社長の夢実現への道

行動指針の内容に入れるべき仕事の基本姿勢

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行動指針の内容に入れるべき仕事の基本姿勢

会社の発展に役立つ行動指針を作り上げるためには、従業員の皆さんの人間性の向上と、仕事能力の向上をもたらす内容を網羅することが大切です。

今回は、全従業員が仕事能力を高めるために、行動指針に盛り込むべき内容の中から、基礎的な仕事能力の向上として「仕事の基本姿勢」について述べたいと思います。

「行動指針を作成し浸透させて、従業員に仕事の基本姿勢を身に着けてもらいたい」とお考えの経営者に、行動指針の基礎的な内容の文例になると思います。ぜひ参考にしていただけたらと思います。

本格的な仕事能力の向上につながる行動指針の文例は、「社員の仕事能力向上のために行動指針に入れるべき内容とは?」をご参照ください。また、リーダーの仕事能力を高めるための行動指針の文例は、「管理職の人材がリーダーシップを高めるための行動指針」をご参照ください。

向上心を高める

行動指針を作るにあたって、まず考えるべきことは、「どうすれば従業員の皆さんの向上心を高められるか」ということです。向上心は、企業における基本姿勢の一つです。

向上心とは、仕事や家庭などの人生において、自分の知識や能力、考え方などを向上させていこうとする気持ちのことです。

人には「年齢相応」という言葉があります。年齢を重ねるにつれて、人間性だけでなく仕事能力も向上していかなければ、会社の発展に自分が追い付かなくなり、置いて行かれてしまう人になってしまいます。また、その逆に考えると、会社の発展は、社長をはじめ向上心のある従業員たちによって実現します。

行動指針の内容がどれだけ良くても、従業員の皆さんの仕事に対する向上心が高まらなくては、従業員の仕事能力の向上が伴いません。行動指針を作って何度研修を行ったとしても、従業員の仕事能力は向上しませんので、その投資はムダになってしまいます。

人の向上心というものは、教えられて身に付くもののように思われますが、本来、すべての人の心に向上心が眠っています。向上心のない人はいないのです。

職場の中には、向上心が低いように見える人もいますが、それは、今まで過ごしてきた環境や、受けてきた教育、過去の失敗、自信喪失などによって、一時期、向上心が発揮できていないだけなのです。ですから、まず、従業員の向上心を呼び覚ますことが大事です。

そのためには、まず行動指針の内容に向上心の内容を入れることです。そして、従業員の皆さんが行動指針を受け入れ、実践することが、自分自身のためになることをしっかりと伝え、理解・納得してもらうことがとても大切です。

皆さんが、今よりも仕事ができるようになり、お客様や、共に働く仲間たちに喜ばれ、やりがいが高まってゆくこと。そして、全従業員の総合力が向上すれば、社業がますます発展し、皆がより豊かになってゆくことができることを伝えることが大切です。

行動指針の内容に「向上心」を入れることが大事であることはご理解いただけたと思いますが、具体的にどのような内容を入れたら良いのかをご説明いたします。

仕事の基本動作

従業員が仕事で成果を出すためには、最低限でも「指示された仕事がこなせる」ということですが、仕事の指示を1~10まですべて指示してもらわないと仕事ができない人もいます。

