
企業ビジョンとは、会社で実現を目指す理想像のことです。
創業社長、もしくは中興の祖が高い志を持ち、その実現を全社をあげて取り組み、実現するための目標です。
それを社長が明確にして、情熱でもって取り組む姿勢を社員に示すことで、社員が育ち、理想のナンバー2が合流し、会社が成長していきます。
企業ビジョンの実現までに、順風であることは稀です。なぜなら、その途中で事業規模に合わせてさまざまなトラップにひっかかるからです。そのトラップでつまずく程度のことでしたら良いのですが、ときどき経営危機とも言える落とし穴に落ちてしまうこともあります。
そのトラップにひっかかり、経営危機に陥る前に、その原因と対策を知っておくことで、回避できるトラップもあるのではないかと思います。
この記事では、企業ビジョンの実現を目指す中で、さまざまな原因で経営危機が起こります。その原因をいくつかご紹介したいと思います。
以前に、「はじめての企業ビジョン!正しい企業ビジョンづくりを徹底解説」という記事を世に問いましたが、その内容の続き(第二弾)になります。
会社を公私混同していないか?
会社を興した社長は、自分の財布のように会社の経費を使っていきます。会社の規模相応に社長が使える金額が大きくなってくるので、自己中心的に使う金額も大きくなってくることがあります。
会社が小さいうちは、会社の経費と家庭で使うお金が混同していることがほとんどだと思いますが、会社が大きくなってくると、そうはいかなくなってきます。そのタイミングは、経理担当者を一般採用したときです。
社長の奥様などの身内の方が経理をしていると思いますが、そのときは公私混同をしていても、誰も文句を言う人はいません。社長に良心があれば、それが痛むだけです。しかし、自分に対する言い訳がうまくなってきて経費を使うことに麻痺してきます。
以前に、東京都知事が週末に自分の別荘に公用車で行くことが、「公費で別荘に行くことが“帰宅”に該当するのか?」ということで退任に追い込まれたことがありました。世間が認める公器な社長になってきたら、そのようにマスコミなどの目があるわけですが、小さな会社の社長にはそういった目はほぼ存在しません。
一般採用した経理担当者も、指摘することはあまりありません。しかし、社長が持ってくる領収書を見て、「これは経費にしても良いのだろうか?」と疑問に思うことはあります。経費か私費かの判断は社長にしかつきませんから、社員がそのように思っても仕方がありません。税理士さんも、指摘をしてくることはあっても、最終的には社長の意見を渋々採用することが多いです。
そして、社長が使う経費の金額が、社員が考える許容範囲を超えてくると、社員の中で不信感が出てきます。社員の不信感をそのままにしておくと、心ある社員が会社を辞めていきます。そして、心ある社員はたいてい能力の高い人なので、会社が傾くことになります。
公私混同を戒めるポイントは、
- 社員が自分と同じように経費の使い方をしたときに、それを認められるかを考える
- 自分がつくった経営理念に沿って、社長自ら忠実に経営をする(自制心を磨く)
- 経営の原理原則を教えてくれ、諫言をしてくれるメンターを持つ
- 社員の働きに常日頃から感謝を伝える
そもそも、会社を公私混同しているような社長は、企業ビジョンの実現に向けて本気になっていない証拠ですから、そのような社長に理想のナンバー2は来ませんので、会社が大きく発展することはありません。ですので、安心して公私混同を続けられると思います。
企業ビジョンの実現を目指し続けているか?
これは公私混同と似ているところがあります。企業ビジョンの実現を目指していて、社長がそれに興味がなくなるわけですから、本気で企業ビジョンの実現を目指している社員に会社を譲る時期が来ていると言えます。
企業ビジョンの実現を目指さなくなることは、企業ビジョンが実現すると、社員にとっては社長から搾取されていると感じるようになります。すると、心ある社員が会社を去っていき、場合によっては社員がゴッソリと退社して、会社が倒産危機に陥る場合があります。
仲間を引き連れて辞めていった社員は、実はその独立が成功することは低いのですが、社員を引き連れて辞めてしまうと、新しい社員を一から育成し直す必要があるため、発展が確実に止まります。
企業ビジョンの実現に向けてスタートさせた社長は、企業ビジョンが実現するまで、高いモチベーションを維持することが求められます。その方法として、経営の原理原則を教えてくれるメンターを持ち、定期的に面談してモチベーションの維持をしてもらうことが大切です。
税金が払いたくなくて赤字にしていないか?
これも公私混同と似ているところがあります。なぜなら、公器な会社を目指しているのであれば、税金を納めることが当然だと考えるべきなのですが、「税金を払いたくない」というのであれば、公的な企業とは言えません。公的な企業であれば、公的な企業ビジョンを実現ができますから、税金を納めることを基本とお考えください。
そして、税金を納めることができたら、その残った現預金をストックしておくことができることも忘れないようにしてください。その現預金は、それをいざというときの運転資金に回したり、もっと貯めて投資をしたりすることもできます。
その現預金のストックがあれば、倒産を回避することもできます。
現預金のストックは、「期末にいくら残しておきたい」という具合に経営計画を立てて実施します。そのときに、今までのように飲み代に使ってしまわないようにして、自制心を鍛えてください。
投機的な事業に手を出さないと誓っているか?
会社が成長してくると、売上高が増え、生産性の向上と併せて、利益が出てきてしまいます。利益が出ると「税金を払うくらいなら投資をしたい」ということで、本業以外の投機的な事業に手を出してしまう社長がいます。
「会社が複数あれば、飲み代の経費が2倍にできる」と考えて、別会社を立ち上げる社長もいます。
本来なら、企業ビジョンの実現に経営資源を集中させるべきなのですが、それを投機的な事業に“投資”と称してムダな出費をしてしまうわけです。
大きな利益が出る場合は、黒字倒産しないように調整しながら、税金をきちんと納めて現預金としてストックすること。2番目に、社長ご自身と社員に充分に給料を出してあげることが大切です。
投機的なことは避けるべきですが、その後に投資を行うことが大切です。
決算書の数字を読めているか?
