先日、工業用部品製造の中小企業に勤めている知り合いから、ホームページ制作について質問を受けました。
その質問の内容とは、「ホームページ制作で補助金を受けることは可能か?」というものでした。
ホームページ制作の質問を受けたら、最初に尋ねることがあります。それは「ホームページを制作する目的は何ですか?」です。その返答は、「とくに目的はなく、補助金をもらうことが知りたい」とのことでした。
補助金がもらえることを聞いて、「今までおろそかにしていたホームページを、この際制作しよう」ということでした。補助金がらみで中小企業のホームページ制作をする場合、同じような考え方を持っている企業、とても多いです。
このコラムでは、補助金をもらってホームページ制作をしたいという考えの問題点や、中小企業が持つべきホームページ制作の目的、ホームページで集客ができるための考え方などをご説明いたします。
補助金をもらうことが目的?
ご質問をくださった方を、便宜上Aさんと呼ぶことにいたしましょう。知り合いからの久しぶりのお電話でしたので、嬉しくなってつい話過ぎたことを、ここでお詫びいたします。
さて、Aさんは補助金のことしか頭にないので、おそらく社長から「補助金が出るのか調べてほしい」と言われたのでしょう。私に電話をして、補助金のことを知ることができたので、社員としては及第点です。
しかし、社長としては計画性のないものに飛びつくことは、いささか問題があるのではないかと思います。
目的のないホームページは費用と時間の無駄
補助金を得てホームページ制作ができることは、とてもありがたいことです。必要なものを格安で手に入れることと同じです。
IT導入補助金の2022年実績では、ホームページ制作は補助の対象外のようです。しかし、ホームページ制作の営業を受けたときの説明では、「当社のホームページ制作では、補助金が出るので、50万円ほどでできる」とのことでした。
ホームページ制作費は50万円で1/2ほどを補助してもらえると思いますが、ITツールの導入が必須ですから、月額費用がかかるはずです。
そして、目的もなしに費用が発生し、しかもホームページ制作のための時間がかかりますので、その分の費用と時間は無駄です。
2~3年前に、別の中小企業の社長からご相談いただいた事例ですが、「補助金が出てホームページを安く制作できる。ホームページ制作にはシステムの導入が必要で、5年縛りで月間3万円かかる。」というものでした。初期費用は補助金のおかげで50万円ほどでしたが、5年間の維持費が180万円+税かかります。
その社長は、今も毎月お支払いされていますが、ホームページ経由でのお問い合わせは「ほとんど無い」とのことでした。「高い買い物だった。早くIngIngの存在を知りたかった。」と嘆いておられました。そのとき、「当社がもっとしっかりPRしていれば」と反省しました。
営業や販売に関心のない企業は危険
Aさんによると、「当社はホームページがない」とおっしゃっていました。今時ホームページを持たない企業があったのだなと思いました。今現在、ホームページのない中小企業は、営業や販売のことが苦手か、それらに関心のない社長のことでしょう。
部品製造をされている中小企業ですが、顧客層は昔からのお付き合いのところがほとんどだと予想されます。
営業や販売に関心のない企業は危険です。販売チャンネルを広げるためにも、ぜひホームページを活用してもらいたいものです。
「部品製造はホームページで集客できない」という固定観念
私からの提案で「ホームページの目的がないことは、製作費や時間のムダなので、集客を目的とすることはいかがでしょうか?」とご提案しました。
ところが、Aさんは拒否されました。理由は、「部品製造はホームページでは集客ができない」というものでした。
工業用部品は、本当にホームページ経由で集客ができないのか、実験したのでしょうか? 「モノタロウやAmazonのようなモールで販売した方が良い」とお考えなのでしょうか?