いつまで経っても、すべて指示してもらわないと仕事ができないようであれば、成長できていない人です。そういった人ばかりですと、会社は成り立ちません。

行動指針の内容として、まず、仕事の基本動作をマスターできる内容を網羅して、スキのない仕事ができるようにしてゆきましょう。

そのための基本的な内容として、次の6つの項目を行動指針に入れるべきです。

  1. 仕事の優先順位
  2. 予習型の仕事
  3. 仕事の段取り
  4. 仕事のスピード感
  5. 整理・整頓
  6. 仕事の詰め

それぞれ、内容を解説いたします。

仕事の優先順位

仕事の重要度と緊急度

一日に仕事に使える時間が8時間なら、「その8時間という時間を、いかに上手に使うか」ということが、仕事能力向上の決定的なポイントです。

仕事時間のムダを省き、効果的な仕事を行うためには、仕事を重要度順、緊急度順に整理し、重要な仕事から挑むようにすることです。

まず、図のように、仕事を重要度と緊急度で4種類に分類します。

  1. 重要で急ぎの仕事
  2. 重要だが急ぎでない仕事
  3. 重要でないが急ぎの仕事
  4. 重要でなく急ぎでもない仕事

最初にやらなければならない仕事は、「重要で急ぎの仕事」です。この仕事は、何を置いても先に行なわなければなりません。例えばクレーム処理です。

また、これらの仕事の中で最も大切な仕事は、「重要だが急ぎでない仕事」に位置づけられるものです。

「重要だが急ぎでない仕事」とは、どんなものでしょうか。例えば、マニュアルを作って他の人でも同じ品質の仕事ができるようにしたり、部下教育をしたり、等の仕事が挙げられます。

「重要だが急ぎでない仕事」を後回しにせず、一日の一定の時間を使ってコツコツと進めることで、仕事に追われることがなくなってゆくのです。そうすると、より重要な仕事に使う時間を増やし、高い成果を上げることができるようになります。

このように、仕事をすべて並列に見るのではなく、重要度と緊急度の高い順に優先順位を付けて仕事をすることが、優れた成果を上げるための方法なのです。

予習型の仕事

一日の時間を有効に使うためには、「今日できることを明日に回さない」という心構えが大切です。このように、仕事を先々に片付けていく仕事の方法を「予習型」と言います。

気力を振り絞って、今日の仕事時間内に、やるべき仕事をやり切る習慣を心がけることが大事です。

すると、目先の仕事が溜まることがなくなり、「重要だが緊急でない仕事」として創造的な仕事ができるようになります。

仕事の段取り

昔から、「段取り八分(はちぶ)、仕事二分(にぶ)」と言います。「事前にきちんとした段取りさえしておけば、仕事の8割は出来ている」という意味です。

「段取り」の由来は、「神社などの門前の石段を造る際に、その傾斜から見て、どのくらいの大きさの石材を用いて何段にするか」という設計からです。出来上がった石段が歩きやすいと「段取りがいい」と評価されたそうです。

仕事に取りかかる前に、具体的な手順をしっかりと詰めておけば、仕事の質がよくなり、スムースに進めることができます。また、段取りをする時には実際の仕事の様子をシミュレーションしますから、事前にミスを防ぐこともできます。

もちろん、実際に仕事に挑めば、予想外のことが次々と起こり、段取りを見直す必要も出てきます。しかし、それでも最初の段取りがあるからこそ、ミスを最小限に抑えられるのです。

家を建てるときには、最初に必ず設計図、工程表を作成します。それがなければきちんとした家が建たないように、段取りは仕事の出来の8割を決めるのです。

また、「朝一番で今日やる仕事を構想する」という習慣を付けることから始め、できれば前日に「明日やる仕事を今日のうちに構想しておくこと」ができれば、優先順位のところで述べたことと併せて、仕事の時間を有効に使えるようになります。

仕事のスピード感

「仕事はスピードが命である」と言えます。「速いと勝つし、遅いと負ける」ということが多々あります。重要な仕事、優先度の高い仕事、とりわけ上司から任された仕事にはすぐに取り組むことが大事です。

料理は、時間が経つと鮮度や味が落ちてしまい、美味しくなくなり、場合によっては食べられずに捨てられてしまいます。仕事は料理のようなもので、「後でやろう」と思っているうちに、その仕事自体の重要性が低下して、仕事をするタイミングを失ってしまうのです。

また、後でやろうと思っているうちに、他の仕事が入ってきてしまい、多くの仕事を抱えてパニックに陥ってしまう人もいます。

さらに、チームや組織で仕事をする場合は、仕事は自分一人で完結することなく、メンバーで力を合わせて仕事をこなします。もし、一人の仕事が滞ると、全体の仕事が遅延したり、質が低下したりすることにつながり、チームや組織全体の成果に悪影響を与えてしまうのです。

