統計を詳しくは調べていませんが、日本はさらなる不況に加え、政策の追い打ちなどもあり、多くの企業では減益し、倒産も増えてきているように感じます。
いろいろな場所で人手不足だと言われていますが、不況のあおりを受けている企業に人を雇う余力はありません。
不況の企業に勤める社員は、お給料が増えず、残業も減らされる有様ですから、手取り収入を増やしたい人は夜や休日に宅配のアルバイトなどで、ダブルワークをしている人もいらっしゃることでしょう。
個人が手取り収入を増やす方法の一つとして、起業があります。
不況の時代である現在では起業はおすすめできませんが、会社が倒産して就職ができず、起業をするしか方法が無い人もいらっしゃることと思います。そうかと思えば、血気盛んに起業を目指している人もおられることでしょう。
ともあれ起業を目指している方に、「起業して収入を増やし、事業を継続させていくためのポイント」をご紹介したいと思います。
私がピックアップしたい、起業前に確認すべき4つのポイントは、次のものになります。
- 志
- 営業力
- 業務知識
- 先見力
この記事ではこれらを解説しつつ、これらの能力を磨く方法をご紹介したいと思います。起業を志す方は、会社にお勤めの間に鍛錬なさってください。
この4つのポイントは、今現在の私の考えですから、何年か先には別のことを言っているかもしれませんので、ご了承ください。
1.志
事業は長く続けないと大きくならないものです。長く続けるための秘訣は志を持つことです。志とは、何か実現したいことを強く心の中で思うことです。
世の中を変えた偉人はすべからく志を持っていた
志と言われると、青臭いように思われたかもしれません。しかし、世の中を大きく変革し、時代を進歩させた人達は、誰しも青臭い志を持っていたのです。
スティーブ・ジョブス先生は人々の生活を先進的なものにしました。本田宗一郎先生はエンジン開発で世界と戦い日本を工業大国にのし上げました。豊田佐吉先生は国内で生産革命を起こしました。彼らは、世間の常識と戦い、新しい常識を生み出していきました。
私は、ドナルド・トランプ氏やイーロン・マスク氏も世の中を大きく変え、時代を進歩させる人物だと考えます。何度叩かれても竹のように折れずにしなり、リバウンドして何度も挑戦し続けています。彼らも青臭い志を持っているのです。
とある有名な家電量販店の社史を読む機会がありました。その家電量販店は、小さな町で個人事業主の延長のような組織からスタートし、20年間も小さな会社でしたが、20年ほどしてから急に成長し始めて、1店舗、また1店舗と支店が増えていって、店舗も大きくなっていって全国規模になっていったそうです。
その家電量販店の創業社長は、「地元に最も安い家電を届けたい」という理念を持っており、それを生きがいとしていました。途中で何度も苦しい目に遭いますが、志を実現すべく邁進していきました。そして、続けているうちに時流に乗って成長することができました。
もし、単に「儲けたい」という自分本位の小さな志であれば、事業が苦しいときに別の業種に乗り換えていたことでしょう。しかし、志を貫いた結果、20年間に何度も辛酸をなめていたのですが、その後に急成長をしていったのです。
起業の動機は立派なものでなくても良い
ご紹介した人たちは、立派な志を持っていました。しかし起業の動機は、そのような立派なものである必要はなく、自分本位のものでもかまいません。「お金持ちになりたい」とか「自分の実力を試したい」というものでもかまいません。
私などは経営の「け」の字も知らないで、世間もよく知らないで起業をしました。その結果、「アルバイトをした方が、手取りが良いのではないか?」と思える状態を、何度も経験しました。しかし、何としても実現したい志を持っていましたから、諦めずに続けることができました。その後、経営コンサルティング会社を立ち上げることもできました。
どのような動機であれ、事業を継続していくことが大事です。そして、5年10年と継続していく中で、少しずつ商売の仕組みを理解していき、お客様や社会への貢献に目覚めていくことが大事です。
本田宗一郎が起業をしたのは20歳のときですが、20代の行動を見ていると、どう考えても「金持ちになって遊びたい。技術者として日本一になりたい。」という自己中心的な動機で事業をしていたように思われます。ところが、30歳前後から動機が利他に変化していき、大きな会社を創ることになります。
志が人材を集める
志が利他に変化した頃、「類は友を呼ぶ」ともいわれるように、優秀な人材が社長の志に集まるようになります。今までは、「お金持ちになりたい」という動機ですから、「金の切れ目が縁の切れ目」になっていましたが、利他の思いを持つようになってくると、実績に応じて、その志に引き付けられて、人材が集まるようになるのです。
この利他の志が、経営理念の基になります。
では、最初から利他の志であれば、それに越したことはありません。しかし、起業当初は実績がありませんから、ある程度の勢いもあった方が良いです。ですから、半分ハングリー精神、半分利他がちょうど良いのではないかと考えます。
2.営業力
起業をするに当たり、営業力があった方が良いことは、誰も否定できないことでしょう。
営業力といってもいくつかの能力が組み合わされているものと思います。マーケティング力やコミュニケーション力、提案力は、すぐに思いつくものです。
日本一の技術力があれば営業力は必要ない!?
