以前に投稿したコラム「マーケティングでの商品と製品の違い」で、マーケティングにおける商品と製品の違いについて述べました。
そこでは、商品は売れることを前提とした品物、製品は製造された品物であることを述べました。
どのような企業でも、基本的に品物は売れることを前提として製造します。製品が商品となるためには条件があります。
このコラムでは、開発した商品が売れるための条件として、本当に基本的なことをご説明いたします。ここでご紹介する条件は、どれ1つ欠けても商品が売れなくなってしまいます。
私が営業コンサルティング支援をさせていただいた企業様の中には、ここでご紹介する基本的な条件が満たされていないために、商品が売れないことがあります。当たり前で、基本的過ぎることであるが故に、見落とされてしまう条件もあります。
お客様や競合他社はわかっていても、販売している自社のみ気が付いていなくて、商品が売れない場合もあります。お客様や競合他社は、そのことをわざわざ教えてはくれません。
特に、駆け出しの企業や、商品が売れなくて困っている企業の経営者、商品開発をしようとされている企業様は、ぜひご参考になさってください。
商品の存在が知られること
いくら良い商品を開発しても、商品の存在が知られなければ売れません。
とあるお弁当屋さんのエピソード
以前に住んでいたところの近所に、とても美味しいお弁当屋さんがありました。人通りの少ないところでしたが、そこの唐揚げ弁当が好きで、ときどき買いに行っていました。
あるとき、店主との立ち話で、「売上が落ちてきているので、売上をアップする方法は無いだろうか?」という相談をされました。そこで、人通りのあるところにお弁当の出張販売を提案したところ、人手不足から断念されました。
その後、そのお弁当屋さんの店主は、新商品の開発や、値下げなどを行ったのですが、客数の改善につながりませんでした。
「知られなければ売れない」ということは、何らかのPRしなければ売れないことです。どのように存在を知らしめるかは、商品の性質によって異なります。地域密着ビジネスでしたら、地域にチラシを配布するという方法があります。
新商品開発の企画をされる方は、広告宣伝のことも考慮してください。
顧客が求める価値を満たしていること
自社が「いい商品を開発した」と思っても、対象顧客が求める価値を満たしていなければ売れません。
その価値には、商品そのものに求める価値と、それ以外の価値があります。それ以外の価値としては、例えば次のようなものです。
- スタッフの対応の良さ
- アフターサポートの良さ
- 素敵な梱包
- お店の雰囲気
対象顧客を想定し、その顧客が求めるであろう価値を満たす商品を開発する必要があります。また、商品そのものだけでなく、これらのサービスも改善して、顧客が求める条件を満たす必要があります。
顧客が求める価値は、どのようなものなのか、考えるための方向性は、経営コンサルタントの小宮一慶先生は、ご著書(例えば「経営者の教科書(ダイヤモンド社)」)の中で教えてくださっています。それは、「お客様が求めるQPSの組み合わせて差別化を図ること」です。QPSは、「Q=品質」「P=価格」「S=サービス」の3つです。
これらの項目で自社商品を点検したときに、顧客から求められている条件を満たしていることで商品が売れるようになります。また、QPSが満たされているだけでなく、それが組み合わさることで顧客にとって魅力的に感じるようであれば、競合他社商品と差別化でき、より売れるようになります。
対象顧客を想定して商品を開発・販売しても、予期せぬ顧客が買い求めることもあります。そういった場合は、対象顧客の設定し直しです。その場合は、なぜ想定していた顧客に売れなかったのか、反対になぜ予期せぬ顧客に売れたのかを分析してください。
顧客が求める価値よりも高付加価値の商品を提供できている場合は、それは十分条件を満たしていると言えます。例えば、糖度が13度以上の甘いいちごを求めている人がいたとしましょう。スーパーマーケットに糖度15度のいちごが売られていたら、顧客が求める価値を十分に満たしています。その場合、一般的に売れることを想定していたとしても、贈答品として売れるようになったりすることもあります。
条件が満たされ過ぎているが故に、対象顧客に売れない場合もあります。そういった場合にも、予期せぬ顧客が買い求めてくることもあります。
商品の価格や費用が分かること
商品の魅力が伝わっても、商品の価格や費用が分からなければ、商品が購入されることはありません。
これも先入観で、「なんだか高そう」と思われてしまったら、安かったとしても利用されないものです。
スーパーで売っていた美味しそうなトマトの購入をあきらめたエピソード
スーパーマーケットに買い物に行ったときに、美味しそうなトマトが並んでいました。最近では、トマトのブランド品が増え、品揃えも数種類あることが多いです。
それらの中で、4個入りの箱に入った、ひときわ美味しそうなトマトがあり、それを購入しようとしました。そうしたら、そのトマトだけ値札が付いて無かったのです。
高級な牛乳や豆腐であれば、「高くても300円ぐらいだろう」と思いますが、4個入りの高級トマトは値段の予想がつきません。想像がつかないものは、値札が無ければ怖くて買えません。
結局、そのトマトの購入をあきらめました。
いくら商品が欲しくても、値段が分からないと購入できないのです。
ホームページには値段を掲載しない方が良い場合もあります。そういった場合でも、暗黙で値段が想像できそうなコンテンツを掲載しておいた方が良いです。
