社長の夢実現への道

企業における人間性成長の考察

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企業における人間性の成長とは?

とても難しいテーマですが、企業における人間性の成長を考察したいと思います。

中小企業では、社長の悩みのほとんどは、売上と人の悩みに集約されると思います。売上については、別途ご説明するとして、この記事では人の悩みに注視したいと思います。

人を育てられる立派な社長は、「仕事を通じて社員の人間性を成長させることが大事だ」と聞くと、肯定されることでしょう。また、そのように考える社長は、ご自身についても人間性の成長をお考えのことと思います。

しかし、そのような人間性の成長を会社経営に取り入れ、仕事の成果と両立させることは、なかなか難しいものがあります。

難しい理由としては、次のようなことが考えられます。

  • 会社で働く人の人間性のことを体系化して説かれた書籍がなかなか発見できないこと。
  • 発見しても、それが正しいか自分では判断が難しいこと。
  • 古典を読んでも、内容が多岐に渡ることや企業経営に当てはめるのに智恵が必要であること。
  • 人間性を社員に教えるとしても、教えるための技術がいること。
  • また、人間性の成長は、とても時間がかかり、仕事の成果になかなか結び付かないこと。

ここでは、企業における人間性について、成長段階があることを述べつつ、どのような人が1段上の段階に至るのか、考察したことをまとめました。

人間性の成長は、追求し始めるととても奥が深いこともあり、また私は宗教家や哲学者ではございませんので、企業寄りの簡単な文章でご説明したいと思います。

仕事を通じた社員の人間性の成長をお考えの社長に、何らかの参考になればと思います。

企業における人間性の成長段階

人間性の成長段階は、「仕事で何をして喜びを感じるか」と言い換えると判りやすいと思います。

人間性の低い人から高い人までいますが、悪いことをして喜びを感じる人の人間性はマイナスです。その反対で、良いことをして喜びを感じる人は人間性がプラスで、さらに人間性の高い人は徳のある人だと言えます。

では、私の考える人間性について、人間性の低い人から高い人までを順に、段階でご説明したいと思います。

マイナスの人間性

企業で仕事をしている人の中で、人間性がマイナスの人には、どういった段階があるのかを考察したいと思います。

積極的に悪いことをする人

企業で仕事をしている人の中で、最も人間性の低い人は、「自分は悪いことをしている」と自覚しつつも、企業で積極的に悪いことを続ける人だと思います。こういった人はまずいませんので、述べるまでもありませんが、念のためご説明いたします。

あからさまな例えは、顧客を騙してお金を取ったり、詐欺的な仕事をしたり、会社のお金を盗んだりする人です。立場が上になればなるほど、相手に与える損害は大きくなります。

そうではないとしても、「自分さえ良ければ、他人が犠牲になっても良い」と考える人は多いことでしょう。何か大きなトラブルがあったときに、他人を犠牲にして自分が責任逃れをする人もそうです。仕事能力の高い人でも、そういった人間性の低い人は、仕事に支障をきたします。

経営者でも同様です。例えば、普段から「社員は犠牲になっても、自分の利益は守る」と考えている経営者もそうです。また、欲に負けてしまい、ダメだと判っていても不当な投資と称するものにお金を出してしまう人もいて、ときどきニュースになったりします。

「悪い人を懲らしめるのだ」と言っても、鼠小僧のような行為が許されるわけではありません。

こういった人間性を持つ人は、いくら仕事能力が高くても、その能力がマイナスに大きく働いています。

いつも他人にイジワルをする人

次は、商売で人を騙したり、詐欺をしたりはしないのですが、いつも他人にイジワルをする人です。積極的に悪事を働く人よりは良いのですが、人間性としてはマイナスです。

嫁姑関係で、家族に対してイジワルをする人の話をときどき聞くことがあります。他人へのイジワルする人は、そのようなことを会社でする人です。

悪いことをしているとは、本人は思っていないのですが、社内ではギクシャクした人間関係が続き、気持ちよく仕事ができない環境をつくり出してしまいます。もちろん、いじめられた人の能力は活かされませんし、部署の成績は停滞してしまいます。

この人の特徴は、他人の悪いところばかりを見る人や、部下に千本ノックをしたがる人です。また、人に感謝ができない人が多いです。こういった傾向のある人はご注意ください。

そういった人の多くは、他人のあら探しが得意な人です。人の粗が見えるということは、それだけ人を見る目があると言えるので、その素質を人のいいところを発見することに発揮してもらいたいものです。

他人にイジワルをしたがる人によくある原因は、他人への嫉妬や、自分が認められたいという気持ちです。そういった自己中心的な考えがあり、仕事や家庭でのストレスなどが引き金となって、イジワルをしてしまうことがあります。

偉い人というのは、他人の粗探しが優秀な人ではなく、他人を活かせる人です。人から「評価されたい」という気持ちを乗り越えて、人を公平に評価できる人に成長していただきたいと思います。

会社としては、そういったイジワルをする人を放置しないように、仕組みをつくるべきです。例えば、会社での善悪をはっきりさせ、会社で人材育成をするときに、自己中心的な考えを持つ人がなぜダメなのかを示しつつ、そういった人は自社では出世できないようにすると良いと思います。

