社長の夢実現への道

顧客第一主義を貫くための考え方と方法

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値段の付け方で顧客第一主義がわかる

先日、いつも利用している散髪屋さんに行ったら、値段が500円上がっていました。

もともと値段の安い散髪屋さんでしたから、500円上がったとしても、あまり気になりませんでしたが、せめて「来月から値段を500円上げたい」と言ってくださっていたらありがたい」と思いました。

窮地に立たされた美容院からのご相談

さて、昨年の年末に、とある美容院のオーナー様からご相談をいただきました。

その美容院は、技術を売りにしていて、周りの美容院よりも値段が10~20%ほど高額でした。オーナー様からすると、「当店は技術力が高いので、値段はこれでも安い方だ」と思っていたようです。

確かに、都内の美容院では、1回の利用料が2万円を超えるようなことは当たり前です。しかし、地方では1万5,000円でも「少し高いな」と感じてしまいます。

その値段を20%ほど上げたところ、お客様の来店数が急に減ってしまいました。そして、窮地に立たされてしまい、「どうしたらいいのでしょうか?」とご相談がありました。

その美容院は、個人経営をされていたので、しっかりした経営理念というものはありませんが、顧客第一主義と技術力を掲げていました。それにもかかわらず、お客様に予告もなく値段を上げてしまって、常連客も別の店を利用するようになってしまったようです。

美容院は、差別化が難しいジャンルだと思います。オーナー様からすると、「美容院によって技術力がまったく異なる」とのことですが、私達のような素人からすると、その違いは外から見ただけではよくわかりません。そして、その店が無くなったとしても、顧客にとっては、別の安い店が近くにあります。

市場は、そのような厳しい世界なのです。

顧客第一主義とは?

顧客第一主義とは、顧客のことを第一として考え、自社の都合は二の次に考えることです。言わすと知れたことです。顧客第一主義を掲げることは簡単です。そして、特別な場合を除き、どのような企業でも、それを第一としないといけません。しかし、それを徹底することが難しいのです。

利益は、例外を除いて100%顧客からしか得られません。顧客にそっぽを向かれてしまったら、その会社は厳しい現実を受け入れるしかないわけです。

ご相談のあった美容院では、上げた値段を今さら下げることはできません。なぜなら値段を下げてもお客様が戻ってこないからです。そして、値段を下げたら下げた分の荒利益が減ってしまいます。

ですから、顧客第一主義はお店に限らず、どのような企業でもよくよく考えることが大切です。

値上げをしたい美容院はどのようにすべきだったのか?

ご相談のあった美容院では、値段の上げ方が自社都合となっていたと思われます。美容院の利用者からすると、「こんなに高いのだったら、別の安い店でいい」と思う人も少なからずあったということです。

お店が顧客第一主義を貫くのであれば、技術力やサービス内容をそのままに、生産性を高めて、お客様からすると「格安だ」と感じるようにすべきでしょう。

また、値段を上げる前に少なくとも「企業努力の限界なため、3月から値段を20%ほど上げさせてくださ」と常連客には伝え、「今日、次回のご予約をいただきましたら、値段据え置きでご予約を承ります」というサービスくらいは出しておくべきだったと思います。

当社のマーケティングコンサルは、BtoBマーケティングを専門としているので、美容院の支援はお断りしたが、そのようなアドバイスだけさせていただきました。

値段を上げたラーメン屋が苦境に

先日、ラーメン屋さんの組合の会長さんと少し会話をしたのですが、「ラーメンの値段を1,000円超えにしたところは、どこも苦境に立たされている」とのことでした。ラーメンは、原価が高いと言われているので、値段を上げたいことと思います。しかし、美味しい競合店が多いことから、自店だけ値段を上げるわけにはいきません。

実際に、値段を据え置きで頑張っているラーメン屋さんは、連日満員です。値段を上げたお店は、「大丈夫かな?」と思ってしまうほど、お客様が入っていないところもあります。

つい先日、伊豆のお客様と打ち合わせをするために出張したとき、温泉町の商店街の飲食店のランチで、アジフライ定食の価格が1,600円のところがありました。その店は、もちろん人が入っていませんでした。ところが、値段据え置きのお店は、若者が列を成していました。

社長が自社を客観視できるか?

顧客第一主義を貫くためには、まず社長が自社のことを客観視できるかがポイントです。そのようなことは、わかり切っていることです。

しかし、売上が増えなくて悩んでいる多くの社長は色眼鏡やサングラスをかけている状態で自社を見ています。しかも、自社の背中は見ることができませんから、予想するしかできないのです。

なぜ自社を客観視できないのか?

