行動指針は、社員全員が質の高い仕事ができるようになるための方法が書かれた、経営理念の構成パーツです。
このコラムでは、行動指針をどのように作成したら良いのか、その方法を6種類ご紹介しつつ、「行動指針は、コンサルタントの助力を得て作成し、浸透させていった方が良い」ということを述べたいと思います。
その前に、行動指針を作成する理由や、行動指針は誰が作るべきなのか、行動指針の内容について述べたいと思います。
行動指針は何のために作成するのか?
経営理念は、一般的に「我社は何のために存在しているのか?」「何のために、この事業が存在しているのか?」といった大義名分が書かれたものです。それを一言で表したものを、当社では「基本理念」と呼んでいます。また、それを分かりやすく具体化したものを、「企業ビジョン」と呼んでいます。
基本理念や企業ビジョンを実現するために、社長をはじめ全社員がどのような指針でもって仕事に取り組むべきなのか、それが行動指針にまとめられます。
つまり、行動指針を作成する理由は、社員をはじめ全社員が仕事に取り組むための正しい考え方を身に付け、能力を高めることで、社長が描くビジョンを実現するためです。
行動指針は浸透させてこそ機能する
立派な行動指針ができたとしても、浸透させなければ機能しません。行動指針を作成して浸透させなければ、運転免許を取得しても、自動車を運転しないことと同じで、会社が目的地に達する速度を早めることができないのです。
行動指針を浸透させるためには、行動指針を研修形式にする方法があります。
行動指針には仕事能力を高める方法が書かれているわけですので、行動指針の社員研修をすることによって、行動指針理解が深まり、社員の仕事に対する考え方が変わり、仕事能力が高まります。
行動指針は誰が作成するのか?
行動指針の作成は、社長が行うことがベストです。
「私は営業のことは分からない」とおっしゃる場合には、社長は基本的な行動指針の作成をご担当されたら良いと思います。その基本的な行動指針に基づいて、営業部など専門知識が必要になる行動指針の作成を、各部の部長に任せたら良いと思います。
社長が行動指針を作成しなければ、会社は社長が意図していない方向に進んでしまう可能性があります。その理由は、後ほどご説明いたします。
社長自ら行動指針の作成に取り組まれるときの要点をお伝えしたいと思います。
それは、行動指針を作成する「動機」、行動指針を作成し浸透させるための「目的」、行動指針を作成する「方法」と「過程」、行動指針の言葉づかいや行動指針に基づいて行動する人がもたらす「結果」、これらが正しいものかどうかです。これらの解説は、別の機会に述べたいと思います。
行動指針に何を盛り込めば良いのか?
行動指針に盛り込むべき内容は、多岐に渡ります。文章量は会社によって異なり、箇条書きで数行程度の行動指針もあれば、本1冊になるぐらいのボリュームになることもあります。
初めて行動指針を作成される社長は、最初から本1冊分になるような立派な行動指針は作成する必要はないと思います。社長が「仕事の質を高めるためには、これが必要だ」と思う内容を入れていく必要があります。
行動指針の内容には、質の高い仕事をするための「考え方」を書くことが一般的です。
例えば、挨拶の仕方を行動指針に書いたとしましょう。その内容として、「体の角度は斜め45℃にしなければいけない」「そのとき指はまっすぐ伸ばしておくこと」といった具体的過ぎる内容まで書く必要はありません。そうではなく、「相手に感謝の気持ちを伝えるように挨拶をすること」といった具合に、挨拶の考え方を入れておくと良いです。
具体的な内容についても、話が長くなるので、別の機会でご紹介したいと思いますが、簡単にご説明しますと、次の4種類のカテゴリの考え方について、最低でも盛り込みたいところです。
- 他人に対する接し方
- 仕事ができるようになるための要点
- 失敗したときの正しい対応方法
- 積極性を持って仕事に取り組むこと
- 人としての品性を高める方法
これらをベースに、会社特有の言葉を使って、それぞれ箇条書きで表現していったら良いと思います。
正しい行動指針ができあがったら、それを基にした人事評価や採用基準もできます。行動指針に基づいて仕事をしたら仕事能力が高まるため、「行動指針に基づいた仕事ができているか?」を評価基準とするのです。そして採用では、行動指針に親和性のある人材を採用していくことで、相乗効果で行動指針の浸透が行いやすくなり、会社全体の仕事能力が高まると思います。
行動指針を作る方法と注意点
それでは、行動指針をどのように作成したら良いのか、その方法を6種類と注意点をご紹介いたします。結論として、「行動指針は、コンサルタントの助力を得て作成し、浸透させていった方が良い」ということを述べたいと思います。
1.社長が自力で作成する
社長自ら、行動指針を自力で作成する場合です。本来であれば、この方法が理想です。
初めて行動指針を作成する場合、どのような内容のものを作成したら良いのかわからないものです。書籍や他の企業の行動指針を参考にして、行動指針が出来上がっても、「我社の行動指針はこれでいいのか?」と思う人がほとんどだと思います。
納得のいく行動指針ができたとしても、その内容が正しいものかどうかわかりません。
出来上がった行動指針は、社員に教育して、浸透させようとします。その行動指針が仕事論や倫理観から見て正しいものでない場合、もしくは社員たちに理解されなかったり、受け入れてもらえなかった場合には、行動指針が形骸化していきます。
そのため、できれば社長が自力で作成することは避けた方が良いと思います。