起業後の人は、誰しも営業力を大事に思います。しかし起業前では、人によっては営業力を否定する人もいます。どのような否定があるのかと言いますと、「良い商品をつくれば売れる」とか「私は技術者だから、日本一の技術を身に着けたい」といったことです。
しかし、いくら良い商品、いくら一流の技術を持っていたとしても、その技術を必要とする人がその存在を知られなければ、その人には売れることはありません。また、見込み客に「私は一流の技術を持っています」と言ったり、自分の技術が如何に素晴らしいものなのかを延々と解説したところで、「あぁ、そうですか」で終わり、クロージングまで至らないのです。
技術者の方は、どうも話し過ぎてしまう傾向があります。私も昔はそうでした。自分の技術力をPRしたい気持ちは分かりますが、相手の立場に立ってお話しをしないと、いくら良い技術であったとしても、相手は嫌がってしまいます。
営業の基本は話すことではなく聞くこと
営業力を身に着けるために、まずは聞くことを学んでいただきたいと思います。私は、今まで話し過ぎてしまって、自社商品に興味のある人でも、ほとんど営業ができませんでした。あるとき相手の話が聞けるように訓練してからは、興味のある人に説明をすると半数以上の方とご契約に至れるようになりました。
「自分の技術を売り込まないと、相手に理解してもらえないし、興味を持ってもらえないじゃないか」と言われるかもしれませんが、まずは相手が自分の技術を欲しているのかどうかを聞いてからです。
人の顔には耳が2つ、口が1つあるように、自分が話す時間よりも相手の話を聞く時間を2倍ほど持つようにしてください。
相手の話を聞くことは「技術」として習得可能
相手の話が聞けるようになることは、単なる技術なのです。技術は、訓練したら誰でも身に着けることができます。
聞く技術をどのように訓練したら良いのかということですが、「コーチング講座」で訓練ができます。コーチングの技術を身に着けることは、コミュニケーション力を伸ばす大きな布石になります。
チームコンサルティングIngIngでも、コーチングを基礎から学べるコーチング入門講座を開催しているので、営業でクロージングが苦手な方、営業力を強化したい方は、IngIngにぜひお問い合わせください。
とある技術系出身の社長がコーチング入門講座を1回ご受講なされました。すると、「今までの私の営業は間違っていた」と気づかれました。今までの営業では、自社製品のことをとにかく話して話して話しまくることをしていたのですが、「なぜ商品の良さをこれだけ伝えても、誰も購入してくれないのだろうか?」と悩んでいました。コーチング入門講座を受けて、自分の間違った営業によって、相手から嫌がられていたことに気が付いたのです。その方は、相手に質問をして相手の話を聞けるようになり、契約が取れるようになりました。
先ほど営業では、相手の話を聞くことが大事であることをお伝えしましたが、相手の話を聞く方法は技術として身に着けることができます。相手の話を聞いて営業力を高めたい方、営業で「今日も話し過ぎてしまった」と反省される方は、コーチング入門講座はおすすめです。
パソコンの知識も営業力の一つ
営業力の構成要素の一つとして、パソコン操作やインターネットのリテラシーなど、パソコンの知識もあります。この知識があるのかどうかかによって、営業力が大きく左右される時代となりました。
起業した当初は資金がかなり限られているので、チラシやホームページなどを自分で制作すると思います。それらを外注したら、チラシのデザインで10万円、ホームページ制作で30万円ほどかかります。ご近所の小さな広告代理店に依頼したら、2つの見積もりの合計金額が100万円ほどになることでしょう。さらには、修正や更新をしてもらうとなると、追加料金がかかる始末です。
ここでご注意いただきたいことは、「チラシやホームページを制作しただけでは、営業をしたことにはならない」ということです。チラシは見込み客に配って営業したことになります。ホームページは、見込み客に見てもらうことで、営業したことになります。
