社長の夢実現への道

中小企業に勤務するリーダーに求められる能力とは?

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君をリーダーに抜擢するから頑張ってくれたまえ(能力は大丈夫?)

中小企業に勤務するリーダー社員に求められる能力についてご紹介いたしたいと思います。

重要プロジェクトのリーダーに、異例で抜擢された30代前半の若手社員がいました。その社員は、社長から信頼されていたのですが、能力不足で人とのコミュニケーションでも失敗し、会社に損失を出して、会社を辞めてしまったのです。

その社員のことを見て、「中小企業のリーダーには能力が大事だ」と痛感しました。

社長がリーダーを抜擢する場合、仕事能力が高いと評価されてのことですが、仕事能力の中にコミュニケーション能力も含めていただきたいと思います。

とある中小企業の若手リーダーの出来事

以前にご相談のあった、従業員数が50人程度の中小企業で、30代前半の若手社員をプロジェクトリーダーに抜擢して失敗したエピソードです。

そこに登場する若手リーダーA氏が、このエピソードの主人公です。

重要プロジェクトのリーダーに抜擢

プロジェクトのリーダーに抜擢されたA氏(君は明日から役員だ)

社長は、「チャレンジ精神を持った活気ある会社にしたい」と考え、新規事業を立ち上げることになりました。

そのプロジェクトリーダーには、「会社に新しい風を吹かせたい」との理由から、社長の側近をしていた総務課のA氏を取りたて、会社の役員い昇格させました。

A氏は異例の抜擢で、古参社員を押しのけて事実上のNo3になったのです。そして社長は、A氏に新規事業立ち上げの陣頭指揮を任せ切ってしまったのです。

古参社員たちは、社長に対して「全社員を巻き込んだ重要プロジェクトなので、Aだと力不足だ。社長が陣頭指揮を取らなければならない」と説きましたが、社長は「私は人前で話すことが苦手だし、Aには立派なリーダーに育ってほしいので、A氏にプロジェクトのすべて任せたい。ぜひ協力してあげてほしい。」とのことで、放任してしまいました。

大役を担ったA氏は、社長の描く未来ビジョンを実現すべく、さっそく計画を練って、新規事業の立ち上げに取り掛かりました。

さて、A氏が行ったことは、全社員を巻き込んでのプロジェクト立ち上げです。そこで、「新規事業を含め、自分たちが行っている仕事の存在意義を、全社員に考えさせよう」と思い立ちました。

自分が行っている仕事を深く考えることは大事です。社員全員が自分の仕事の意味を理解し、他の人との連携まで見えてくると、会社全体でレベルの高い仕事ができるようになります。

また、自分に与えられた仕事だけでなく、自分の立場を超えて深く考えることができる社員は、優秀な社員だと言えます。大企業に成長していった企業では、社員の多くが考えられる人になっていっています。

社員に大きな負担を強いる

そんな提案は誰だって思いつくのよ。もっと考えなさい!(社員に大きな負担を強いる)

しかし、社員たちの仕事レベルは「社長に怒られないようにしながら、言われた仕事だけをミスしないようにこなしていた」というもので、今まで誰一人自分の仕事の意味を深く考える人はいませんでした。あえて考えるとするならば、「どうしたら仕事で楽をしながら社長からの評価を高め、自分の給料を増やせるのか」という程度でした。

このような社員にいきなり考えることを強要すると、社員によっては大変な負担と感じる場合があります。なぜなら、社員はヘタに自分の考えを発表して、社長やA氏の逆鱗に触れてしまったら大変だからです。

社員のやる気がまったく感じられない中、社長の代役であるA氏は、見境なく社員をしかりつける始末でした。

そうなると、社員は恐る恐る、当たり障りのない意見を述べるにとどまります。A氏は、活気のあるプロジェクト会議をイメージしていましたが、それとは裏腹に、高まるのは社員のやる気ではなく、A氏の感情だけでした。

そして、A氏は何を考えたのか自分の権力を振りかざして、年上の社員たちにも高圧的に押し付け始めたのです。

会社の信頼が失墜

会社の信頼が失墜(なんてことだ。すべて私の責任だ)

やがて、会社内部の人間関係はガタガタになりはじめました。

古参社員が異変に気が付き、すぐさま社長に相談したところ、社長は「Aに任せている」との一点張りでした。古参社員はA氏に指摘しようとしたのですが、A氏の肩書とプライドが古参社員のアドバイスを拒否しました。

そのうち、辞める社員も出てき始めました。

また、A氏の矛先は外部の協力会社さんにも向けられ、自分の地位を振りかざす始末でした。

それから半年もすると会社は市場から信頼を失い、協力会社さんが離れていきました。当時、業界全体では需要が伸びているのにもかかわらず、その会社だけは売上を落としていきました。

そして、A氏が部長就任から1年後、A氏は会社に居づらくなり、会社を辞めてしまったのです。

重要プロジェクトのリーダーに抜擢され、昇進までしたA氏にとっては、さらなるキャリアアップのチャンスでした。新規事業を軌道に乗せ、活気のある会社にし、売上高を伸ばすことができたかもしれませんが、A氏自身の能力不足とプライドが邪魔をしました。

本当のところ、仕事について深く考えられていなかったのは、社員たちではなくA氏自身だったのです。

中小企業のリーダーに求められる能力を考察

このエピソードから、中小企業で社長に代わってリーダーに立つ人材に求められる能力、性格などが見えてきたことでしょう。

人は、自分の能力以上の重責を担った場合は、どうしても感情的になりがちです。この怒りの矛先を他人や家族に向ける人がいますが、そういったリーダーは人が離れていってしまいます。その感情が社外の人に向けられた場合は、会社の信頼は失われてしまうのです。