他人や環境の責任にする人(言い訳ばかりの人)

何かトラブルがあったときに、それを指摘すると、他人や環境の責任にする人は多いと思います。上記の2つからするとかわいいものですが、仕事のミスで言い訳ばかりされても困りますし、その人に成長はありません。

言い訳ばかりする人の特徴としては、他の人に迷惑をかけたことよりも、自己保身を優先する人です。謝ると、自分の値打ちが下がるように見えたり、軽蔑されたと感じたり、白旗を揚げたりしたように考えます。言い訳ばかりする人は、いくら技術力があったとしても、人から信頼されにくいです。

他人や環境の責任にする人が、人を陥れたり騙したりする知恵がついてきた場合や、役職に就いた場合は、「いつも他人にイジワルをする人」に成長していきます。特に、役職に就いた人はたちが悪いことになります。

誰しも、他人や環境の責任にすることはあると思います。それを反省して、自分の落ち度を認めることができたら成長していくのです。ところが、自分の人間性を落としていくことだと知っていても、止められない人がいます。

克服の方法は、「自分が他人のお世話になっていることに気が付いて感謝できる」ことと、「誤りを認められる人は器の大きな人である」と知ることです。

会社に出社するときは、主に公共交通機関を利用しますが、それも他人のお世話になっていることです。今、パソコンやスマホで、このコラムを読まれていると思いますが、そのデバイスを製造した人も他人です。

そういった多くの他人からお世話になっていることに深く気が付いた人は、他人に感謝できるようになり、「人のお役に立ちたい」と考えるようになります。

ここまでが、人間性がマイナスの人です。これらのことを克服していかなければ、人間性がプラスにはなりませんし、プラスになったとしてもすぐにマイナスに引き戻される場合が多いです。

プラスの人間性

続いて、企業で働く人のプラスの人間性の成長段階を考察したいと思います。

いつも人のお役に立ちたいと考えている人

第一段階は、人のお役に立ちたいと考えている人です。

企業で働く人たちの多くは、「何のために仕事をしているのですか?」と聞いたら、結婚されている人は「家族が食べていくため」と答える人が多いです。それは、「家族を守る」という社会人として最低限のことを見たそうとする行為です。つまり、一見自己中のように見えますが、人間性としてはプラスだと思います。

そして、人間性がプラスの人に「仕事をしている生きがいは何ですか?」と聞くと、「人のお役に立てていること」と答える人が増えてきます。

このように、家族に対しても世間に対しても、「人のお役に立ちたい」と考える人は、人間性の高い人だと思います。

人のお役に立つ喜びを覚えた人は、「もっとお役に立つためにはどうしたら良いのか?」と考えるようになり、勉強するようになります。すると仕事能力も高まり、他人との協調性も生まれ、人の強みを活かしあえる会社になります。

ここで、仕事能力が高くなり、喜怒哀楽の感情をコントロールできて、人間性がマイナスにならないように克服できた人が、次の段階に進んで行けると思います。

仕事能力が高く人を指導できる人

次の段階としては、経験や知識があり仕事能力が高くて、その能力を活かして世の中のお役に立ちつつ、人を指導できる人です。

部署によって仕事内容は異なりますが、仕事能力が高いので、社内では他の人が仕事しやすいようにしてあげられたり、社外では自社の魅力をお客様に伝えたり、優れた製品を開発したりできる人です。

「指導」とは、指さして導くことです。つまり、自分よりも仕事能力が低い人を、指さして導いてあげられる指導者であることです。そういった他人を指導できる人は、人間性が高いと言えます。

中には、仕事能力が高くても人を指導できない人がいます。多くの場合が、プライドが自己保身と融合してマイナスに作用するからです。

自分の居場所を確保するために、部下の成長が許せなくなり、抜かされていくことを恐れて、マイナスの人間性でご説明したような他人にイジワルをしてしまう場合もあります。

負けず嫌いの性格で、人に感謝できない人、人を公平に評価できない人は、そのようになりがちです。

本当に仕事能力の高い人は、さらに仕事能力を高めようと努力する人だと思います。そういった人が、部下を指導する資格のある人だと思います。

また、他人のミスや不手際を事前に察知して予防したり、トラブルがあっても「自分も何か貢献できなかったか?」と反省したりする人が、この段階の人です。自分の仕事の範囲だけでなく、他の人にまで目配り、気配りができます。

この範囲が経営全体に広がった人が、ゼネラルマネージャになっていく人です。

仕事能力の高い人をマネジメントできる人

そういった経験や知識を持った仕事能力が高い人をマネジメントできる人は、さらに上の段階だと思います。企業の全体が見られるゼネラルマネージャの段階です。

この段階は、会社の経営者層になってきますが、感情で心が揺れることはまずありません。専門性を極め、さらに勉強をされて広い見識を持ち、会社の経営を任されます。

会社のあらゆる部門を見ることができ、先見力や戦略眼があり、部下からの諫言を聞き入れ、人に感謝できて、部下のやる気を喚起できる人物です。また、部下の成長を信じ、部下を公平に評価し、清濁併せ呑むことができる度量を持っています。