チラシやホームページで集客をするためには、キャッチコピーやデザインといった特殊な技術を要します。ホームページでの集客に関しては、SEO対策やコンテンツマーケティングといったものも必要となります。やはり、プロに外注した方が良いものができますから、費用対効果を念頭に置いて、起業時に資金を貯めておいて、PRツールの製作を外注してみてください。
起業の当初は、自分でできることはなるべく自分で行い、資金を温存しておくことが得策です。
当社では、パソコンの操作方法やチラシの作り方のご指導もしているので、お気軽にご相談ください。
3.業務知識
就職している間に学ぶべき業務知識は、次のようなことです。業務知識は、営業力にも影響します。
- ビジネスの一般常識
- 業界の常識
- 業務の流れと納品力
- コミュニケーションの取り方
ビジネスの一般常識は当たり前のことと思います。ビジネスマナーも含まれます。
私が会社に勤めているときに、社長がネット検索で探し出したIT企業に相談したことがありました。営業にはIT企業の社長と営業担当の2名が来られましたが、社長は短パンを履いていました。夏とは言え、ジーパンでも良いので長ズボンを履いておいてほしいと感じました。
その社長は、「私は短パンを履くことがポリシーなのだ。このような私でもお付き合いくださる会社と取引をしたい。」と言っていました。私は、そのときは起業を考えていましたが、「このような社長にはなるまい」と決心したものです。
このエピソードは極端ですが、そのような常識外れな人を散見します。ビジネスマナーについては、私よりも読者様の方が詳しい場合もあるので、これくらいにしておきたいと思います。
ビジネスの一般常識以外のもの、少し解説をしておきたいと思います。
業界の常識
業界の常識で最も注意すべきことは、業界用語です。
起業したばかりの時期は、実績や信頼はゼロですから、ちょっとしたことで契約が取れない場合があります。その代表としては、「専門用語が出てこなかったとき」です。
例えば、私が経験したことでは、バランスシートの説明をしていたときに負債の部にある「純資産」という言葉が出なくて焦ったことがありました。本当に情けない話です。
相手が知っている言葉を、専門家である自分が口から出なかったときは、相手から「大丈夫かな?」と思われてしまいます。これが、60歳を超えてきたら、「年齢のせいで仕方がないな」と思われるのですが、それ以下の年齢であれば許されない場合があります。
営業に行く前に、用語が自然に口から出るくらいに、ロールプレイングで練習しておいた方が良いです。
業務の流れと納品力
業務の流れは、ご契約から納品・ご請求までの流れです。この流れを明確に決めておかないと、お客様が疑問に思ってしまいます。できれば、業務の流れを明確化してお客様に示すことで、お客様に安心感を持ってもらえます。
納品力とは、私が作った言葉ですが、商品やサービスを納品する力のことです。
飲食店や雑貨販売店のような、決まった物やサービスを販売する業種であれば、何をしたら納品かは簡単です。つまり、商品を店頭のレジで決済して引き渡したら納品です。
ところが、ホームページ制作やシステム開発といったものは、何をしたら納品となって、債権が発生するのかが判りにくい部分があります。例えば、ホームページであれば、サーバーにアップロードして納品することが一般的ですが、お客様から「デザインが気に入らないから、支払いはできない」と言われて、納品にならない場合もあるのです。
お客様とのご契約で、「何をしたら納品となるのか」ということを明確に決めておくことも大事です。そして、仕事をテキパキと終わらせて納品できる力を身に着けておいてください。
コミュニケーションの取り方
コミュニケーションは、他人との情報とのやり取りを行う場面で必ず出てきます。対面や電話での会話だけではなく、メールやプレゼン資料の提出などもコミュニケーションの一種と言えます。
