社長の夢実現への道

クリニックの損益分岐点収益の意味や計算方法と黒字化のポイント

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クリニックの損益分岐点収益の意味や計算方法と黒字化のポイント

勤めている病院を辞め、開業医を目指している先生は、「地域の医療に貢献したい」と高い志をお持ちのことと思います。

しかし、現実は厳しいもので、いくら地域貢献を考えていても、クリニックが利益を得られなければ、経営が立ち行かなくなり、地域貢献ができなくなってしまいます。

クリニックを開業させた先生は、医者としての技術だけでなく、経営者としてのセンスも求められ、自院の売上を増やして黒字化し、ご自身の給料をしっかり出せるようにする必要があります。

クリニック経営が安定するためには、たくさんの患者様に来院してもらえるようにすべきなのですが、「何人の患者様が来院したら黒字になるのか?」という数字を把握することは、とても大切です。そのための経営指標として、損益分岐点収益というものがあります。

損益分岐点収益の意味や計算方法は、この記事で解説していくわけですが、これらの数値を分析すべきタイミングは、テナント契約をする前です。

損益分岐点収益をどれくらいに設定するのかによって、クリニックが安定経営できるかどうかに関わってくるため、入念に設定することが求められます。

この記事では、損益分岐点収益の計算方法と意味を解説しつつ、経営難に陥りにくい、安定経営がしやすいクリニック経緯のポイントを解説します。参考ページとして、平井公認会計士事務所ホームページ「クリニックが経営難に陥る5つの理由と対策」と併せてご覧ください。

損益分岐点収益の計算方法

損益分岐点収益の計算式を説明する前に、固定費と変動費という用語が出てくるので、その意味を襲えておいてください。

医業利益の計算式

クリニックで医療活動をしたときに得られる本業での利益は、次の式で計算できます。

医業利益=医業収益-医業費用

医業収益とは、診療報酬の合計です。医業費用とは、医業活動でかかる経費のことです。

本業以外の利益や費用があり、医業外収益と医業外費用と言いますが、空いている駐車場を近隣に貸したり、駐車場の管理費といったものがあります。そういった医業外収益を加算しなくても、本業である医業利益がプラスになるようにすることが、経営者としての実力となります。

固定費と変動費の意味

医業費用には、固定費と変動費があります。

医業費用=固定費+変動費

固定費とは、医業収益の増減に関係なく、定期的に固定でかかる費用です。例えば、

  • テナントの地代家賃
  • 給料や福利費などの給与費
  • 医療機器のリース代やメンテナンス費
  • 支払利息

変動費とは、医業収益に比例してかかる費用のことです。例えば、

  • ディスポなどの材料費
  • 血液検査などの委託費

医業利益の計算式の費用に、固定費と変動費を代入すると、

医業利益=医業収益-(固定費+変動費)

ちなみに、医業収益から変動費を引いた利益のことを、限界利益といいます。

限界利益=医業収益-変動費

損益分岐点収益の意味と計算式

患者様の来院数を増やして医業収益を増やし、医業収益から変動費を引いた利益が、固定費を超えるようになると、医業利益が黒字になります。反対に固定費に達しなかったら赤字です。「医療利益-変動費」と固定費が同額になれば、±0です。このときの医業収益が、損益分岐点収益です。

医療利益-変動費>固定費 黒字 医療利益-変動費=固定費 損益分岐点収益 医療利益-変動費<固定費 赤字

損益分岐点収益は次の式で計算できます。

損益分岐点収益=固定費/(1-変動費/医業収益)

単位は「円」です。ちなみに、「変動費/医業収益」のことを変動費率といいます。

変動費率=変動費/医業収益

この式に損益分岐点収益の計算式に代入すると、

損益分岐点収益=固定費/(1-変動費率)

固定費や変動費率が高い場合は、損益分岐点収益が上がります。つまり、多くの医業収益を得ないと黒字化しにくいことを意味します。反対に、固定費や変動費率が低いと、損益分岐点収益が低くなります。つまり、医業収益が低くても黒字化しやすいという意味になります。

損益分岐点患者数

損益分岐点収益とは、クリニックが黒字になる医業収益の金額で表現したものです。損益分岐点患者数は、1日や1ヶ月に何人の患者様が来院してくれたら黒字になるのかの人数です。

