社長の夢実現への道

経営理念は変更しても良い?経営理念変更のタイミングと条件

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経営理念は変更しても良いのか?

一般的には経営理念(企業理念)の変更はあまり行われるものではないと考えられています。せっかく時間をかけて練り込んだ経営理念ですので、変更するとなると、プライドが許さなかったり、恥ずかしくなったりするものです。

社長が社員に対して言っていたことと、新しく言うことが違っていたら、社員の信頼を失うかもしれません。

まずは、率直に「経営理念は変更しても良いのか?」の疑問にお答えします。

経営理念は変更してもよい

実は、経営理念は変更しても良いのです。

例えば、経営理念をかたくなに守って会社が傾いてしまっったらどうでしょうか。プライドや恥ずかしさどころではありません。そもそも、経営理念を守って会社が傾くようであれば、経営理念に何か間違いがある可能性があるため、経営理念を正しいものに変更すべきです。

社長の指令は、朝令暮改、朝令昼改でもかまいません。朝に言ったことが間違っていると思ったら社員に非を認め、よりよい判断をすることが大切だと考えます。

ただし、経営理念の一部には、変えてはいけないものがあります。特に先代社長からのれんを引き継いだ場合は、経営理念の変更は慎重に行うべきです。

経営理念を変更したいと考えるタイミングや変更すべき条件など、次の目次に沿って解説いたします。

経営理念を変更したいと考えるタイミング

社長が経営理念を変更したいと考えるときは、経営理念がしっくりこない場合でしょう。そのタイミングには、おおよそ次のようなものがあります。

  • 経営理念が形骸化し、機能しなくなった
  • 前社長から会社を引き継いだ
  • 事業内容を大幅に変更した
  • 経営理念を掲げているが売上や利益が下がって自信がなくなった

これらのタイミングで考えられることは、経営理念に問題があるからだけでなく、社長ご自身に経営理念に対する情熱がなくなってしまったことが多いのではないでしょうか。

もし経営理念が、立派なものだと感じ、情熱が湧き立つものであれば、経営理念を変更しようとは思わないはずです。

経営理念の変更の仕方

変更しても良い経営理念についてご説明いたします。変更するタイミングに至った経営理念には、次の2種類があります。

  1. 創業期に作成した練り込みが足りない経営理念
  2. 先代社長が完成させて定着している経営理念

それぞれ、変更の仕方が異なるので、解説いたします。

創業期に作成した練り込みが足りない経営理念を変更する場合

経営理念を変更する場合、練り込みが足りない経営理念であれば、もっと練り込んだものに変更した方が良いです。

創業期の企業であれば、経営理念の練り込みが足りないことが多いので、社長の考え方の進化と共に、経営理念を進化させることは良いことです。

成長企業は、どのみち辞めていく社員が多いので、経営理念を変更しても、新しく入った社員は、最新の経営理念がその社員にとっての経営理念になります。

創業期では、経営理念をコロコロ変えても、その経営理念を外部の人たちに発表するわけではないので、経営理念を変更する恥ずかしさよりも、立派な会社を創ることをお考えください。

社長の「経営理念に基づいた経営、理念経営を実現するのだ」という思いや行動を継続させることが大事だと思います。

創業社長が完成させて定着している経営理念を変更する場合

先代社長が完成させた経営理念で、すでに会社が大きくなっている場合は、その経営理念をちゃぶ台返しのように変更してしまってはいけません。そうしてしまうと、創業期から会社を支えてくださっている古参メンバーから、強い反発があるはずです。

先代社長を敬い、経営理念の基本部分を踏襲しつつ、会社の成長や次代の流れで考え方を変えていかないといけない部分を変更したり、曖昧な部分を補完する要素を加えたりすると良いでしょう。

もちろん、古参メンバーにも敬意を払い、経営理念を変更する理由やどのように変更するのかなどをよくよく伝え、相談し、同意を得てから変更作業に入った方が良いです。

次に、これらの変更方法について、少し詳しくご説明いたします。

経営理念を変更すべき条件

当社が考える、経営理念を変更すべき条件は、次のことが1つでも当てはまる場合です。その条件とは、

  • 経営理念を見ても、情熱ややる気が湧いてこない
  • 経営理念が時勢に合っていない
  • 経営理念の遂行と利益追求のジレンマに悩んでいる
  • 経営理念が会社の規模や成長に合っていない
  • 経営理念の内容が足りないと感じる

心当たりのある項目はあったでしょうか?

