
クリニックを財務的に経営するための指標には、例えば「1日当たりの患者数」や「売上高」といったものがありますが、「現金がいくら残っているか」を見る方法もあります。
クリニックの通帳に残っている現金を管理する経営手法のことを、キャッシュフロー経営といいます。
キャッシュフロー経営は、一般的な企業では当たり前のように行われている経営手法です。
キャッシュフロー経営を行って黒字化しているクリニックは、安定経営ができ、黒字倒産を防ぐこともできます。
この記事では、キャッシュフロー経営の意味や方法などを解説いたします。
ただし、クリニック経営で見るべき数字は、他にもたくさんあります。詳細は、クリニック専門の平井公認会計士事務所ホームページ「クリニックの経営管理でおさえるべき数字とは?」をご参照ください。
経営指標とは?
経営指標を航海で例えると?
クリニックの経営を、船出に例えることができます。港を出発して、目的地に到達するためには、航海に耐えられる船を準備することはもちろんのこと、海図やコンパス、航海技術といったものが必要になります。
経営指標とは、クリニックの経営状態を数字で表したものです。院長は、この数字を見て、「この経営指標の数値を、いついつまでにこの程度の数値にしたい」と今後の方針を決めるわけです。
経営指標とは海図やコンパスを使って調べた現在位置です。経営の力量が航海技術になります。
現在の状況を調べることで、このまま航海を続けても問題ないか。食料の調達は必要ないかといったことを分析し、「このまま進もう」とか「途中の港に寄って食料や燃料を調達しよう」といった経営判断を行います。
クリニックの主な経営指標
実際のクリニック経営では、次の経営指標は必ず確認します。
- 今日1日の患者数
- 1ヶ月の平均患者数(損益分岐患者数)
- 1ヶ月の売上高と経費額
- 現預金の額
現預金とは、銀行に預けてある現金のことです。
クリニックを新規開業させるときは、毎月支払う家賃や人件費がどれくらいになるのかといった、固定費の金額が重要な経営指標となります。ところが、開業後は固定費を変えることはほとんどできませんから、経営指標としてあまり意味をなさなくなります。それよりも、1日の患者数の方が重要になります。
これらの経営指標は、ほぼすべて連動しています。1日の患者数が増えたら、1ヶ月の売上高が増えますし、現預金の額も増える傾向にあります。
しかし、条件によっては、売上高が増えると、一時的に現預金の額が減ってしまう場合があります。現預金が枯渇してしまって、各種支払いができなくなってしまったら倒産です。売上がプラスでも、現預金が無くなってしまったら、倒産してしまうのです。
このような倒産のことを、黒字倒産と言いますが、黒字倒産については後ほど、わかりやすく解説します。
キャッシュフロー経営とは?
キャッシュフロー経営とは、簡単に言えば現預金の額を確認しながら、常に現預金がプラスになるように経営する方法です。
なぜキャッシュフロー経営が大事なのか?
現預金とは、クリニックの金庫に入れてあったり、銀行に預けてあったりする現金のことです。当然ながら、現預金がマイナスになってはいけませんから、キャッシュフロー経営は大事なことです。
では、なぜ現預金がマイナスになってはいけないのでしょうか?
それは、現預金がマイナスになったら、クリニックが倒産してしまうからです。クリニックが倒産するときは、債務超過になったときでも、売上が落ちてしまって赤字になったときでもありません。現預金がゼロになってしまったときなのです。
クリニックの倒産とは、クリニックが運営できなくなった状態のことです。どのような状態だとクリニックが運営できないのかと言いますと、例えば
- テナントを追い出されてしまったとき
- スタッフの給料が払えなくなって、みんな辞めていってしまったとき
- ディスポなどの消耗品の購入、医療機器のメンテナンスや更新ができなくなったとき
これらの支払いはすべて現預金から行われるので、現預金がゼロになってしまったら、支払いができませんから、クリニックが運営できなくなり倒産するわけです。
もちろん、売上高が低ければ、将来入金される金額も減りますから、それが根本的な倒産原因となります。しかし、現預金の不足を予想し、あらかじめ運転資金を潤沢に準備しておけば、倒産を免れることになります。
そういったことで、現預金が常にプラスになるように経営する「キャッシュフロー経営」はとても大事であることを、ご理解いただけたと思います。
キャッシュ残高をチェックするタイミング
キャッシュフロー経営で、キャッシュ残高をチェックするタイミングは、もっとも現預金が目減りする日です。
現預金がもっとも目減りする日とは、いつのことでしょうか?
