理念経営を実践している社長の中には、社長が掲げた、もしくはすでに掲げられている経営理念を、「見直したい」と思う場合があります。
そのとき、「経営理念は変更しても良いのだろうか?」と意思決定に悩まれる社長もいらっしゃいます。
経営理念は、実は変更しても良いです。
この記事では、経営理念を変更しても良い理由をご説明しつつ、経営理念を見直すタイミングを明確にし、それぞれのタイミングにおいてどのようなことをしたら良いのかを解説いたします。
経営理念は変更しても良いのか?
結論としては、先ほど述べたように、「変更しても良い」ということです。
ただし、コロコロと変更していては、社員が着いてきませんので、そのあたりの兼ね合いもあります。
しかし、会社の未来は、社長の意思決定によって決まるものですので、「このままでは、会社がダメになる」と思ったら、経営理念を変更しても良いです。
また、前向きな変更は、ぜひとも行うべきです。
経営理念の実現に向けて活動をすることは、スーパーマーケットに買い物に行くようなものです。
「今日はカレーを作りたいので、その材料を買いましょう」と、カレーを作成する未来ビジョンを立てて、スーパーマーケットに行きます。メモには、ジャガイモやニンジン、鶏肉などを書いていて、それだけを買い物かごに入れたら良いのですが、そうはいきません。
予定していなかったチーズやお惣菜のカツを購入することもあります。レタスが思っていたよりも安くて、「サラダも作りましょう」ということになります。
経営理念も同じように、本来目指していたものがあったとしても、事業活動が軌道に乗ってくると、社長のイメージがさらに膨み、目標がより高度なものになっていくものです。
なぜ会社の目標が変わっていくのか?
会社のミッションを実現するために、社長を筆頭に事業活動に取り組んでいくうちに、社長の先見力が高まり、「あの事業もやりたい、この事業もやりたい」と夢が膨らんでいくこともあるのです。
そして、社長の先見力や自信が高まり、経営の勉強も進んでいくと、今現在の経営理念では物足りなくなってくることがあります。
そういったときには、「経営理念を変更するのか、しないのか」ではなく、変更した方が良いのです。
会社の活動エネルギーの根源は、社長から放たれるものです。社長のやる気が高まると、社員もやる気が出てくるものです。経営理念を変更することで、社長のやる気がさらに高まるのであれば、変更した方が良いのです。
経営理念を見直すべきタイミングとは?
このような、経営理念を見直すタイミングにはいくつかあります。大きくは、経営理念の練り込みが足りないときと、経営理念が物足りなくなったときです。主なタイミングは、次のものです。
- 経営理念を作成したが社員が受け入れてくれないとき
- 会社が成長して、作成した経営理念が陳腐化したと感じたとき
- 未来ビジョンをもっと大きなものにしたいとき
- 先代社長が作成した経営理念が形骸化したと感じたとき
- 先代社長が作成した経営理念に不足を感じたとき
以下、経営理念を見直すべきそれぞれのタイミングを解説いたします。
経営理念を作成したが社員が受け入れてくれないとき
経営理念を作成したけれども、その経営理念を社員が受け入れてくれないときは、経営理念を見直すタイミングの場合があります。
経営理念が浸透するための条件として、大きくは、次の2つのことが挙げられます。
- 経営理念が正しいものである
- 経営理念が本物である
- 経営理念を正しく浸透させている
1番目の「経営理念が正しいものであること」、2番目の「経営理念が本物であること」が、経営理念自体に問題があるのかどうかです。ここに問題を発見したのであれば、経営理念を見直すタイミングです。
正しい経営理念とは?
正しい経営理念とは、経営理念に次の4つの要素が含まれているものです。
- 公的使命
- 将来の会社の規模
- どのようにしたらそれらが実現できるのか
- 将来の社員の処遇
経営理念にこれら4つの要素が含まれていない場合は、経営理念を見直して、正しい経営理念に仕上げてください。
本物の経営理念とは?