1つでも当てはまる場合は、すべての条件が満たされるように変更するべきです。

以下、これらが経営理念を変更する条件である理由をご説明いたします。

経営理念を見ても、情熱ややる気が湧いてこない

社長が経営理念を見たときに、自身に情熱が沸かない場合

経営理念のもっとも大きな効能は、社長をやる気にさせることです。会社の中でもっとも能力の高い人材が社長ですので、社長のやる気が出ることで、会社の戦力が格段に高まるからです。

社長が魅力を感じていない経営理念を、全社員に浸透させようとしても、それはムリな話です。

自分の代で作成した経営理念の場合

経営理念は、社長が必死になって会社経営をしてきた中で得た教訓や思想、夢などを昇華し、考え抜かれた言葉でできたたものが本物になりえます。

過去に社長ご自身で経営理念を策定され、今現在、経営理念を見ても情熱が湧かなくなってしまった場合は、経営理念を策定したときよりも、現在の社長が格段に成長している可能性があります。まさしく、経営理念を変更すべきタイミングだと考えます。

また、経営理念を社長ご自身で作らずに、経営幹部などに作らせた場合は、情熱ややる気が湧いてこなくて当然です。すぐさま作り直してください。

先代が作成した経営理念の場合

先代社長が経営理念を策定し、会社が大きくなった場合には、その経営理念の中に経営の原理原則が含まれているはずです。

そのような経営理念を、次代社長が「やる気が出ない」ということでバッサリ変更してしまったら、今まで会社の発展を支えてくれていた経営幹部やベテラン社員の人心が離れてしまう可能性があります。経営理念を大幅に変えたい場合は、経営理念の変更と同時に経営幹部も交代するときです。

古参のた経営幹部にいてもらいたい場合は、経営理念の中の基本理念の部分を残し、行動指針や企業ビジョンを変更すると良いでしょう。

経営理念の構成要素については、コラム「経営理念の構成要素」をご覧ください。

経営理念が時勢に合っていない

経営理念が時勢に合っていないと感じる

経営理念にて商品が限定されている場合には、変更される場合が多いです。

例えば、「わが社はタイプライターでビジネスの効率を高める会社である」と定義していたら、パソコンの時代になった時点で、タイプライターどころかワープロですら陳腐化し、経営理念の実現はほぼ不可能になります。

できれば、会社の存在目的や会社ビジョンには、商品名などのトレンドに左右されやすいものを入れず、商品や会社の活動を定義して、その機能を盛り込むことがおすすめです。

タイプライターの会社であれば、「わが社は、社内業務の効率を高める会社である」と商品が持つ機能を定義しておけば、次代が変わっても経営理念は生き続けることでしょう。

また、経営理念には、経営幹部が社長に代わって経営判断ができる基準や、社員が仕事で成果を出して幸せになれるための哲学や考え方が盛り込まれるべきです。そのためにも、経営理念の中に「経営指針」や「行動指針」といった基本理念を補完するものを含めることです。

このように、時勢が変わっても、なるべく変わることのない経営理念を策定することが大切です。

経営理念の遂行と利益追求のジレンマに悩んでいる

経営理念の遂行と利益追求のジレンマに悩んでいる場合

もし、私に「経営理念の遂行と利益追求のどちらを選ぶべきか?」と問われたら、間違いなく利益の追求を選ぶようにアドバイスしています。

理由は、会社が傾いてしまっては、経営理念の実現ができないからです。

経営理念を策定して利益が上がらないのであれば、その経営理念が正しくないか、経営理念が練りこめていないかのどちらかでしょう。

もしかしたら、経営理念の構成要素の一つである経営方針や行動指針に、利益のことが記載されていない可能性があります。利益は未来へのコストですので、会社は利益をしっかりあげることによって、経営理念に盛り込まれた目標が達成できます。

