最初に結論から申しますと、経営理念を構成する4つの要素は、基本理念、企業ビジョン(全社目標)、経営指針、行動指針です。この4つの構成要素があって、経営理念の機能が発揮されます。
また、さまざまな会社の経営理念を見比べると、定義はバラバラです。
当社では「経営理念」と定義しているものでも、会社によっては「企業理念」と言われる場合も多いです。
当社では、混乱を避けるために経営理念用語を定義していますが、要するに機能する経営理念を策定できたらそれで良いと思うので、「どの言葉を用いるのが良い」ということは述べていません。そこで、「経営理念を作成したい」と考えている方は、経営理念用語に迷わないように、ご自身で経営理念用語を定義することをお勧めします。
機能する経営理念の構成要素について、次の目次に沿ってご説明いたします。
経営理念の本質とは?
この記事を書いている手元に、「ミッション・経営理念 社是社訓―有力企業983社の企業理念・行動指針」というタイトルの書籍があります。この書籍には、名のある会社の経営理念がまとめられています。最新版は2004年に発刊された第四版です。
この書籍に載っている多くの会社の経営理念を眺めていると、経営理念には様々な呼称の構成要素があることがわかります。また、それらの呼称の定義がそれぞれの会社独自のものです。
これから経営理念を構築したいと思われている社長様の中には、この書籍を購入された方もいることでしょう。しかし、この書籍からは、「経営指針とは何なのか、社是とは何なのか」と、余計に経営理念がどのようなものなのか、定義が分からなくなったのではないでしょうか。
この書籍から言えることは、経営理念の定義は、理念を作る社長の考え方によって異なるということです。
会社の存在目的を一言で表したものを経営理念として定義している社長もいれば、経営指針や行動指針などを網羅したものを経営理念と呼んでいる社長もいます。
経営理念用語の定義がはっきりしないことは、これから経営理念づくりに取り組まれる社長にとって悩みどころになるかもしれません。
経営理念の本質は立派な会社を創ることです。そのためには「経営理念が機能すること」が大事です。経営理念が、従業員を動かす力を持ち、社長の夢の実現に向かって会社の発展の原動力になれば、経営理念が機能していると言えます。
そのためには、経営理念は正しいものである必要がありますし、本物である必要もあります。正しくて本物の経営理念であることが、機能するための条件です。正しい経営理念とは、機能するための要素が含まれているものです。本物の経営理念とは、社長がやる気に満ちるものである経営理念のことです。
経営理念の意味を全体的に知りたい方は、「経営理念とは?社長のための経営理念作成浸透マニュアル」をご参照ください。
経営理念が機能するための4つの構成要素
経営理念が機能するための、正しい経営理念であるためには、経営理念の構成要素として次の4つの内容が含まれている必要があります。
- 基本理念
- 企業ビジョン(全社目標)
- 経営指針
- 行動指針
経営理念のピラミッド
経営理念の構成要素をピラミッドにすると、次のような関係になります。
ピラミッドの最上位にあるものが基本理念です。それに基づいて企業ビジョンが作られます。これらに基づいて経営指針や行動指針が作られます。
この経営理念の4つの構成要素を解説いたします。
1.基本理念
社是、使命、ミッション等と言われる、会社の存在目的や価値観を表したものです。これを当社では、「基本理念」と呼んでいます。
会社の存在目的を熟語で一言で表している企業もあれば、“てにをは”を交えて一文にして表現している企業もあります。社是という呼称で基本理念を掲げている会社の場合、存在目的と価値観を抽象化した短い言葉にして、3つ程並べている会社が目立ちます。
次の3つのことが含まれていることが、良い基本理念です。
- わが社の存在目的
- わが社でもっとも大切にする価値観
- 具体的な仕事目標が引き出せること
存在目的とは、社会にどのような貢献をするのかといった、会社固有の使命のことです。
多くの人の役に立つことによって会社が発展しますから、有名企業の基本理念には利他の精神を表す言葉が多く見られます。これが大義名分となり、会社の実績と相まって多くの協力者が集まり、永続的な発展が実現します。
基本理念は、上記の3つのことが含まれた内容を一言で表したものですが、基本理念1つだけでは社員からすると抽象的で意味不明なことが多いです。そのため、基本理念を補完する内容として、全社目標(企業ビジョン)や経営指針、行動指針が必要となります。
2.全社目標(企業ビジョン)
全社目標(企業ビジョン)とは、基本理念が達成された姿を具体化したビジョンです。そのビジョンを実現すべく、全社を挙げて、長い期間をかけて取り組むチャレンジ目標でもあります。
また、企業ビジョンには、将来の社員の処遇もイメージできる内容が含まれているべきです。会社が大きくなることで、社員である自分たちが幸福になっていけることをイメージできると、社員のモチベーションが高まるからです。
企業ビジョンは、経営ビジョンや事業ビジョンなどと、さまざまな呼ばれ方をします。どのような呼び方でもかまいませんが、意味は同じです。企業によっては、「会社全体のビジョンを経営ビジョン、事業部毎のビジョンを事業ビジョン」と定義しているところもあります。
当社では、会社全体のビジョンを「企業ビジョン」と定義しています。そして、企業ビジョンの最終到達点を「全社目標」と定義します。ですので、企業ビジョンには、長期ビジョン、中期ビジョン、短期ビジョンという具合に、時系列での定義もあり得ます。
