経営理念は大事だと言われていますが、なぜ大事なのかを考えるために、経営理念のメリットをご紹介いたします。
企業の経営では、何事でも最終的には理性的に判断してメリットのないことはやりません。経営理念の作成や浸透も同様で、メリットが感じられなければ、行われません。
ところが、成長している企業、長く生き残っている企業には、必ずと言ってよいほど、広い意味での経営理念があるのです。
結局のところ、経営理念の最終的なメリットは「社長を含む全社員のやる気が高まり、会社を発展させられること」です。経営理念には、他にもさまざまなメリットがあり、そのメリットの相乗効果によって会社が発展していくのです。
このコラムでは、その経営理念のさまざまなメリットについてご紹介いたします。
経営理念が持つメリットを得たい場合は、ぜひ経営理念の作成や浸透にチャレンジしてみてください。
メリットが得られる前提としての「正しい経営理念」
このコラムでは、「正しい経営理念」を作成したことを前提として、経営理念のメリットをご説明したいと思います。
正しい経営理念とは?
では、正しい経営理念とはどういったものなのかをご説明いたします。それは、次の要素を含むものです。
- 会社が目指していることが分かる。
- 会社がどのような事業活動を通じて、どのように社会貢献をするのかが分かる。
- そのために全社員が何をしたらいいのかが分かる。
経営理念から、これらのことが明確に理解できることが大事です。それを正しく浸透させることができ、社員が受け入れてくれたら、会社は少しずつ発展していきます。
短い経営理念のデメリット
例えば、ラーメン屋さんで「感謝」という一言を経営理念にしたとしましょう。
「感謝」という一言の経営理念は、素敵な経営理念ですし、覚えやすいです。「感謝」という一言から、ラーメン屋を経営している社長の意図や目指していることが伝わってきそうですが、明確ではありません。
お客様への感謝を考えて、「美味しいラーメンを提供する」ということが考えられますが、経営理念のないラーメン屋さんでも、美味しいラーメンを提供することは、当たり前のことです。店員によっては、「社長は、大きな声で感謝の気持ちを伝えることを求めているに違いない」と勘違いする人も出てくると思います。
また、「感謝」の一言だけでは、ラーメン屋さんを1店舗だけを経営し続けるのか、将来的に全国チェーン展開するのか、世界進出まで考えているのかわかりません。
このように、経営理念では何か短い一言だけでは、上記3点のことが理解できる社員は出てきません。そのような経営理念では、浸透しても会社は成長しません。
経営理念を構成する要素
当社では、これらの内容が網羅された経営理念は、一言で表される経営理念ではなく、さまざまなパーツによって経営理念が構成されるべきだと説いています。その構成の各名称はともかく、次の4つで構成されると、経営理念が機能します。
- 基本理念
- 企業ビジョン(全社目標)
- 経営指針
- 行動指針
基本理念が「感謝」という一言であったとしても、他の3つのパーツによって保管され、社長が基本理念に込めた意味を、従業員に伝えることができます。
それぞれの意味については、「経営理念の構成要素」でご紹介しているので、ご参照ください。以下、経営理念のメリットを述べたいと思います。
反対を言えば、ここでご紹介するようなメリットが得られなければ、本物の経営理念とは言えないのではないかと思います。
メリット1. 社長が使命感に目覚める
中小企業の経営は、「社長お一人で99%が決まる」と言われています。社長が交代したら、たちまち会社が発展したり、衰退したりすることからも、そのことは正しいと言えます。
社長で99%が決まるのであれば、社長が使命感に目覚め、やる気が高まれば、会社は発展しやすいのではないかと思います。