経営理念の遂行と利益追求のジレンマについては、前出のコラム「経営理念と利益追求どちらを優先?利益低下の会社が採るべき選択肢」が参考になると思います。ぜひご覧ください。

経営理念が会社の規模や成長に合っていない

経営理念が会社の規模や成長に釣り合っていない

経営理念が「地域限定」の場合には、会社の規模が大きくなり、さらなる成長をしたいときに、経営理念と会社の規模や成長に合わなくなってくることがあります。

例えば、「東京都限定」の場合には、千葉県に進出するときに経営理念に反した行動になります。また、日本に限定した経営理念であれば、グローバル企業を目指すときに同様のことがおきます。

時勢では商品を限定しない方が良いことを述べましたが、会社の規模や成長に合わせるのであれば、経営理念を変更するときに地域性や限定を取り除くことが良いでしょう。

経営理念の内容が足りない

経営理念の内容が足りないとお感じの場合は、経営理念が抽象的な内容で、従業員は経営理念の理解に苦労しているのではないでしょうか?

経営理念を策定し浸透させて立派な会社にしていくためには、機能する経営理念を作る必要がありますが、抽象化された一言だけや箇条書きの経営理念だけでは足りません。

機能する経営理念は、正しい経営理念であり、本物の経営理念である必要があります。正しい経営理念としては、いくつかの要素がパッケージになっており、基本理念やビジョンに加え、それらを達成するための全方位的な経営指針や行動指針も必要となります。

正しい経営理念の構成要素については、コラム「経営理念の構成要素」をご覧ください。

「基本理念やビジョンを達成するためには、経営理念の内容が足りない」とお感じであれば、それは経営理念を作り直すタイミングだと思います。

経営理念の変更すべきかお悩みなら、当社の経営理念コンサルタントにご相談いただけたら幸いです。

経営理念コンサルティング

経営理念を変更した企業の事例

ここで、経営理念を変更した企業の事例として、本田技研工業の事例をご紹介いたします。本田技研工業は、1954年(昭和29年)3月の社内報にて本田宗一郎が述べた「我が社運営の基本方針」をベースに、1956年(昭和31年)1月の社内報に「社是」と「わが社の運営方針」として、最初の経営理念が発表されます。

本田技研工業の当初の経営理念

文章がちょっと長いですが、全文を掲載しておきたいと思います。

社是

わが社は、世界的視野に立ち、顧客の要請に応えて、性能の優れた、廉價(廉価)な製品を生産する。わが社の発展を期することは、ひとり從業員と株主の幸福に寄與(寄与)するに止まらない。
良い商品を供給することによって顧客に喜ばれ、関係諸会社の興隆に資し、さらに日本工業の技術水準を高め、もって社会に貢献することこそ、わが社存立の目的である。

わが社の運営方針

この目的実現のためには、会社はつねに次のような方針に則って運営されることが必要である。

一、常に夢と若さを保つこと
わが社は、世界の日進月歩の技術に伍して、日本の業界をリードしつつ、発展して行かなければならない。
その道程に横たわる幾多の苦難と障碍(障害)を乗り越えてゆくためには、遠大な理想と不屈の若さが必要である。

二、理論とアイデアと時間を尊重すること
最高の製品は、最高の理論の上に立つ。優れたアイデアは、その理論を飛躍的に発展させる。
理論を探究し、アイデアを尊重するところに、わが社の発展の基盤がある。
どんなにすぐれた理論でも、すばらしいアイデアでも、それが必要な時に活用され、実現されなければなんらの価値もない。
経済も距離も時間におきかえられようとする現代においては、特にこの時間の観念を強調し、いわゆる時をかせぐことを忘れてはならない。