企業ビジョンは、社会的な重責を担っている大きな会社であればホームページで公開しているところが多いです。中小企業になれば多くの会社では、企業ビジョンを外部に公開していません。企業ビジョンを公開したら、競合他社が何を目指しているのかを知って、対抗策を先に考えられてしまうことがありますし、会社が小さなうちは基本理念に賛同してくれている社員とだけ共有すべきものだからです。
企業ビジョンを公開していない会社が多いからと言って、企業ビジョンを立てていないわけではないことをご理解ください。
全社目標(企業ビジョン)を掲げることで、発展の方向性が明確になります。これを元にして長期計画や中期計画、短期目標を立てることで、経営理念に基づいた事業計画を策定できるようになります。
3.経営指針
経営指針は、社長、および経営幹部が経営判断を行う際の基準、拠りどころ、根拠です。
これがしっかり定められると、社長の意思決定の方向性にブレがなくなります。また、経営担当者が日々にさまざまな決定を行う際にも、経営指針を念頭に置くことで理念に合致した、説得力のある判断を下すことが出来るようになります。
このことにより、社長が経営判断の指示をいちいち出さなくても、経営担当者が考えて判断するようになり、社長が会社の未来のことを考える時間が増え、経営担当者の育成にもつながり、会社が発展していきます。
4.行動指針
社訓と表現している会社も多く見受けられます。当社では、「行動指針」と呼んでいます。
行動指針とは、それに従って仕事をすることで成果を出し、人生を豊かにできるための指針です。行動指針が会社独自の成功哲学のような内容になっているケースもあります。
行動指針の内容に従って考え、行動を重ねることで、社員一人一人の精神性が高まり、仕事の実力が上がり、成果を出すことができるようになる内容にすることが大事です。そのように実のある行動指針を作ることで、社員たちが会社の理念実現に貢献できます。その結果、働くことの喜びを感じ、精神的に充実し、昇進しやすくなります。
行動指針の作り方や浸透方法は、「従業員が共感する行動指針の作り方と正しい浸透方法」をご覧ください。
経営理念用語は自分で定義すべき
冒頭にも述べましたが、経営理念の用語の定義は、それぞれの企業でバラバラです。たとえば、基本理念に当たる内容を「社是」と呼んだり、行動指針に当たる内容を「社訓」と呼ぶ会社もあります。基本理念のことを「経営理念」と言っているところもあります。
また、あるコンサルタントの先生は、経営理念と企業理念を別物と定義し、「経営理念とは、会社の経済的な営みのこと。企業理念とは会社全体のこと」と分類されていらっしゃいます。これも会社を発展に導く考え方なのだと思います。
どれが正解というわけでなく、要するに機能する正しい経営理念を作成し、それを浸透することで、社長を含む全社員に一体感が出て会社が成長したら良いものと考えます。
経営理念を作成したいと考える方は、最初に経営理念の用語を定義し、意味を明確にすることが大切であると思います。そうしないと、経営理念を浸透させるときに、従業員が混乱すると思います。
当社が定義している経営理念用語については、「経営理念の意味に関する質問」をご参照ください。
経営理念が機能するかのチェックポイント
経営理念ができたら、その経営理念が機能する経営理念かを点検する必要があります。経営理念の作成は、時間をかけてきた分、良い経営理念ができると思いますが、チェックポイントは「本物の経営理念か?」と「正しい経営理念か?」の2点です。
本物の経営理念とは?
経営理念が本物かどうかの判断は、まず経営理念を社長が作成したかどうかです。
社長が作成していない経営理念は、本物の経営理念であろうはずがありません。なぜなら、社長が作成していない経営理念は、社長自身が実施できないからです。社長が治外法権の経営理念は、社員が経営理念を受け入れるはずがないのです。つまり、機能しない経営理念なので、本物の経営理念ではないのです。
社長ご自身でつくられた経営理念が本物かどうかは、それを見返すたびに社長ご自身の使命感に火が灯り、燃えるような願望を持つことができるかどうかです。
社長の熱意が伴うことで、経営理念の従業員への浸透ができるのです。
もし、経営理念をつくり上げたときに、社長の熱意がふつふつと湧き上がってこないなら、残念ながらまだ経営理念の練り込みが足りていないと言えるでしょう。
正しい経営理念か?
次に、正しい経営理念かどうかですが、上述した4つの要素が出来ていることが条件として、それらの内容から次の4つのことが読み解けるかどうかを確認してください。
- 会社の存在理由や社会貢献
- 将来の会社の事業規模
- どのような事業を行っていくのか
- 経営理念実現に向けて社員は何をしたらいいのか?
これらが備わって、正しく経営計画と経営方針が立てられ、社員が受け入れてくれてモチベーションが高まり、経営理念が機能するのです。この内容からも、上記の4つの構成要素が大事だということです。
本物で正しい経営理念についての詳細は、「理念経営を実現する正しい経営理念と本物の経営理念」をご覧ください。
もし経営理念の練り込みに限界を感じられたら、当社の経営理念コンサルティングをご利用ください。経営理念コンサルタントが、社長の「事業への思い」を引き出し、それを経営理念という「形」に仕上げるご支援をいたします。
経営理念コンサルティングをご利用いただいたお客様の中には、「このような立派な経営理念は、一生考えても作ることはできたかっただろう。」とおっしゃられた方もおられます。
お電話(03-6821-1277)もしくはメールフォームにて、ご連絡をお待ちしております。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。