その例として、導入事例です。BtoB営業の製品やサービスで、条件によって料金が変わってくる場合に、値段が掲載できなかったとしても、導入事例を掲載しておけば、自社と同じような企業が導入しているのであれば、「自社でも導入できる価格かもしれない」と内心で思うものです。
顧客が商品を購入できること
顧客が「商品を購入したい」と思っていても、商品が購入できなければ、購入されることはありません。顧客が商品を購入できないパターンは、主に次の3通りです。
- 欲しい商品の在庫がない
- 店が閉まっている
- 購入の仕方が分からない
とある定期契約しているコンサルティングのお客様から、「ここ数日、インターネットからの売上が落ちてしまったのです」とご相談を頂きました。さっそくホームページを確認したところ、主力商品の在庫数設定がゼロになっていました。ホームページの在庫数を調整し忘れていたことが原因でした。
他にも、クライアント企業様ではないのですが、お店が閉まっていると勘違いされて、1人もお客様が入ってくれなかった例もありました。
閉店と勘違いされた飲食店のエピソード
浜松市で研修会を開催したときのことです。研修が終わった18時過ぎに、急遽、浜松駅前の餃子屋さんで懇親会を開くことになりました。
駅前には餃子屋さんがたくさんありますが、どこも満員で、6~7人ほどを受け入れてくれるところはありませんでした。ところが、1軒だけ、店内に1人も客のいないところがありました。
入口付近でガラス越しの大きな鉄鍋の前で作業しているスタッフがいたので、「6~7人ほど入れますか?」と訊ねたところ、「どうぞ」とのことでした。
そして、入口に掛けてあった「Close」の札を、そっと「Open」にしておいてあげました。
企業であれば、ホームページが更新されていなければ、「この企業は営業しているのだろうか?」と思われてしまう場合もあります。
顧客が代金を支払えること
商品やサービスを購入するためには、顧客は代金を支払わないと購入できません。販売は、代金を支払って完結します。
顧客が代金を支払えないパターンには、次のようなものがあります。
- 支払うお金がない
- 支払い方がわからない
- 利用したい支払い方法がない
1つ目の「支払うお金がない」ことは、述べるまでもありません。
2つ目の「支払い方がわからない」は、路線バスの利用でよくあります。路線バスは、乗車時に払うのか、それとも後払いなのかが、すぐにわかりません。また、支払う料金は、一律の料金なのか、番号が記載されたチケットを取って移動距離に応じて料金が決まるのか、バスを見ただけではわかりません。
最近の路線バスでは、ICカードが導入され、利用しやすくなりました。
3つ目の「利用したい支払い方法がない」というものは、最近出てきたパターンです。今までは現金のみの決済ばかりでしたが、最近では少額の支払いでもクレジットカードを使うことが増えてきました。また、私は喫茶店では交通系ICカードを利用することが多くなりました。
このように、支払い方法の選択肢が増え、顧客が思っている支払い方法が利用できなければ、そのお店を利用しないことも増えてきました。
商品が供給できること
顧客が求める商品を供給できない場合も、商品が売れません。商品が供給できるための条件は、次の3つが主なものです。
- 原材料が手に入ること
- 製造できること
- お客様の元まで届けられること
例えば、電力会社であれば、火力発電が総動員されていると聞きます。火力発電の燃料は、主に中東の特定の国から輸入されていますが、その国からの燃料の供給が止まってしまったら、電力会社は商品を供給できなくなってしまいます。
製造設備が故障していたら商品が提供できませんし、製造設備を持っていても製造する人材がいなければ製造できません。
製造できても、物流が止まってしまったら、納品ができなくなってしまいます。
営業コンサルティングによる改善
基本的な条件をまとめました。ここで述べたすべての条件は、必要条件となっています。どれか1つでも欠けたら、どのような商品でも売れることがありません。顧客の購買の流れのどこがボトルネックになっているのかを分析する際は、このような基本的なことをおろそかにせずにお考えください。
ごく当たり前のことばかり述べましたが、この当たり前を実現することが困難な場合があります。それを実現するための条件は、経営の智恵であったり勇気であったりします。
商品がもっとたくさん売れたり、売れ続けたり、たくさんの利益を得たりするためには、他にもたくさんの条件があります。その条件を発見するための分析手法として、当社では主にマーケティングの3C分析やカスタマークライミングを推奨しています。
当社の営業コンサルティングでは、マーケティングの3C分析やカスタマークライミングなどのマーケティング分析手法を用いて商品が売れないための原因を探り、売れるための商品改善やPR施策を支援いたします。
営業コンサルタントは、顧客の立場に立って商品やPR手法の改善を行うので、自社では気が付かなかったボトルネックを発見することも可能です。お客様の会社や商品を分析している中で、このコラムでご紹介したような基本的なことができていない企業様もいるので、即効果が出ることもあります。
もっと売れるはずの商品が、予想よりも売れない場合は、ぜひ当社の営業コンサル手イングをご利用ください。まずは、当社までお電話、もしくはお問い合わせフォームでご連絡をいただき、売りたい商品等のご事情をお聞かせください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。