
会計用語には、いろいろな利益の名称が出てきます。
その代表が、営業利益(えいぎょうりえき)と経常利益(けいじょうりえき)です。
経常利益は、略して「けいつね」と言われることもあります。
小さな会社を経営している、もしくは創業したばかりの会社は、営業利益と経常利益がほぼ同額になり、その違いが今一つ分かりにくい場合があります。
営業利益の意味は、本業の営業活動をして得られた利益のことです。
経常利益とは、本業の営業利益と営業外の利益または損失を加減した、会社の経常的な利益のことです。
営業利益と経常利益の意味と計算方法、それらの違いや、財務会計と管理会計の違いについても解説します。
営業利益の計算方法
営業利益の計算方法は、財務会計での計算方法と、管理会計での計算方法の2種類あります。
財務会計での計算(税務署のための計算)
財務会計とは、小さな会社では「税務署に申告するための会計処理」と同義だと思います。法律で決まった名称を使って、営業利益を計算する式は、次の通りです。
営業利益 = 売上高 -(売上原価 + 販売費及び一般管理費)
売上原価は、売上計上したもののみの原価です。例えば、コンビニがペットボトルのお茶を100本仕入れたとします。その仕入れが5,000円だったとして、すべて原価として計上することはできません。50本売れたら、その50本分の原価2,500円のみ、売上原価として計上し経費として認められます。
ちなみに、残った50本は棚卸資産になります。
売上高から売上原価を引いた利益を、売上総利益といいます。それを上記の式に当てはめると、
営業利益 = 売上総利益 - 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費とは、広告宣伝費やテナント家賃などの売上に間接的にかかる費用のことです。交通費も含まれます。この用語は長いので略して、「販管費」と一般的に使われます。
管理会計での計算(社内の方針を決めるための計算)
管理会計とは、税務申告では通用しない、自社独自の計算方法に基づいた会計です。財務会計では、実務と一致しない数字になるので、自社内だけで使う会計書類を作成し、その経営指標を基に方針を立てます。
方針を立てる上で役立つ経営指針の代表例が、変動費と固定費です。
変動費とは、売上高に対して変動する費用のことです。例えば、何かを製造するための原材料が変動費になります。売上高に比例するので、比例費とも言われます。
固定費とは、売上高に関係なく、毎月などの定期的にかかる費用のことです。例えば、地代家賃や人件費は固定費になります。水道光熱費は、厳密には売上高に関係がありますが、管理会計ではざっくりと把握できたらいいので、一般的には固定費に分類します。
変動費と固定費で営業利益を計算すると、
営業利益 = 売上高 -(変動費 + 固定費)
売上高から変動費を引いた利益を、限界利益といいます。これを式に当てはめると、
営業利益 = 限界利益 - 固定費
限界利益と似た利益として、売上高から変動費と直接固定費を引いて求める「貢献利益」というものもあります。製造に直接関係する固定費を引くと、より実務的と言えます。直接固定費には、製造機械の減価償却費やリース料などがあります。
どちらで計算したらいいのか?
営業利益を計算するときに、財務会計と管理会計のどちらで計算しても、結果は同じ数字になります。
計算は経理担当者や税理士さんが計算すると思いますから、社長としては計算方法はどうでも良いわけです。同じ数字にならなければ、何か項目が抜けているか、余計な項目が足されているかのどちらかになります。
社長としては、どちらで計算するかが大事なのではなく、それぞれの計算式に用いられる数値の推移や算出された結果の推移を分析することが大事です。
製造業における「売上原価」と「変動費」の違い
小さな会社の売上原価計算のコツ
製造業では、売上原価の計算が複雑になります。その理由は、製造に関係した人の人件費も、売上原価に入るからです。
小さな会社では、社長や経理担当者も、製造が忙しいときは、製造現場に入って指揮をしたり、製造装置を操作したりすることがあります。
さて、そのように繁忙期には、社長であろうが経理担当者であろうが、製造現場に入って製造するわけですが、そのときに、「私は今月は50%を製造の時間に当てたから、30万円のお給料のうち15万円が売上原価になって、残り15万円が一般管理費に入る」といった、毎月の複雑な計算が必要になります。
そのような計算をしても、自分の人件費が、売上原価に入るのか一般管理費に入るのかの違いだけで、営業利益の計算結果は変わりません。しかも、そのような計算をするために、一般管理費が多くかかってしまう場合もあります。
そういったことから、小さな会社では、細かな生産性を気にしないのであれば、「社長と経理担当者は一律30%を売上原価にする」と決めておくと良いと思います。
売上原価と変動費の決定的な違い
売上原価は、製造する人員の人件費が含まれていますが、変動費は原材料費や外注費のみで、人件費は固定費に含まれます。すると、製造業では売上原価と変動費はかなりの差になります。
仕入れたものを販売する卸業者では、製造がありませんから、人件費は販管費になります。すると、売上原価と変動費がほぼ同額になります。売上総利益と限界利益もほぼ同額になります。
経常利益の計算方法
経常利益の計算式