会社が成長していく中で、傾く原因の一つとして、黒字倒産というものがあります。帳簿上は黒字なのに、現預金が足りなくなって倒産してしまうのです。また、社員の使い込みもあります。それを防ぐ方法として、決算書の数字の読み方を、ねじり鉢巻きで習得し、キャッシュフロー経営を行うことです。
決算書の細かな数字をまとめ上げることは、税理士さんにお願いしたら良いと思います。社長が必要なことは、決算書の数字が読めることです。税理士さんは、税務のプロですが、たいていは財務のプロではありません。ですから、会社の成長に合わせて、社長ご自身が財務のプロに移行していくことが、とても大切です。
企業ビジョンを数字に落とし込んだ経営ビジョンづくりは、何年か先のざっくりとした決算書をつくることと言えます。決算書の数字の読み方を習得していないと、経営ビジョンをつくることができませんので、いずれは勉強が必要となります。
財務の知識やキャッシュフロー経営の仕方は、いろいろな書籍で述べられています。しかし、たいてい大企業向けの書籍が多いことや、どのような書籍を学べば良いのかわからないこと、初めての知識なのでなかなか読み進めることが出来ないため時間がかかることで、苦労されると思います。そういった社長には、私が1on1で小さな会社の財務とキャッシュフロー経営の仕方をお教えするので、お気軽にご依頼ください。
財務の知識は、自動車の運転と同じで、1回覚えてしまったら忘れることがありませんから、集中して覚えてしまわれることをおすすめします。
後継者を育成しているか?
企業ビジョンの実現には、長い年月がかかります。本田宗一郎先生は、ご自身で自動車修理工場(アート商会)を始められてから世界一のオートバイメーカーになるまでに、24年もかかっています。このように長い年月かかります。そして、引退はさらに20年後でした。
二代目社長は、河島喜好先生ですが、本田宗一郎先生から実に24年ほど、藤沢武夫先生からも子会社の社長を兼任したり、重役室に入ったりして、10年ほど経営の勉強をして、二代目に就任しています。
これほど大きな会社は、初めての二代目社長の育成には試行錯誤が繰り返されると思います。4代目くらいになると重役を育成するノウハウが固まってくるので、次代社長に特別な野心がなければ大きなトラブルなく引継ぎが行われると思います。
ともあれ、初めての後継者の育成には特別に時間がかかります。ですから、企業ビジョンを固めた当たりから、後継者育成を念頭に社員の育成を開始すべきです。
もし後継者が正しく育成されなければ、買収されるなどして企業ビジョンが変わっていくことになり、社長の大志は夢幻と消えていきます。
政策や法案、世界情勢などの変化を把握しているか?
会社が大きくなってくると、新しい競合他社が現れてくることはもちろんのこと、政策や法案、世界情勢などの影響を受けやすくなります。それらの知見がないと、会社が危険にさらされることがあります。
トランプ政権の出現によって、多くの会社に方針転換を余儀なくされたと思います。選挙や国際情勢の動きによって、大会社が傾くこともあります。「まさか、トランプ政権が再度誕生するとは?」と思った社長も多いかもしれませんが、そういったことが予想できていなかったということは、社長の先見力の無さを露呈していることになります。
政策や法案、世界情勢が、小さな会社の運命をも左右する時代になっています。社長の先見力が会社の未来を大きく左右するわけですから、政策や法案、世界情勢に対して敏感になっておく必要があります。
そのような、政策や法案、世界情勢によって企業が右往左往することもありますが、実は、そういった変化は、自社にだけでなく他社にもマイナスに働くため、事業拡大のチャンスにもなり得ます。
企業ビジョンを掲げ、会社を大きくしていきたいと考えている社長は、今のうちから時代の変化を読み取る練習をすることをおすすめします。具体的には、新聞やニュースを見ること、世の中を見ることで、何かの変化に気が付くことです。
また、社長は日々経営の勉強をされていることと思いますが、その学びに偏りがないようにしてください。興味のない分野の情報が入ってこないために、経営危機に陥った会社をいくつも見てきました。
以上、企業ビジョンの実現を目指す中で、さまざまな原因で経営危機が起こります。その原因を解説しました。貴殿に当てはまっているものはあったでしょうか?
ご紹介した原因のさらに根本的な原因は、社長の志が変化すること、慢心すること、焦りの気持ちが出ることに集約されると思います。慢心からは自分の能力の過信に、焦りの気持ちからは自己保身につながり、ご紹介してきたような自分の身だけでなく会社を危うくしてしまうことにつながるわけです。
企業ビジョンを掲げてしまった社長は、自制心を磨き真剣勝負で経営に当たり続ける必要があります。そして、すべて自己責任で経営をしていかなければいけませんし、相談相手が少ないので孤独な人も多いです。社長道は、本当に割りの合わない道だと思います。しかし、社長道の先にあるものの魅力を知ることができるのも、社長をしている人だけなのです。
さて、この記事でご紹介した内容が、「当てはまっているものが無い」ということであれば、それは優れた経営者か、もしくは自分が見えていないのかのどちらかになります。もし後者だと感じられた場合は、当社のセミナー「小さな会社の社長のためのセミナー」にご参加ください。いろいろな角度で、経営分析や自己分析の仕方をお教えいたします。
この記事の著者

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。