営業の場面であれば、コミュニケーションがうまくいかなければ失注してしまいます。そのようなことで、コミュニケーションには成功と失敗があります。「コミュニケーションが成功した」と言える場合とは、お互いに良き変化が起こった場合です。ある意味では、相手のやる気を喚起させられることです。
営業力のところでも述べたように、対話におけるコミュニケーション力は、起業する前から身に着けることが大事だと思います。コーチングの技術の習得は、30代になってからで良いと思います。20代ではコーチング技術の良さが理解できない場合があるからです。30代に入ったら、なるべく早めに習得することをお勧めします。
50代にもなってくると、「私はコミュニケーションに問題はない」と勘違いする人も出てきます。確かにたくさんの人とコミュニケーションを取ってきて、人生に達観し、「コミュニケーションは問題なし」と思っても仕方がありません。コチコチ頭になって起業して失敗する前に、コーチングの技術を身に着けておいてください。
4.先見力
先見力には、新規事業が売れそうかどうかの先見力を基本として、人物を見る目、事業の成否、利益や資金繰りが直感的に判る財務的な先見力などがあります。
新規事業が売れそうかどうかの先見力は、飯の種を探す力です。一般的には、将来に当たりそうな新規事業を見抜く力のことを、先見力といっています。起業を目指す人は将来の飯の種を見抜く先見力は必須です。
先見力の磨き方
新規事業の先見力の磨き方は、世の中の変化を見ることです。世の中を一時的に見るのではなく、定点観測してどのように変化しているのかを見ます。
私は、コンビニやスーパーマーケットでどのような商品がいくらで、どの棚に置かれているのかを、できるだけ多くの商品で把握するようにしています。「キャベツが高騰している」とか「タコの値段が上がった。理由は何だろうか?」といった具合です。コンビニやスーパーマーケットの変化は間接的ですが、少なくとも対象顧客の何らかの変化を読み取ることが大事です。
商売の種はお困りごと
商売の種は、お困りごとです。必ずお困りごとからスタートします。そのソリューション提供が商売となります。誰も何も困っていなければ、商売は成り立ちません。
例えば、昔はお豆腐屋さんがラッパを吹いて、住宅街の中を売りに歩いていました。お豆腐屋さんは、出来たてのお豆腐を大きな容器の中に入れて、自転車でリヤカー引いて売り歩いていました。このような販売スタイルのことを、移動販売といいます。
お豆腐屋さんが移動販売をしていた理由は、お豆腐は水分を多く含み、雑菌が繁殖して味が落ちやすいためだと聞いたことがあります。消費者は、美味しいお豆腐を食べたいために、移動販売のお豆腐屋さんから購入していたわけです。
ところが、現在ではごく一部を除いて、そのような販売をしているお豆腐屋さんは見かけません。スーパーマーケットで売られている豆腐は、機械で自動的に製造されており、人が豆腐に手で直接触らないので衛生的になり、賞味期限が伸びました。また大量生産で価格も安く、美味しい豆腐が食べられるようになりました。
そのようにして、美味しい豆腐が安く手軽に買えるようになり、消費者は豆腐に困らなくなっていったので、豆腐屋さんの移動販売は消えていったのだと思われます。
ですから、世の中の変化を読み取って、そこから生じている、もしくは生じるだろうと予想されるお困りごとを読み取るのです。
色眼鏡を掛けずに長期的に検討する
また、新規事業の売上予想をするときは、色眼鏡を掛けないで、事実をそのままに「この事業の将来はどうなるかな?」と予想することが大事です。
自分が考え出したアイデアは、それが「儲からない」と薄々とどこかで気が付いていたとしても、「必ず売れるはずだ」と偏見で将来を予想されてしまう傾向があります。親ばかという言葉もありますが、自分が生みだした新商品を、適格に評価することができなくなります。
先日も、とある新規事業を開発された方から、「この商品は売れるでしょうか?」と相談されたので、商品の写真を見て即答で「売れませんが、一応お話しを聞いてみましょう。」と述べたところ、怒られてしまいました。