反対に、一人ひとりの仕事が正確で、緻密で、手際よく、スピード感があると、それが会社全体の成果を高めることができるのです。スピード感と同時に、正確さや緻密さ、手際よさも併せ持つことが大事です。

整理・整頓

仕事環境の「整理・整頓」は、仕事における基本動作として大切なものです。良い仕事をしようと思ったら、仕事環境や道具が良いものでなければなりません。

整理とは、不要なものを捨て、必要なものだけを置くことです。整頓とは、必要なものを、必要な時に、すぐに取り出せるように配置することです。

仕事環境は心の表れです。不要なものを捨て、あるべきものをあるべき場所に収めることによって、思考をシンプルにし、雑念を振り払うことができますから、重要な仕事に集中できるようになります。環境整備によって生産性が高まるのです。

仕事の詰め

よく詰められた仕事とは、抜けやミスがなく、よく考え抜かれた、質の高い仕事です。

抜けやミスの多い仕事をすると、そのミスをカバーするために、上司や同僚等、他の人の大切な時間を奪ってしまうことになるのです。

仕事を詰めるためには、やる気と集中力が大切です。さらに、その仕事に関係し、影響が及ぶ範囲を考えた上で仕事をすることが大事です。

全体最適とセクショナリズム対策

「全体最適」と「部分最適」という言葉があります。全体最適とは、個人や部署が、会社全体の調和と発展に役立とうとする考え方のことです。一方、部分最適とは、個人や部署としては成果を出そうと努力することです。

部分最適では、個人主義で成果を出すかもしれませんが、会社全体としては最大の成果に結びつかない考え方です。そこで、全従業員が、部分最適から脱却して、全体最適の考え方を持つことがとても大切になります。

しかし、組織が大きくなってくるにしたがって、部分最適に陥いやすくなるものです。その原因の一つがセクショナリズムです。

これは、会社に複数の部署があることで起こります。部署が多いと、自分の部署が受け持つ役割や成果は見えても、他の部署の役割や仕事は見えにくいものだからです。そのため、自分の部署のことのみを考えて仕事を進めてしまうようになります。行動指針には、その対策の内容を入れておく必要があります。

セクショナリズムを対策する上で大切になる考え方は、「全体観を持つこと」です。自分の仕事や自分の部署のことだけを考えるのではなく、他の部署の仕事や、会社全体が向かうべき方向に関心を持ち、全体に貢献することを考えることが必要なのです。

貢献マインド

貢献マインドを持つ

貢献マインドとは、「他人に貢献したい」という気持ちのことです。

会社は事業活動を通じて社会に貢献するために存在しています。貢献がなければ、お客様から選ばれなくなり、淘汰されてしまいます。競合他社よりも貢献できる会社になって、発展できる会社になります。

そのためには、従業員の多くが貢献マインドを持つことです。

セクショナリズムのところで、自分のことや自分の部署のことだけを考えていたら問題となることを述べました。その対策の一つが「貢献マインド」です。

貢献マインドを説明すると多岐に渡りますが、「有用な人となること」と、「顧客マインドを持つこと」に絞ってご説明いたします。

有用な人となること

会社で働く人、個人としては「認められ、評価されたい」「収入を増やしたい」という気持ちがあることは、向上心の表れですから悪いことではありません。

その向上心に貢献マインドが伴わないと、有能な人であっても、組織全体としては不適切な人物、無用な人物になってしまいます。

利己心を乗り越えて、会社全体の利益を考えられる人ほど評価されるのです。

「有能な人」から「有用な人」に成長するカギ、それが貢献マインドなのです。

個人は部署のために、部署は会社のために、会社は社会のために、利他の気持ちをもって仕事に取り組む姿勢を持つことが大切です。貢献マインドを持った従業員ばかりですと、会社全体も貢献マインドがにじみ出てくるものなのです。