Aさんは従業員の立場でのご連絡だったので、深くは追求しませんでしたが、もし社長に固定観念があったとしたら、及第点とは言えません。集客ができるかどうか、専門家に相談してみることはした方が良いと思います。
中小企業がホームページを制作する一般的な目的
中小企業がホームページを制作する一般的な目的は、主に次の3つです。
- 名刺代わりのホームページ
- 販売のためのホームページ(ECサイト)
- 集客のためのホームページ
名刺代わりのホームページ
ビジネスの場では初めてお会いした人と名刺交換をします。名刺には、会社名や自分の名前や役職などの必要最小限の情報が記載されています。商品やサービスの紹介を載せているところは、少ないと思います。
名刺代わりのホームページは、その延長のもので、会社がどのような事業を行っているのかを、初めてお会いした人に見てもらうものです。
名刺交換をした相手は、名刺に書いてある会社名で検索をして、ホームページを探します。そして、どのような会社なのかを調査します。その内容を見て、取引をしても良さそうかを判断します。
名刺代わりのホームページでは、最小限の情報を掲載して、格安で制作することが多いです。Aさんの会社では、ホームページを持っていませんでしたので、展示会で名刺交換した人にホームページを見てもらいたいと考えていたようです。
今現在、ホームページを持っていないという企業は、補助金うんぬんと言う前に、格安のところでも良いのでホームページを持っておくべきです。名刺代わりのホームページであれば、クラウドサービスでクリエイターを探し、その方に依頼した方が、補助金をもらって制作をするよりも圧倒的に安く済みます。
販売のためのホームページ(ECサイト)
ECサイトとは、ホームページにカートシステムを導入し、商品やサービスをその場で購入してもらうものです。カード決済の仕組みを組み込めば、集金の手間が省けて便利です。
代表的なECシステムは、「EC-CUBE」やWordPressのプラグイン「Welcart(ウェルカート)」が有名です。中小企業で初めてECシステムを導入したい方は、WordPressでホームページを制作し、カートシステムのプラグイン「Welcart」の導入をおすすめしています。
さて、Aさんには「集客を目的にされたらどうでしょうか?」とご提案したのですが、「当社はオーダーメイドが中心なので、ホームページで集客はできない」とのことでした。
Aさんには、「集客と言えばECサイト」という考えが定着していたようで、次に説明する「集客のためのホームページ」の意味が理解できなかったようです。
集客のためのホームページ
広い意味では、ECサイトも集客のためのホームページと言えます。集客のためのホームページとは、ホームページ経由でお客様を集客するホームページのことで、注文や決済まで済ます販売のためのホームページではありません。
貴社が扱う商品やサービスの詳細、貴社の強み、ご契約の方法などを掲載した、企業ではなく商品やサービスを中心に紹介するホームページです。
オーダーメイドの部品製造を、ホームページでPRするのであれば、どのようなオーダーメイドに対応してもらえるのか、どのような機械を持っているのか、製造実績にはどのようなものがあるのかなど、見積依頼の対象に入れてもらえるような、ネット検索者が知りたい情報を掲載することが、集客の要点です。
ちなみに当社では、BtoB集客のためのホームページ制作や改善を強みとしています。
集客のためのホームページ制作の正しい考え方
集客のためのホームページを制作したい場合には、正しい考え方があります。その代表的な考え方をご紹介いたします。ご自身の考え方と合わない部分があれば、できれば考え方を改めるようにしてください。
1.費用対効果
ホームページを初めて制作する中小企業の場合は、ホームページ経由での集客を期待しつつ、「ホームページとはどういったものなのか?」という性質を学ぶために、とりあえずホームページを制作してみることから始めることが多いです。
しかし、とりあえず制作したホームページでは集客はできません。その次の段階で、集客ホームページの制作に取り掛かります。そのときの正しい考え方が、「費用対効果」です。
上記にもあったように、50万円であれ格安であれホームページ制作をしても、まったく集客の効果がないものであれば、費用対効果はゼロです。
逆に、300万円程度といった、中小企業にとってはとても値段の高いホームページがあったとしましょう。ところが、そのホームページで1億円の注文が入るようになったらどうでしょうか?