顧客目線で自社のことを考えることができたら、顧客第一主義を貫くことができますが、なかなか難しいようです。ですから、私のようなマーケティングコンサルタントが存在しています。しかし、自社を客観視できていない社長の多くが、自惚れていたり、謙虚さが無かったりするので、「苦境が来て気が付く」ということになります。

わざと腹が立つような文を書きましたが、この一文を読まれて腹が立ってしまった社長、「×」を押してしまった社長は、自惚れていると思います。

続きを読もうとされている社長は、謙虚な方か、もしくは緊急を要するので謙虚にならざるを得ない方のどちらかだと思います。

社員に聞くことも大切

さて、自社が顧客からどのようにみられているかを知る上で、社員に聞くことも大切です。意外と、社長よりも社員の方が自社の口コミを知っていることが多いです。

しかし、社員は社長に諫言することができません。特に末期の状態の会社であればあるほど、多くの社員が諦めているので、社長に諫言しても仕方が無いと思っています。しかし、中には愛社心のある社員もいます。その社員が諫言するときは、辞職を覚悟で言うときです。

そういった社員がいたら有難いものです。ダメな社長ほど、そういった社員を辞めさせてしまうものです。ですから、いつまで経っても売上が伸びません。そして、愛社心のある社員が、他社に行ってしまったり、起業したりします。

「我が社は、社員の意見を取り入れている」と言っている社長も多いのですが、私が社員と1on1で面談すると、「実は・・・」ということもあります。顧客第一主義を貫くためには、社員の心理的安全性も必要だと言えます。

ドン・キホーテの「顧客最優先主義」

昨年、安田隆夫氏の著書「」という本を読みました。安田隆夫氏は、言わずと知れたドン・キホーテの創業者です。以前に、当社もお仕事をいただいたこともあり、それ以来、安田隆夫氏の経営哲学については、勉強させていただいていました。

安田隆夫氏は、現在闘病中で、人生最後のパワーを使い、ご自身の経営哲学を後世に残されようとしています。その本音で書かれた書籍が「運」です。私は、もう一段の本音が隠されているように思いましたが・・・。

多くの大経営者は、晩年に残される言葉は、要約すると、次の3つのうちのどれかです。

  1. 鈍感
  2. 根性

安田隆夫氏の「運」を読んでいると、まさしくこの3つでした。

さて、安田隆夫氏は、経営理念として「顧客最優先主義」を掲げていました。そして、何年もかけて売上高1兆円を目指していましたが、ようやく1兆円が見えてきて、「このままだと再来年には1兆円に達するぞ」ということを考えていたそうです。

ところが、あるとき「なぜこんなに時間がかかってしまったのか」と述懐したところ、自分自身が顧客最優先主義を実践していなくて、自社都合で1兆円を目指していることに気が付きました。

「類は友を呼ぶ」という法則があるように、社長自身が顧客最優先主義を徹底していなければ、社内全体で顧客最優先がなされていないものです。もしかしたら、社員も自分のように1兆円を目指していて、顧客最優先主義を徹底していないように感じました。

そこで、安田隆夫氏は腹をくくります。「もし、顧客最優先主義を実践できないようであれば、ドン・キホーテは潰れてしまっても良い」と。

その後、全社に号令をかけて、顧客最優先主義が貫けていない箇所を直していきました。もちろん、人事や経理にもです。すると、前倒しで1兆円に達し、さらに2~3年ほどで2兆円にも達してしまいました。

このように、経営理念で顧客第一主義を掲げつつも、自社第一主義が貫かれている場合もあります。

BtoB企業に顧客第一主義は成り立つのか?

もちろん成り立ちます。例えば、製造業では顧客第一主義の一環として、FMEAを導入することだって可能です。

もちろん、顧客第一でなくても生きていける企業もあります。オンリーワンの基礎技術を持ったBtoB企業はそうです。顧客第一主義を掲げるが故に、業界トップレベルの技術を確立させた企業もあります。

ところが、そのような企業でもオンリーワンでなくなった瞬間に、顧客たちは「待ってました」とばかりに、新興企業に乗り換えてしまい、老舗企業が窮地に立たされる場合もあります。新興企業にいやがらせをしたところで、逆効果となることもあります。

そういったことで、オンリーワンの基礎技術を持つ企業が、顧客第一を徹底しているとしたら、大きな参入障壁となるわけです。参入障壁は、何も技術力や自己資本額だけではありません。

オンリーワンの基礎技術を持ったBtoB企業でも、次の項目で顧客第一主義を行っているのか、点検してください。

  • サービス体制
  • 顧客対応の仕方
  • 社員の処遇

サービス体制

とある薬剤のオンリーワン技術を持ったBtoB企業のマーケティング支援させていただいます。その企業では、もちろん顧客第一主義を掲げていましたが、支援前は「当社は薬剤のメーカーだ。薬剤の使い方などは顧客企業が試験するなどして技術を身につけるべきだ」と考えていました。

私がその会社の社長に、「御社は顧客第一主義を考えておられる。その発想は顧客第一主義として正しいものですか?」と訊ねたところ、ご自身の誤りに気付かれたようです。私の父親ほどのご年齢にも関わらず、とても素直に聞き入れてくださいました。

その後、その企業では薬剤の使い方を指導する講習会を行ったり、薬剤の情報をWebで公開するようにするなどして、2年ほどで取引先の数が倍ほどに伸びました。

顧客対応の仕方

顧客対応は、サービス体制に付随するものです。電話やメールの対応の仕方は、お客様と直接接するところですから、世間一般的に優良企業と言われているところと同等レベルでの対応が求められます。

例えば、次のようなことは顧客対応がしっかりできている会社では当たり前のことですから、すぐに確認してください。

  • 自社スタッフの電話での話し方が、早口になっていないか?
  • お客様に送るメールの出だしは社員で共通になっているか?