確かに、目上の方にいきなり「売れません」と言ったら失礼だったと思います。またその方からすると、この商品を開発するのに、並々ならぬ心血を注いだそうです。そして、「このプレゼン資料も、何回も作り直してできた最高傑作だ」とおっしゃるのです。とりあえず、延々と商品のことを話し続けられ、私が「素晴らしい商品だ」と言うまで、開放してもらえませんでした。コチコチ頭には、まいったものです。
自社商品に愛着を持ち、前向きな考えを持つことは良しとしましょう。新規事業を始めるに当たり、慎重になり過ぎてもいけませんが、そうは言っても、需要があっての商売です。最初から売れないと判っているのであれば、新規事業として立ち上げることは、特別な理由が無い限りナンセンスです。
さて、ご相談いただいた新規事業は、長期的には売れるかもしれませんが、まったく新しい概念の商品だったため、売れるためには市場の認識の変化を待たないといけませんでした。その間、おそらくは10年ほどかかると思われますが、赤字でもやり続けるだけの体力があるのかどうか、「何としてでも普及させるぞ」という志が、赤字に耐えられるのかを見極めた結果、「売れない」と引導を渡したのです。
私は、長年マーケティングコンサルティングを行ってきた経験から、ある程度の目利きができます。そして、その人に会って一言二言話を聞いたら、ある程度ですが、直感的に志を見抜くことができます。私の能力を暴露してしまいましたから、私に新規事業の相談を持ち込む方は、何を言われるか覚悟なさってください。
認識の変化を待つ商品はバクチ的
世の中には、すでに市場が存在している新規事業と、人々が認識を変化させるまで待ってから売れるようになる新規事業があります。
例えば、エアコンを考えてみましょう。今では夏にエアコンが無い家では、室内でも熱中症になる人が出てきています。しかし、エアコンが市販された頃は、「エアコンをつけていたら、身体が冷えるので病気になりやすい」と言われていた時代があったのです。
今では、エアコンが無いと病気になると言われ、昔はエアコンがあると病気になると言われていました。
これは明らかに、認識の変化が起こっています。
多くの人が「エアコンが無いと熱中症になる」と考える時代では、エアコンは飛ぶように売れています。一部屋に1台はエアコンが当たり前にもなってきています。昔に「エアコンがあると病気になる」と言われていた時代では、戸建て1つにエアコン1台を入れてもらうのにも苦労していたはずです。
認識の変化は、テレビCMやキャンペーンなどで少しずつ少しずつ浸透させていって、認識を変化させていく戦略を取ることが一般的です。そのような戦略は、莫大な広告費が掛かってしまいます。
つまり、認識の変化を待つ新規事業は、中小企業が参入してはいけないことがセオリーなのです。
継戦能力を読み取る先見力
継戦能力とは、戦いを継続できる能力のことです。もともとは軍事用語ですが、ビジネスでも使われることがあります。
新規事業を始めた直後は、必ず赤字です。会社の資金的余力を使って新規事業を立ち上げ、それを黒字化していき、新規事業で投資した資金を回収し、さらなるプラスを生み出していきます。
新規事業の資金には、少なくとも新規事業を生み出す資金、商品が売れて損益分岐点を超えるまでの販売のための資金が必要です。新規事業を生み出して資金が底をついてしまったら、販売ができずに終わってしまいます。
今まで貯めてきた資金や金融機関から調達した資金、今現在利益が出ている部分を資金として使い、新規事業を立ち上げていきます。そして残った資金で販売活動を繰り返します。その新規事業が、資金を消費していき、資金が無くなってしまうまでに損益分岐点を超えないといけません。
その期間までが、新規事業における継戦能力となります。
この継戦能力は、マーケティング力と財務力が大きく関わってきます。この2つの力を身に着けることが、継戦能力を読み取る先見力となります。私は、いつも新規事業を計画する訓練をしているので、これを一瞬で読み取ってアドバイスをすることができます。