経常利益の計算式は、財務会計では、次の計算式になります。
経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用
営業外収益とは、会社が主としている事業活動とは異なることで、経常的に得られた売上などの収益です。例えば、たまたま余っている土地を駐車場として近隣に貸して得られた売上です。他にも、小さな金額ですが利子も営業外収益になります。
ここで、経常的とは、突発的に入った利益や出ていった費用ではなく、定期的に入る収益やかかる費用のことです。
営業外費用は、売上原価や営業費、一般管理費に含まれずに、経常的にかかる費用のことです。借入金の支払利息も営業外費用に含まれます。お金を借りることは、財務活動であって本業の営業活動ではないからです。
経常利益は、営業利益から営業外収益を足して、営業外費用を引いた利益になります。
営業利益がマイナスでも、経常利益がプラスになる事例
会社によっては、営業利益がマイナス(赤字)であったとしても、経常利益がプラス(黒字)になっているところもあります。上記の計算式からすると、営業外収益が赤字を打ち消すくらいにプラスになっている場合です。
当社のお客様で、飲食業をしているお客様がいます。店舗数は1店のみです。そのお客様は、飲食業は残念ながら営業利益がマイナスになっており、プラスになるように努力しているところです。しかし、経常利益はかなりのプラスになっています。
その理由は、先祖からの広い土地があり、駐車場経営をしていて何百万円もの利益が毎年入ってきています。1店舗のみで営業利益を何百万円も出すことはとても難しいことですが、大きな営業外収益によって、地元の銀行からは「優良企業」と見なされています。
創業間もない会社は営業利益をプラスにすることに、最大限注力することが基本です。
営業利益や経常利益を黒字にする方法
営業利益、もしくは経常利益がプラスになっていたら、あまり気にならないかもしれませんが、それらが赤字だったら大変です。営業利益や経常利益を黒字にする方法は、簡単に言えば、次の2つです。
- 利益率をそのままに売上高を増やすこと
- 売上高をそのままに利益率を高めること
その両方でもかまいません。具体的には、
| 増やす | 売上高 |
|---|---|
| 減らす | 売上原価、販管費 |
ただし、売上原価を下げることができても、完成品の品質が下がったら、売上高が下がってしまう恐れがあります。また、広告宣伝費を減らしたら、一時的には営業利益がプラスになるかもしれませんが、売上高が下がってしまって、本末転倒になる場合もあります。
反対に、販管費を増やすことで、それ以上に売上高を増やすことができて、営業利益がプラスになることもあります。
そういったことで、闇雲に売上原価や販管費を減らすのではなく、総合的に検討することが大切です。
営業外利益を増やしたり、営業外費用を得らしたりすることでも、経常利益をプラスにすることもできますが、基本的に本業の利益である営業利益をプラスにして、経常利益もプラスにすることが基本です。
営業利益や経常利益を黒字にする方法は、話し出すと長くなるため、別の記事で解説したいと思います。
まとめ:小さな会社は「営業利益 ≒ 経常利益」でいい
営業利益と経常利益は、駐車場経営などの大きな営業外収益が無い場合は、ほぼ同一です。
営業利益 ≒ 経常利益
営業外収益が利子(受取利息)くらいしか無い場合は、せいぜい数百円くらいだと思います。
また、会社で有価証券を保有して配当金を得ている会社もあると思いますが、スタートアップの会社では高額な有価証券を持っていることは無いと思います。ですので、営業利益と経常利益はほぼ同じです。
財務会計では1円単位で正確に記載する必要があります。しかし、管理会計では1円単位を考えることはムダです。例えば、
- 財務会計の営業利益1,535,708円(1円単位で正確に!)
- 管理会計の営業利益1,540,000円(ざっくり上3桁でOK!)
5,000円くらい前後しても、経営判断に大差ありません。経営判断をするときは、ざっくりとした数字で判断していく感覚を磨くことが大切です。財務会計では1円単位で正確に計算することが求められますが、経営判断では細かな数字が気になり過ぎる「細かい病」に陥らないように注意しましょう。
以上、営業利益と経常利益の意味と計算方法、それらの違いについて解説しました。また、財務会計と管理会計の違いについても、解説しました。
財務会計の計算は、経理担当者や税理士さんにお任せしたら良いと思います。管理会計は、社長自身が経理担当者に「この数字を計算してもらいたい」と指示を出して計算してもらうか、ご自身で計算するようにしてください。
財務会計や管理会計の数字から、どのように経営判断をしていったらいいのか、小さな会社では、見る数字は、とても少ないのです。ですから、一度覚えてしまったら、一生ものになるので、ねじり鉢巻きで覚えていただけたらと思います。
当社では、財務会計や管理会計の数字の意味や、どのように経営判断に活かすのか、小さな会社向けに解説する個別セミナーを開催しています。「会計について覚えたいけれども、本を読んでもよくわからない」という方は、ぜひご利用ください。
この記事の著者

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。