損益分岐点患者数の計算式は、

損益分岐点患者数=損益分岐点収益/(1ヶ月当たりの開業日数×12ヶ月×患者1人当たりの医業収益)

単位は「人」です。損益分岐点収益は通常は1年当たりの数値ですから、1日当たりの数値に換算します。1ヶ月当たりの開業日数は、通常は20日です。土曜日は「午前中だけ」という具合に半日だけ開業するので、その日は0.5日で計算します。

それを患者1人当たりの開業収益で割れば、1日当たりの損益分岐点患者数が計算できます。

1日当たりの損益分岐点患者数がわかれば、「1日に何人の患者様が来院したら黒字になるか」がわかります。この人数を超えるように経営を行います。

損益分岐点比率の意味と計算式

損益分岐点収益と似た用語に、損益分岐点比率というものがあります。これは、これは「最大医業収益の何%まで医業収益が得られたら黒字になるか」という意味です。最大医業収益とは、クリニックに限界まで多くの患者様が来院したときに得られる医業収益のことです。

損益分岐点比率の計算式は、

損益分岐点比率=損益分岐点収益/医業収益×100

これを固定費と変動費の式にすると、

損益分岐点比率=固定費/(医業収益-変動費)×100

単位は「%」です。ちなみに、「変動費率=変動費/医業収益」なので、この式を代入すると、

損益分岐点比率=固定費/{医業収益×(1-変動費率)}×100

固定費や変動費率が高いと、損益分岐点比率が高くなり、多くの医業収益を得ないと黒字化しにくくなります。反対に、固定費や変動費率が低いと損益分岐点比率が低くなり、少ない医業収益でも黒字化しやすくなります。

損益分岐点収益と損益分岐点比率の違いは、損益分岐点収益は、金額で黒字化するポイントを示したものです。損益分岐点比率は、目標とする最大の医業収益に対する割合です。

開業後早期に黒字化し安定経営がしやすいクリニックとは?

損益分岐点収益から見る黒字化しやすいクリニック

ここで、経営者視点で、損益分岐点収益の意味を考えたいと思います。クリニックを開業させた直後は、認知度が低いため患者様の人数が少ないので、赤字です。開業するときに「たくさん稼ぎたい」と思っていても、まずは黒字化することが大事です。

黒字化しやすいクリニックとは、要するに「少ない患者様の来院数でも黒字化する」というクリニックです。それを、損益分岐点収益の計算式から、感覚ではなく数字で黒字化しやすいクリニックを考えたいと思います。要するに、「黒字化しやすいクリニックとは、損益分岐点収益が低い」ということです。

損益分岐点収益の計算式をご覧ください。損益分岐点収益を下げる方法は、割り算ですから分子を小さくするか、分母を大きくするかです。つまり、「固定費を低く抑えること」か「変動費を下げて、医業収益を増やすこと」です。

しかし、開業後に固定費を下げること、変動費を下げることと、医業収益を増やすことには、限界があります。変動費を下げるためには、仕入れ先を変えることですし、医業収益を増やすとしてもクリニックの規模に応じて上限があります。

競合クリニックが出現したときに慌てないクリニック

損益分岐点収益は、近隣の同じ診療科目の競合クリニックと比べて、自院が黒字化しやすいかしにくいかを把握することが大切です。なぜなら、自院が競合クリニックよりも黒字化しにくい場合は、経営で負けやすいことを意味するからです。

損益分岐点収益の数値が高い場合は、開業後に近隣に競合クリニックが新設されたときに、患者様の人数が減ってしまったときに、経営難に陥りやすいことを意味します。

クリニックの防衛策として、背伸びをしないでできるだけ損益分岐点収益を低く抑える、もしくはたくさんの患者様が集患できるような事業計画を立てた方が良いです。

開業後10年で赤字になったクリニックの事例

とある精神科クリニックのエピソードです。駅前の一等地に開業したときは、精神科クリニックは自院のみだったので、たくさんの患者様が来院してくださることを想定し、広いテナントを借りて常勤の医師やスタッフをかかえて開業しました。