三、仕事を愛し、職場を明るくすること
働きよい職場で本当に仕事に情熱を打ち込むことのできることほど幸福なことはない。われわれはいつも相手の立場を尊重し、お互いの美点を認め合う気持をもつことが大切である。
職場は人格錬磨の場であり、人間完成のところでもある。真に自己の一生を託することのできる職場を作り上げることこそ全体の幸福を探求する道であり、そのためにこそみんなで協力し合ってゆかなければならない。

四、調和のとれた仕事の流れを作り上げること
優れた製品が作り出されるためには、あたかもオーケストラが素晴らしい音楽を奏でるように、人も機械もいろいろの設備も、あらゆる機能が一つの律動となって、流れるように躍動していなければならない。従業員の一人一人が生産から販売まで会社の大きな律動の中で、不可欠の部分を構成していることを自覚しつつ、すべての努力を組織を通じて綜合してゆく状態こそ、正に完成された職場の境地である。

五、不断の研究と努力を忘れないこと
世界の激しい市場競争の中にあって、わが社が確固たる地位を築き上げるためには、たゆみない研究と努力を一日もゆるがせにしてはならない。常に将来に備えて、現状に満足することなく積極的に改善に努めることが肝要である。
ここに始めて作る者の喜びが生まれまた売る人の喜び、買う喜びが同時に実現できるのである。

本田技研工業の現在の経営理念は、こちらのページに記載されています。ぜひ見比べてみてください。このページに記載されている、「社是」と「運営方針」は、初期の経営理念が踏襲されていますが、シンプルになっています。また、「運営方針」の第5則に記載されている三つの喜びが、その上位に基本理念として「人間尊重」と「三つの喜び」が入ったことがわかります。

社是の変化

わが社は、世界的視野に立ち、顧客の要請に応えて、性能の優れた、廉價(廉価)な製品を生産する。わが社の発展を期することは、ひとり從業員と株主の幸福に寄與(寄与)するに止まらない。
良い商品を供給することによって顧客に喜ばれ、関係諸会社の興隆に資し、さらに日本工業の技術水準を高め、もって社会に貢献することこそ、わが社存立の目的である。

↓↓

わが社は、世界的視野に立ち、顧客の要請に応えて、性能の優れた廉価な製品を生産する。

↓↓

わたしたちは、地球的視野に立ち、世界中の顧客の満足のために、質の高い商品を適正な価格で供給することに全力を尽くす。

シンプルになった理由は、従業員が覚えやすいように変更されたのだと思います。また、現在の社是は、事業規模や会社を取り巻く環境の変化に合わせて、社是を進化させたのだと思います。

三つの喜びは、もともとは1951年12月の社内報に掲載されたもので「創る喜び、売る喜び、買う喜び」でした。順番が入れ替わり「買う喜び、売る喜び、創る喜び」になりました。本田技研工業の創業者である本田宗一郎(1906~1991)が特に大事にした「顧客重視の経営姿勢」をより鮮明にするために変更されました。

よくあるご質問

経営理念の変更に関して、よく聞かれるご質問と回答をまとめました。

経営理念は変更しても良いのでしょうか?

変更してかまいません。冒頭でもご説明いたしましたが、「経営理念が合わない」とお感じの場合は、経営理念の変更を検討すべきときです。

先代から引き継いだ経営理念は変更しても良いのでしょうか?

変更してかまいません。ただし、経営理念の構成要素である基本理念の変更は慎重になるべきです。先代のときから会社を支えてくださっている経営幹部やベテラン社員といった主力となっている人たちが辞めてしまう場合があるからです。

それ以外の企業ビジョンや経営指針、行動指針は、会社の規模や時勢の変化などで、変えるべき場合があります。

社是や社訓は変更しても良いのでしょうか?