私は、当社の近くを散歩しながら、ご近所に新しくできたお店が、継続しそうなのか、倒産しそうなのか。倒産するなら、いつ倒産するかを予想する遊びをしていますが、たいていピタリと当てています。
私の自慢話はさておき、継戦能力を持つためには、資金がなくても智恵で乗り切ることと、小さく始めることが大事です。
起業前の鍛錬の方法
起業して失敗しないための4つのポイントを述べてきましたが、これらを起業前に、起業してから継続していけるための訓練をしておくことが大事です。その訓練として、私が実践したことをご紹介したいと思います。
偉人伝を読む
中には、「世のため人のためという気持ちが、まったく起きてこない」という社長もいます。そういった方は、偉人伝を読んでください。
偉人伝としては、三国志や太閤記などの歴史ものは、教訓をたくさんつかむことができます。中小企業を立ち直らせた社長のエピソードも参考になります。偉人伝を読むことで、「自分はこういった事業をやってみたい」とか「世の中をこのように変革したい」といった志が立つことがあります。それが起業したいという気持ちに繋がります。
本を読むことが苦手な人は、NHKのプロジェクトXがおすすめです。
プロジェクトXでは、さまざまな人たちが苦労して努力して世の中を変えた新しい価値を生み出していった実話を紹介する番組です。見ていると、世の中を変えるくらいの事業をする人の仕事の仕方が学べますし、やる気が出てきます。
DVDにもなっているので、やる気が出ないときは何度も見直して、活力の元にすると良いと思います。私は、特に本田技研工業のマン島TTレースとCVCエンジンの開発、ソニーのラジオの世界販売を何度も見たことがあります。
当社では、ときどき聖地巡礼と称して、ソニー創業の地や本田技研工業創業の地などを散策して、起業したばかりの名経営者たちは当時何を志し、何を考えていたのかを思いふけることをしています。
余談はさておき、そういった偉人伝を知ることで、「世の中、こんなに偉い人がいたのか」と憧れが生まれたり、「この偉人のお陰で今の便利な社会が成り立っているのだな。自分もそのような貢献をしたいものだ」という利他の気持ちが出たりするようになります。
私は、松永安左エ門の生涯を知ったときに、尊敬と憧れが生まれ、「自分もそのように、社会や国家のために仕事ができるようになりたい」と考え、夢ができました。今では、その延長として毛筆を練習する「満月の会」を開催し、月1回先生にお越しいただいて練習しています。経営者の方で、港区でお習字をしたい方はご相談ください。
ちなみに、起業であまり参考にならなかった書籍は、大企業で新規事業を立ち上げて成功に導いた人の書籍、大企業で培ったノウハウ本といった、大企業出身者のビジネス書です。
就職先で業務知識をつかむ
企業に勤めている間に、業務知識を身に着けることが大事です。仮にお勤め先の事業とはことなる業界の事業を始めるとしても、そこでの業務知識が、起業後にも活かせるからです。
就職している間は、お給料をもらっている立場ですが、お給料をもらいながらそれを起業のための資金として貯めることができ、さらには業務知識を習得ができるわけですから、起業を志す人にとっては就職している間は、バラ色のことと思います。
習得しておきたい業務知識は、先ほどご紹介した通りです。
仕事の仕組みや業務の流れは、会社全体を把握することが大事です。営業部と製造部が判れているのであれば、垣根を超えて遊びに行くふりをして、仕事全体の仕組みや業務全体の流れを把握します。また、お金の流れも把握しておくと、後の勉強になります。
細かな話では、契約の方法、請求書の出し方、クレーム処理といったことも覚えておくと良いと思います。
業務改善や新規事業を提案する
起業してもうまくいきにくい発想をしている社員というものは、次のような考えをしている人です。
- 給料が安いから安いなりの給料分しか働かない
- お給料が上がらないから自ら進んで仕事をすることはない
- 新しい仕事を振られても、お給料が上がらないのでやりたくない