それは、給料日もしくはテナント賃料の支払日だと思います。その日に、キャッシュ残高がマイナスにならないように経営することです。
その日に、おおよそどれくらいの金額が減るのか予想できるので、それまでに現金が健康保険組合などからどれくらい振り込まれるのか、この現金の出入りを把握して、現預金がプラスになるようにしておきます。すると、クリニック経営が安定します。
このような、資金の出入りを調整のことを、資金繰りと言います。
現金が入金されるタイミング
最近では、キャッシュレス化が進み、クリニックの決済で現金がほとんど入ってきません。診療報酬の大部分の入金は、診療月の2ヶ月後になります。
診療をした段階で売上が立ち、支払いも発生します。しかし、現金の入金が2か月後になるわけです。この2ヶ月間を耐えられるだけの現預金を準備しておくことが、とても大事です。
このときに発生する費用を、運転資金や自己資金、銀行の短期借入などで賄うことができれば、倒産を免れます。2か月後にほぼ確実に支払われる入金を待ちます。
一般的な企業と異なり、請求をした相手が倒産することはありませんから、2ヶ月後には確実に現金が入金されます。そのため、請求先の与信管理が必要ないことは、クリニック経営のしやすさでもあります。
キャッシュフロー経営のメリット
キャッシュフロー経営のメリットは、大きくは次の2点です。
- クリニックを安定経営させやすい
- 黒字倒産を防ぐことができる
クリニックを安定経営させやすい理由とは?
クリニックを経営していて、いつどれくらいの現金が入金され、出ていくのか、直観的に経営することは、おおよそ金額を把握できるので、できないことはありませんが、とても危険です。いつもハラハラしながら、いつも現金が足りないことになります。
キャッシュフロー経営をすることで、現金の入出金のタイミングと金額を把握できれば、「支払いは大丈夫だろうか?」と心配することが無くなります。すると、先生は医療活動に集中できるので、良い医療ができ、患者様の口コミも良くなって、さらに売上が増えると思います。
黒字倒産とは?
キャッシュフロー経営をすると、黒字倒産を防ぐことができます。黒字倒産とは、読んで字のごとく「経営が黒字なのに倒産してしまうこと」です。
黒字倒産と聞いたときに、「なぜ、黒字なのに倒産してしまうのか?」と思われたかもしれません。しかし、実際に黒字でも倒産することがあります。
先ほどご説明しましたが、クリニックが倒産するときは、どういったときでしょうか?
それは、「現預金がゼロになり、支払いができなくなったとき」でした。
売上計上は、患者様を診療した段階で発生します。つまり、売上高がプラスになります。ところが、現金の支払いは2か月後になります。その間も、テナント家賃や人件費といった費用はかかるので、現預金が目減りしていきます。
そして、2か月後の入金までに、支払いが多くなりすぎて現預金がゼロになってしまったら倒産してしまいます。
ところが、その2か月間は売上がプラスになっているので、現預金がゼロでも税務申告の売上高は黒字です。つまり、黒字倒産となります。
これを防ぐために、キャッシュフロー経営が大事なのです。
新規開業するときのキャッシュフロー経営
この黒字倒産は、クリニックを新規開業するときに、特に注意が必要になります。
なぜなら、売上高がどんどん増えていくと、消耗品の支払いも増えます。スタッフさんの人数も増やさないといけないかもしれません。ところが、現金の入金が2ヶ月後になるわけです。
クリニックを開業して1~2年ほど経過したら、患者数は安定しますから、2か月前の売上が今月入ってくるようになるので、資金繰りの予定が立てやすくなります。
しかし、新規開業したばかりのクリニックは、特に半年以内は、売上が少なく、入金も2か月後、出ていく金額は多い状態です。
その間は、どのように耐えるのかと言いますと、運転資金として準備しておいた現預金から支払います。また、予想に反して運転資金が多く出ていってしまったときは、緊急措置としてストックしておいた自己資金から充填します。
「銀行から追加で融資を受けたらいいじゃないか」と思うかもしれませんが、経営の厳しいクリニックは追加で融資が得られにくくなりますし、融資が下りるまでに時間がかかります。その間に現預金がゼロになってしまったら倒産です。
クリニックの開業準備の流れの中で、テナント契約を終えたら事業計画を立てます。その事業計画は、できるだけ手堅い計画を立てて、潤沢な運転資金を準備しておくことが大切です。
もし、想定よりも多く患者様が来院してくださるようになったら、多く借りた運転資金を繰り上げで返済してもいいわけです。
まとめ
以上、クリニックを安定経営するためのキャッシュフロー経営について解説いたしました。まとめると、次のようになります。
- キャッシュフロー経営とは、もっとも多い支払いをしたときに、現預金がプラスになるように経営すること
- クリニックの倒産は、現預金がゼロになり、人件費などの支払いができなくなったとき
- 売上がプラスでも現金がゼロになり、黒字倒産することがある
- 開業当初は現預金が目減りしやすいので、潤沢に運転資金を準備すること
クリニックを経営されている院長先生で、次のようなことでお困りの方は、当社までお気軽にご相談ください。
- 資金繰りに困っている
- 決算を終えたときに、いつも現金が残らない
- キャッシュフロー経営を支援してもらいたい
- 開業後に安定経営ができるような事業計画を立ててもらいたい
ご相談は何度でも無料です。チームコンサルティングIngIngと提携している、クリニック専門の経営コンサルタントが、先生のお悩みにお答えします。
この記事の著者

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)
国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら万を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくる独自の戦略系コンサルティングを開発する。