1年後には軌道に乗り、たくさんの患者様が来院してくださるようになり、利益が出ていました。

ところが、3年、5年と経過する中で、近隣に精神科クリニックが増えてしまい、開業から10年後に月次で赤字に転落してしまいました。(ちなみに、「月次」とは月の損益計算のことです。1年間は「年次」といいます。)

広いテナントや多くの常勤スタッフの割に、患者様があまり来院しなくなり、赤字になってしまったのです。さらに、診療報酬の見直しで、さらなる赤字が予想されます。

近隣の競合クリニックを調べてみると、マンションの一室で開業していたり、先生がお一人で運営していたりと、固定費を極力抑えて損益分岐点収益が極端に低い開業をしていました。このような開業によって、1日に患者様が20人ほどでも十分に黒字化が可能な場合もあります。

クリニックはお城の建築と同じようなもので、一度築城してしまうと建て直しが困難です。そこに、塹壕のように身軽な競合クリニックが出現し、敗れて去ってしまうこともあります。

赤字になったクリニックは、過去に開業コンサルタントに研究し尽くされていたわけです。

なぜテナント契約をする前に計算すべきなのか?

冒頭で、損益分岐点収益を計算するタイミングは、「テナント契約をする前です」と説明しましたが、その理由は、「テナント契約をしてしまったら、損益分岐点収益を変えることが難しいから」です。

テナント契約をしたら、その地代家賃とその場所での集患度合いで収支シミュレーションを行い、事業計画を作成します。その事業計画を持って、銀行などの金融機関に融資を依頼します。つまり、テナント契約をしたら、それ以降は事業計画を変えることができなくなり、損益分岐点収益が決定してしまいます。

収支シミュレーションのために必要な数字

クリニックの開業を考えたときに、テナント契約する前に、開業予定場所にて仮の数字を使って収支シミュレーションをします。

  • どのような医業科目で、どれくらいの規模のクリニックを開業させるのか?(固定費と変動費はいくらかかるのか?)
  • 1日の平均来院数
  • 開業日数
  • 自院の診療科でどれくらいの平均顧客単価になるか?

これらの数字を想定したら、損益分岐点収益を計算することができます。

ちなみに、医業収益の計算式は

医業収益=1日の平均来院数×開業日数×平均顧客単価

収支シミュレーションでは、厳密な数字で計算するのではなく、少し厳しい数字で計算しておくことをおすすめします。例えば、医業収益は少し低くなるようにし、固定費や変動費は少し高くなるように計算します。すると、それが安全係数になり、安定経営につながりやすくなります。

開業後、損益分岐点を下げるためにコントロールできる数字は?

上記の数字の中で、自院でコントロールできる数字は何でしょうか?

固定費は、主にテナント家賃や人件費ですが、増えることはあっても、減らすことは難しいと思います。一度入居してしまったテナントを、引っ越しすることはできません。

1日の来院数は、広告宣伝やSNSの活用などで、増やせる可能性がありますが、顧客の来院を確約することは難しいです。

開業日数は、一般的に月20日ほどで計算しますが、それを25日に増やしたとしても、その分だけ人件費も増えてしまいますし、その増加分をまかなえるだけの患者様の人数が増えるかはわかりません。患者様の数を増やすために、自院では行っていない診療科目を取り入れることも考えられますが、開業後には難しいと思います。

平均顧客単価を高めることは難しいと思います。

このように、開業をしてしまったら、損益分岐点収益を変えることは、なかなか難しいのです。

クリニックの事業計画を立てるときは、競合クリニックの台頭も考慮する必要があります。

まとめ

損益分岐点収益と損益分岐点比率の意味と計算式や、黒字化しやすいクリニックを解説いたしました。

損益分岐点収益を下げることが黒字化しやすいクリニックになり、経営が安定しやすいです。しかし、損益分岐点収益を下げることは、開業後に下げることは難しいです。そのため、テナント契約をする前に、競合クリニックが出現しても黒字を維持し続けるように収支シミュレーションすることが大切です。

もし、自院の事業計画の損益分岐点収益がどれくらいの金額かいくらか、その数字が妥当なものかどうか知りたいと思われたら、当社までお気軽にご相談ください。

また、「開業して3~4ヶ月経過したけれども、なかなか黒字化しない」とか「クリニックが赤字になってしまった」とお悩みの先生もご相談ください。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

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