっしゃることでしょう。

チャレンジ精神は、企画・提案力に含まれる内容ですが、「全社を挙げてチャレンジ精神を持ってもらいたい」とお考えであれば、行動指針ではなく、経営指針に「チャレンジ精神」の項目を入れた方が良いと思います。

また、会社として、チャレンジする人材を評価できるような評価制度を策定することが大事です。

今回の記事では、仕事の基本姿勢が身に付いた社員が、さらに仕事で成果を高めるため、プラスアルファの成果を上げるための実践的な内容を挙げました。

しっかりとした基礎の上に今回述べる内容を行動指針に盛り込み、習慣化することで、会社の戦力となり、未来の管理職候補となる、「仕事ができる人」を増やしてゆくことができると思います。

この記事の内容が、「行動指針を策定して、社員の仕事能力を高めたい」とお考えの社長にご参考になれば幸いです。機会があれば、経営幹部やリーダー向けの行動指針について述べたいと思います。

この記事の著者

関山淑男

経営理念コンサルタント
関山 淑男 (Sekiyama Toshio)

経営理念の構築・浸透とビジネスコーチングのスキルに親和性があることに気づき、研究や実績を重ね、経営理念コンサルタントとしてのスキルを確立していく。社長としての経営経験や赤字企業の業績回復支援の経験から掴んだ教訓、ピーター・ドラッカー先生や一倉定(いちくらさだむ)先生などの経営理論を融合させ、独自の経営理念コンサルティング・メソッドを開発。

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