仕事能力が高い人がリーダーに抜擢されることは当たり前ですが、若手社員をリーダーに抜擢する場合は、仕事能力の伸びしろと品性なども考慮すべきです。

中小企業のリーダーに求められる最初の能力

中小企業のリーダーに求められる最初の能力(おいおい、役員に昇格した瞬間からこの態度かよ)

自分の立場は肩書の上では高くなっています。しかし、社会通念上のルールやマナーといったものがあると思います。

A氏は、外部の人間と接する場合は、会社を代表して接するわけですし、重要なプロジェクトを任された人物ですから、相応の接し方というものがあったと思います。

まずは、リーダーに求められる能力の一つ目としては、ビジネス・パーソンとしての社会通念上のルールやマナーでしょう。

自分が若手であり、能力が足りないことを隠すために、「怒り」という武器を使ったようですが、怒りで人が動くのでしたら、世の中が怒りで蔓延してしまいます。そうではなく、程よい謙虚さを持ち、地道な努力を重ね、年上の人達の地位や自尊心を脅かさないことで、年上の優秀な人たちの協力を得るきっかけになります。

寛容さ

寛容さ(もっと寛容にならないと、部下がついてこないぞ)

人の成長には時間がかかります。一般社員が成長するためには、教え方や人にもよりますが10年ほどかかるものです。全社員を巻き込んだ難易度の高いプロジェクトを成功させたければ、全社員の成長も必要となりますが、それには時間がかかるのです。

自分の思い通りにいかないからと言って、感情的になってはいけません。感情的になったら、全てを台無しにしてしまう場合が多いのです。「怒り」は一時的に人を動かすことができるかもしれませんが、人心は離れていってしまいます。

リーダーに求められる能力として、社員が成長するまで待ってあげられる「寛容さ」が大事だと言えます。

こと社員の成長に関しては、「何度も何度も同じことを繰り返して、できるまで教えてあげる」という根気もいります。

ストレス耐性

ストレス耐性(なぜ、みんながついてきてくれないの?)

リーダーになるとストレスが増えるものです。自分の仕事能力を超えたものを任された場合には、特にそうなります。ですので、自分のストレスの限界を知ることもリーダーには必要になります。

「自分の役職が上がった」ということは、もちろん能力が見込まれての抜擢ではありますが、責任の範囲が広がったことも意味します。自分が抱えている課題に対して、限界を超えそうであれば、社長に相談すべきだったと思います。

自分はどの程度までストレスに耐えられるのか、リーダーに抜擢されたのであれば、どのようなストレスがかかってくるのかを見積っておくことも大事です。

コミュニケーション能力

コミュニケーションとは、言葉や思いが通じ合うようにすることです。ビジネスの現場における良好なコミュニケーションは、仕事で成果を出すためのものでなければなりません。

重要プロジェクトの目的は、立派な会社をつくることです。社員のマインドセットを変え、全社員が積極的にプロジェクトに参画するためには、時間がかかるものです。

A氏は自分の能力を過信し、役職の権力を振りかざして、全社員にプロジェクトの大事さを強制的に考えさせ、推進しようとしたのですから、コミュニケーション能力不足だったと言えます。

ビジネスでのコミュニケーションには、さまざまな場面がありますが、会議の場でもコミュニケーション能力が問われるのです。

コミュニケーション能力の高さは、コミュニケーションスキルとも関係してきますが、寛容さや思いやり、感情のコントロールなどができていなければ、コミュニケーションスキルは活かせません。

そういった対人関係のマインドができつつある人材であれば、当社が開催するリーダーコミュニケーション研修は効果的です。

中小企業でリーダーに抜擢される人材に求められる能力は、他にもたくさんあります。少しずつ更新していきたいと思います。

社長の人事の失敗

人の仕事能力の限界というものは、職場によっても異なりますし、役職によっても異なると思います。

下の役職のままであれば能力が発揮されていたのですが、役職が上がったら急に成長が止まり、仕事ができなくなったように見える人もいます。エピソードでご紹介した会社の社長は、「A氏は仕事ができると思っていたが、昇進させたら急に仕事ができなくなった」と感じたことでしょう。

実は、リーダーはその役職に就けてみなければ、能力が発揮されるかどうかはわかりません。

昇進した人は、今まで以上に会社全体のことを考えなければなりません。リーダーに抜擢されたときに、その人材の自己保身が強い場合は、仕事上でさまざまなトラブルが発生しやすくなります。そして、リーダーが持つ自己保身の悪影響は、役職が上がれば上がるほど、マイナスに働きます。

社長は、「リーダーに能力がない」と思ったら、そのダメージが大きくなる前に降格させるべきでした。降格は、A氏にとっては屈辱的かもしれません。しかし、会社全体のダメージを考えたらそうすべきで、リベンジの機会を与えるようにしたら良かったと考えます。

リーダー自身も、「自分に能力が足りない」と感じたのであれば、社長に相談したりコンサルタントを活用したりすればよかったと思います。時に、リーダーの自尊心がそれを阻むことがあります。

リーダーを任命した中小企業の社長は、抜擢したリーダーを任せ切ってしまうのではなく、ときどき様子をうかがうことが大事です。社長は、できる限り多くの社員とコミュニケーションを取り、会社の目指すことや正しい仕事のやり方と考え方を伝え、外部の人とも積極的に合い、リーダーが正しく仕事を行えているのかをチェックしていただけたらと思います。

以上、重要プロジェクトのリーダーに抜擢されたA氏を主人公とさせていただき、リーダーに求められる能力について検討しました。リーダーに求められる能力は、他にもたくさんありますが、ここで述べたことは人徳にもつながる、基本的な部分だと思います。

若手社員をリーダーに抜擢したいと考えている社長の参考になれば幸いです。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら数千を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくりる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

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