社長の夢実現への道

売上高が下がる傾向をいち早くつかむ方法

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売上高ダウンをいち早く知る方法

商品やサービスの販売は、今までは売上高が伸びていたとしても、いずれ飽和し、下がっていくものです。人間のように赤ちゃんから子ども時代、青年期、壮年期を迎え、老いていくライフサイクルがあります。

商品やサービスの売上高が下がり、そのままにしていると、いずれ赤字になるので、延命ができるものは延命させるか、成り行き任せにして切り捨てるかを判断しなければなりません。

それが主力商品であれば、すぐに切ることはできませんので、延命させることを考えるべきです。しかし、延命にも限界があります。売上高が下がる傾向をつかんだら、新商品や新サービスを考える必要があります。

何にしても、いち早く売上高が下がっていく傾向をつかむ必要があります。

そのような対策を取るためのタイミングとして、どのようにして売上高が下がる傾向をいち早くつかむのかが、このコラムのテーマです。その方法を3つご紹介いたします。

売上高の移動累計

売上高に対しての移動累計の活用法をご説明します。

売上高は先月比で上がっていても前年比で下がっている場合がある

毎月、月末までの売上高を経理に報告させている社長は多いことでしょう。その売上高を確認したときに、前月比では上昇していても、前年比では下がっていることがあります。

例えば、先月の売上高が5,000万円、今月の売上高が6,000万円であれば、「今月は先月よりも1,000万円も売上高が増えた」ということになります。ところが、同月の去年の売上高が7,000万円であれば、去年よりも売上高が下がっています。

このように、毎月の売上高と前年同月比をグラフにしたら、その傾向をつかむことができるのですが、前年同月比のグラフは、今一つ傾向をつかみにくい、直観的に理解しにくいものです。

そこでおすすめの方法が、月次の売上高の移動累計です。

移動累計とは?

移動累計とは、月次の売上高を過去12カ月分合算したものです。

例えば、5月の売上高は去年の6月から今年の5月までの売上高の合計を出します。来月の売上高は、1ヶ月移動して、去年の7月から今年の6月までの1年の売上高を出します。毎月、決算を行うようなものです。

このように毎月移動させて合算していくので、移動累計と言います。別の言い方として、移動合計とも言われることもあります。また、過去1年間の売上高の移動累計のことを、年計と言う場合もあります。

移動累計は1年の累計でご説明しましたが、この数値を12で割った数値をグラフにした場合は、移動平均になります。

移動累計のグラフ

移動累計をグラフにすると、社長が行った経営判断の良し悪しが一目でつかめます。商品や事業がいくつかあれば、商品毎や事業毎に移動累計を出すと良いでしょう。

例えば、次のグラフは過去2年間の月次の売上高を示したものです。

売上高の例

このように、毎月変動していると、売上高が伸びているのか、それとも下がってきているのか分かりにくいです。

このグラフに、移動累計のグラフを重ねたいと思います。月次の売上高を移動累計にしたものが、次の橙色のグラフです。

売上高の移動累計(年計)

移動累計は1年間の数値を合計したものですので、途中の12月から始まっており、それ以前の数値は移動累計を算出することができません。(なお、この移動累計は、青色の月次のグラフと比較するために、数値を12で割った数値を採用し、同じグラフエリアに表示されるようにしております。)

月次(青色)と移動累計(橙色)の売上高グラフを比較すると、月次は変動していますが、移動累計はほぼ横ばいになっています。このように、移動累計にすると、毎月の売上高の変動や季節変動がキャンセルされて変動がなくなり、売上高の傾向をつかみやすくなります。

アイスクリームや布団などの販売数は、季節変動がダイレクトにある商品ですので、季節変動の動向もつかみたい場合があります。そのように季節変動をキャンセルしないで調べたい場合は、6か月の移動累計をグラフにしてください。

移動累計をどのように読むのか?