これが費用対効果です。
しかし、ホームページに高いお金を払ったからと言って、集客ができるとは限りません。そこで、ホームページ制作会社に支払える上限金額と、費用対効果を計算して、「浪費」ではなく「投資」としてホームページ制作することが大切です。
補助金を受けてホームページ制作する場合、補助金の上限金額までの予算を組まれる企業が多いです。費用対効果を考えると、予算の上限を決めてしまったら、効果的な集客ができなくなる場合があるので、ご注意ください。
2.マーケティング分析
2つ目はマーケティング分析です。マーケットは、もちろんインターネットでのマーケットです。ホームページ制作が「投資」に該当するのかは、マーケティング分析の精度によります。
自社の商品分析をしたり、ホームページのターゲット層を決めたり、ホームページ経由でどれぐらいの集客数や売上高が予測されるのかを分析します。検索エンジン経由でのホームページ集客であれば、検索キーワード分析や競合ホームページ分析などから、費用対効果の概算を算出することができます。
ちなみに、検索エンジン経由でのマーケティング手法のことを、SEMと言います。SEMはホームページ集客の常套手段です。
ホームページ制作会社を選ぶときは、SEMに強いところが理想的です。提案のときに、費用対効果まで教えてもらえる業者は、誠実な業者だと言えます。
集客のためのホームページを制作する場合は、マーケティング分析から入るという考え方を持っていただきたいと思います。
3.カスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、直訳すると顧客の大冒険です。簡単に述べると、どのような人がどのように貴社ホームページにたどり着き、何を感じ考え、どこをクリックし、貴社にお問い合わせや資料請求をするのかの流れを想定します。そこから導き出される、あるべきホームページの姿を設計するのです。
展示会にご来場された方に見てもらいたいホームページを制作するのであれば、展示会とホームページを連動させて集客するための設計をすることが理想的です。これも、カスタマージャーニーで仮説を立ててホームページを設計すれば、PDCAサイクルで集客効果の高いホームページに仕上げ、貴社オリジナルの集客の流れが完成させられることでしょう。
顧客の動線設計やホームページの改善という考え方を持っていただきたいと思います。
これらの考え方を持ち、ホームページによる集客を計画して取り組んでいただきたいと思います。
補助金を活用するときの正しい考え方
集客のためのホームページ制作は、計画性を持っていただきたいことを述べました。補助金はあくまでも補助。補助金を受けることがメインでありません。
「補助金があるからホームページを制作する」のではなく、「集客のための計画を進めている中に、たまたま補助金があり幸運だった」という考えが大事です。なぜなら、補助金があると計画が甘くなりがちだからです。
また、ホームページ制作を計画しておいて、補助金が出るタイミングを待つことを考える人もいるかもしれませんが、補助金は、ホームページ制作に対応しているのかわかりません。「今が集客力を強化すべきだ」と考えたときが実施のタイミングです。補助金を待っていたら、その期間は機会損失が発生してしまいます。
さらには、ホームページ制作に補助金が出る場合、ホームページにさまざまな制約が加わる場合があります。
主なものとして、制作期間があります。制作期間がタイトになり、中途半端なホームページに仕上がる場合があります。上述もしましたが、システムを組み込まないと補助金が出ないということで、余計な固定費がかかってしまう場合もあります。
以上、中小企業がホームページを制作する目的や、集客ホームページを制作するときの考え方、補助金を活用してのホームページ制作での考え方についてご紹介いたしました。
このコラムのワンポイント・アドバイスとして、次のことを覚えておいてください。
中小企業がホームページを制作する目的は、「名刺代わり」、「販売目的(ECサイト)」、「集客目的」の3種類がある。
3種類の目的のうち、どの目的でホームページ制作をお考えになられたでしょうか?
ホームページによる集客をお考えのときは、当社にご相談ください。ホームページによるBtoB集客の可能性を無料診断いたします。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。