顧客第一主義が貫かれている企業は、どの社員も同じように良質な顧客対応ができているものです。人気の高いホテルのスタッフの動きは参考になります。

例えば、「イザワ」という社名の会社があったとしましょう。その会社の社員が、電話がかかってきて出たときに早口で、「はいイザワです!」と答えたとします。

そのとき、電話を掛けた人が「ハイザワ」と聞き違ってしまう場合があります。「あれ?おかしいな。『イザワ』に掛けたのに、ハイザワという会社、もしくは個人に繋がってしまった」と考え、「電話番号を間違いました」と切ってしまうかもしれません。

電話の出方や話し方をルール化していない、ロープレもしていない、誰も注意しない小さな会社での、アルアルです。

社員の処遇

社員の処遇は、意外に思われたかもしれません。しかし、顧客第一主義を貫くが故に、社員を傷めつけていたら、顧客第一主義は実践しにくくなります。また、社員が顧客になることもあるため、顧客第一主義を貫くことが大切です。

社員の処遇は、何も給料だけではありません。社員への対応もあります。社長一人が「当社は社員の処遇は良い方だ」と思っていたとしても、当の社員はどう思っているのでしょうか?

とある会社の社長が、一人で居酒屋さんに入り、カウンターでひっそりと食事をしていました。すると、斜め後ろのテーブル席から自社名が聞こえてきました。どうやら、社員の一人が親族で食事をしているようでした。

社員や親族は、社長のことに気が付かずに、次のような会話をしていました。

叔父「今、どこの会社に勤めているのだ?」

社員「●●●という会社なんだけど」

叔父「ええ?●●●で働いているのか?」

社員「おじさん、知っているの?」

叔父「知っているも何も、あの会社は酷いという噂だ。もっといい会社はいっぱいある。すぐに転職した方がよいぞ」

このエピソードから、考えさせられるものがあります。その社長は、振り向くこともできず、「いずれ地元で優良企業と知られる会社にしたい」と誓われたそうです。

「社員が顧客第一主義を貫いてくれない」と思っている社長は、社長の指導の仕方以外のところで問題があるかもしれません。

すべての顧客を第一として対応して良いのか?

顧客第一主義を掲げたときに、次のような疑問が浮かぶものです。この疑問の答えは、社員も同様に思うため、社員によくよく説明をする必要があります。それは、

「イヤな人にも顧客第一主義でいかないといけないのでしょうか?」

極端な例として、カスタマー・ハラスメントがあります。カスタマー・ハラスメントをするような人に対して、ペコペコしないといけないのかということです。

実際にカスタマー・ハラスメントを受けている場面に遭遇したことがありますが、悲惨なものです。対応の仕方がわからない社員はペコペコするしかなく、その対応で顧客も怒りの矛を収めることができなくなります。

もちろん、カスタマー・ハラスメントの対応をルールとして決めておくことが大切ですが、それだけではありません。

まずは、顧客は誰かを明確にすることです。「当社では、顧客とはこういった人である。それ以外の人は、顧客ではない」と割り切ることが大切です。

例えば、「顧客は次のものに合致する企業のことである」と定義します。

  • 人間としての尊厳ある対応をしてくれる企業
  • 支払を正確にしてくれる企業
  • 代金を値切ってこない企業

それぞれの対応もルールを決めておき、ロールプレイングをしておくと良いと思います。

顧客を第一に考えていない会社に就職してしまったら?

それは、会社を去るしかありません。社員である自分が顧客第一主義で考えていたとしても、会社の方針が自社第一主義でしたら、辛くなるだけです。また、社員第一主義であれば、自分の成長が止まってしまう可能性もあります。

社長に「顧客第一主義で考えるべきです」と諫言したところで、会社に居にくくなることは、先ほどご説明した通りです。また、今まで自社第一主義を貫いて生き残ってきている企業であれば、なおさら受け入れられるものではありません。つまり、社員の頑張りで会社のカルチャ―を変えることは、ほぼ不可能です。

以上、顧客第一主義について述べてきましたが、いかがだったでしょうか? 中には「ドキッ」とされた方もいらっしゃったことと思います。そういった方は、すぐに確認なさってください。そして、社員を叱らないようにお願いします。叱ったところで、ほとんどの場合で改善はなされないからです。

顧客第一主義を実現するためには、一朝一夕ではなく、継続的な取り組みが必要です。

顧客第一主義を貫くことができたら、その企業は、ある意味で優良企業です。売上高も伸びていると思います。もし、そうなっていないとしたら、顧客第一主義を徹底できていない可能性があります。顧客第一主義に限りはありませんから、「うちは大丈夫だ」と思っている企業は、危ないとお考えください。

もし、「自社の顧客第一主義をチェックしてもらいた」と感じた社長は、当社のマーケティングコンサルティングをご利用ください。貴社の顧客を明確にし、貴社の触ってほしくない出来物、腫物をガンガン指摘します。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

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