社是は、経営理念の中の基本理念と経営指針が組み合わさったものですので、経営指針の部分は変更されることがあります。

社訓は、行動指針と同じですので、社長の経営に対する考え方や会社の規模、時勢の変化などに合わせて変更した方が良い場合が多いです。

すぐに変更されそうなダメな経営理念

このコラムでは「経営理念を変更しても良い」と述べてきましたが、コロコロ変わる経営理念は、それを経営理念とは言いません。経営理念だと勘違いして掲げてしまった例をご紹介します。

すぐに変更されそうな経営理念の例 (1)

地域ナンバーワンの品ぞろえ

これは、スーパーマーケットでありそうな経営指針のことですが、経営理念と称してしまった例です。この経営理念は、商圏内に大型スーパーが進出してきたら、「地域ナンバーワンの安さ」に変更せざるを得ないことでしょう。特定の分野に絞り込んでのナンバーワンの品ぞろえだと、大型スーパーが進出してきても太刀打ちできるかもしれませんが、トレンドに左右されて経営理念を実践できなくなる可能性があります。

すぐに変更されそうな経営理念の例 (2)

いいものをどんどん安く

これは、地方の家電量販店でありそうな経営指針ですが、経営理念と称してしまった例です。ネット通販の時代にもなり、利益が出にくくなってくると、どんどん安く提供できなくなって、経営理念を変更せざるを得なくなることでしょう。安売りは、大企業の専売特許ですので、小企業が手を出してはいけません。

どちらの例も、社会貢献が盛り込まれていますが、時勢に左右される極端に軽いものですので、経営理念とは言えません。

このようなものを経営理念として掲げている企業が世の中に存在しないものと信じます。

このような軽いものを経営理念として掲げた場合、業界の追い風でたまたま会社が大きくなってしまったら、顧客や出資者、従業員に与えるダメージは大きなものとなります。こちらのコラム「丸正自動車製造の倒産理由から見える正しい経営理念とは?」では、過去に本田技研工業と覇を競い、高い技術力を持ちながらも、掲げた経営理念が原因で倒産したオートバイメーカーの例をご紹介しておりますので、ご参照ください。

変えて良い経営方針と変えてはダメな経営方針

経営理念を変えて良いのかどうかを検討してきましたが、経営方針についても変えて良いのかどうか検討したいと思います。

当社にてご支援させていただいている企業の従業員の方から、「社長の経営方針がコロコロ変わって困っている」とご相談をいただくことがあります。朝、社長が言ったことを昼には撤回して、「この方針でやってもらいたい」という具合です。

指示された部課長は困ってしまいます。しかし、社長の先見力や直観力、分析力といった、社長としての能力が優れている場合には、それに従った方が良い場合もあります。

経営方針にはいくつかのレベルがあり、変えて良い経営方針と変えてはダメな経営方針があります。また、変えてはダメな経営方針も、変えて良いタイミングがあります。

経営方針の種類

経営方針にはレベルがあります。もっとも高次元の方針は、経営理念を達成するための経営指針です。この経営方針とは、「経営陣は、この方針に従って経営判断をしてもらいたい。」という抽象化された方針です。

次に高次元の方針は、長期経営計画に付随した経営方針です。長期経営計画を実現するための経営方針で、経営理念の方針と比べて具体的な内容になります。例えば、長期経営計画が10年計画だったとすると、「10年後の我社の主力商品はこれこれである。会社の規模はこれこれを目指す。」という具合です。

そして、中期経営計画の経営方針、短期経営計画の経営方針(販売方針)です。

これらの経営方針の中身は、主に次のようなものをどうするのかです。

  • 市場と顧客
  • 商品やサービスの構成
  • 販売体制
  • 商品やサービスの供給体制
  • 組織・人員構成
  • 未来事業の構想と推進
  • 財務体制

ここまでの方針は、中小企業までの規模では社長が立てて、独断ではなく、衆知を集めた独裁で決定します。決定された方針は、何があろうとも、社長を含めた全従業員がその方針に従わなくてはなりません。