2.他の会社の行動指針を参考にする
続いて、他の会社の行動指針を参考にして利用するものです。
従業員数が万の単位にもなっている立派な会社の行動指針は、とても良い内容で、完成度も高いと思います。逆に、行動指針の完成度が高いために、立派な会社になっていった面もあるでしょう。
そういった立派な会社の行動指針を参考にすることは、とても良いことだと思います。しかし、各社の経営理念の表現方法は千差万別であり、どの企業の行動指針を参考にしたらいいのか分かりませんし、良い行動指針を探し当てることも大変です。気に入った企業の行動指針があっても、事業内容や時代背景などが異なるため、まったく同じものというわけにはいきません。参考にする行動指針の中から、自社に合わせて変化させたり、間引いたり、新しいものを付け加えたりすることも大事です。
どの企業の行動指針が立派なのか、行動指針を参考にする場合はどのように変えていったらいいのか、誰かに相談できたら理想的です。当社では、そのような相談にも対応しているので、お気軽にご相談ください。
3.行動指針のテンプレートを利用する
当社の経営理念コンサルティングでは、行動指針のテンプレートをご用意しています。
初めて行動指針を作成する場合は、テンプレートを参考にして自社に合う内容を選んだり改善したりすると、オリジナルで作成するよりも圧倒的に短い時間で済みます。
ちなみに、初めて行動指針を作成する社長の場合、オリジナルで作成するとなると、経営理念コンサルタントの支援を受けても、半年ぐらいかかる場合もあります。なお、支援がなければ「無限に時間がかかっていただろう」とおっしゃる社長もいます。
行動指針をオリジナルで作成した方が良い場合と、テンプレートを利用した方が良い場合の違いですが、従業員数が100人を超えている会社や、先代から引き継いで経営理念を刷新させたい社長の場合は、オリジナルで行動指針を作成した方が良いでしょう。
また、それよりも小さな会社の創業社長の場合は、テンプレートを用いて行動指針を作成すると良いと思います。そして、行動指針を浸透させていく中で、不具合を感じる内容が出てくれば、随時改善していけば良いのです。
4.社員に作成してもらう
次に、経営幹部や秘書などに、行動指針を作成してもらうパターンです。
これは、お止めになられた方が良いです。
社長は、社員の仕事に責任を持つ人です。社員が、社長に代わって質の高い仕事を行い、成果を出すことができるようにするためのものが行動指針です。それを経営幹部や秘書などが作成したとしたら、社長の思うような会社ではなくなってしまいます。
経営幹部や秘書が、社長のように私心なく公器な考えを持っていることは稀で、少なからず自己保身を持っているものです。自己保身が、行動指針の中に入り込んでしまうと、その会社は行動指針を作成した人の都合の良いものになりかねません。
仮に、社員が作成した行動指針が立派なものになったとしましょう。ところが、そのような行動指針は浸透させられないことに、お気づきでしょうか?
なぜなら、社長からすると部下である社員が作成した行動指針は、社長自身が受け入れて取り組むことができないからです。会社のトップである社長が行動指針を守らないのに、社員が行動指針を守るでしょうか?
これらのことから、行動指針の作成は、社長自らプロジェクトリーダーとして取り組むべきだと考えます。
5.コンサルタントが作成したものを利用する
5番目は、コンサルタントに行動指針を作成してもらって、それをそのまま自社に取り入れるパターンです。
これもお止めになられた方が良いです。
行動指針は、全社員が取るべき考え方や行動が書かれたものです。それが起業文化に醸成されていきます。企業文化を外部の人間に依存してしまっては、社長が思う理想の会社にならない可能性があるからです。
コンサルタントが作成した行動指針を、社長が目指す理想の姿に書き換えられるのであれば、問題ないと思います。
6.コンサルタントの助力を得て作成する
社長自ら行動指針の作成を取り組むことは、すでにご承知いただけたことでしょう。
初めて行動指針を作成するときは、他の企業の行動指針を参考にしたら良いのか、テンプレートを使用したら良いのか、オリジナルで作成したら良いのか、迷われたことでしょう。
そこで、経営理念コンサルタントの助力を得て、行動指針を作成することについて、少しご説明いたします。
経営理念コンサルタントには、次の2種類あります。
- 経営理念の作成を支援してくれる
- 経営理念の浸透を支援してくれる
ここで注意点なのですが、経営理念コンサルタントは後者の「浸透を支援してくれる」という人が多いことです。つまり、行動指針を作成したい場合は、「作成を支援してくれる」という人に依頼しなければならないのです。
行動指針を含む経営理念の作成は、とても熟練を要するものです。経営に関連するさまざまな原理原則を知り尽くしていなければ、なかなかアドバイスできるものではありません。
そして、社長とコンサルタントとの相性もあります。「相性の良い経営理念コンサルタント」とは、社長が体得した経営の悟りをうまく引き出して明文化しつつ、行動指針を完成させていく中で足りない部分を経営の原理原則から補ってくれるコンサルタントのことです。
当社の経営理念コンサルティングは、社長の経営の悟りを明文化し、正しい行動指針を作成するご支援をいたします。また、出来上がった行動指針を、正しく浸透させるためのご支援もいたします。
行動指針の作成支援は、チームコンサルティングIngIngにお任せください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。