アンドリュー・カーネギーの墓標に刻まれた言葉で、「彼よりはるかに賢い人を周りに得る方法を知った者がここに眠る」というものがあります。そういったマネジメント能力を持った人は、専門技術を持った人よりも人間性が高い人だと言えます。

事業活動を通じて社会貢献し、社員の生活をも守り、そこから得られた経営の智恵を次の世代に引き継ぎます。

事業経営で得られた教訓を哲学にまで昇華できる人

さらに人間性の高い人は、そういった経営の智恵を体系化し、道徳や哲学にまで紹介し、それを後世に伝え、その道徳や哲学がさらに多くのマネージャを生み出していった人です。

そういった人は、自社の成長や自社の人材育成はもちろんのこと、赤の他人である経営者にも自分の体得したことを教えようとし、それを通じて社会や国、世界を豊かにしようと考えています。

過去にそういった人は、たくさんいらっしゃいます。世界的に有名なところでは、アンドリュー・カーネギーです。アンドリュー・カーネギーの経営哲学は、ナポレオン・ヒルに委託して、成功哲学としてまとめられ、後世への遺産として残しました。

事業で成果を出ししつつも、そういった教訓を残し、後世の多くの人のお役に立った人は、人間性がとても高い人だと思います。

この段階の人は、企業家だけではありません。コンサルタントでもこの段階の人がいると思います。例えば、ピーター・ドラッカーのマネジメント思想も、読み解くのにとても苦労しますが、哲学にまで昇華された内容が含まれています。一倉定の社長学シリーズも、経営哲学を多く含んでいます。

こういったコンサルタントは、経営の原理原則を教えてくれるメンターです。人間性の成長をお考えの社長は、経営の原理原則を教えてくれるメンターを持ったり、こういった有名どころの経営思想の書籍を、繰り返し繰り返し読んだりすることをお勧めします。

仕事を通じて人間性が成長する会社にするためには?

ビジネスは信頼で成り立っているので、会社で働く人たちにはプラスの人間性が求められると思います。

例えば、誠実な社員ばかりの会社と、そうでない人ばかりの会社があり、同じ商品を販売していたとしたら、やはり誠実な社員ばかりの会社の商品を買いたくなるものです。

仕事を通じて、社員の人間性が高まるような会社にしたいものです。

先ほど述べた人間性の段階について考えている社員は、少ないと思います。そこで、社長が「わが社にとって必要な人材は、このような人だ」とか「わが社にとって、人間性の高い人とはこのような人だ」という具合に、具体的に示してあげる必要があります。

中小企業で働く社員の中には、判断能力の低い人がいるかもしれませんので、人間性の高い人はどういった人のことなのかを教えてあげる必要があります。

では、「どういった方法でそれを教えるか」ですが、それは行動指針に、人間性の成長の部分を入れることです。

行動指針とは、経営理念を構成するパーツの一つで、「社長を含む全社員が、行動指針に従って仕事を行う」というものです。

人間性を高める行動指針については、「従業員の人間性の成長を考えた行動指針の内容とは?」で詳しく述べていますので、そちらをご参照いただきたいと思いますが、簡単に述べるならば、次の3つのことが網羅されている行動指針を基本とします。

  • 自己中心的な考え方と真逆の考え方を持つ
  • 感情のコントロール(自制心)
  • 何事も明るく前向きに考える

これに、自社にとってのプロフェッショナルの条件を加えたり、経営陣のあるべき姿を入れたりするなどして、全方位的な行動指針に仕上げます。

また中小企業においては、社長を含めた経営幹部が社員に模範を示すことができるように、治外法権なく経営幹部が行動指針に従って行動し、反省しなければなりません。そして、教え上手になって、経営幹部は社員に対して、良き指導者になっていく必要があります。

ここでの注意点は、指導と称して「いつも他人にイジワルをする人」というマイナスの人間性が出ないように、感情をコントロールできるようになってください。

経営幹部の偉さは、役職があるから偉いのではなく、仕事能力が高いことはもとろんのこととして、高い人間性を身に着けた人が偉いのです。

以上、企業における人間性の高さについて段階があることを述べ、その段階を進んで成長していくための課題を述べました。なかなか難しいテーマに取り組みましたが、学術的な研究は専門の先生にお任せしたいと思います。仕事を通じた社員の人間性の成長をお考えの社長に、何らかの参考になればと思います。

当社では、経営理念コンサルティングのご支援を通じて、中小企業でも仕事を通じて徳のある人材を育てていく企業になり、立派な会社になっていただくためのご支援をさせていただいています。

そのサービスの中で、「人間性の成長」をテーマとした人材育成の研修会の開催を行ったりもしています。

社員の人間性の成長には、とても時間のかかることなのですが、人材育成に積極的な社長を中心に、長い間がかかることをご辛抱いただき、経営幹部が人材育成のできる人材に育っていただくように、ご支援しています。

人間性の成長を含めた行動指針の作成・浸透のご支援をご希望の方は、ぜひチームコンサルティングIngIngの経営理念コンサルティングをご利用ください。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら数千を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくりる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

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