さて、これらの方針の中でもっともよく変更されるものが、販売方針です。最低でも1年に1回は短期経営計画立案のときに見直され、方針変更がなされることが多いです。

それ以外の細かな方針は、社長がコロコロ変えるものではなく、社長が立てた大きな方針に基づいて部課長が従業員に指示する程度のものだとお考えください。ただし、小企業の場合は、部下が大きな方針に従って考えるカルチャーが定着するまで、細かな方針も社長が決めて、細かく指示を出さなくてはなりません。

部下は、言われたことだけをやるのでは成長はありませんので、社長が出された方針の意図をくみ取って、社長に怒られながら指導されてでも質問して、方針の意図を正しくくみ取るようにしてください。

経営方針を変えて良い条件

経営方針を変えて良い条件は、客観情勢が変わったときと、今の経営方針のままではあまりにも成果が出ないと判明されたときです。客観情勢とは、顧客と競合他社のことです。経営方針の中で、もっとも変更されやすいものが販売方針です。

例えば、営業方針で「A市を重点地域として、B市はあまり力を入れない」という方針を打ち出したとしましょう。ところが、A市に力を入れたところ、競合他社の牙城に阻まれて参入が難しかったとします。そういった場合は、方針を変えてB市を重点地域に変更することがあり得ます。

年度に立てた販売方針は、客観情勢が変わらなければ、基本的には変えてはいけません。なぜなら、年度末に立てた方針が正しいものか正しくないものか、分析できなくなるからです。

会社の全責任を負う社長が、自ら集めたり、部下から教えてもらったりした客観情勢を分析し、そのままの方針でいくのか、販売方針を変更するのかを判断します。

経営方針を変更したいときの伝え方

経営方針は、会社の浮沈に大きくかかわります。部下は、経営方針に従順になっているはずです。

社長の口から経営方針の変更が伝達されるということは、会社の浮沈にかかわる重要な変更ですので、今までの経営方針に従順になっていたら、会社の利益が減って、場合によっては会社が倒産する可能性もあります。

とは言え、部下としては、コロコロと経営方針を変えられていてはたまったものではありません。せっかく以前の方針方針に慣れてきたところで、「また方針転換か。いいかげんにしてもらいたい。」と文句も言いたくなることでしょう。場合によっては、「いったいどの方針が最新なのか? 新しい方針は、社長が忘れずに続けられるものなのか?」と疑問さえ起こってしまうこともあります。経営方針の変更は、社長が会社のことを普段から考え、また知見を広げるように努力をしていることを意味します。社長を信じてあげてください。

そして、社長は経営方針の変更を命令するとき、「自分の知見が足りなかった。申し訳ない。経営方針の変更理由は、こうこうである。会社の利益のためにも、自分自身ことのためにも新しい経営方針でやってもらいたい。」と頭を下げて、経営方針の変更を伝えてください。

また、経営方針に従わない従業員は、できれば人前で指導するようにしてください。すると、周りにいる従業員は、「社長が本気だ」と気が付いて、新しく出された経営方針に従うようになります。

社長は、社の長です。自分の方針が正しいと思ったのであれば、それに従ってもらうべきです。「また部下から文句を言われてしまうから、経営方針を変えないでおこう。」と思わないでください。部下は社長よりも知見が低いことがほとんどですし、経営方針の変更で余計な仕事が増えしまい、給料も変わらないということで、イヤイヤになることでしょう。

しかし、社長は会社で働く人たちや、その家族の全責任を背負っています。会社の利益を落としてしまうよりは、部下に頭を下げた方がましです。

頭を下げてお願いされる社長を見た部下は、社長を下に見るよりは、社長の徳を感じるものです。「いっちょ、社長のためにばんばってみよう」という気持ちが出るものなのです。

以上、「経営理念は変更しても良いのか?」というテーマで述べてきました。まとめると、会社が傾くようであれば、経営理念は変更しても良いです。しかし、変更しなくても良い、または変更すべきでない経営理念もあります。

すぐに変更されることのない、会社を活気づかせる本物の経営理念を策定したい方は、前出のコラム「経営理念の構成要素」をご覧ください。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら数千を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくりる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

プロフィール詳細


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