やる気と言っても、単に覇気や勢いだけが倍増しても、社員がうんざりする場合もあります。この「やる気」というものの中には、社長の成長も入っています。
社長の器によって会社の規模が決まるとも言われています。社長ご自身が「器を大きくしたい」、「経営の勉強を真剣にしたい」と考えるようになったのであれば、そこで働く、やる気のある社員にとっては福音となることでしょう。
経営理念は、社長の夢が込められています。その夢が明確になり、その実現を本気で目指したいのであれば、その本気度の高さが「やる気」です。そして、実現したいこと大きなものであればあるほど、より一層の勉強が必要となりますが、その勉強は苦痛でなくなり、夢中で取り組むようになります。
もし、「本気で勉強したくなった」と思われた社長がいらっしゃいましたら、当社の社長・経営幹部向けセミナーにでひご参加ください。
メリット2. 社員のやる気が出る
正しい経営理念には、基本理念や企業ビジョンがあります。基本理念には、会社が事業活動を通じて社会貢献をすることを、一言で表現されたものです。また、企業ビジョンには、わが社の将来像が明確に表されたものです。
基本理念に共感して公器的な意識に目覚め、企業ビジョンの実現が自分たちの社会的地位の向上にもつながることを理解できたならば、社員たちは行動指針を受け入れてくれるようになります。
基本理念や企業ビジョンと行動指針を併せて浸透させていくことで、社員のやる気が高まっていきます。
また社員たちは、社長が夢に向かって真剣に取り組む姿勢を見ても、やる気が出てきます。また、心ある社員は、「社長は本気だ。お世話になっている社長に恩返しをするためにも、その理想実現に貢献したい」と考えます。
行動指針が浸透すると、社員の人間性が成長したり、仕事能力が向上したりします。すると、経営陣から評価されるようになります。そうすると、余計に人間性や仕事能力を高めたくなります。
基本理念で社会貢献を意識し、企業ビジョンで会社に将来性を感じ、行動指針によって仕事で成果を出す方法や評価基準がわかるので、社員にやる気が出てきます。それらが社員たちに伝われば、社長たちと社員の間には、絆が生まれていることと思います。
しかし、経営陣が、そのメリットのことだけを考えて、行動指針だけを浸透させようとすると、社員から反発があります。
社員たちは、「自分たちを働かせておいて、自分たちには何のメリットもないではないか」と考えるからです。いきなりの行動指針の押し付けは、社員にとってはデメリットにしか感じません。
正しい経営理念を示し、社長がやる気になっても、経営理念を押し付けのように感じる社員は、必ずいます。まずは、経営理念に共感する社員から浸透させるようにしてください。
メリット3. 社員の心が一丸となる
優良企業の経営者が「経営理念を作成したい」と考える、大きな理由の一つが「社員の心を一丸としたい」ことです。正しい経営理念には、まさしくそのようなメリットがあります。
会社の仕事は組織で行っているので、できればそこで働いている人の心が一丸となった方が、効率よく成果が出せると思います。すると、お客様や社会からの評価が高まり、優良企業へと成長していきます。
何をもって「社員の心だ」と定義すればいいのでしょうか?
それは、仕事に取り組む姿勢と、会社で目指しているものの方向性です。それが、基本理念や企業ビジョンに盛り込まれています。
また、行動指針に市が経って働いている社員は、仕事能力が高くなり、社員同士の絆が強くなるので、いっしょに仕事をしている人たちが、「仕事がしやすくなった」と思うはずです。
メリット4. 社員の人間性が成長する
行動指針には、仕事に対する姿勢が書かれています。「行動指針に従って仕事をしている社員は、人間性が成長する」というメリットがあります。
人間性とはどのようなものでしょうか?