顧客マインドを持つこと

「仕事の目的は何か」と考えると、それは、お客様をつくり出すことです。それは、会社が貢献できる対象者を増やしていくことになります。

「働く」という言葉は、「(はた)(らく)にする」から来ているという説があります。

人が困っていることや、苦労していることを見つけ、それを楽にすることが仕事の原点です。根本を考えてみれば、会社がお客様の役に立っているからこそ、お客様が代金を支払ってくれて、会社の経営が成り立っているはずです。そして、従業員の皆さんに毎月お給料が安定的に支払うことができるのです。

ですから、全従業員の仕事がお客様の方を向き、お客様が中心になっていることが、とても大事なことなのです。常に、お客様を最優先に考えることが、企業が存続するための必要条件であるのです。

コスト意識を高める

コスト意識を高める

向上心を高めるために行動指針に入れる内容として、最後にコスト意識をご説明いたします。コスト意識とは、「節約」「倹約」「経費節減」を心掛けるということです。

節約や倹約、経費節減を言われたら、「小さいことに目くじらを立てて、うるさいことを言われている」と感じる人がいるかもしれません。

しかし、「会社の経費を大切に使う」という心構えはとても大切です。コストに対する意識は、社員自身が豊かになるか、ならないかの分かれ道になるからです。

会社の利益は、多くの人の努力の結晶です。その利益を使って新商品開発をしたり、営業活動をしたりするので、利益は会社の経営をより盤石にし、従業員の皆さんの生活を守るための資金になります。

そのことに感謝して経費を大切に使う、貯蓄型の傾向を持つ人が豊かになるのです。

お金の使い方について考えることも、とても大切です。しかしその前に、倹約してお金を貯め、経済の元をつくる基礎力が大事なのです。

会社が大きくなって売上規模が増えると、お金の使い方に対しての危機意識が緩んでしまうことがあります。規模が大きくなるほど同じ金額が小さく見えてくるからです。

ですから、会社が大きくなるにしたがってコスト(経費) に対する意識を高めなくてはなりません。会社の発展と人の成長は比例していかなくてはならないのです。

また、お金を大切に扱う人が、周囲からの信頼を得る人なのです。

以上、全従業員が仕事能力を高めるために、行動指針に盛り込むべき内容の中から、基礎的な仕事能力の向上として「仕事の基本姿勢」について述べました。

ここで述べた内容は会社全体の基本姿勢ですので、部署毎や役職毎に基本姿勢が別途必要となります。

これらをベースとして行動指針を作成し、浸透させ、会社の未来ビジョンの実現に貢献する従業員を育成していける会社になっていただきたいと思います。

ここで、当社のサービスの1つ、経営理念コンサルティングのご提案をさせてください。

当社では、経営理念を作成する上で最も時間のかかる作業である「行動指針の作成」を時間短縮するために、行動指針のテンプレートを開発しました。

このテンプレートを用いることで、貴社にとって最適な行動指針の作成時間を、劇的に短縮できます。ここでご紹介した内容は、そのテンプレートの内容の一部です。

行動指針のテンプレートを用いて、貴社にとって最適な行動指針を作成するご支援を、経営理念コンサルティングにて行っています。

  • 行動指針を作成し浸透させて、従業員の仕事能力を高めたい
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そのようにお考えの社長や経営者は、ぜひ当社の経営理念コンサルティングをご利用ください。

経営理念コンサルティング

この記事の著者

関山淑男

経営理念コンサルタント
関山 淑男 (Sekiyama Toshio)

経営理念の構築・浸透とビジネスコーチングのスキルに親和性があることに気づき、研究や実績を重ね、経営理念コンサルタントとしてのスキルを確立していく。社長としての経営経験や赤字企業の業績回復支援の経験から掴んだ教訓、ピーター・ドラッカー先生や一倉定(いちくらさだむ)先生などの経営理論を融合させ、独自の経営理念コンサルティング・メソッドを開発。

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