起業を志した人は、このような考えは一切浮かばなくなることでしょう。私は、働いている間は次のような発想をしていました。
- 仕事でお給料以上の貢献をしたい(目標はお給料の10倍)
- 自ら進んで仕事を創り出していった(1年半で新規事業を2つ立ち上げた)
- 新しい仕事をすべて受け入れた(限界はある)
35歳前後に就職した倒産寸前の社員数6人ほどの会社では、お給料が大手の大卒ほどでしたが、かなり勉強させていただきました。
まずは、社長が抱えている細かな仕事を取り上げて、私がこなすようにし、社長は営業に回っていただけるようにしました。その会社の仕事では、案件数は5~6件ほどでも多いほどでしたが、そのときの私の案件数は35件ほどかかえていました。1日14時間以上働いてこなしていきました。
半年ほどして仕事が慣れてきたら定時にはこなせるようになり、新規事業を2つ提案し、通常業務を定時で終わらせてから退社後の時間に立ち上げて集客まで行いました。朝9時から夜11時まで働きました。もちろん、土日もできるだけ働きました。
その2つの事業はどちらも半年ほどで営業利益を生み出し、さらなる発展の軌道に乗りかけたところで、私は辞表を出しました。その後、その2つの事業は順調に伸び、倒産寸前の会社をV字回復させることに成功しました。5年後に、その会社は社員数が10倍ほどに増えたと聞いています。
このエピソードは極端かもしれませんが、業務改善を社長や上司に提案することから始めてください。可能であれば新規事業の提案と立ち上げを経験なさってください。それらの提案が会社で受け入れられるようになれば、上述した起業前に確認すべき4つのポイントを間接的に学ぶことができます。
生活レベルを落とす
さらには、会社に勤めているときと比べて生活レベルを落としてください。お給料を使い切ってしまうようであれば、毎月3万円ほど残るようにしてみてください。そしてその3万円は、「何があっても使わない」という状態にしてもらいたいのです。
節制の方法はいろいろとあります。休日にしか使わない自動車があれば、起業後に自動車を使わないのであれば売却です。自動車の維持費よりも、タクシーの方が安くつくからです。外食は、富を生み出すための外食以外はご法度です。会社のお昼に食べるお弁当もお忘れなく。
時間の節制も大事です。仕事から帰宅して、ビールを開けるような人は、起業は難しいです。私は移動時間、休日はビジネス書や教養書を読んでいました。
これらの準備が間に合わない状態で起業を強いられる人は、さらに深刻です。
節制の度合いはケースバイケースですから、細かなアドバイスはできませんが、少なくとも、社員の時代よりも生活レベルを大幅に落とし、減量することが大事です。「3日間、鶏肉のカレーライスが続いた」とか「ご飯と味噌汁が何日か続いた」いう状態でも生活ができる状態にしてください。場合によっては、自宅の売却も必要かもしれません。
そして、浮かせたお金で、書籍を購入して勉強をすること。巷にあふれる起業セミナーに参加して学ぶことです。とにかく、富を失うものを止めて、富を生み出すことに投資をするのです。もちろん、バクチ的な投資はご法度です。
起業を目指している方に、「起業して収入を増やし、事業を継続させていくためのポイント」と鍛錬の方法をご紹介しました。
当社のセミナーを受けて知識を増やし、「起業を成功させたい」と思われた方は、当社の小さな会社の社長のためのセミナーとコーチング入門講座をご利用ください。
小さな会社の社長のためのセミナーでは、1ヶ月に1回というムリのないペースで、1年かけて12回で小企業の社長が押さえておくべきことを解説し、ご自身の事業でお考えいただくセミナーです。毎月開催していますが、どの回からご参加いただいても理解ができる内容のセミナーに組み立てています。
コーチング入門講座は、コーチング技術の基礎的なことを学び、コミュニケーション力を高めるセミナーです。
ぜひ、当社のセミナーをご利用ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。