それは、「企業における人間性成長の考察」でもまとめたのですが、自己中心的な考えから、仕事を通じて多くの人を幸福にしていく考えになることです。そのためのステップアップがあります。
自己中心的な考えから、利他の考えになっていくためには、行動指針の基本的な内容として、次の3つのことが含まれている必要があります。
- 自己中心的な考え方と真逆の考え方を持つ
- 感情のコントロール(自制心)
- 何事も明るく前向きに考える
さらには、リーダーやマネージャーになっていくためには、さらなる人間性の向上が求められます。つまり、行動指針は、社員の役職に応じて3段階あります。
- 全従業員が従うべき基本的な内容
- リーダーが従うべき内容
- マネージャーが従うべき内容
それを浸透させていくことで、会社での出世に応じた仕事能力の向上だけでなく、人間性の向上にもつながります。
メリット5. 社員の仕事能力が向上する
行動指針は、人間性の成長と同時に、仕事能力の向上に関する内容も含まれています。仕事能力が向上していくためには、行動指針の基本となる内容と、部門毎や役職毎の仕事能力向上に関する行動指針が作成されると理想です。
仕事能力が向上するための基本的な行動指針の内容については、「行動指針の内容に入れるべき仕事の基本姿勢」をご覧ください。
そういった行動指針を作成し、浸透させることによって、社員全員の仕事能力が高まります。
また、もともと仕事能力が高くて、やる気がなかった社員がいたとします。その人が、経営理念の浸透で回心して、いきなり仕事能力を発揮しだすこともあります。
社員全員のやる気があり、人間性が高まり、仕事能力が高まれば、優良企業になっていきます。
メリット6. 経営幹部が社長に代わって経営判断ができるようになる
経営幹部になってくると、社長に代わって経営判断をするときがあります。例えば、新規事業を企画する場合、新しい取引先と提携する場合、社内のルールを変更する場合などです。
その基準となるものは、基本理念や経営指針です。
社長に代わって経営理念に基づいて経営判断ができるようになると、経営幹部が熟練を積んで、仕事能力が向上していきます。経営幹部が成長すれば、社長は、より大きな仕事に取り組むことができるようになります。
経営幹部の成長は、会社にとって大きなメリットとなります。
メリット7. 未来ビジョン実現に向けた経営計画が立てられる
経営計画を立てる場合、中小企業では1年間や3年間といった比較的短期的な経営計画を立てることが多いと思います。
企業ビジョンを作成したら、それが実現した未来から逆算して、経営計画を立てることができます。目先だけでなく未来にも目を向け、今まで発展のなかった企業が、未来ビジョンの実現に向けて歩み始めることができます。
また、経営計画から新規事業への取り組みも計画されることでしょう。新規事業は、プロジェクト計画に落とし込んで、社長が陣頭指揮を執るか、優秀な若手などに任せても良いでしょう。
経営理念に基づいた経営計画が作成された段階では、経営幹部をはじめ、一部の社員のやる気が出ていますので、経営計画がチャレンジングな内容であったとしても、否定的な意見ではなく、「やってやろうではないか」という前向きな意見が出るようになります。
それに呼応するように、少しずつやる気のある社員が増えていき、いずれ社員の心が一丸となって目標に向かって進んでいきます。
結局のメリットとして会社が発展・永続する
正しい経営理念を作成して浸透させることによって、これらのような経営理念のメリットが得られ、結局は会社が発展・永続します。
「このようにうまくいくのか?」と疑問に思われた方もいらっしゃることでしょう。
もちろん、うまくいきません。
なぜなら、人はすぐに成長しないからです。
まずは、経営幹部や社員の中で経営理念に共感するイノベーターを集めて、経営理念浸透プロジェクトを立ち上げ、社長が自ら陣頭指揮を執ります。そして、経営理念勉強会を開き、社長が作成した経営理念のすばらしさを理解します。
次に、経営理念浸透プロジェクトの人材が講師となって、経営理念浸透研修を行います。また、率先して経営理念に基づいて仕事を行いき、アーリーアダプタに共感を得るようにします。
経営理念を浸透させている間には、経営理念の不備により、さまざまな問題が出てきます。そのときは、経営指針や行動指針を改善していきます。
そして、実績が出るようになり、それを社内で共有するようにし、人事評価制度も経営理念に基づいたものに整備しなおすことで、経営理念浸透の溝を突破して、会社のカルチャーとなっていきます。
経営理念が浸透し始めると、社内の雰囲気が変わってきたり、一部の社員が成果を出始めたりします。成果が出始めると、それを見ていた社員も、経営理念の実践をするようになります。経営理念は、そのようにして少しずつ浸透していきます。
社長の熱心さにもよりますが、完全に浸透するまでには、最低でも2~3年はかかります。正しい経営理念は必ず浸透するので、諦めないで浸透させ続けてください。
以上、正しい経営理念のさまざまなメリットについてご紹介いたしました。
経営理念が持つメリットを得たい場合は、ぜひ経営理念の作成や浸透にチャレンジしてみてください。
また、「経営理念を作成したものの、正しいものができたかどうか心配だ」と思われる社長は、ぜひ当社にご相談ください。当社の経営理念コンサルタントに相談することで、社長が作成された経営理念が正しいものか、機能するものかどうか、上記のメリットが得らそうかをご判断いただけ、どのように変更したら良いのかが分かります。
スポット対応も可能ですので、お気軽にご相談ください。
この記事の著者
経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。