図の移動累計を詳細に見ると、4月の数値をピークに少しずつ下がっていることが分かります。月次では6月を底辺として上昇の傾向にありますが、移動累計は下がってきています。8月の段階で、「6月を底辺として7月、8月と売上高が上昇しているから大丈夫だ。」と判断してしまっていたら危険です。

また、移動累計がほぼ横ばいですが、市場全体の規模が大きくなってきているようであれば、自社の市場占有率が下がっていることを意味します。市場占有率については、次の節にてご説明いたします。

このようにして、移動累計は月次では判別しにくい傾向をつかむことができるのです。

移動累計のグラフの形状は、次の5種類あります。それぞれの解説は、商品改善のタイミングを見落とさないための分析方法をご覧ください。

移動累計グラフの読み方

ここでは、たまたま売上高の移動累計をご紹介していますが、移動累計はさまざまな数値に利用することができます。当社では、Web集客の傾向性を調査するのにも利用しています。

市場占有率の低下

売上高が上がっていても、市場占有率が相対的に下がってきているのであれば、いずれ売上高がマイナスになる恐れがあります。その読みは、とても難しいです。

売上高と市場占有率の関係

売上高アップの例

まずは、このグラフをご覧ください。このグラフでは、ある商品の売上高を示したサンプルです。

このグラフからは、商品の売上高が毎年順調に伸びていることが分かります。このグラフが作成された時点では、「このまま伸びていく可能性がある」と誰もが考えることでしょう。

続いて、次のグラフをご覧ください。同じグラフに橙色のグラフを追加したものです。橙色は競合他社の売上高の伸びです。

競合他社商品の売上高が自社の売上高を超えた例

自社商品の売上高の伸びに比べて、競合他社の売上高の伸びが高いことが分かります。確かに自社の商品は確かに伸びているのですが、それを超えて競合他社の商品が伸びているので、相対的に市場占有率が下がっていることを意味します。

このようなグラフになったら、要注意だということはお判りのことでしょう。つまり、市場占有率が下がると、商社や販売店が一斉に取り扱ってくれなくなる場合があります。商社は販売店では、売れない商品を扱っているほど余裕がないからです。

市場動向の読み

売上高が下がる原因は、さまざまです。主な原因について、「売上高が下がる原因と点検項目」でご紹介しているのでご参考になさってください。

どのような原因であれ、売上高が下がらないように、波状攻撃を仕掛ける必要があります。波状攻撃とは、海岸に打ち寄せる波のように、何度も何度も市場に攻勢を仕掛けることです。

具体的には、新商品を投入したり、顧客サービスを改善していったり、新店舗を出したりといったことを仕掛けていきます。

波状攻撃は、闇雲に攻勢を仕掛けていっても、リターンがなければ次第に余力を失っていき、会社は衰退していってしまいます。そこで、市場動向を読んで、波状攻撃を仕掛けていくことが大事です。

市場動向を読む方法は、一番には「顧客から聴くこと」です。顧客は本音を言ってもらえることはなかなかありませんが、何度も聴いているうちに洞察力や直観力がみについて傾向をつかむことができるはずです。

この洞察力や直観力が、「わが社の将来の飯の種」になります。

顧客から聞いたことが新商品や新サービスの開発につながる情報になるものは、次の4点です。

  1. お客様が失敗したこと
  2. お客様が求める理想と現実とのギャップ
  3. お客様の行動で時間がかかっていること
  4. お客様を取り巻く環境の変化

これら4つのことをつかんだときは、同じことで困っている人はたくさんいるはずです。それに対応できる新商品や新サービスが、自社の特性に合っていたら、売れやすいものになります。

例えば、携帯電話をお風呂場で使用していて、湯船の中に携帯電話を落としてしまい、壊れてしまったとしましょう。そういったお客様の失敗を知り、防水型の携帯電話が開発され、人気が出たことがありました。

場合によってはこれら4つのことにすべて合致する場合もあります。その場合はすぐさま新商品や新サービスを検討すべきです。

以上、売上高が下がってきたときの傾向をつかむ方法をご紹介いたしました。会社の状態が末期状態になる前に、危険性をつかみ、まだ余力があるうちに当社までお早目にご相談ください。

この記事の著者

平野亮庵

経営・集客コンサルタント
平野 亮庵 (Hirano Ryoan)

国内でまだSEO対策やGoogleの認知度が低い時代から、検索エンジンマーケティング(SEM)に取り組む。SEO対策の実績はホームページ数が数百、SEOキーワード数なら数千を超える。オリジナル理論として、2010年に「SEOコンテンツマーケティング」、2012年に「理念SEO」を発案。その後、マーケティングや営業・販売、経営コンサルティングなどの理論を取り入れ、Web集客のみならず、競合他社に負けない「集客の流れ」や「営業の仕組み」をつくりる独自の戦略系コンサルティングを開発する。

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