次に本物の経営理念についてご説明いたします。本物の経営理念とは、上記の正しい経営理念であることを前提として、次の2つの条件が満たされるものです。
- 社長が燃えるような使命感ややる気が沸々と湧き出てくる
- 社長が率先して実施できる
両方を満たしたものは、「社長が納得できた経営理念」ということが言えます。社長が、こういった感情に至らない経営理念は、経営理念の練り込みが足りないものです。
練り込みが足りない場合は、次のように経営理念を作成した場合が多いです。
- 他社の経営理念を真似した
- 部下が作成した
そういった経営理念を見た社長は、やる気が出てくることはありませんし、率先して実施しようとは思えるはずがありません。
社長自らが経営理念の作成に取り組み、何度も何度もつくり変えて納得できるものを作成してください。
会社が成長して、作成した経営理念が陳腐化したと感じたとき
本物の経営理念を作成しても、会社の成長とともに経営理念が陳腐化してくることがあります。
例えば、戸建てやリフォームをサービス内容している工務店が、事業を拡大させて不動産を始めたり、ビルメンテナンスを始めたりした場合です。
当初の経営理念としては、例えば「家族の絆を大切にする住宅会社」と位置付けていたとしても、ビルメンテナンスは家族の絆とは関係が薄くなってきます。
そのように会社が成長をして、事業を拡大させていったときに、事業内容と経営理念が合わなくなってきて、社員が混乱してくる場合があります。そういった場合には、会社全体としての経営理念は、変わってこざるを得ないのです。
経営理念を見直して、より多くの人たちに貢献できるような経営理念に変更すべきです。
未来ビジョンをもっと大きなものにしたいとき
会社が事業を拡大していくということは、社長のマネジメント力が上がっていることを意味します。そのために、社長は、書籍で勉強したり、コンサルタントの先生から教わったり、研修に出たりと、日々の勉強を欠かさず行っていることと思います。
そうしているうちに、社長の先見力が高まり、過去に立てた経営理念では物足りなくなってきます。すると、社長の情熱が弱くなってしまいます。すると、会社全体の情熱は、社長から流れ出てくるものですので、会社の勢いが弱くなってしまいます。
そういった場合には、社長の事業活動に対する情熱を高めるために、経営理念を見直して、より高度な未来ビジョンを立てることが大事です。
先代社長が作成した経営理念が形骸化したと感じたとき
経営理念が形骸化した状態とは、まるで貝の抜け殻のようなものです。先代社長が作成した経営理念に、何か抜け殻のようになったものを感じたら、経営理念を見直すタイミングです。
会社を成長させた先代社長は、必ずと言ってよいほど経営理念を作成しているはずです。
経営を引き継いだ次代以降の社長は、「先代が作成した経営理念を変更しても良いのだろうか?」と悩まれることは、多いと思います。自分自身が考えることと、先代社長が考えた経営理念とが合わなくなってくることがあるからです。
一般的には、「経営理念は変えてはいけない」と言われています。
私はそれに対して異を唱えたいと思います。実は、経営理念の中でも変えてよいものと、変えてはいけないものの両方が含まれているのです。
先代社長が作成した経営理念を変えて良い条件は、次のようなことがあります。
- 市場が変化し、経営理念の内容と事業内容が変わってきた
- 事業規模が大きくなって、経営理念が合わなくなってきた
- 働き方が変わり、今の経営理念の内容では問題がある
このような変化があったときは、先代社長が作成した経営理念が形骸化してきていることと思います。
経営理念の中の未来ビジョンに当たる部分は、会社の成長と社長の先見力に応じて、より高度なものに変更を加えるとよいと思います。また、経営理念の中の原理原則に当たる部分は、現代風に解釈を変えるような変更を加えるとよいと思います。
先代社長が作成した経営理念を変更したい場合は、その先代社長と共に働いてきた重鎮の方々によくよく説明して、コンセンサスを取るようにしてください。
先代社長が作成した経営理念に不足を感じるとき
先代社長が作成した経営理念が形骸化していなかったとしても、現在の社長が過去の経営理念に不足を感じる場合があります。
それは次のような場合です。
- 経営理念の言葉数が足りないので、社員が経営理念に込められた意味を深く理解できない
- 社長自身が、経営理念にいま一つ燃え立たない
どちらも、経営理念の内容が社訓のような、5~6個ほどの箇条書きの内容が多いです。
社訓を作成された社長は、その内容に深い意味を込めてのことだと思います。しかし、現在とは時代背景や仕事のやり方が違い、社員の思考パターンも当時とは異なっているので、後代の社員たちには、意味が理解できない場合があるのです。
そういった場合には、その経営理念に新たに現在風の名称のものを加えたり、社訓の解説を付けたりして、アレンジしていく必要があります。
もし、先代社長が作成された社訓に不足を感じる場合には、次の項目を追加されたらいかがでしょうか?
- わが社のミッション
- 未来ビジョン
- 社訓の解説書
先代社長が作成された社訓に、現在の社長が考え抜いたこれらの内容を加えて、経営理念のパッケージとして社員に浸透させると、経営理念が活きてくるものと考えます。
以上、経営理念を変更しても良い理由、経営理念を見直すタイミングと、それぞれの対応についてまとめました。
経営理念を変更しても良いときというのは、要するに「経営理念を前向きに変更したいとき」です。変更したくなる経営理念は、ダメな経営理念とは限らず、どうしても前向きに変更せざるを得ないことがあるのです。
しかし、経営理念の変更となると、どういった経営理念に変更したら社員が納得してくれるのか、正しく浸透させるためにはどういった方法を取るべきなのか、初めての場合には分からないことも多いことでしょう。
そういった場合には、ぜひ当社の経営理念コンサルティングをご利用ください。
経営理念コンサルタントのアドバイスで経営理念の見直し、作成、浸透をさせると、それらの時間を短縮し、会社の成長が早めることができるはずです。
経営理念の見直しをしたい社長は、ぜひご相談ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。